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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第二章「猫とコンビニが世界を救う……のか?」

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第二十四話「不死の猟犬」①

「……この人達が帝国の指揮官だって言うのかい? けど、この緑の人影はなんだい?」


 シルエットは人っぽいんだけど、体温が無いって……死体か何かなのだろうか?


『これが帝国の擬態生物の指揮管制ユニットです。人の形に擬態した侵略的生物兵器であり、スライムタイプの上位種個体です。故に最優先での殲滅を推奨する。帝国の擬態生物は、ツリー型の指揮系統を持ち、群体制御を行っていると推測されている。群体との戦闘時には、その頂点に位置する指揮管制ユニットの破壊が極めて有効。なお、他の4名は赤外放射パターンから人間、帝国軍の戦闘員であると推定。ただし、うち2名は一般人と異なる変則的な赤外放射パターンを示しており……魔術師の可能性が高い。こちらも要注意。いずれにせよ、当機の火力で対応は可能だと判断される』


 良く解らないけど……これが帝国軍の指揮官達なのは間違いないようだった。

 魔術師は……こいつらが遠話妨害や索敵担当、他の二人はその護衛ってところか。

 

 この緑色は、スライムと似たような存在なんだろうけど……。

 他の4人は普通の人間だってのは、モニター越しにでも解ってしまった。

 

 ……撃てと一言命じるだけで、この戦闘ロボは、確実にこの5人を殺してくれるだろう。

 それこそ、何の躊躇いもなく一瞬で。

 

 こいつらは、僕らにこのスライム共をけしかけて、これまでに旅人や行商人を次々襲って、ギルドの巡察隊やキーツさん達をも殺している。

 

 明確な……倒すべき敵だ。

 

 戦術的にも、このスライムの大群の指揮官である彼らは、最優先で殲滅すべきなのは理解できる。

 

 指揮官を失った軍勢なんて、一気に瓦解……烏合の衆に成り果ててしまう。

 魔術師を倒せば、遠話も復旧して通信も可能となる。

 

 なんにせよ、最優先で殲滅すべき敵なのだ。

 けど、僕の命令で人が死ぬ……それは、さすがに抵抗があった。


 実際、コンビニを襲撃しようとしていた野盗を、ラドクリフさん達が撃退したなんて事は、今までに何度もあった。

 

 僕自身はラドクリフさんに、皆を守るように命令しただけなんだけど。

 あれだって、間接的に僕が殺せと命じたようなものだ。

 

 僕が命じたのは、外敵の脅威から、お店と周囲の人達を防衛する事……。

 僕自身が明確な殺意を持って人殺しを命じた訳ではないし、正当防衛と言える行為なのは間違いない。

 

 けれど、結果的に幾人もの野盗がラドクリフさん達と戦い、その生命を落としている。

 

 ……結果だけ見ると、僕は人殺しを命じたようなもので、間接的ながら、とっくの昔に殺人者と言える。

 

 僕の手が汚れているかどうかと言う話ならば、たぶん僕の手はとっくに血にまみれている。

 実感はないけど、それは紛れもなく事実だった。

 

 だからこそ、この敵を殺す事なんて、今更、気にするような事ではないはずなのだけど……。

 

 今、僕が話をしているのは、人間じゃない……命を持たない戦闘兵器なのだ。

 言ってみれば、ただの道具に過ぎない……銃や剣と変わりない代物。

 

 戦闘機械へ撃てと命じる。

 

 それは、僕が誰かに殺せと命じるのと同じように思えるのだけど……似て非なる行為。

 

 自分の指で引き金を引く代わりに、僕は己の言葉で銃の引き金を引くのだ。

 ……それは、誰がなんと言おうが、確実に、僕が僕自身の殺意を持って、人を殺す事に他ならない。

 

 今の今まで、皆の前では立派な指揮官を演じていたのだけど……。

 僕は、ここに来て……人殺しと言う行為に、恐怖を覚えてしまっていた。

 

『高倉准陸尉、報告……当機は現在、敵指揮管制ユニットより、M134の有効射程1000m圏内まで接近に成功した。敵指揮管制ユニットに気づかれた形跡はなし、ターゲットマージ……完了。要請、射撃命令を発令せよ。繰り返す、直ちに射撃命令を発令せよ』


 僕の苦悩を他所に、この戦闘ロボはやる気満々……いつのまにか、敵の指揮官達を、その射程に収めてしまったらしい。

 

 さっきまで僕らの頭上にいるとか言ってたのに、あっという間に2kmの距離をひとっ飛びで忍び寄ったってのか。

 そんな距離まで近づいて、敵に接近を気づかせない……ステルス性能も万全らしい。

 

 心持ち、語尾が強いような気もするのは、気のせいじゃないだろう。 


 ここはもう戦場。

 情けや逡巡が、自分の……仲間の命取りになる世界。

 

 戦場で敵を殺すのは必要悪……そう割り切れないと、命取りになる……そう考えるのだけど、考えがまとまらない。


 他の皆も僕の命令を待っているのだ……こんな所でフリーズしている場合じゃない。

 理屈じゃ、解ってるんだけど……解ってるんだけど!

 

『緊急報告……上位命令ユニットより、先制攻撃コード「ニイタカヤマノボレ」を受領。ただ今より、M134による制圧射撃シーケンスを開始します。目標、帝国軍指揮管制ユニット。撃ち方開始します』


 何が起こったのか……理解する前に、少し離れた上空で何かが火を噴き……銃声どころか爆音としか言いようがない凄まじい音が断続的に木霊する!

