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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第二章「猫とコンビニが世界を救う……のか?」

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第二十一話「急転直下」③

 ふと思う……テンチョーでもこの場にいてくれたら、こんなの簡単だと……。

 って、そうか……テンチョーに、ここまで来てもらえばいいんじゃないか!


 ……この場に居なくたって、テンチョーなら呼べば、必ず助けに来てくれる!

 皆にとっての20kmは遠いけど、テンチョーは時速50kmくらいで、延々一時間位走りつづけることが出来る。

 

 連絡さえ取れれば、多分30分もかからず、駆け付けてくれる!

 その間、ここで粘る……それならっ!

 

「……アージュさんっ! 増援なら、呼べば来てくれると思う……早ければ30分以内にも!」


 コンビニには、ラドクリフさんやキリカさんもいるんだから、連絡さえ取れれば、状況を説明して、テンチョーを増援に出してもらえばいい。

 

 テンチョーなら、夜の森だろうが、お構い無しで、ここまでやってこれるはず!

 テンチョーさえいれば、スライムの化物が群れをなしていようが、きっとなんとかしてくれる!


「それはまことか? だが、お主らのコンビニまでは、丸一日の距離なのであろう……30分以内で駆けつけるなんぞ、さすがにありえんだろ……。そもそも、増援を呼ぶにしても、連絡手段がなかろう。ここまで周到な奇襲である以上、奴らも遠話妨害くらいはかけておるはずじゃ。包囲されるまで気付けなかった時点で、もはや手遅れなのだ……。もっとも、コレは我の落ち度でもあるがな……すまぬ。かくなる上は、我が身命を賭してでも、お主だけでも逃がすように努める所存じゃ……」


 申し訳なさそうに、頭を下げるアージュさん。

 と言うか、こんなのアージュさんのせいでも何でも無いだろ……なんで、そうなるかな。


「だから、最後まで話を聞いてくれよっ! 僕の仲間にテンチョーってのがいるんだけど、彼女ならコンビニから、ここまで30分もあれば、駆けつけてくれる。テンチョーは、アージュさんにも匹敵する規格外の魔術の使い手なんだ! 多分、彼女がいればこの程度の敵、苦もなく倒せると思う」


「なんじゃそれは? 一体何者なんじゃ? ……我に匹敵するなぞ、また随分大きく出おったが……」


「テンチョーは、雷光召喚とか言う儀式魔術を一人でやってのけて、1km上空を飛ぶワイバーンを落としたんだ。多重詠唱術式や高速圧縮詠唱……そんな真似ですら、さらっとやってのけたくらいだ。アージュさんなら、それがどれほどの物か解るんじゃないかな?」


「お主らがワイバーンを討伐したと言う話は聞いていたが……。其奴そやつは本当に人なのか? 我ですら、儀式魔術なぞ半日仕事じゃぞ? だが、確かにそれほどの使い手が増援に駆けつけてくれれば、この場はなんとでもなりそうじゃな……。しかし、問題は連絡手段じゃ……遠話は確かに便利なのじゃが、妨害や盗み聞きもしようと思えば容易に出来てしまう。戦場では、遠話は使い物にならんから、始めから当てにしないと言うのが、むしろ常識なのじゃよ。であるからこそ、増援を呼ぶならば、別の方法を考えんといかん」


「そうか、遠話にはそんな欠点があるのか……。すごく便利だったから、すっかり頼り切ってたけど、戦争だとこれを真っ先に無力化する……それがセオリーってわけか」


「そう言うことじゃな。いずれにせよ、何らかの方法でこちらの危機を伝えねば、その者も動きようがないであろう。良いか? 楽観論で方針を決めると言うのは、指導者としてはもっとも避けるべきことじゃ。常に最悪を想定して、方針を練るべきじゃ……もっとも、この状況は最悪を軽く通り越しておるがな……」


 もっともな話だった。

 こちらの状況を伝えない限り、向こうはこっちで何が起こってるか解らない。

 何かが起きたと言うのは、向こうも解っているかも知れないけれど、最善の判断を下すとは限らない。

 テンチョーだって、僕の危機を知って暴走する可能性もある。

 不慣れな道で単独先行……遭難や迷子になる可能性だってある。


 とにかく、向こうと連絡をとって、こちらの状況を正確に伝えて、双方出来ることを相談する。

 それさえ叶えば、まだやりようがある気がする。

 

 とにかく、連絡方法の確保が最優先だ!

