第二十二話「チートVSチート」⑤
どうもこの様子だと、ブンちゃんの同型車両と対抗装備とやらを異世界急便で送り込んだ様子だった。
と言うか……ブンちゃん……要するにロボット戦車だったのかよ!
なんか、やたらごついフレームむき出しで、やっつけでコンビニのロゴ入り布張りカバーとかした感じで、なんともプロトタイプ感漂うデザインだったんだけど……。
たぶん、始めから異世界で軍勢やモンスター相手に戦う事を想定してたんだ……これ。
冷静に考えて、思い当たるフシがありすぎる……GPSが使えないことを前提にした、電波ビーコンを使った位置測定システム、水だけで動く謎動力。
やたらパワフルで、超頑丈で割と重たい車体……街道や村の中ならタイヤで十分だろうに、どこでも走れる無限軌道仕様。
人員移送や荷物の運搬と言った平和的な用途の割には、色々オーバースペックだと思ってたら……そんなかよ。
……そりゃ、そんなもん表になんて出せる訳がないわな。
M2重機関銃って……そんなもんを装備した戦闘車両なんて、殺る気に満ち満ちてる……。
たしかアレ……100年も前に設計されたのに、現代においても超えるものが出来ない……なんて言われてるオーパーツ地味た代物。
射程も2km先の目標をピンポイントで撃ち抜くとかだし、最大射程は6kmとかいう話。
こないだのワイバーンもこれがあれば、余裕だったんじゃないかな……。
まぁ、この辺は軍事マニアの友人がいたんで、ソイツから色々聞いて覚えてた。
大型ドローンにしても、ミニガンって確か撃たれたヤツが一瞬で肉片に変わるとか言うとんでもない武器だぞ……おまけにミサイル装備ってガチ過ぎるだろ!
……でも、絶対これ、予め色んな状況を想定してて、作戦プランとかも山盛り作って、準備してたんじゃないかな……。
幾多の状況想定シミュレーションを重ねに重ねて、考えうる最悪の状況、通常まずありえない状況ですら、想定する。
偏執狂じみた数の想定と対策、事前シミュレーションを重ねて、準備し、物資なども揃えて、事が起これば可及的速やかに対応する。
なにせ、アージュさんが斥候を発見して、僕らが敵との接触を果たしてから、まだ30分も経っていないのに、すでに救出作戦が始まっていると言うのは明らかに異常な対応の速さ……。
僕らが敵の包囲網に気付かなかっただけで、ブンちゃんは独自に索敵をしてて、事前に状況把握し、日本側へ報告していた可能性もあるな……これ。
……だったら、僕らに警告するのが先だろう……とは思うのだけど。
わざと、僕への警告が後回しにされていた可能性も考えられる。
つまり、危機的状況の演出って訳だ。
僕らが絶体絶命の危機的状況を認識した所で、絶妙なタイミングで差し伸べられる救いの手。
……実際、僕は日本国様々……くらいには思ってしまっていた。
なんだか、鹿島さん達の手のひらで転がされてるような感じで正直、複雑なのだけど……。
現状としては、流れに乗るしか選択の余地がない。
けど、これは間違いなく向こうの想定の範囲内。
考えてみれば、オッドボール少佐も何人か戦闘要員を集めて、銃火器慣熟訓練とかやってた……。
本人は、日本の自衛隊に兵器とかを納入している四菱重工所属の製品インストラクターとか言ってたけど。
絶対、アレ幾多の戦場で銃砲弾の飛び交う中を生き延びて来たような手合だよなぁ……。
ラドクリフさんですら、逆らえない感じで、キリカさんなんかも完全に従ってたもんな。
銃火器についても、僕が早々に投げ出した中、皆、すげぇ威力だとか言って、喜々として練習してたし……。
ラドクリフさん達が山ごもりしてる間も入れ代わり立ち代わり、何人も山ごもりに参加してたんだよなぁ。
どんな訓練だったのかは、詳しくは聞けなかったけど、ゴブリンやらモンスター相手に実戦訓練してた可能性だってある。
現地戦闘員が30人とか言ってたけど、練習してたのも確かにそれくらいの人数になるし、銃も弾も戦争でも始めるのかってくらい送りつけてきてた。
こんなのこんなに要らないって苦情も送ったんだけど、そのうち回収するんで、倉庫の隅っこに置いといてくださいねーで流されたし……。
考えてみれば、ウルスラ達と戦うにしては、銃なんてどう考えても大げさな装備だし、何でそんな物騒なものを他の人にも気楽にホイホイ使わせてるんだって、思ってたけど……。
もしかして、現地情報を密かにかき集めて、帝国が近い内にこちらに侵攻してくるって見抜いてたんじゃないか?
