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第三話「ファーストコンタクトなんやでー」①

 考えてみれば……こんな未開のジャングルみたいなところで……電気も水もガスも無い。

 

 あるのは、コンビニの建物と在庫商品。

 昨日の夕方便でカップ麺とか、保存食やらを少し大目に仕入れてたんだけど、正解だった。

 

 身体一つで……なんてのよりは、よほど恵まれてると思うんだけど……。

 ここがどんな世界なのかすら、良く解らない。

 

 原始時代とかそんな文明レベルだったら、本気で困るな……。

 

「ご主人様? どしたの? なんか暗いよ!」


「……ああ、その……これからどうなるんだろうって考えてた……」


「うーん、白いヤツの話だと、この世界は混沌に包まれて、戦乱が……とか、使徒としての使命がどうのって言ってたけど……」


 そうだよな。

 神様だって、何の意味もなく異世界召喚なんかしない。


 ありがちなパターンだと、神様がうっかりやらかして、死なせちゃって、お詫びに転生……とか。

 魔王と戦う定めの勇者召喚とか……そんなのが定番だ。

 

 僕達はこの世界で、何らかの役割を果たす必要がある……そう思って良さそうだった。


 でもさぁ……。


「漫画や小説だと……異世界転移して、魔王とか大帝国に対抗するとか、そんなんが定番だけど……。僕、そんなんどうしょうもないよ? なんせ僕は……ただのおっさんだからねぇ……」


 まぁ、猫耳と猫尻尾が生えたみたいではあるんだが。

 だから何? って話だよなぁ……。


「大丈夫だにゃ! 何かあっても、私がご主人様を守ってあげるし、何とかなるにゃ!」

 

 そうか……一人ならともかく、テンチョーと言うチート持ちがいるんだから、結構何とかなるかもしれない。

 

 諦めたら、そこでゲームオーバー! 女の子に頼るなんて、かっこ悪いけど。

 きっと僕には僕にしか出来ない役割があるんだ……! たぶん。

 

「そうだな……なんとかなる……か。そうだな……前向きになろうか!」


 考えてみれば、あのまま群馬で閉店秒読み状態で、ダラダラとブラック環境で生活してるよりも、未知の世界で商売……なんてのだって、悪くない。


 愛着ある我が家はここにあって、愛する家族だった飼い猫は、美少女になって、イチャラブ希望なんて言ってるのだ。


 ……むしろ、ここは喜ぶべきところだろっ!

 

「にゃははーっ! ちょっと元気出てきた? ご主人様?」


「うん、そうだね……ありがとう! テンチョーが一緒に居てくれてよかったよ!」


「うにゃあっ! て、照れるにゃー!」


 そう言って、ペロペロと手の甲を舐めて、顔を洗う仕草をするテンチョー。

 なるほど、猫だなー。

 

 猫あるある。

 動揺したり、失敗するととりあえず、毛づくろいをして誤魔化す。

 

 ……そんな事を話していると、背後でパキッとガラス片が割れる音が聞こえた。

 

「だ、だれにゃっ!」


 すばやくテンチョーが立ち上がると、四つん這いの姿勢で僕の背後に回り込む。

 

 僕も慌てて、振り返ると……テンチョーの尻尾がパンパンに膨れ上がってて、スカートもめくれ上がって、とってもあられもない感じになってるのが目に飛び込んでくる。

 

 ……とりあえず、そっと目をそらしとく。

 

「……な、なんやっ! 誰かおったんかっ!」


 ……暗闇の向こうから何故か、関西弁が聞こえた。

 

「うにゃーっ! 何だお前っ! ここは、ご主人様のコンビニなんだにゃっ! 勝手に入ってくるにゃっ! フシャーッ!」


 とりあえず、入り口付近にいる関西弁の主を懐中電灯で照らしてみる。

 眩しそうに手で顔を覆う……砂色のベストみたいなのを着た犬耳娘がそこにいた。

 

「わっ! 眩しっ! ちょっ! それ止めてや……う、うちは、怪しいもんやないでーっ!」


 関西弁イヌ娘? 

 とりあえず、顔を照らすのもなんだったから、懐中電灯の光を逸らす。

 

 ……うん、良く解らないけど。

 関西弁っぽかったけど、言葉が解った……どゆこと?