 遠話妨害をしている奴らを見つけて……と言うのも、厳しいのか。

 

 恐らく、敵の指揮官と行動を共にしている可能性が高いと思うのだけど……。


 多分、もっと後ろの方で、厳重な護衛に囲まれてとか、そんな調子だろう。

 何より、夜の闇の中、敵の指揮官や支援部隊を捕捉するなんて、不可能に近い。


 ……そうなると、遠話妨害の大本を叩くというのは、現実的ではないな。

 スマホで連絡……これも、無理か。

 

 さすがに圏外なのは知ってる……確認した限りだと、店からせいぜい500mも離れると圏外になってしまっていた。

 元々、コンビニの屋上にあるのは、補助用のアンテナだから、そこまで高出力じゃないんだよな。

 

 ……夜間、20kmの距離を超えて、こちらの危機を伝える手段……。

 伝令も……そんなの死にに行かせるようなモノだろうから、却下……何より、間に合うわけがない。


 ……ペアになってる水晶同士で遠隔地へ声を伝える遠話水晶。

 携帯なんかより、断然便利なので僕も気軽に使ってたけど、それが無力化されただけであっさり孤立し、危機的状況に陥ってしまった。

 

 せめて、のろしとか、打ち上げ花火、無線機……複数の非常時緊急連絡手段を決めておけばよかった。

 鹿島さん達から、軍用のヘッドセット無線機とかも送られて来てたけど、軍用と言う単語に忌避感があって使わないで、倉庫に突っ込んでしまった。

 

 せめて、アレがあれば……。

 つくづく、現実認識と想定が甘かったと……今更ながら痛感する。


「……せめて、敵の居場所と布陣が解れば、なんとでもなるのじゃがな……。奴らの擬態能力の前では、空を飛ぼうが判別などとても出来ん……。奴らも我らとの戦を通して、色々進化しておるのでのう……。擬態能力も以前よりも巧みに強化されておるようで、我では奴らの居所が掴めんのじゃ……。だが、増援を呼ぶという発想は悪くない……どのみち、今の戦力ではどうにもならんからな。しかし、連絡方法となると我も思いつかんぞ……。何か、事前に危機を伝える合図など、決めておらんかったのか?」


「こんな事になるなんて、想像もしてなかったからね。緊急連絡方法とかは決めてなかったよ。……サントスさん、遠話はどうなんだい? まずは試してみない事には、何とも言えないと思うんだけど」

 

「すまんが……遠話水晶もまるで、役に立ちそうもない……。随分前から、向こうに呼びかけてはいるんだが、静まり返ったままでな。今日は、やたら雑音が混じったり、声が途切れたりで、どうも調子が悪いとは思ってたんだが……考えてみれば、あれが遠話妨害の前兆でもあったんだ。……俺もオーナーに報告くらいすべきだったよ。多分、ここら一帯に強力な干渉波が施されているんだろうな。ただ一応、定時連絡位はすると言う事になってるから、連絡が途絶えた時点で、向こうも異変に気付いてくれるとは思うし、案外今の派手な魔法で向こうも何かあったって気付いたかも知れんがな」


 僕も昨日、コンビニでサントスさんと遠話をした時、気にはなってたんだよなぁ……。

 ノイズなんて、混ざりようがないのにブツブツと声が途切れたり、反響したような声になったり……。

 皆の話だと、割と消耗品でよく壊れるって話だったんで、気にしてなかったけど。


 けど、もう一つの話……定時連絡のことを忘れていた! ラドクリフさん達って、各野営地に小隊規模の警備隊を派遣してるんだけど……三時間置きに警備隊本部へ定時報告するって決まりになってるんだ。

