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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第二章「猫とコンビニが世界を救う……のか?」

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第二十二話「チートVSチート」①

「で……どうなんじゃ? 連絡は取れたのか? 増援は来るのか?」


 それまで、僕の様子を訝しげに眺めていたアージュさんが、不機嫌そうな様子で聞いてきた。


「それが、どうも日本側には、ブンちゃん……あの車がすでに状況を伝えてたみたいでさ。増援も期待できそうだし、こいつら日本に現れたことでもあるみたいで、向こうじゃ対抗手段を確立してるみたいなんだ。なんか、擬態能力も簡単に見破れるそうだよ」


「はぁ? なんじゃそれは……すまんが、何言っておるのか、さっぱりじゃぞ!」


「オーナーさん! ブンちゃんから、モニター見てって!」


「すでにドローンも出してくれてたんだ! ブンちゃん、いい仕事してるなぁ……! アージュさんも空撮映像を一緒に見てもらえないかな? 多分、見てもらったほうが、話は早いと思う」


 ブンちゃんのモニターには、赤、緑、青のまだら模様と、どの色が何度なのかを示すバーが表示されている……。

 これ自体はすでに上空に定位してるドローンの空撮映像なんだけど……見方はテレビなんかで見たことあるから、何となく解る。


「こ、これはどう見るんじゃ……ええい、さすがの我もこんなもの見るのは初めてじゃ! 訳が判らんぞっ!」


「まぁまぁ……まず、この真ん中に集まってる赤いのが僕たちだ……外気温より温度が高いって意味だ。これは解るよね?」


 言いながら、上空に向かって手を振ると、画面上の赤いシルエットが手を振る仕草を見せる。

 まぁ、これ見れば一目瞭然だよな……アージュさんも、理解してくれたようで、ふんふんと頷いている。


「この緑色は25度前後……つまり気温と同じくらい……多分、木や地面の草だね。この青や黒いのが外気より温度が低い部分……この斜めに走ってる黒いのは川だと思うんだけど、こっちの青いのがそのスライムじゃないかな? 確かに動いてるし、めちゃくちゃ数が多い……やっぱり、回りをぐるりと囲んでるような配置になってるみたいだけど、さすがに数までは良く解らないな……」


 言ってる矢先から、動いてる青い部分に白い縁取りが描き込まれていく。

 地面なのか判然としない部分にも縁取りが描かれる……空撮映像をリアルタイムで解析して、解りやすいようにマーカーを付けてくれてるのか……。


 凄いな! こうなると、もうひと目で解るじゃないか!

 

 さらに、数までカウントしてくれたようで、それぞれの群れの脇に構成個体数が表示されていく。

 大きく分けて、三個体群がいてそれぞれ200匹づつ、カタカナの「コ」の字のように取り囲んでいる。

 

 さらにコンビニ側の街道を塞ぐように50匹位の個体群がいるようだった。

 こちらは何故か数も少なく、見るからに手薄で配置もまばら……逃げるとなると、ここが一番狙い目。

 

 けど、普通に考えて、包囲して蹂躙するつもりなら、周りの厚みを揃えて、水をも漏らさぬ鉄壁の包囲網を敷くと思うんだけど……こんな一番逃げやすそうな所をわざわざ手薄にする意味はなんだろう?


 けれども、敵の総数は約650……これでは、まともに戦っても勝ち目なんて無いってのは、僕でも解る。


「なんと! これでは敵の布陣も居場所も一目瞭然ではないか! おい! この青いのはかなり近くにいるようじゃが、一体、どこらへんなのじゃ?」


 一個だけ、柵の手前くらいまで近づかれているのが解る……。

 地面の緑色と青の隙間にぽっかりと青と黒の小さな点……でも、さっそく縁取りでマーキングされて、モロバレだった。

 

「これはさっきの斥候タイプかな? いた! あそこだ! アージュさん!」


 当たりをつけたところを見ると、地面をうねうねと動く不自然な草の塊みたいなのが目に入ってくる。

 ご丁寧に草みたいな模様をまとって、隠れてるつもりみたいだけど、そこにいると思って見れば居場所もよく解る。


 とは言え……漫然と見ていると、これは絶対に解らない……特に、僕ら獣人は普段、音や気配での索敵に頼っている分、これは見逃してしまうのも無理もない。

 

 どうも粘液を分泌しながら進んでいるようで、その通り道は水でも撒いたようにキラキラと光ってるのが解る。

 けれども、それも厳粛性に一役買っているようで、今も動いているのに草や砂利を踏む音すらしない……。

 

「……なるほど、そこか……心得た!」


 アージュさんがさっきの瞬間冷却ショットで一撃で、その斥候スライムを始末する。

 急激に辺りの温度が下がったらしく、モニター上でもその周囲の空間が真っ黒に削り取ったようになる。

 

