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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第一章「猫テンチョーとコンビニ……異世界に建つっ!」

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第二話「テンチョーと異世界はじまった!」③

 それから……。

 僕も状況を受け入れることにした。

 

 要するに、僕達はこの異世界ジャングルの真っ只中に、コンビニ諸共転移してしまったと。

  

 その際に、猫だったテンチョーは、神様だかなんだかに会って、ケモミミ少女になった上に、強力な身体能力を得て、チートな魔法も使えるようになったって訳だ。

 

 僕は……なんかお揃いのつもりだったのか、猫耳と猫尻尾の人外にしてもらえた。

 

 やったね! 僕もケモミミだぜ!


 うーん、これは良いことなのか悪いことなのか?

 と言うか……誰得なんだ? なんで、僕まで……神様だかなんだか知らないけど、意味わかんないよ……。

 

 それに今頃、気づいたんだけど……。

 今までは眼鏡必須だったのに、なくても支障がないくらいに、目も良くなってる上に、夜間視力も格段に強力になったようだった。

 

 月明かりも相当明るいんだけど、明らかに影になってるところ……ジャングルの奥の葉っぱまで見えるくらいには、暗闇をはっきりと見通せている。

 

 夜の森とか、明かりなしだと普通は足元どころか、手元も見えないくらいには暗い。

 そんな中、歩き回るとか自殺行為なんだけど……多分コレなら、昼間同然に歩けるだろう。

 

 なるほど、夜間行動明かりいらずだな、これ……。


 ナチュラル・ノクトビジョン!

 

 でも、今のところ、それくらい……チート能力には程遠いだろ。

 

 まぁ、ちょっと身体が軽くなったような気もするから、身体能力の向上くらいはしてるっぽいけど。

 小太り体型は相変わらずだし……拳を握り込んだり、軽く飛び跳ねてみてもそんなに変わった気がしない。

 

 少なくともテンチョーみたいに、スチール棚を片手でひん曲げるようなハイパワーとかはない。

 

 魔法? テンチョーの話だと、こんな事をしたいなぁと思うだけで、それを実現する呪文が頭に浮かぶから、それを言葉にすれば、使えるとか言ってたけど……。

 

 試しにやってみたけど、さっぱり出来ませんがな……そんなの。


 地面に手を向けて、溜めを入れて、まっすぐに突き出して!


「ハァアアアッ! 気合ビームッ!」


 ……なんてことをやってみたけど、残念何も起こらなかった!


 テンチョーが不思議そうな目でそんな僕を見つめていた。

 

 結論、魔法なんてなかった!


 でも、その辺はもう受け入れよう。

 無きゃ無いで、それはそれで構わないさ。

 

 とりあえず、周囲の状況について。

 

 周囲はジャングルなのだけど、5mほどの幅の道らしきものがあって、どうもそこに面してる感じらしい。


 獣道にしては広いし、轍っぽいのもあるけど……雑草生え放題で、舗装なんかもしてない……つまり、無舗装砂利道ッ!


 左右からあちこち木の枝が張り出してるから、多分昼間でも薄暗いとかそんな感じ……限りなく山道か獣道だな、これ。


 テンチョーの話だと、どうもジャングルの中に、チビっちゃいのが何人かいるみたいなんだけど、近寄ってくるのではなく、遠巻きに見守ってる様子らしかった。

 

 僕もちらっとだけと、それらしき影を見たのだけど。

 猫耳と猫尻尾……その上、1mちょっととやたら小さかった。

 

 髪が長くて、何か胸っぽいのがあったから、どうも女の子らしかった。

 

 いわゆるケモロリ? まぁ、これも定番っちゃ定番だ。

 ソシャゲーなんかじゃ、原始人みたいな際どいコスチュームってのも定番。

 

 恐らく、原住民か何かだと思うのだけど、ジャングルにこつ然と現れたコンビニを前に、どうするべきか迷ってるとかそんな調子らしかった。

 

 徒党を組んだり、武装してるような様子もないので、こちらに危害を加えてくる訳ではなさそうなんだけど……。

 

 うーむ、異世界人ってところなら、まずは平和的にコミュニーケーションを取るところから始める……だよな。

 いきなり、戦いを挑むとか……そりゃ無いな。

 

 でも、警戒されてるなら、近づいたり、追いかけても無駄だろうし……まぁ、ほっとくか。


 と言うか、野良猫に限らず、動物達と仲良くなりたいなら、基本こっちから寄っていちゃ駄目。

 

 おいで、怖くない、怖くないってヤツ?