 大抵一言、二言で終わるんだけど、連絡が途絶した場合は、何かあったと判断する……確か、そんな感じだった。


 定時報告自体は、夜間は18時から三時間ごと……今は、日付が変わって一時間ほどだから、0時の定時連絡の時間をとっくに過ぎている……それが途絶えたとなると、向こうはすでに動き出しているだろう。


「なら、増援の当ては十分あるじゃないか! 今、無理に逃げるより、ここに陣取って、粘って時間を稼ぐべきじゃない? ここは下手に動くべきじゃないと思う」


「いや、待て待て……向こうが今の時点で、こっちの異変に気づいて、増援を手配してくれたとしても、出立なんて、どんなに急いでも朝になるだろうよ……到着なんて、それこそ早くても昼になっちまうぞ。いっそ、こうなったら、盛大に森に火でも放ってみるか? もっとも、ここらは割と乾燥してるからなぁ……燃え広がって手がつけられんことになるかもしれんから、あまりお薦めは出来んがな」


 定時連絡の途絶に気づいて、ラドクリフさん達がすぐに動いてくれたとして、救援に駆けつけてくれるのが、明日の昼近く……その話は一応、納得できる。

 

 まずは、増援部隊を編成……夜間、何が起きているか解らないとなると、まずミャウ族の警戒隊を先行させて、ウォルフ族の本隊は時速5kmくらいでの進軍。

 他の野営地へのゴブリンなどの襲撃時は、このような体制で援軍を派遣する……そんな説明を受けていた。


 その速度だと、ノンストップの強行軍でも軽く4-5時間はかかる……ラドクリフさんが最悪の状況を予想して、即決で部隊を動かしてくれたとしても、夜が明けるのは確実だろう。

 

 考えてみれば、頼みのテンチョーも、ほとんど毎日店で仕事して、休みの時は部屋でゴロゴロしてるから、はっきり言って土地勘ってもんが皆無だ。

 

 当然、ここらには来たこともないし、そもそもコンビニ周辺から出た事自体、ほとんどない。


 元々、猫だった頃もコンビニの敷地から出ようとしなかったし、猫って奴は、室内飼いで家の中に閉じ込めていても、それなりに適応するような動物なんだ。

 その辺のインドア気質は、割とそのまんまだった。

 

 夜、知らない道を駆けぬけるとなると、一人だと道に迷って、見当違いの方へ行ってしまう可能性が高い。

 そうなると道案内が必要なんだけど、テンチョーほどの俊足で、延々走り続ける事が出来るなんて人材に、心当たりはない。


 ラドクリフさん達は、半日だって走り続けられると豪語するくらいにはタフなんだけど、走る速度となると、10km、頑張って20㎞くらいの速度がせいぜい……要するに、長距離ランナータイプなんだよな。

 対して、ミャウ族の子達は短距離ランナータイプで、こっちはすぐバテてしまうのが難点。


 テンチョーも大概チートなんだけど、なんだかんだで何かにつけて、経験ってもんが足りてないから、単独行動となるとひどく頼りない部分がある。

 

 さっきの照明弾も相当派手で結構な高さでビカビカ光ってたから、ランシアさんあたりが気付いた可能性は高いとは思うんだけど。

 ……どのみち、向こうも状況も解らない中、いきなりテンチョーを一人で様子見に出すような判断はしないだろう。

 

 ラドクリフさんって、良くも悪くも慎重派だし、僕が不在である以上、まずはコンビニの守りを固めるとか、そう言う方針になりそうだ……。

 

 いずれにせよ、アージュさんの言う通り、希望的観測を元に方針を決めるのは間違ってる。

 

 火を放つのも、サントスさんが言う通り、無謀の一言につきる……燃え広がったら、大変な事になる。

 ジャングル地帯で山火事なんて、一度燃え広がりだしたら、もう手に負えない事になる……向こうの世界でも、海外なんかで、山火事になって、東京都くらいの広さの森が焼失した……なんてやってたくらいだからなぁ……。

