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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第二章「猫とコンビニが世界を救う……のか?」

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第十八話「袖すり合うも他生の縁」②

 フルネームは今、初めて知ったけど。

『昼行灯のアージュ』……パーラムさんが言っていた親衛隊の一人にして、王国最強の戦略魔法使い!!

 

 ……思いっきり、敵じゃんっ!

 確かに単独で森に入ったって話だったけど……まさかの天文学的確率の不期遭遇って奴だった。

 

 やべぇな……天文学的な確率で当たりを引きよせたり、普通なら死にかねない状況からの生還。

 

 この娘、モノホンの豪運の持ち主だ……まさに、SSR級のド級キャラ!

 僕みたいなモブとは、もはや別格の存在って奴だった。

 

「ひ、昼行灯のアージュ?」


 思わず、その名を口にしてからしまったと後悔する。

 

 と言うか、パーラムさんの話を思い出す……帝国軍の一個師団を軽く氷漬けにして全滅させ、城塞すらも一人で落とすような化物じみた魔術の使い手。


 つまり、彼女がその気になれば、僕なんか一瞬で即死する……。

 1000年生きてるって事は、当然ながら、人生経験も戦闘経験も僕なんか遥か遠く及ばない。


 実は、テンチョーなら勝てるとか思って舐めてたけど、経験値が文字通り桁違いだろうし、この豪運……下手するとテンチョーですら遅れを取る可能性がある。

 

 そんなのが文字通り、袖触れ合うほどの距離にいる……これはかなり不味い状況だった。

 

「お、おう……不本意ながら、そう呼ばれることも多いのじゃ……。でも、酷い呼ばれようじゃと思わんか? こんな美少女を捕まえて……そりゃ、我は面倒くさいことは嫌いじゃし、親衛隊の方針にいつも異議を唱えてハブられることが多いから、結果的に全然貢献しとるように見えんかも知れんのじゃけど……。我だって、我なりに最古参の重鎮として、色々頑張っておるのじゃ。そもそも、あいつらは力に驕っておるからのう……。力は手段であって、目的ではないのに……己が力を誇示することばかり考えよって……。最近は、陛下にも要らんことばかり吹き込んでおるせいか、どうも陛下も野蛮な力任せの解決案を示すことも多くてなぁ……まったくもって度し難いわっ!」


 なにやら、ブツブツと親衛隊への愚痴と言うか悪口が始まった。

 

 組織内の古参にして、非主流派……色々思うところもあるのだろうが。

 とにかく、親衛隊も一枚岩ではない……そう言う事らしい。

 

 親衛隊っててっきり、姫様を頂点に統率の取れた集団かと思ったけど、そうでもないようだった。

 となると、彼女は彼女自身の考えで動く、中立の立場に近い……そう言うことだった。


 であれば、必ずしも敵対すると決まった訳ではない。

 彼女を敵に回すか、それとも味方になってくれるか……それはもう、これからの僕の言動一つにかかっていると言っても過言ではない。


「そ、そうですね。僕にはよく解りませんけど……。所詮は、他人の言うことですから……あまり、気にしない方が良いと思いますよ。アージュさんにはアージュさんなりの考えがあるんでしょうし、人に流されず、確固たる意思を持つってのはむしろ、美徳かなって思いますよ」


 うん、脳筋で無茶ばっかやってる集団の中で、異を唱える……。

 なかなか出来ることじゃないだろう。

 

 組織ってもんは、そう言う反対意見や苦言を唱える者が居ないと、段々おかしな方向へと向かっていくものなのだ。

 脳筋連中が中心なら、なおさら理性的なストッパー的な存在は重要だと思うんだがなぁ……。

 

 まぁ、独断専行とか協調性が無いって言われたら、そこまでだけど……立場上、彼女とは敵対関係みたいな状況なんだけど、僕個人としてはなんとも憎めないのは確かだった……。

 

 けど、僕の言葉にアージュさんは露骨に機嫌が良くなって、なんか照れたように顔を隠す。

 よそ見して照れ隠しとか、何とも初々しい反応というやつだった。


「ふ、ふむ……お主こそ、変わっておるな。我もそんな風に褒められたことなぞなかったんじゃが……。そうじゃな……まぁいいわ! ところで、お主の名前も教えてくれんか? なにせ、命の恩人なのじゃからな。後日改めて、礼もしたいし、お主……猫獣人にしては、なかなか顔立ちも悪くない……。むしろ、我好みじゃぞ? それに、何となくぼんやりと覚えとるんじゃが、お主我に口づけせんかったか?」


