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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第二章「猫とコンビニが世界を救う……のか?」

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第二十四話「不死の猟犬」②

 ちらりとアージュさんに視線を送ると、合図と思ってくれたようで、それまで閉じていた目をカッと見開く!

 その全身には服越しにも解るほどの複雑な文様が浮き出ている。

 

 ……凄いな……身体そのものに魔法陣を埋め込んでいるんだ。

 身体のあちこちに埋め込んだ魔石も活性化しているようで、盛大に光を放ち始めている。


「では、参るぞ! 凍てつく銀の波動、其は煉獄、永久に凍てつく氷の監獄!」


 アージュさんの大魔術はすでに最終段階に入っていたようだった。

 足元の巨大魔法陣が更に巨大化して、柵を超えて延々と広がっていくのが見える。

 更にアージュさんの方から、冷たい風がブワッと吹き付けて来る!


「来たれ! 来たれ! 来たれ! 我は伏して願う! 我らが祖、氷結の女神アレイオンの名において! 万物を凍らせ、永久の眠りに誘う無限の凍気よ! 解き放たれる時は今ッ! 幽界かくりよより来たりて我が敵を滅ぼせ! 結氷煉獄陣コキュートス・バーストッ!!」


 ……聞こえた音は、パキンと言う微かな音がひとつ。

 

 それっきり、音のない世界。

 恐ろしいほどまでの静寂が辺りを支配する。

 

 ……柵より向こう側は一瞬で真っ白になって、一切の動きが止まっていた。

 

 サーマルビジョンの温度スケールの下限を振り切ってしまったらしく、モニター越しではもはや、周囲は真っ黒になって、意味をなさなくなっていた。

 

 推定最低気温-150度とかアホみたいな数値が表示されてる……。

 

 アージュさんが自信満々だった訳だ。

 ……こんな強烈な冷気……スライムどころか、生き物なら一瞬で凍りつくし、機械ですらオイルが凍りついて、動かなくなってしまう。

 

 確か地球上で観測された気温の最低記録は-97.8℃……このレベルになると、人間は深呼吸しただけで、肺が凍りついて即死する。

 

 それすら下回ってるとか、どんだけだよ!

 

 結界が張られているのは本当のようで、柵からこっちは線で引いたように境目が出来ている。

 とは言え、それですら完全でないらしく辺りの気温が急激に低下し始めている……思わず、ブルッと肩が震える。

 

 推定気温10度の表示……更に9度、8度とぐんぐん下がっていく。

 この辺じゃ、絶対にありえない寒さだな……さすがに、分厚い上着の一つも欲しくなるところだった。


 と言うより、ホントにこれ……大丈夫なんだろうか?

 

「……どうじゃ? 我が究極奥義、結氷煉獄陣! もはや、生き残るすべなどあるまい……フハーハハハッ!」


 言いながら、アージュさんがフラッと倒れ込む……近くにいたモモちゃんが慌てて、助け起こそうとしている。

 親指ビッと立てながら、めっちゃやりとげた顔してるけど、アージュさん、とんでもねーよ! あんた!

 

「あー、ゼロワンくん……上から見て、どんな感じ? こりゃ、さっきの訳の解んないやつも確実に巻き込まれただろうね。いや命令、残敵を確認、報告せよ。この調子だと全部巻き込んだと思うから、多分全滅してるだろうけど……もし、生き残りがいるようなら、報告してくれ」


 ボスキャラ、何も出来ず雑魚もろとも巻き添えで轟沈。

 ……割と強そうだったけど、身も蓋もなく倒せたのなら、それでいいじゃん。


 さっきのゼロワンの命令無視は、勇み足だとでも思っておこう。

 まだ撃つなって言ってるのに勝手にぶっ放すとか、新兵がよくやらかすって、爺さんも言ってた……初陣なのは、お互い様ってところだ。

 

 それに多分、僕にぶっつけ本番で人を殺せなんて命令を下させるのは酷だと、鹿島さんたちも判断したんだろう。


 実際、アメリカ軍なんかのドローン遠隔操作オペレーターでも、操縦自体は民間軍事会社とかの社員がやってたりもするんだけど……。

 攻撃の時だけは本職の兵士が操作を担当するとか、そんな感じの運用になってるらしい。


 モニター越しで、ボタン一つで人殺しになる。

 ……その心身ストレスは想像以上のモノで、ドローンオペレーターのPTSD発症率は、最前線の兵士以上と言うデータもあるくらいなのだ。


 僕自身、その話を聞いて命の危険も無いTVゲームとそう大差のような任務で何故? と思ってしまっていたのだけど……。

 その理由を身をもって、知ることになってしまった。

 

 だからこそ、そこら辺は、いち民間人として守らせるべきラインだって、配慮してくれたんだろう。

 

 結果的に、僕は引き金を引けなかった訳だけど、むしろ人殺しに加担せずに済んだんだ……。

 気遣いに感謝こそすれ、恨む道理はないだろう。

 

 しかし、問題はアージュさんの氷結魔法……もはや、200mどころか500mくらいの範囲まで氷点下切ってるのが解る……核兵器レベルとか、ゼロワンは評価してたけど、それも納得の威力だ。

 

 こんなもん、表層付近の土中微生物や草の種やらも残さず死滅してるだろうから、たぶん、この辺り一帯は雑草も生えないような状態が何年も続くだろう。

 