 

 モニター上の赤いシルエットが、文字通りバラバラになっていく……。

 サーモビジョン映像だから、リアルな映像よりは衝撃的な映像ではないものの……何が起きているか、ひと目で解って、思わず目を背けたくなる。

 

 けれども、そんな地獄絵図の中、真ん中の緑色は座ったまま、微動だにしていない事に気づいて、否が応にも視点が釘付けになってしまう。

 

 弾が当たっていない? いや、今もヘッドショットが決まって、頭部と思わしき部分がガクンと後ろにのけぞるのだけど、ぐぐぐっと力を込めて、頭をもたげるのが解る。

 

 ミニガンの集中砲火……腕や胸、首と……どう見ても致命傷の部位に、次々被弾していて、背後の木らしきものも粉々になっていくのだけど、ソイツだけは倒れるどころか、立ち上がろうとさえしている!

 

『制圧射撃シーケンス終了……ただいま銃身加熱により、強制冷却システム稼働中。報告、撃破数4……帝国兵の無力化を確認。しかしながら、敵指揮管制ユニットは健在。警告、敵に動きあり。群体が暴走した模様。現在、敵の陣形が崩壊……それに伴い包囲陣も縮小中、直ちに迎撃行動に移ることを推奨する』

 

 ゼロワンの報告と共に、モニター上では、ほとんど動きを止めていたスライムの群れが一斉に動き出す様子が見て取れる。

 更に、緑色の人型がすばやく立ち上がって、猛スピードで移動すると、上空へと飛び上がってくる!

 

『敵指揮管制ユニットの攻撃行動を確認。当機の武装では効果が認められない。直ちに退避行動に移行する』

 

 ゼロワンもすでに退避行動に移っていたらしく、視点が一気に上昇し、更にミニガンの掃射を当てていく!

 人型の怪物も、空中で正確な銃撃を浴び、叩きつけられるように地上に落ちていく……けれども、まだ動いているッ!

 

 どうやらゼロワン自体、20mほどの高さにまで下がっていたようで、退避が遅かったら取り付かれるところだったようだ。

 1km近くの距離をあっという間に詰めた移動速度! おまけにミニガンの掃射を物ともしないなんて、なんて、敵だっ!!


『報告、目標健在。データベース照合、該当なし。帝国軍の未知の上位擬態生物と認定。警告、敵擬態生物は高倉准陸尉のいる場所へと移動中、目標推定速度時速80km。一分弱で到達の予想。推奨行動、直ちに退避。警告、この敵は我々の想定を遥かに超える戦闘力を持つと推定される。即座に退避せよ』


 ……なんか、機械のくせにテンパってやがるぞ……コイツ。

 けど、今しがたゼロワンに攻撃指令を下したのは、恐らく鹿島さんとか、その辺からなんだろうな……。

 

 僕が躊躇うと思われたのか……向こうも、最優先で即座に殲滅するべきと判断したのか。

 

 いずれにせよ、思いっきり、頭ごなしでやってくれた。

 

 僕の指揮下とか言っときながら、いつでも上位命令を発動できるってことかよ!

 全然、信用できねーじゃないか!

 

 おかげで、こちらの段取りも台無しだ!

 

 けれども、あれだけの銃弾を浴びて、平然としてるとか……どれだけデタラメな敵なんだか。

 そんなボスキャラが控えてたなんて、僕も予想外だった。

 

 けど、こっちはこっちで、今ので、かえって冷静になって来てるんだから、不思議なもんだ。

 

「ドランさん! サントスさん! 予定が狂った……今すぐ投石機による攻撃を開始! アージュさん、敵の統率が崩れた! もう何も考えずに一斉に突っ込んでくるみたいだ! 先頭が見えたら、儀式魔術を発動! ゼロワン! テンチョーへ突撃命令! 敵を強行突破後、速やかにこっちに来るように伝えろ!」

 

 敵は陣形も何も無茶苦茶で、四方八方に広がりながら、周りを取り囲んでいく。

 どうやら、敵のボスは、一斉に群がってくるスライムの群れに紛れ込んだらしく、徐々に混乱が沈静化していく。

 

 けれど、ドランさん達の投石機から、タマゴ爆弾、酒瓶などが次々放たれ始めると、混乱が再び再開される。

 狙いはいい加減らしいけれど、敵は多少無秩序に広がったものの、相変わらずラッシュアワーみたいにぎっしり集まってるから、撃てば敵に当たってるような状態。

 

 効果についても、落ちた所を中心に動きがデタラメになっているのが解る……なるほど、あんなのでもそれなりの効果はあるんだな。

 

 けれど、敵の先頭が100mを切って、そろそろ、森の木々の隙間から見えるほどになってきた。


 ……アージュさん、そろそろ良いんじゃないかな?

不死身の化物VS無人戦闘機械

サブタイトルは、両方共当てはまるような気もします。


ちなみに、同名の漫画とは全く関係ありません。



ツッコまれる前の補足説明。


『ターゲットマージ』と言う軍事用語はありません。

「マージ」って言葉は、元々コンピューターのデータベース系の用語です。


A=25689

B=1347


こんな感じの二つの線形リストをX=123456789と言うソート済みリストにまとめあげるアルゴリズムを指しますが、DB系言語に触ったことのない人は理解不能の概念です。(笑)


作中のニュアンス的には、ターゲットの優先順位を制定とか、そんな感じです。

無人兵器AI特有の言い回しとでも思っといてください。

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