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中ボスさんレベル99、最強の部下たちとともに二周目突入!  作者: 猿渡かざみ
第二章 攻略!ブラックダンジョン編
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第48話「勇者パーティ“中間管理職”」


 オークたちもハルピュイアたちも今ここに至り、揃って呆けたような目で俺たちのことを見据えている。

 きっと言葉を失っているのだろう。俺たち渾身の変装に――


「ぶ、ぶごっ……何者だてめぇらぁっ!?」


 先ほど殴りつけたハイ・オークが、目を白黒させながら怒号を飛ばしてくる。

 何者か――問われたからには答えるほかあるまい。


「私、武闘家のきゅーちゃん!」


 普段とは装いを新たにし、比較的軽装に身を纏ったきゅーちゃんが我先にと名乗りを挙げた。

 遠い東の地、武術家のために作られたというソレは、純粋に動きやすさを追求した戦闘服である。

 通気性に優れ、肌触りもいい。

 武闘派きゅーちゃんお気に入りの逸品だ。


「わ、私は魔法使いのアル!」


 続いてどこか気恥ずかしそうに名乗ったのは、黒装束で全身を覆うアルラウネ。

 その手には自らの能力で編んだ杖を携えている。

 全身を彩る花形の装飾品の数々(一部本物)が、彼女のイメージにぴったりだ。

 そして最後に――


「俺が勇者パーティ“中間管理職”のリーダー、召喚術師(サモナー)にして勇者のナルゴアだ」


 俺は努めて勇者らしく、両腕を組んで尊大に名乗る。

 しかし希望通り名乗ってやったというのに彼らは何故か素っ頓狂な顔を晒すだけであった。


 ――さて、説明しよう。

 今世で人間の身体を得た俺はともかく、他の三人はれっきとした魔族である。

 召喚術師(サモナー)とはいえ、三人のモンスターと仲睦まじく旅をする少年、という構図は目立って仕方がない。

 だからこの旅には変装が必須だった。

 それも放浪の旅をしていても怪しまれない境遇……その結果たどり着いたのが、勇者パーティへの変装だ。


 幸いにもアルラウネときゅーちゃんは限りなく人間に近い見た目をしているので変装は容易だった。

 だが、軍曹だけはどうにもこうにも、スライムである。

 極力肌の見えない変装を、ということで盗賊や呪術師など試行錯誤を繰り返したが、十中八九「なんか動きが気持ち悪い」との理由で衛兵に捕まった。

 そも、骨や筋肉のないスライムに人間の動きを模倣するなど難題すぎる。

 結局のところこれが一番ということで、彼は今、俺が背負う背嚢の中に収められている。本人はすこぶる不満げだ。


 なにはともあれ、召喚術師(サモナー)の俺を筆頭として、武闘家と魔法使いの三人で構成された勇者パーティ“中間管理職”。

 それが今の俺たちである――


「は」


 静寂の中、ハイ・オークが一度鼻を鳴らして、次の瞬間――


「――はーっはっはっはっは!!!」


 手下のオークもろとも、爆発した。

 もちろん文字通りの爆発ではない。

 皆が一斉にぶぎぃぶぎぃと鼻を鳴らしながら、腹を抱えて笑い出したのだ。


 はて?