 餌でも用意して、向こうからやってくるのをひたすらに待つ……これが餌付けの基本。

 

 まぁ、これは例の海外で事業やってる友人の受け売りなんだがね。

 

 ちなみに、ヤツの会社はいわゆる珍獣ハンター!

 

 珍しい動物や昆虫を捕獲して、マニアなんかに売る……そんな商売だ。

 もちろん、ワシントン条約に触れるようなご法度動物には、ノータッチなんだがね。

 

 以前から、都内から群馬にまで時々やってきては、奥深い山に虫取り網片手に突撃するような面白おかしいやつだったんだが、いよいよ山ごと土地買って、新築の一戸建て建てちゃったから、引っ越ししたとか言ってた。


 あいつがこんな異世界になんて来たら、きっと狂乱狂喜していただろうな。

 

 とりあえず……お腹も減ったし、喉も乾いたので一度店に戻ると、無事だった弁当と、お茶とコーラのペットボトルを開けて、テンチョーと二人で、夜食タイムと洒落込むことにした。

 

 ……こんな時、当面の心配は食料や水の確保なんだろうけど……。


 幸いここは、コンビニだ。

 カップ麺とかレトルト食品は、バックヤードにいっぱいストックがあるし、飲み物だって大量にある。

 

 しばらくは、それで食いつないでいけそうだから、慌てる必要はない。

 日持ちしない弁当やらスイーツは……賞味期限内に、さっさと食べてしまおう!

 

 外のチビネコミミにも食べるようなら、くれてやってもいいかもな……。

 それをきっかけに仲良くなって、色々情報でも仕入れれば……って、言葉とか通じるのかな?

  

「うにゃにゃにゃにゃっ! お弁当ー! 前から食べてみたかったんだにゃ! とっても美味しいねー! ご主人様ぁ!」


 そんな僕の思いをよそに、美味しそうに唐揚げ弁当をパクつくテンチョー。

 箸の扱いは案の定、ヘッタクソなんだけど……僕の見よう見まねであっという間に、普通に使えるようになっていた。

 

 なかなか器用だし、学習能力も高いみたいだった。

 ……考えてみれば、当たり前のように日本語しゃべってるし……。


 その辺は……多分、神様チートなんだろう。

 

 ……深く考えたら負けだ。

 

 僕はデラックスハンバーグ弁当。

 レンジが使えれば、良かったのだけど……電気なんか来てるとは思えない。

 

 まぁ、使えないものだと思っておこう。

 出来れば、お湯を沸かしたいところだけど、バックヤードにカセットコンロがあったはずだし、予備のボンベも在庫が大量にある……ホームセンターで特売してるのを見て、ついついまとめて買い占めてしまったからな!

 

 水もミネラルウォーターのストックが大量にあるから、これも何とでもなる!


 ああ、ホムセンが悪いんだよ。

 いろはに天然水が1.5Lで一本80円とか、破格だろー! 思わずダース箱を20箱まとめ買いしたのに、2万円もしなかったんだぞ?

 

 それがコンビニ店頭なら、一本120円くらいで売れる。

 価格を自由に決められないとは言え、商売としちゃ悪くない。

 

 とはいえ、いくら大量に在庫があるといっても、仕入れの当てがない以上、限りがあるって事だけど……その辺は、後で考えよう。

 

 明かりについても、商品にLED懐中電灯があったし、電池も各種規格のが大量にある。

 この手の雑貨類って、基本あんまり売れないんだけど、夜中に急に必要になったとかで、買う人はやっぱりいるからね。


 色々なツテから細々と入荷しては、倉庫に溜め込んでいたのだよ。

 

 なんか、昔から保存が効くものや、雑貨類の在庫を貯め込むクセがあったんだよな……。

 ホムセンの特売品買い漁ったり、知り合いの卸業者から「不良在庫安くするから買わない?」って言われて、二つ返事で引き取ったり……。

 

 去年まで居たバイトリーダーの和歌子わかこさんからは、無駄に在庫ばっか増やすなって、よく怒られてたもんだ。

 