 ……敵がやたらビビってたのも、納得がいった。

 こんな戦略兵器レベルの相手、敵に回した側はまさに悪夢以外何物でもないだろう。

 

『現在、局地的異常低温地帯の発生に付き、サーモビジョンによる索敵は不可能。この状況は我々の想定を超えている。代替措置として、低高度にてスポットライトによる直接光学観測に切り替えた上で捜索活動を開始します。動体反応スキャン実施、少々お待ちください。なお、周辺温度は推定-150度から変化なし。異常低温地帯への立ち入りは大変な危険を伴う。推奨行動、現状待機』

 

「言われなくても、そうするよ……悪いけど、よろしく頼むよ」


『了解、索敵命令受領……行動開始します』

 

 ゼロワンが低い所を飛びながら、サーチライトで照らしながら、周辺捜索を開始する……。

 効果範囲は上空にも及んでいるようで、ゼロワンもある程度の高さまでしか降りれない様子だった。

 

 なんか、戸惑ってるような気もする……向こうも色々想定外だったんだろう。

 少なくとも現代兵器で、こんな半径500mを氷漬けにするような兵器なんて聞いたこともない。

 

 と言うか、ここまで凄まじいモノだなんて、僕も聞いてない……。

 

 それにしてもまさか、僕らまで脱出できないとか……。

 アージュさん、前後不覚になってるみたいだけど、これで殲滅しきれなかったら、どうするつもりだったんだろう?


 いや、この場で確実に殲滅する為に、出し惜しみ無しでの全魔力をつぎ込んだ最大攻撃を選んだって訳か。

 

 ふっと、息をつくと、今度は南の空が赤く染まるのが見える!!

 一拍置いて、遠雷のような続けざまの爆音が轟き始めて、ブワッと熱風が吹きつけてくる!

 

 これは流石に覚えがあった。

 

「テンチョーか。相変わらず、やってる事が派手だねぇ……」

 

 どうやら、ブンちゃんの小型ドローンを張り付けていたようで、モニターがテンチョーの方に切り替わると、街道を塞いでいたスライムの山はごっそり削られて、その真ん中が真っ赤を通り越した真っ白になっている。

 

 どうやら、例のクラスター爆撃魔法を使った上での強行突破を選んだらしい……。

 敵の伏兵は、大混乱らしく一斉に群れが散っていく……たったの一撃でテンチョーの正面にいた1000匹もの群れがすでに二百匹程度の4つほどの群れに分断されていた。

 

 恐らく、この白は火の海って事だろう……初撃で迷わずあれを撃つ辺り、さすがテンチョー!

 

 そして、その白い範囲は見る間に拡大し、あちこちに飛び火していく。

 容赦のない追撃……多分、通常の光の矢の方を左右にバラ撒きながら、炎の海の中を走っているのだろう。

 

 自らの生み出した火の海を走り抜けたらしく赤い光点がひとつ、白いエリアを抜け出して、こっちに向かってくる!

 

「来たっ! テンチョーだ! 皆、そろそろ、ここを脱出する……総員集合!」


「あ、あのアージュさんは? 気絶しちゃったみたいなんですけど!」


 ぐったりとしたアージュさんを抱えたモモちゃんが慌てたように聞いてくる。

 多分、魔力枯渇の虚脱状態なんだろ……アレはキツいからなぁ……。

 

 僕も散々っぱら経験したけど、アージュさん、無茶しやがって……。

 でも、意識はあるみたいで、頑張って顔を上げてにやりと不敵な笑みを浮かべて……またクタッとなる。

 

 見るからに駄目じゃん。

 

「とりあえず、リアカーの荷台に載せてあげといて、もうちょっと結界の外の気温が上がったら、ここから撤退する。皆、すぐに動けるようになるべく集まって!」


「オーナー! ここは一気に脱出しよう! 俺達なら、走って追いかけるから、構わず先に行って、テンチョーさんと合流してくれ……そうすりゃ、俺達も一安心だ。と言うか、こんなクソ寒い所にいつまでもいられるか!」


 熱帯に住んでるような人がいきなり気温一桁台なんて、そりゃ寒いだろう。

 僕だって、身体が暑さになれてたせいで、めちゃくちゃ寒く感じる……体感的に氷点下切ってるくらいに感じる。

 猫耳が冷たくなって、感覚がない……取れてないよね?

 

「サントスさん、今、結界の外に出たら、一呼吸で死んじゃうくらいだから、まだ身動き取れないんだ。ゼロワンが安全確認してくれてるから、敵の心配は要らない。とにかく、いつでも動けるように全員集合!!」


 僕の号令に応えるように、皆、続々と集まってくる。

 戦闘員の人達も含めて、誰一人欠けはない……けれど、何故かプラドさんだけは、一番後ろでで大剣を構えたまま、油断なく背後の白い世界を見据えている。

 

 その様子を見て取った、リードウェイさん達も身構える。

 

「プラドさん……さすがに、こんな低温でも生き延びれるような生き物がいるとは思えない。プラドさんも年なんだから無理せず、リアカーに乗ってくれないかい? そのデカい剣も邪魔だろうから置いていってくれ!」


「若いの……油断するでないっ! この感じ……まだ何かおるぞ? リードウェイ! 貴様らも何を呆けておる! 構えろ! 来るぞっ!」


『警告ッ! 残敵を確認。迎撃行動ッ!』


 プラドさんが怒鳴るのと、ゼロワンから警告のアラートが鳴らされるのがほとんど同時だった!

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