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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第二章「猫とコンビニが世界を救う……のか?」

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第二十二話「チートVSチート」②

「まったく、最初の我のプランで行っておったら、危うくケントゥリ殿を死地に追いやるところであったな。この伏兵が本命だったと言う訳か……数も明らかに、向こうの方が多い。しかしまぁ……2000とはまた豪勢じゃな。まったく、いちいち小賢しい真似をしてくれる」


「と言うか、なんでまたこんな少人数にこんな大群を……限度ってもんをしらないのかね」


「そうじゃな……ここまで念入りにやる理由は……おそらく、ここが前線偵察基地か何かだと思われたのだろうな。増援を呼ばれないように遠話妨害した上で、一兵たりとも逃さず完全に殲滅するつもりなんじゃろ。奴らとて、これが公になったらマズいと言う事は解っておるのだろう……死人に口なし。出会うもの全て皆殺し……シンプルじゃが、確実といえば確実な方法ではあるな」


 アージュさんが、苦笑しながら話す。

 確かに、最初のアージュさんのプランだったら、今頃、僕らは待ち構えていた敵に突っ込んでいって、軽く全滅していただろう。


「そういや、パーラムさんも帝国とは協定があるって言ってたしなぁ……。さすがに、ここまで無茶やっちゃったら、大問題……だから、目撃者は全て消すって事か」


「そう言うことじゃろうな。しかしながら、ここまで大掛かりとなると、帝国も例の大帝がまたぞろ馬鹿げた指示でも出したのかも知れん。案外、本格的な侵攻と言う可能性も考えられる。そうなると此奴等は尖兵、帝国軍の本隊が続々と森に入りつつあるのかもしれんな……」


「確かに、言われてみれば、キーツさんもオルメキア側から誰も来ないとかそんな話をしてたっけ……。オルメキアからもじゃんじゃん人を送ってるって話だったのに、向こうからはポツポツとしか来なくなったのも……こいつらがいつの間にか森に入り込んでたからって事なのか。こんな数が相手じゃ、商人ギルドの巡察隊もとっくに全滅してるって事か……。まったく、僕らもすっかり油断してたな……もっと警戒すべきだった。いや、どんなに警戒していたとしても、こんな数相手じゃどうにもならかったか……。と言うか、これってもう本格的な戦争なんじゃないの? だとすれば、当然色々前兆だってあったんじゃないかな? ロメオ王国だって、諜報部隊くらいいるだろうに、何やってたんだよ……」


 流石に愚痴の一つも言いたくなる……数千匹もの怪物がいつの間にか、森に入り込んでいて、行商人や輸送隊を襲ってまわってたなんて……。

 

 オルメキア王国だって、さすがに何かがおかしいって解るだろうし、帝国の基地だって、諜報員とかが監視してるんだろうから、攻め込んでくる兆候くらいあっただろうに……。


「仕方あるまい……。少なくとも我が出立した時点でも、帝国軍は未だに拠点へ集結途上で、当面猶予はあると見ておったのじゃ。なんせ、商人ギルドが派手に帝国から資本や物資を引き上げたせいで、兵隊の給料や日々の食いもんにも困るなど、お粗末なことになっておったからな。おまけに商人ギルドの手のものが、帝国軍の越境だの反乱だの、ウソ情報で随分かき回してくれよったからな。その影響もあったのじゃろう……」


 ……それを言われると、僕としても何も言えない。

 

 パーラムさん達は、自分たちの都合でウルスラ達の出立を遅らせるために、情報戦を仕掛けてたみたいなんだけど。

 折り悪く、オオカミ少年になってしまったと言うことか……。

 

「……僕らにも原因がある……そう言うことか。これはある意味、自業自得って訳か。世話ないな」

 

「いや、そうとは言い切れんな。そもそも、こやつらは食いもんなんぞ要らんし、浸透奇襲はお手の物じゃ。諜報員や我らの目を通常部隊に引き付けた上で、オルメキアと我が国を結ぶ、流通ラインに擬獣共を送り込んで、完膚無きまで叩き潰し、オルメキアを干上がらせる……そう言う筋書きなのじゃろう。……フランネルの奴が考えそうなことじゃが、こちらもそこまで読み切れんかった。これは、まんまとしてやられたと言ったところかのう」