 真っ暗の中での食事というのも何だったので、LEDライトを付けて、明かりを囲みながら、店のフロアのど真ん中で弁当を広げてる。

 あい変わらず、床には商品が散乱してるけど、本格的な片付けは夜が明けてからでいいか。

 

「うんうん、やっぱり人間っていいにゃ! ご飯も美味しいし、大好きなご主人様と一緒っ! 幸せだにゃー」


 ……無邪気なテンチョー。

 

 普通に可愛いし、この初っ端、好感度マックスみたいな感じ……邪険に出来るはずもない。

 でも、異世界に転移して、彼女は何か思う所はないのだろうか?

 

 ……無いんだろうなぁ……。

 猫って、基本的に今を生きてる動物だし……。

 

「そうだね! 猫の姿も可愛かったけど、今の姿も可愛いよ……」


 僕がそんな事を言うと、真っ赤になって、無言でしおしおとうなだれるテンチョー。

 これは……照れてるのか? 


「…………」


 無言で、箸を止めて俯くテンチョー。

  

「し……しかし、これからどうしたもんかなぁ……」


 思わず、目線を逸らせてそんな事を言ってみる。

 ……別にドキドキしてる訳じゃ……ないぞ?


「テンチョーは、ご主人様の事が大好きなのにゃーっ! ご主人様と一緒なら、何だって良いにゃっ!」


 そう言って、顔を上げるとにっこり笑顔。

 ネコミミがピコピコ動いて、尻尾パタパタ……。

 

 うぉおおおっ! めっちゃかわいいーっ!


 元が猫だって解ってても、破壊力抜群だっ!

 

 考えてみれば、リアルな女の子とちゃんと付き合ったりとか、そんなのってなかったなぁ……。

 学生時代は勉強三昧、銀行マンになってからは仕事三昧。

 

 銀行マンなんてやってると、飲み屋とかで寄ってくる女の子はそれなり居て、試しに付き合ってみたりーとかはあったけど、つまらない男ね……とか言われて、一週間もしないで逃げられるってのが定番だった。


 ……うん? 手をつなぐとかそんなくらい?

 ヘタレ? まぁ、そう言われても仕方がない……実際、奥手なのは認める。


 コンビニ経営者になってからは……バイト女子高生の話相手をしたりはあったけど、エリカくん辺りなんて、あれはもはや、異次元の生き物だ。


 時々、何言ってるか解らないくらい……若者文化は奇々怪々。

 

 パートおばちゃん連中なんて、皆40、50代で僕より年上……バイト最高齢は70代のおばあちゃん……。


 ……まぁ、ないよな。

 

 長年のバイトリーダーだった和歌子さんとは、それなりに上手くやってたけど、突然海外行くって言い残して辞められて、それっきり。

 

 あの人も良く解らない人だったなぁ……もう半年くらい会ってないけど、元気かな?

 

 そう言えば、バイトの皆は無事かなぁ?

 結局、あの地震での被害状況も解らないまま……。

 

 緊急地震速報が鳴るくらいだったから、相応の規模の地震があったのは、確かな訳で……。

 群馬は浅間山とか白根山と言った絶賛活動中の火山はあるけど、どっちも人里離れた山奥……。


 浅間山なんて、昔から定期的に煙吹いてるようなところだから、東京の人が思ってるほどには、群馬県民はなんとも思ってない。

 

 群馬って、基本的に大きい地震はほとんど無いし、内陸部だから、津波の心配なんかまったくない。

 台風なんかも、何故かいつも群馬を避けていく。

 

 災害の少なさでは、西の岡山、東の群馬……って言われるくらい平和なところだ。

 でも、その分、地震慣れしてないだろうから、どうなってることやら。

 

 東京の親父達は、さぞ心配してると思うのだけど……無事を伝える術もない。

 

 そもそも、このコンビニのあったところはどうなってるのだろう?

 

 建物がここにあるということは、丸ごと空き地みたいになってるのかもしれない。

 地震の件もあるから今頃、本部は大騒ぎだと思うのだけど……。

 

 まぁ、気にしても始まらないんだけど……ホント、これからどうしよう……。


 どうも、僕は悲観的に考える傾向があるから、グルグルと余計なことを考えて、一人で不安になってしまう……困ったもんだ。

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