 

「す、すまない……これでいいかな?」

 

「いやいや……脅かしてもうたみたいで、悪かったなぁ。ホンマ、堪忍やで! うちも人がおるなんて、思っとらんかったんや! 勝手に入った事は素直に詫びるわ……」

 

 そう言って、犬耳娘は両手を上げて、笑顔を見せる。

 敵対する意志も、害意もない……と言うことなのかもしれない。

 

 背中に、やたら横幅のあるデカいリュックみたいなの背負ってて……なんだっけ、これ?

 昔、カニ族とか呼ばれてた大学生や山登りする連中が使ってたキスリングってリュックに似てるな。

 

 ……親父が持ってたから、知ってるんだがね。

 ちなみに、今時、売ってない……こんなの。


 手とか足はモフモフとした毛皮の手袋とブーツみたいなのを着けてるように見える。

 

 服装は、緑基調の膝丈のズボン、ゆったりブカブカでアラビアンナイトな感じて、裾が緩くキュッと細くなったいかにも涼しげなデザイン。


 そして、砂色の半袖のベストっぽい上着には、やたらいっぱいポケットがついてて、探検隊とか兵隊さんを彷彿させる。

 

 でも、腰にはなにやら、刺々しい棍棒みたいなのをぶら下げてる。

 世紀末のチンピラ雑魚とかが持ってそうな感じだけど……メイスとかモーニングスターって奴だ。

 あれで殴られたら、痛いじゃ済まないな……。

 

 そして、頭の上にはテンチョーとは違って、イヌっぽい耳と黄色い髪の毛。

 髪型は、三つ編みお下げを二つにしてて、顔もそばかす顔ながら、むしろ可愛い部類に入る。

 目の色はオレンジ色……うーん、あんまり見ない色だよなぁ。

  

 そして、お尻からみょーんと伸びた太い尻尾!

 やたらとモフモフした感じのでっかいのが付いてる。

 

 犬娘……一言でいえばそんな感じ。 

 テンチョーや外にいるチビ猫耳とは、明らかに毛色が違う。


 そもそも装備からして、一般人って感じでもない。

 あ、解った……冒険者とか、そんななのかもしれない。

 

 だとすれば、武装してるのも納得出来る……多分、その気になれば戦う事だって普通に出来るだろう。


 とにかく、慎重に対応すべきだ……ここは。

 

「……な、なぁ……君は僕の言葉が解るのかい?」


「一応、解るでっ! うちは人族共用語を喋れるからな……! ちょーっと西方訛りが入っとるって、よぉ言われるけど、そう言う事なら、うちの言葉も通じとるって思ってええかな?」


 なんとも嬉しそう……まぁ、訳の解らん相手でも、コミュニケーション取れると解れば、警戒心も取れるわな。


 その辺は、お互い様ってとこだ。


「うにゃっ! お前は何しに来たんだにゃっ! もしかして、お客さんなのかにゃっ!」


「お、お客さん? う、うちは買い物に来たんやないでー」


「なら、ドロボー? そう言う事なら、テンチョーが相手になるにゃーっ!」


 うん? テンチョー、会話しようよ。 

 と言うか、仮にも異世界ファーストコンタクト。


 この非常に大事な場面で、テンチョーに交渉役を任せるのは駄目な気がしてきた。

 

 テンチョーは、黒猫の例に漏れず、基本的に温厚で至って大人しい猫なんだけど……。


 ……こう見えて、外では意外と好戦的だったのだ。


 どうも、コンビニ周辺一帯を自分の縄張りとしてたらしく、他の野良猫が侵入しているのを見つけると、いつも果敢に立ち向かっていたものだ。

 

 いつの間にか跡もなくなったけど、他所の猫と真っ向からバトった挙げ句、デコに向こう傷作って帰ってきて、割と長い間デコにハゲがあったってのはご愛嬌。


 とにかく、割と勇猛果敢なのだ……猫娘化しても、その辺は一緒っぽかった。

 

「ちょ、待ちやっ! うちはドロボーなんかとちゃうでっ! お前らとやりあうつもりなんて、全くないんやでーっ!」


「じゃあ、なんにゃんだ! やる気なら、このテンチョーが相手になってやるにゃっ! シャーッ!」


 ああ、駄目だこれ。

 やる気満々……戦闘モード。

 

 と言うか、犬娘さんもやりあうつもりないって言ってんだから、ここは矛を収めてもらわないと。

 

「テンチョー、ちょっと待って! ここは僕が話すから、ひとまず大人しくしててっ!」


「ご、ご主人様がそう言うなら……うにゃあ……」


 四つ足での臨戦態勢だったテンチョーも、僕の言うことはちゃんと聞いてくれるつもりのようで、大人しく引き下がってくれた。

 