 ……実際に、マウストゥマウスで水を飲ませたのは、モモちゃんなんだけど……。


 チラッとモモちゃんを見ると、真っ赤な顔をして、あわわわって感じで、こっちを見てる……これは、僕がやったことにしといた方が、カドは立たないような気がする……。


「あ、あれは……君に水を飲ませる為にやむを得ずにだね……。言わば、医療行為であって深い意味はないよ?」


「解っておるよ。我もそれなりに長生きしておるのでのう。接吻の一つや二つで騒ぐようなお子様ではない。しかし、水を飲ませるのに、舌まで入れる必要があったのかのう……まぁ、なかなか上手かったがな。お主に免じて、それは許してやろう」


 ……モモちゃん? 君、何してくれてるの?

 

 水を飲ませるのに、そこまでやる意味が全然解らない……もしかして、モモちゃんって女の子好きだったりする?


 あー、なんか思い当たるフシもあるぞ。

 やたら、ガード硬いし、何かと言うと破廉恥だの不潔だの……野郎を目の敵にしてるフシがあるっちゃある。

 

 もっとも、徹底はしてないし、たまに見せるデレがたまらんってのは、他の野郎連中も言ってることなんだがね。

 モモちゃん、こう見えて、結構あざとい。

 

 なお、アージュさんは色々勘違いしてるらしく、テレテレな様子でチラチラと僕に熱い視線を送ってる。

 僕と目が合うと、さっと逸らされて、モジモジと……とにかく、やたらと落ち着きない。

 

 その割には、すすっとお尻を動かして、身体をこっちに近づけてくるあたり、アピールに余念がない……。


 ……これフラグだよなぁ……どう見ても。

 しかもこの様子だと、若干こじらせ気味のような気がしないでもない。


「えっと……それは……口を開けさせるため……かな? じゃなくて、あれは純粋に水を飲ませる為であって……。何度も言うようだけど、それ以上の意味とか無いよ」


「そ、そうか? なんなら、命を救ってもらった礼に改めてと言うのはどうじゃ? 前の二人はお主の従者のようだが、主人の情事を見て見ぬふりをする分別はあるようじゃぞ?」


 そう言うと、アージュさんは僕にしなだれかかって来ると、少し上を向いて目を閉じて、僕の手をその絶壁の如き胸に導こうとする。

 見た目はお子様だけど、何とも言えない大人の女性の色香ってもんを感じさせる仕草だった。

 

 この子……間違っても、無邪気なロリっ子って感じじゃない。

 でも……いつ敵に回るか解らないようなヤツが色々勘違いした挙げ句、勝手にラブラブフラグを建設中。

 

 と言うか、これ……マジでどうするべきか。

 このアージュさんについては、絶対戦っちゃ駄目ってのは解ってる。

 

 戦闘力という点でもだけど、彼女を敵に回すってのは、多分ロメオ王国自体を敵に回すも同義。

 彼女の命を救ったってのは、間違いなくファインプレイなんだけど……彼女の目的次第では、大変なことになる。

 

 現状、彼女はチョロイン状態……コレ自体は一見、安全なように見えるけど、女ってのはちょっと扱いを間違えると逆恨みとかしかねないと言うおっかない一面も持ってるんだ。

 

 チョロイン、ヤンデレ化ルートとかよくあるパターン。


 正直、「昼行灯のアージュ」の話を聞いても、僕自身はさしたる脅威だとは思ってなかった。


 なにせ、どんなに凄くても、テンチョーに勝てるほどじゃないだろうし、万が一、僕が一人の時に出食わしても、口八丁で時間を稼げればなんとでもなると、高をくくってた……。


 けどそれは、実際に本人を目の当たりにするまでは……の話。


 今の状況は色んな意味で非常に危険。


 単独行動中に、敵に回しても、正体がバレてもヤバい相手に思いっきり、命の恩人として求愛されてる状態ってなんだそれ?

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