第二十一話「急転直下」④
試しにウェブブラウザを起動し、ネットに繋げてみるとWebページの表示はすごくもっさりペースながら、ちゃんと表示されていき、ネットが繋がっているのが解った!
……回線速度は、恐らく昔のISDNとかモデム並み程度。
とにかく、全然早くないみたいだけど、電子メールなら容量はどってことないから、なんとかなる。
ヘルプデスクさんでいいからとにかく、メールを送ってみよう!
タイトルは『緊急事態発生、至急助け求む!』
本文には、出先で帝国軍のスライム軍団みたいなのに包囲されている事。
こちらは十分な戦力もなく、全員無事に脱出出来る見込みがまったくない事。
コンビニに連絡して、テンチョーたちにこの事を伝えて欲しい旨記載し、送信!
……こうなると、日本の人達が頼みの綱だ。
直接的な手助けまでは、期待出来ないだろうけど、コンビニの皆に僕の状況を伝えてくれるだけでも十分だ!
「……まさか、この状況で外部と連絡がついたのか? それは一体どんな代物なんじゃ?」
「実は、この場で異世界の日本の人達に連絡が取れてね……うぉっ! 返信、めちゃはやっ!」
さすが24時間対応のヘルプデスクさん。
即座に鹿島さんに連絡してくれたようで、鹿島さんから早速、メールの返信が来ていた。
と言うか、メール送って1分くらいしか経ってないんだがなぁ……。
『件名:ご連絡ありがとうございます』
『異世界案件担当局、鹿島でございます。
お忙しい中、ご連絡いただきまして、誠にありがとうございます。
高倉オーナー様よりの支援要請、確かに承りました。
状況は自律制御局地機動車両BUN-6601からの緊急報告で、すでに把握しております。
現在、オーナーが対峙している敵性異世界生命体群につきましては、当方既知情報につき、該当生物の駆除プラン及び、対抗手段の提示の用意がございますので、ご安心ください。
現在、すでにコンビニ側とも情報共有の上で、高倉オーナー様及び、その御一行の救援プランの検討段階でございます。
こちらは進展あり次第、続報をご案内する所存です。
なお、取り急ぎ、該当生物への対処方法をご案内いたします。
該当異世界生物につきましては、極めて高い擬態能力を持ち、厳粛性も高く、肉眼や音響探知と言った従来の索敵方法が通用しない極めて、厄介な特性を持ちますが。
過去の交戦事例からサーモビジョンによる観測により、赤外放射熱分布から擬態を見抜けることが確認されております。
BUN-6601の車載ドローンと、光学周辺監視システムには、サーモビジョンモードが実装されておりますので、サーモビジョンによる上空観測にて、敵の包囲体制及び、位置情報も把握できるはずです。
なお、交戦の際の注意事項として、該当生物は物理衝撃への高い耐性を持つことが確認されており、接近戦は避ける事を推奨いたします。
攻撃手段として、触手による攻撃を行ってきますが、その殺傷範囲は10m程ありますので、対象の10m以内に近づいての戦闘は戦闘員の死傷可能性がありますので、ご注意ください。
また、その触手の先端部の強度は高く、速度も音速の半分程度と極めて早く、高い攻撃力を持っています。
概ね、1m級の小型種の場合でもライフル弾相当、5m級の大型種ともなると.50口径相当の装甲貫徹力を持ちます。
これに対する防御としては、最低でも25mmの防弾装甲が必要となります。
異世界の標準的な防具、鎧、盾といった装備程度では防御不可だとお考えください。
重ね重ねながら、接近戦は避けるよう、強くお勧めさせていただきます。
また、対象生物への有効な攻撃手段は、高熱、極低温、ガソリン、軽油など可燃性液体を散布した上での引火、高圧電流、高圧放水なども効果的でございます。
銃火器による攻撃も有効ですが、小口径拳銃弾では効果が薄く、.30口径以上の大口径ライフル銃弾、もしくは.45口径クラス以上の大型拳銃弾による攻撃が推奨されています。
他に、石灰、塩、酸、アルカリ溶液、刺激物、アルコールと言った化学物質散布も、高い効果があると認められていますので、現有装備と現地調達材料で、創意工夫の上でご対応願います。
また、当方には対抗兵器の用意もありますので、現在至急便によるコンビニ側への輸送計画を制定中です。
こちらの詳細につきましても、次回ご案内時に詳しくご説明させていただきます。
現状、情報支援のほかは何も出来ず、ひとまず、増援到着までその場で耐え忍んでいただくことをお願いする他なく、大変恐縮でございます。
以上となりますが、我ら一同心より、高倉オーナー様の御無事をお祈りいたします。』
とっても、鹿島さんらしくテンプレメール回答ちっくな連絡。
もう何処からツッコんでいいのか、解らないくらいなんだけど……。
けれども、内容自体は驚くと共に、とても心強い内容だった。
車両からの緊急報告って……要するに、ブンちゃんがすでに、日本側に状況報告の上で救援を手配してくれてたってことか!