「いつの間に用心棒でも雇ったのかと思えば……このタイミングで勇者とはな!」


「あ、あなたたちは……」


 歌姫(ディーヴァ)がそこまで言ってから、何か察したのか口をつぐんだ。

 幸いにも、げらげら笑うハイ・オークがこれに気付いた様子はない。


「ははぁ、あれか、遠目にはよく分からなかったが、お前らこの雌鶏どもをぶっ倒した勇猛果敢な侵略者諸君だな」


 そう言って、ハイ・オークがこちらへ歩み出て、俺の眼前に立ちはだかる。

 あまりの巨体に、俺の周囲が丸ごと影になってしまった。


「戦利品でも回収しに来たのか? そのネーミングセンスは、くく、あんまり笑えねえが、こんなひょろっちいガキがよくやったと褒めてやるよ」


 にちゃあっ、とヤツの口元が醜悪に歪む。


「おかげで俺たちは楽して億万長者、勇者サマサマってなもんさ、……だが、ママから教わらなかったかい? 思い上がりは身を滅ぼすってよ」


「要するに、何が言いたい?」


「ガキがあんま調子に乗んなって言ってんだよ」


 その低い声を合図に、オークたちが各々の武器を構えて臨戦態勢に移った。


「さっさと森を出ていけばこんな目には合わなかったのによ……痛かったぜえ、さっきの」


 ハイ・オークが口角をひくつかせながら拳を構える。


「教えてやるよクソガキ、俺はレベル21、剛腕のハイ・オーク。普通に戦えばそこのハルピュイアどもよりずっと強ぇんだ」


「ほうそれはそれは――」


 こちらの不意をついて、おもむろにハイ・オークが拳を振るった。

 まるで岩石のような握り拳が俺の頭蓋を砕こうと迫る。

 ゆっくりと迫ってくる拳を見据えながら、しかし俺は微動だにせず――


「――ちなみに、きゅーちゃんのレベルは49だ」


 ついぞ拳が俺の脳天へ届くことはなかった。

 韋駄天さながらに飛び出してきた武闘家きゅーちゃんが、渾身の膝でハイ・オークを蹴り飛ばしたからだ。


「ほあちゃー!!」


「ぶぎぃっ!!?」


 再びハイ・オークの巨体が宙を舞う。

 身体に溜め込んだ肉をぶるんぶるんと波打たせながら、水袋のように情けない音を立てて転がり、そして岩壁に激突した。


 誰もが言葉を失い、固まっていた。

 ハルピュイアたちも、オークたちでさえも。

 そんな中きゅーちゃんは、それらしい構えをとって、一言。


「だからパーティ名はQ'sフィットネスクラブにしようって言ったんだよ」


「いやそれもう別の団体じゃないっすか」


 背嚢の中のスライムが突っ込んで、それと同時にオークたちが我に返った。


「こ、ここ殺せ! 今すぐそいつらを殺せぇっ!!」


 ハイ・オークがふらつく頭を抱えながらがなり立て、オークたちが雄たけびをあげながらこちらへ殺到してくる。

 危ない、歌姫(ディーヴァ)が声を上げたが、無用の心配だ。


「ブルーム」


 魔法使いアルが杖の先で地面を穿つ。

 すると足元に見事な花畑が展開され、更にアルが杖を振るうと、色とりどりの花びらが宙に舞った。

 この花吹雪は、オークたちの体に張り付き、そして。


「短縮、花詠唱(はなことば)――ファイア、フリーズ、サンダー」


 アルが魔法名を並べ立てただけで、魔法が現出する。

 あるオークは花弁から起こった炎に巻かれ、またあるオークは全身を凍りつかせ、更にあるオークは強烈な電撃に体を貫かれた。


「あぢぢぢっ!? な、なんだこれぇ、なんで詠唱もしてねえのに魔法、魔法が……あぢぃ!! 焼豚になるぅ!」


「ぶ、ぶぎぎぎぃ!?」


 多種多様な魔法の応酬に悶絶するオークたち。

 これを見下ろして、アルは一言。


「――いえ、やっぱり私の推したパーティ名、千の薔薇の花束にすべきだったわね」


「欲望がダダ漏れですよ姐さん、私利私欲でパーティ名つけないでください」


 すかさず背嚢の中の軍曹が突っ込んだ。


「ぼ、ぼぼぼボスっ! ここここいつらなんか変だぞ!?」


「ボスを蹴り飛ばすし詠唱なしで魔法を発動させやがるし……あの小僧が背負ったリュックからはなんか変な声が聞こえやがる! 気持ち悪い!」


「ま、まさかこいつら本当にレベル49……レベルアベレージ50超えの上級勇者パーティじゃ……!?」


「ハッタリに決まってんだろうがんなもん!! ビビってんじゃねえ! そんな高レベルの勇者パーティがこんな辺境の森にいてたまるか!!」


 ハイ・オークがぶぎぃっ、と鼻を鳴らして声を荒げる。


「毒矢だ! 毒矢を放てぇっ!」


 後方に控えたオークたちが、待ち構えていたかのように弓を射る。


「はっはぁ! ただの一滴で巨人族すら昏倒させるブルジ根の毒だ! かすっただけで即死だぜ!」


 ぱしゅん、ぱしゅんと放たれた矢は風を切り、ハイ・オークは勝利を確信して高らかに笑う。


 だが、


「――毒の調合が甘いわよ、私だったらもっとすごいのが作れるわ」


 アルは地面から生やした無数のツタでこれを受け止め


「悪いな軍曹」


「自分物理無効っすから、おぇ、不味い毒……」


 俺の背負う伸縮自在の背嚢に収まった軍曹が、背嚢ごと膨らんで矢を一身に引き受け


「あ、これいい運動になりそう! もう一回!」


 きゅーちゃんは――あろうことか、いっそ曲芸じみた超人的身体能力で、矢を躱しただけに飽き足らず、なんと素手でこれを掴み取っているではないか。


「ば」


 と、一匹のオークが声をあげた。

 からんからんと音を立てて、彼らの手の内から弓矢が滑り落ち、そして


「バケモンだああああああっ!!?」


 脱兎のごとく、蜘蛛の子を散らすように。

 オークたちは文字通り尻尾を巻いて、一目散に逃げ出した。


「お、おいおいおいおい!? 逃げんじゃねえ腰抜けども! もう少しで億万長者なんだぞ!? 数えきれねえぐらいの金塊が、俺たちの足元に……!」


「命の方が大事だ豚野郎!」


「楽な稼ぎっていうから乗ったんだ! 化け物退治なんて聞いちゃねえ!」


「付き合い切れるか!!」


 ハイ・オーク必死の制止もむなしく、オークの群れはあっという間に散り散りになり、森から姿を消す。

 あとに残ったのは、呆然と立ち尽くす豚の長のみであった。


「マジで逃げやがった……」


「お前も逃げるべきだと思うが」


 俺は、哀愁漂う彼の背中に声をかける。

 ハイ・オークは一度びくりと肩を震わせ、そしてこちらへ振り返った。

 その顔は憎悪と焦燥によって醜く歪んでいる。


「なんなんだよ、テメェらは……!」


 ハイ・オークの身にまとう煌びやかな衣装が、みちみちと悲鳴をあげる。


「俺は泣く子も黙る剛腕のハイ・オーク……誰よりもビッグになる男だ! 金も、名声も、女も、全部この腕でもぎとる、そういう男なんだっ!!」


 怒気とともに膨れ上がった筋肉が、いよいよ彼の衣服を弾き飛ばす。

 剛腕の名に恥じぬ凄まじい筋肉が露わとなり、彼は大きく拳を振りかぶって、そして


「俺の邪魔ぁすんじゃねえっ! クソガキがぁぁぁっ!!」


「いいスピーチだ」


 ヤツの拳が振り下ろされんとするその刹那、俺とヤツの間に千手の一つが滑り込む。

 千手は、剛腕ならぬ剛指をぎりりと引き絞り、ある構えをとった。


 デコピン、である。


「今回の反省を踏まえて――次はもっと上手い商売を考えると良い」


「ぶ……」


 ぱきゃあんっ!


 耳に心地いい音が森全体に響き渡り、剛腕のハイ・オークは地平線の彼方まで吹っ飛んでいった。


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