「要するに、奇襲攻撃専門の破壊工作兵器ってところか。確かにここまで隠密性が高いと後方に潜り込まれると手に負えない。おまけに無補給で動けるとなると、完全にチートってヤツだな……」


「そうだな……だが、これは素晴らしいぞ? 夜戦で擬獣の布陣や居場所がこのように手に取るように解るのであれば、帝国の擬獣共もさしたる脅威ではなくなるぞ! 奴らの脅威はその擬態能力と隠密性にあるのじゃからな……これでは、丸裸にしたも同然ではないか」


「そうだね……僕ら獣人の索敵能力が役に立たないなんて、それだけで十分以上の脅威。いや、すでにだったと過去形で言うべきか。……まったく、鹿島さん達にはしばらく頭が上がらないな。でも、今、ここを包囲してる奴らが、妙に及び腰なのは、アージュさんがいるからなのと、罠にかけたいからなんだろうね。アージュさん、この索敵システムの情報支援があって、時間稼ぎを前提に戦うなら、どの程度やれるかな? さっきとだいぶ条件が変わってくると思うんだけど」


「ふむ、今の位置だと難しいが、もう少し寄ってくれば、我ら以外、まとめて全て凍らせる事も出来るぞ。奴らは氷点下を切ると体液が凍りついて動けなくなってしまうのじゃ。我はあらゆるものを瞬時に凍らせるのを一番の得手としておるからの……元々奴らと相性は悪くない……。むしろ、天敵みたいものなのじゃ。我を相手に取り囲んで、一斉に突っ込むなぞ、自殺行為……奴らもそこら辺は良く解っておるのじゃろう」


「なるほど、だから相手の配置が解れば……って言ってたのか」


「そう言うことじゃ。奴らの規模や配置が判らん中で、闇雲に盲撃ちしても効果は期待できんと思っていたが、こうやって配置や兵力が解るのであれば、一網打尽にすることも不可能ではないな。まぁ、さすがに我も本調子ではないので、そこまでは出来んだろうが、さっきもらった魔力回復薬があれば、最低でもこの包囲陣を敷いている奴らの半数くらいならば、今の我でも完全に無力化出来るであろうな」


 アージュさん、めちゃくちゃ頼もしいな!

 それにしても、つくづく戦いにおいて、情報ってのがどれだけ重要かよく解る。

 

 鹿島さん達も情報支援しか出来ないなんて言ってたけど、この強力なハイテク偵察システムと、アージュさんと言う超強力なSSRカードの組み合わせ。

 

 これは、鬼に金棒なんてもんじゃない!

 

「そうなると……方針としては、とにかくこの場で時間を稼ぐ! この包囲網については、引き付けてアージュさんにまとめて、凍らせてもらうということでいいね? そうなるとどうやって引きつけるかだけど、ここは遠距離攻撃でちょっかい出して、向こうからこっちに近づかせるべきだと思う。ドランさん、例えば投石機とかすぐに作れたりしない? すぐ壊れたって構わないし、とにかく敵のいるところまでものを飛ばせればいいから、命中精度とかも適当でいい、この条件でどう?」


「安普請で構わんのなら、木材も大量にあるし、10分もあれば組み上げてやるぞ。まぁ、2、3回も使えばぶっ壊れると思うし、見た目なんかもヒデェ物になると思うがな」


 ドランさんが自信たっぷりに断言する。

 向こうは散発的に斥候を放ちながら、300mくらいの位置で、遠巻きにしてるみたいだけど、本音を言えば、早く逃げろとか思ってんだろうな。

 

 二段構えの念の入った作戦……こんな非戦闘員が大半の少勢相手に御大層な話だけど、アージュさんと言うジョーカーの存在で、敵も無造作に取り囲んで、蹂躙すると言う訳にいかなくなったのだろう。


 敵の目的は、目撃者を確実に消す……なんだろうけど、ロメオ王国の重鎮、アージュさんなんてのと出食わしてしまったのは、大誤算。


 アージュさんに対抗するとすれば、同等レベルの高位魔術師をぶつける。

 もしくは、不意打ちか、損害に構わない波状攻撃による消耗戦を挑むくらいしか方法も無いだろう。

 