そのうえで、僕に日本側と連絡を取る方法を、モモちゃん経由で提示してきたって訳か……って、めちゃくちゃ高度な真似をさらっとやりやがった! なんなんだコイツッ!
これは思わぬ伏兵……全然意識してなかったけど、超強力な味方が僕にはいたんだ。
でも……既知情報って……?
なんで鹿島さん達、こんな化物共のことを知ってるんだろう?
日本に侵入されて、ひと騒ぎあったような感じなんだけど……なんだそれ?
帝国って、異世界の日本にまでちょっかい出してたのか? 意味が判らんぞ……それ。
サーモビジョンを使えばいいってのは、なるほど……スライムと言えば、液状の生物だから、気化冷却効果で、周辺より少し温度が低いのだろう……確かにそれなら、サーモビジョンで見分けがつくはずだ。
アージュさんも言ってたけど、普通に空撮しただけじゃ、まず見分けられないだろうけど、サーモビジョンなら温度変化をグラフィカルに判別できるから、擬態してようが隠れてようがひと目で分かるってことだ。
それに低温、高熱に弱い……おまけに、高圧放水でも倒せるとなると、僕も十分戦えるってことだな。
攻撃力は.50口径に相当って……対物ライフル並みの威力があるのか……。
間違っても、接近戦なんて挑んじゃいけないし、挑ませてもいけない。
物理的衝撃……切ったり叩いたりには強いみたいだから、むしろ、サントスさん達接近戦専門の人達には引っ込んでて貰ったほうが良いかもしれないな……。
けど、僕も10mどころか、50m位の距離まで水を飛ばせるくらいにはなってるからな……。
こうなると、僕も戦力の一人として名乗り出るべきだろう……。
ランシア先生や皆と特訓した甲斐があったかもしれない。
絶望的な状況で、訳の解らない未知の化物と戦うことになるかと思ってたけど、日本側にとっては既知情報、すでに化けの皮が剥がされた後って訳だ……。
それに対抗兵器って……そんなものまで用意してたのか……。
しかも、それを送りつけてくる気満々みたいだった。
対抗兵器がどのくらいのレベルのものかは解らないけど、すでに交戦事例があって、色々研究していたとなると、相当レベルのものが完成していても不思議じゃない。
となると、逃げるだけじゃなくて、上手くやれば、返り討ちに出来るかもしれない!
なにせ、ここで逃げ切れたとしても、敵にとってはこれはただの前哨戦。
お次は本戦となるの確実。
コンビニ周辺でのこいつら相手の防衛戦となると……。
あそこには、非戦闘員も大勢いる……防衛拠点としては、戦い自体を全く想定してないから、こんなのに攻め込まれたら、酷いことになるだろう……それだけは、避けたいところだった。
これまで、鹿島さん達に必要以上に貸しを作ったり、言うがままになるのを避けようとして来たのだけど……こうなって来ると、もう利用できるものは、なんでも利用するしか無い。
これは……生きるための戦いなのだからッ!
スライム、戦う前から終了の予感。