 少し強めに言ったせいか、怒られたと思ったらしく、しっぽも垂れ下がっていて、しょげかえっている。

 

 ……でもまぁ、いきなり喧嘩腰とか、ないわな。

 

 とにかく、僕も立ち上がると、テンチョーの隣に並び立つ。

 まぁ、見下されて交渉ってのもなんだしね。


「とりあえず、君は僕達に害意は無いし、商品を盗んだりするつもりもないって事でいいんだろ?」


「当然やでっ! うちは商人なんやっ! まっとうな商売人は、人のモノを盗ったり、力づくで奪ったりはせんもんや! 欲しいもんがあれば、きっちり代価を支払うっ! そんなもん商売人の常識やろ」


 なるほど、彼女はこの世界の商売人って事か。

 言ってることも至ってまっとう。

 

 なら、話が早い……となると、こっちの世界の通貨なんかも持ってるって事だろう。

 何をするにせよ、通貨があるなら、まずはそれを入手したいところ……。


 異世界で通貨経済が発達している事は、別に不思議にも思わない。

 

 お金の概念って奴は、文明社会の基本と言っても良い。

 世界史を見ても、バラバラのところで発展し、まったく接点のなかった文明であっても、どこでも通貨と言うものが、自然に生まれている。

 

 例えば、アメリカ大陸のアステカ、マヤ、インカ文明と言った先史文明群。

 

 ユーラシア大陸とは、太平洋と大西洋で隔たれていて、ほとんど接点が無かったにも関わらず、かの文明群では、カカオ豆やボタン状の金塊や、銅製の斧と言ったものが、通貨として使われる事で、独自の貨幣経済が発展していた。

 

 物々交換が成り立つのは、文明の初期段階程度。

 ある程度の人口がひとつところに集中し、文明が興きると、どんな形であれ、共通の価値あるものを通貨とする、通貨経済ってもんが自然と発生する。

 

 ……これは、もうそう言うものなのだとしか言えない。


 異世界人だろうが、宇宙人だろうが、ある程度の文明を持つなら、通貨経済による社会が成り立つのは、当然の流れなのだ。


 もちろん、ものすごく進んだ文明なら、通貨の概念を超える社会共通の価値と言った未知の概念が、誕生しているかもしれないけど。

 そこに至っていない側からすれば、想像も出来ないし、きっと理解も出来ないだろう……。 


 大学通ってた頃、経済学の教授が大真面目に異世界や外宇宙の異文明における通貨経済について、とか言ってそんな話をしていたのだけど、たぶん、それは真理だと思う。


 テンチョーの言う白いヤツがどう言う意図で、僕達をこの世界に導いたのか解らないけど。

 僕達はなにをするにせよ、まずはこの世界に生活基盤を築く必要がある。

 

 その為には、どんな形であれこの世界の経済に食い込むこと。

 それが必須条件と言えた。

 

 良く、身体一つでファンタジー世界での大冒険とか言ってるけどさ。

 普通に考えて、都合よく倒したモンスターがお金落としたりなんかしないからな。


 百歩譲って、宝石とか貴金属、貴重な素材を落としたとしても、それだけじゃどうしょうもない。

 それを売ってお金にしないと何もできない。


 世界を救うにも、まずはお金! 生きるのにはお金がいる!

 生きていけなきゃ、凄いチートがあってもどうにもならないのだっ!

 

 まずは、お金を儲けて、生活基盤を確立すること……それが異世界に行ったら、真っ先にやるべきことなのだ。


 ダンジョンの冒険とか、モンスターと戦うとか、そんなもんは後回しで良い。

 

 最初に出会えたこの世界の住民が、同業者と言える商人だったのは、間違いなく僥倖だった。

 

 僕はモンスターと戦ったりなんて出来なさそうだし、魔法とかも使えないけど。

 お金の扱い……経済に関しては専門家を自負している。


 お金ってのは、どんな世界でも一つの力の象徴といえる。

 お金がないと生きていけないし、軍隊や国を維持していくためには、お金がいるのだ。

 

 その扱いに長けた僕は……ここがどんな世界だって、きっと十分に役に立てる! そこは自信を持つべきだっ!

イヌ子ちゃん登場!(笑)


巨乳、関西弁、犬耳の三点セットなんやでー。

裏設定ですが、ちびいぬ子(妹)もいます。

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