 アージュさんくらいの有名人となると、本人も言うように、敵にもその化物じみた戦闘力は知られているだろうから、この妙に遠巻きなのもその攻撃範囲に入らないようにしてるって訳だ。

 

 アージュさんもこの世界の人間だから、遠距離戦と言っても100mくらいが良いところだろう……。

 ワイバーン戦の時も感じたのだけど、この世界の戦いってのは、どんなに遠くてもそれくらいがせいぜいと考えられてるみたいなんだよなぁ……。

 

 要するに、直接目で見て狙える程度の距離。

 200mとか300m……それ位離れると、矢も魔法も着弾までの時間もかかるし、肉眼上ではほとんど点になる。

 相手が動いてるとまず当てられないし、狙い撃っても、風やちょっとした動揺で、狙った所になんてまず飛んでいかない。

  

 アージュさんは、ブンちゃんのモニターを見ながら、狙った所に当てる……なんて、器用な真似をしていたけど、そんな真似をサラッとこなすなんて、多分アージュさんくらいだと思う。

 この人、チート過ぎるよ……敵に回さなくて本当に良かった。


 もっともアージュさんがいるとは言え、こちらの数は圧倒的に少ない上に戦闘要員は数えるほど……この程度の情報はすでに相手にもバレているはず。

 

 普通、こんな戦力比では、アージュさんもそうだったように、逃げる算段をするだろうから、この場は下手に力押しをするのではなく、プレッシャーを与えれば十分……そう考えているはずだった。


 案外、敵もアージュさんに対抗できるくらいの戦力を、急遽呼び寄せる算段をつけてるのかも知れないけど……そんな都合の良い予備戦力がいるとも思えない。

 

 いずれにせよ、敵も対応に苦慮してるのは間違いなかった。

 

 こいつらが獲物を見るとがむしゃらに襲いかかるような単純な敵だったら、今頃、数の暴力で押しつぶされて、終わってただろうけど、こいつらは敵の戦力を冷静に分析し、極力損害を少なくし、効率良く勝つ事を考えている。

 

 要するに、頭がいい相手なのだ……頭がいい相手なら、そこには読み合いというものが成立する。

 

 頭脳戦なら、僕だって負けてない……海千山千の商売人達に揉まれて、人生の大半を商売の世界で過ごしてきたんだ。

 商売ってのは、情報収集と先読み、そして予めどれだけ準備したかが物を言う世界だ。

 

 商機とかよく言うけど、売れそうな時に売れるものを潤沢に準備する……。

 読み間違えたら不良在庫を抱えたり、大借金作ったりと大損だけど、きっちりハマると大商いでウハウハだ。

 

 行き当たりばったりだったり、漫然と同じことをやってちゃ、絶対に生き残れない……それが商売ってもんだけど、多分戦争だって、そう大差ない。

 

 いや、戦争行為だって、突き詰めれば経済行為の一環と言える……。

 

 そう考えると、僕は……意外と戦争の指揮官ってのに向いてるのかもしれない。

 それに、この状況でアージュさんと言う超強力な味方を得ていると言うのは、どう考えても僥倖だった。

 

 確かに、彼女は豪運の持ち主かもしれないけど、それと偶然出くわして、命を救って、味方につける事が出来た事。

 更に、このタイミングで、日本国という、強力な味方の助力を得られていること……。

 

 鹿島さん達の入念な仕込みってのもあるだろうけど、これはどう考えてもツイてる。

 ……目に見えない流れって奴に乗れてる証左だ! この場に僕がいるのも逆に考えれば、僥倖と言える。

 

 もし、ミミモモ達だけで行かせていたら、アージュさんと出会うこともなかっただろうし、ミミモモもサントスさんも為す術なく、スライム共に食われていただろう。

 

 それを考えると、今、僕がここにいたからこそ、今の状況が成立しているのだ。

 

 ……根拠なんて無いけれど、自分に幸運の女神って奴が味方してる……そう思うと、何とかなるんじゃないかって気がしてくる!

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