僕以外にも何人かこの世界に協力者がいるみたいだし……。
その上で僕らを帝国に対抗できる戦力として密かに育成していた……僕らにその意図を気付かれないように、さりげなく。
ファンタジー世界、中世レベルの文明レベルの世界に銃火器を持ち込む……はっきり言って、その時点でチートに近い。
自動小銃……AK47でも有効射程は600m、その威力は一発でも当たると、人の手足が軽く吹き飛ぶほどと言われていて、人間なら一撃で死ぬか、戦闘不能になる。
対するファンタジー軍勢は、弓や弩と言っても100mくらいがせいぜいで、魔法もそんなもん。
普通の剣や盾を持った兵士が相手だと、銃火器装備の兵士、10人くらいいれば100人相手でも勝てるだろうし、状況次第では1000人居ても怪しいかもしれない。
こんなドローンやサーモビジョンなんてあれば、夜戦じゃもう独壇場だろう。
ましてや、うちの警備隊は夜間戦闘に長けたウォルフ族の人達が中心……やたら目がいいらしく、自動小銃の長距離戦闘も少佐が感心する程の高い適性を見せていた。
ブンちゃんだって、日本と常時オンライン接続されていて、ビーコンが情報収集端末も兼ねていたなら、森の木々一本一本までデータベース化くらいしていそうだった。
その範囲は、恐らく広大なミャウ族の行動範囲全域に渡る……コンビニを中心に半径20kmくらいは余裕だった。
ミミモモもブンちゃんに乗って、かなりあちこち足を伸ばしてたらしいから、すでに相当な範囲にビーコンを設置しているのではないかと思われた。
一応、ビーコン設置も僕が立ち会うって話にはなってたけど、ここに来るまでも完全にお任せだったしなぁ……はっきり言って、めちゃめちゃ手慣れてて、口出しする必要がなかったってのが正直な所。
ミミモモが機械と直で意思の疎通が出来ていたなら、機械の方がついでにここにも、あっちにも……なんて調子で、勝手に設置してた可能性が高い。
新しく送られたばかりの4台の無人戦車や大型ドローンも、コンピューターってやつは、データ共有やらコピーはお手の物だから、この世界での初陣と言えど、ブンちゃんの持つ豊富な現地データや、日本での試験運用データなどがあるのだから、すぐにでも実戦投入可能なレベルくらいは確保できているだろう。
それに鹿島さんもこちらが何も言わずとも、ブンちゃん経由で状況も把握しているようで、アージュさんを含めた、こちらの戦力を計算に入れた上での作戦プランまで提案して来てる……。
確かに、アージュさんも包囲してるヤツらを完全殲滅は出来ないって言ってたから、一撃かまして逃げたとしても直に追いつかれる可能性が高い。
一旦やり過ごして、敵を合流させてから、前後から挟み撃ちにするってのは、確かに悪くない。
味方の流れ弾とか心配だけど……こちらの位置情報とかも共有してるとなると、それすらも心配無用とかそんな調子なのかも知れない。
これ、本気で敵を殲滅する構えだな……。
しかも、不可能じゃないって言ってんだから、すでにシミュレーションとかも試してるんだろうな……。
と言うか、そもそも日本国と帝国が交戦状態って……マジかよ。
これまでの至れり尽くせりの支援、やたらと物騒なものを送りつけてきてたのも全部、これを視野に入れてたんじゃなかろうか……?
……やはり、僕らは異世界で日本の尖兵として、帝国と戦争する勢力になることを期待されていた……そう言う事なのか?
色々と勘ぐってしまうけど、今の状況を見ると鹿島さん達の先見の明に助けられているのも事実。
本来だったら、僕は今頃、伏兵に突っ込んでいってあの世に召されていただろう……。
むしろ、僕の考えが甘かったんだ……この状況を想定して、色々準備を重ねていた鹿島さん達の方が正しい……理屈では、そう解るのだけど……。
鹿島さん達の秘密主義もいつものことなんだけど、こうなると正直、穏やかじゃいられない。
こっちだって、すでにキーツさん達と言う犠牲者を出してしまっているし、僕だって運が悪けりゃ、今頃あの世行きだったんだ!
……大きな借りが出来たのは確かだけど、無事に戻れたら、抗議くらいしないと気がすまないぞ!
「どうした? ケントゥリ殿、浮かない顔じゃな……例の日本からのメールとやらか? まさか……凶報でも届いたのか?」
「ああ、ちょっと衝撃的な内容でね……。なんと言っていいか……」
さすがに、これはどう説明するべきか考えあぐねてしまう。
アージュさんは、僕らの味方だけど、関係者と言うほどではないし……。
「どれ……我にも見せてみろ。ふむふむ……なんじゃこりゃ! 日本の奴ら、いくらなんでも準備が良すぎるじゃろ……。全て合わせても100人に満たぬ程度の兵で2600もの擬獣を殲滅するなど、前代未聞じゃが……。何やら、如何にも恐ろしげな兵器も本格投入する構えか……我も銃と言うのを見たことがあるが、あれは恐ろしい代物じゃからな。しかも、この内容からすると、帝国との戦いに本格的に介入する気満々のようであるな……。一体何をやらかしたのかしらんが、帝国もとんだ虎の尾を踏んだと言ったところか……」
一瞥しただけなのに、明らかにメールの内容を理解している様子。
えええっ! 何でこの人、さらっと日本語読んでるわけ?
「アージュさん、日本語読めるの?」
「ああ、我はかつて、リョウスケ殿……日本からの転移者に仕えておったからの。アヤツから日本のことは一通り聞いておるし、言葉も不自由なく使えるし、文字も読めるぞい。ヤツの帰郷に護衛として付き合って、日本に行ったこともあるんじゃぞ? アキハバラとか言うところやシンジュクかの……向こうは人ばかりで疲れたが、食い物は美味かったな。もう一度くらい行ってみたいもんじゃな」
アージュさんがハイテクにあっさり順応してた理由が解った。
この人、日本に来たことがあったんだ……考えてみれば、ブンちゃんを見ても全然驚いた様子も無かった。
うちの従業員たちは、日本のものを見慣れてるから、何を見せても、今さら全然驚かないからすっかり気にしなくなってたけど、この世界の人間から見たら、こんなのすんなり、受け入れられる方がおかしい。
元々めちゃくちゃ長生きしてるし、そう言う下敷きがあるなら、すんなり順応できるのも当然だった。
けど、そんな日本と異世界を気楽に行ったり来たりしたり……リョウスケって人はどんな人だったんだろう?
やっぱり、気になるな。
昨日は、ノロで死んでました。(汗)