 

 とにかく、コンビニへの直接連絡の手段さえなんとかなれば、こちらも具体的な指示が出せるんだが……。

 けど、それ以前に、20㎞の物理的な距離……これを埋める手段がない。


 無限軌道車も胡散臭いからって、一台しか運用してない……鹿島さん達は、同じのを10台くらい送るって言ってたけど、そんなに要らないと言って断ってしまったのだ。

 

 考えれば考えるほど、自分達の甘さと、八方塞がりの現実を思い知らされるばかり……。

 結局、色々考えたのだけど、今、取れる選択肢は、殆どないと言うことが自分でも解ってきた。


 ……これは、もうどうにもならないかも知れない。

 さすがに、諦めにも似た思いが首をもたげかけるのだけど……。

 

「あ、あのっ! オーナーさん! ブンちゃんから、提案があるみたいなんですけど!」


 唐突なモモちゃんの言葉に、誰もが一斉に彼女に注目する。

 ブンちゃんって……無限軌道車のAIが? 提案?

 

 けど、なんだろう……まさか、車両AIが今の僕らの会話を聞いて、状況を理解し、打開策を考えてくれたとでも言うのだろうか?

 

「……良く解らないけど、当てになるの? そもそも、車が今の状況を理解してたりするの?」


 ……僕が訝しげにそう尋ねると、モモちゃんは無限軌道車の運転席に座って、何やらキュルキュルと言った感じの変な言葉を時より口にしつつ、うんうんとか頷いていた。


「あの! その! えっとですね……。ブンちゃんって、日本といんたーねっと回線ってので、繋がってるみたいなんですけど。途中に置いてった電波ビーコンを中継して? 今もいんたーねっとに繋がってるんだそうです……。もしかしたら、これで日本の人達と連絡取れたりしませんか? はい? えっと、えっと……わいふぁいってのが使えるはずで、それですまふぉのめーるでなんとかなるんじゃないかって……ごめんなさい、私も自分で何を言ってるのか、よく解りませんけど……。ブンちゃんはオーナーさんなら、それだけ伝えれば解るって……」


 モモちゃんがたどたどしく、ブンちゃんと僕を交互に見ながら、ブンちゃんのメッセージを代弁してくれる……。


 ……ブンちゃん、まじかよ。

 

 慌てて、時計とコンパス、道中の暇つぶし用に持ってきていたスマホを取り出して、Wifi接続を試すと、マジでアクセスポイントが表示されている。

 

 一つだけ表示されている『AP:BUN-6601』ってのが、それらしい……そう言えば、そんな感じの番号が車体に書いてあったなぁ。


 BUNはなんかの略っぽいけど、なるほどそれでブンちゃんか……納得。

 接続を試すと、スマホの圏外表示がWifi接続済みのアイコンに切り替わる……。


 それにしても……こんな機能があったなんて、知らなかったし、こいつ日本とずっとインターネット接続で繋がってたのかよっ!

 

 しかも、位置情報取得の為の中継ビーコンって、ミミモモ達がやたらあっちこっちに設置してたんだけど、あれが中継機を兼ねてたとするのであれば、僕が知らない間に、日本との無線インターネット接続網が作られてたって事でもある……。

 

 なんと言うか……恐るべき事実に頭がクラクラしてきた。

 相変わらずの鹿島さん達の秘密主義が小憎たらしい……あの人達、僕らに何をさせたいんだか……。


 けど、今はこの上なく頼もしい話ではある。


 こんな絶望的な状況で日本と連絡が取れて、支援が受けられるかもしれないなんて、これはありがたいなんてもんじゃない!


 日本と連絡が取れれば、コンビニへも連絡してくれるだろうし、色々と知恵を貸してくれるかも知れない。


 これは……希望が見えてきたかもしれないっ!

ミミモモGJ!!


色々いじってたら、長くなりすぎたんで、分割の予定。

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