 それを見て、アージュさんも何発か周囲に無造作に氷結弾を放つと、着弾点が黒く塗りつぶされていく。

 

「なるほどな! 今のでこの俯瞰映像と実際の距離感覚を把握したぞ! こりゃ実にいいのう……。しかし、この様子では奴らも遠巻きで包囲するに留めとるようじゃな。おそらく、過去の我との交戦事例から、我の攻撃範囲も完全に把握しとるんじゃろ……下手に名が知れとるとこういう時に困るが……我の存在自体が足止めにもなっておると言うことか。しかし、こうして見ると、コンビニ方面の街道沿いが明らかに手薄のようじゃが……このあからさまな配置は如何にも臭うのう。この映像、視点を移動させることは可能なのか?」


 すげぇな……今のだけで、俯瞰視点と自分の距離感覚を同期させたってのか……。

 こんなハイテクをすんなり受け入れて、その有用性を瞬時に理解した思考の柔軟性と言い、アージュさん、伊達に天才魔術師とか言われてないな。

 

 けど、この如何にもな布陣、やっぱりアージュさんも不審に思ったらしい……これはなにかあるな。


「出来るよ。モモちゃん、ドローンを街道沿いに、コンビニ方面へ動かしてもらえないかい?」


「解りました!」


 モモちゃんが返事すると、ドローンが上空に移動したらしく、大きく視界が広がっていき、ゆっくりと移動していく。


 普段この車載小型ドローンは、居場所がわかるように、赤いLEDを何個もチカチカさせてるから、夜闇でも目立つし、プロペラの音も盛大に立ててるのだけど、今はLEDも消していて、音も殆ど聞こえない……まさか、夜間ステルス機能付きだったのか!

 

 あれじゃ、夜だと地上からなんて絶対、解らんぞ……僕の猫耳ですら、場所が特定できないってどんだけなんだよっ!

 

 ……ドローンをしばらく飛ばすと、案の定と言った感じで、1kmほど行ったところで、街道を塞ぐ感じで青い塊がごっちゃりと。

 

 更に街道を両脇から挟むように、少し離れたところにも青い塊が山盛り……緑が少なく見えるくらいだから、めちゃくちゃ集まっているようだった。

 

 なんか、推定総個体数2000とか表示されてる……尋常じゃない数だな。

 

「これは……まさかの二重包囲陣ってヤツか……包囲を敷いて、わざと逃げやすい道を作って、敢えて逃がして、振り切ったと思った所で、本命の伏兵で奇襲をかけて、完封するって訳だ。こいつら、随分と頭回るんだな……いや、人間の指揮官の指示なんだろうけど、かなり戦慣れしてるっぽいね。と言うか……こんな人数しか居ないのに、ここまでする意味が解らないな。これ、何が何でも皆殺し、絶対に逃さないって意図が透けて見えるよ……」


 確か、第二次世界大戦の独ソ戦でソ連軍がこんな作戦を何度も実施しているし、戦車に乗った女子高生達がトーナメント形式で戦うアニメで、ソ連っぽい子達が同じような作戦やってたんで、意外と有名だったりする……。

 

 もっとも、この戦術自体は、割と昔からあって、完全に包囲したように見せかけて、わざと隙間を作って、敵を伏兵に誘導する……かのナポレオン・ボナパルトの十八番。

 

 包囲殲滅ってやつは、意外と敵も頑強に抵抗して、包囲した側も馬鹿にならない損害を受けることも珍しくないから、わざと逃して、追撃戦に持ち込み大損害を与えて、待ち構えていた伏兵でトドメを刺す。

 ……ナポレオンも、この戦術で自分達の倍以上もの兵力差を覆して、勝利していたりする。

 

 この二重包囲の利点は、包囲された側が解囲突破した場合の対応もだけど、救援に駆けつけた援軍を、包囲側と連携することで包囲殲滅することも可能となる……非常に柔軟性の高い陣形なのだ。

 

 実際、敵は僕らの援軍が来るであろうコンビニ側に大軍を集結させている。

 僕らをすぐに殲滅にかからないのも、アージュさんの存在もあるだろうけど、こちらの援軍との戦いを視野においている可能性もある。

 実際、ざっと見ただけでもかなり広範囲に渡って、小さめのスライムが点在しているようで、警戒網を敷いているのが解る。


 それにしても、こんなファンタジー世界の軍勢が、こんな現代戦レベルのきめ細かい作戦を実施するとか、こいつらも大概おかしいよな……指揮統制とか、どうやってんだか。


 帝国ってのも色々おかしい……この世界でも最強の軍事力を誇るって話も頷けるな……。

勇者おっさんで、ファンタジー世界の子達がドローンに追い回されるって話やってましたけど、

ちょうど、その逆ですね。


民生用のラジコン程度でも、サーモビジョン一つで軽くチートになってしまうと言う……。

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