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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第二章「猫とコンビニが世界を救う……のか?」

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第十七話「情けは人の為ならず?」③

 木々の間をすり抜け、道なき道を物ともせず、割と荒っぽい運転で無限軌道車が森の中を突っ走っていくと、やがてミミちゃんの姿が見えてくる。

 

 道の脇に車両を止めて、僕も車から飛び降りるとミミちゃんの後を追って、ヤブをかき分けていくと小川が見えて来る。

 そして、その脇に力尽きたように倒れ込んだ人がいた。

 

「……どうしたんだろ? 行き倒れっぽいけど……生きてるのかな?」

 

 過酷な環境のジャングルの旅。

 準備不足や道に迷った……そんな理由で力尽き行き倒れてしまう人は、ここではそう珍しくもなかった。


 実際、行き倒れて亡くなってしまった人が回収されてくる事もあって、その埋葬に立ち会ったりしたこともあった。

 ほんの小さなミスや油断が命取りになる……その程度にはこのジャングルは過酷な環境なのだ。


「一応、息はしてるみたいなんだけど……ちょっと様子がおかしいんだ。オーナーさん、見てもらえないかな?」


 ミミちゃんの報告に胸を撫で下ろす……死んじゃってたら、お墓を作ってあげることくらいしか出来ないけど、生きてるなら、まだ出来る事がある。

 

 でも、見てって言われても……僕に医療知識なんて、皆無に近い。

 医療漫画や医療ドラマで聞きかじったのとか、応急処置くらいならなんとか。

 

 と言っても、マネキン相手に添え木して包帯巻いたり、人工呼吸とか心臓マッサージ……。

 AEDの取扱なんかも一応、知っている……要するに、応急処置講習って奴で習っただけ。

 

 実際に生身の人間相手に、応急処置をするような機会なんて全然なかった……つまり、知ってるだけなのだよ。

 それに講習受けたのは、随分前だから、何もかもうろ覚えで相当怪しい……。

 

 薬なんかは……応急処置キットと、風邪薬や栄養ドリンクくらいなら持ってきてはいるけど、役に立つかどうかは何とも言えない。

 

 とりあえず……慌てず騒がず、まずは倒れてる人を仰向けにして、気道を確保した上で冷静に観察する。

 ……だったかな?

 

 背丈はミミモモよりちょっと大きいくらいで、肩くらいまで伸ばした綺麗なアイスブルーの髪。

 そして、とんがり耳……エルフ族かな?

 耳飾りみたいなのがいっぱい付いてるけど、重そう……。

 

 髪が長くて、少し胸があるから女の子……年齢は小学校高学年くらいに見えるけど、エルフ族の歳なんて外見からはさっぱり解らない。

 

 実際、ランシアさんも中学生くらいに見えて、100歳超えだからなぁ……。

 ちなみに、色々バインバイーンなラフィーさんは、実は80歳くらいでランシアさんより年下。


 モウ、ワケガワカラナイヨ。

 

 ちょっと見た感じだと、顔がやたら赤くて、呼吸が凄く荒い……。

 うっすらと目は開いてるから、意識はあるっぽいけど、焦点があってなくて、どこ見てんだか解らない。

 

 意識レベルがかなり低下してる……おそらく熱とか出た時や、飲みすぎてグデグデになった時みたいな感じだろう。

 見た所、怪我や出血してる様子はない……倒れた時に出来たと思わしき、小さなかすり傷がある程度。

 

 首筋に触れると、明らかに熱っぽい……吐く息も熱い……髪の毛なんかも汗でぐっしょり……。

 もしかして、脱水か熱中症? だとしたら、ちょっとよろしくないな。

 

 それにしても、昼間ジャングルを歩いてたにしては、なんかやたら軽装備。

 馬や荷物持ちとか、そう言うのも見当たらない……単独行動? もう、その時点で無茶だろ。

 

 荷物らしきものは、ウェストバックみたいな道具入れがひとつ。

 中身は、宝石とか魔法陣みたいな文様の描かれた呪符みたいなのが多数……それと小金貨と銀貨が数枚。

 どうも魔術師か何かっぽいけど……僕もそこまで魔術には詳しくないから、良く解らない。

 竹筒の水筒を首から下げてるけど、中身は空っぽ……水が尽きて、小川で補充しようとして目の前で力尽きた?

 

 他には何も持ってないんだけど、服装は割としっかりした布地で、青基調の長袖で、暑苦しそうな着物みたいなヤツを着てる。


 服装自体は割と上質そうな感じなので、それなりに身分が高い人物なのかもしれない。

  

 ランシアさん達と同様のエルフ耳なんだけど、やたらと肌が白い……例えるなら、雪のように白い肌。


 ランシアさん達も、地肌は白いみたいなんだけど、皆それなりに日焼けしてるから、ここまで白くはない……瞳の色が赤っぽいから色素自体が少ないアルビノなんかに近いんじゃないかな。


「オーナーさん、この子……エルフみたいだけど、見かけない顔だよ……何者なんだろう?」


 最近、森エルフの集落に、割とよく出入りしてるミミちゃんがそう言うなら、多分余所者なのだろう。

 慣れない酷暑の地にいい加減な装備でやってきて……とか、そんな調子だったのかも。

 

 けど、こんな風に真っ白な肌のエルフには一応、見覚えはある……だから、何者なのかも何となく見当が付いた。


「そうだねぇ……確か、山エルフさんがこんな感じだったかな……。こないだランシアさんの集落に遊び行った時に、たまたまワタリの山エルフ……ランディさんってのが来てて、色々話したんだけど。ランディさんも、こんな感じの薄い髪色で、肌も真っ白だったんだよね」


 ちなみに、ワタリってのは一箇所の集落にとどまらず、あちこちのエルフの集落を渡り歩く、エルフの連絡要員みたいな人達。

 

 引きこもり傾向の強いエルフと言えども、人間界の情報ってのは、無視できかったりするし、それなりのナマの情報がほしいという理由で、そう言う役目を持ったエルフってのが少なからずいる。

 人里とかで見かけたり、商売やってるラフィーさんなんかがいい例だ。


 彼らは、情報収集要員も兼ねているので、冒険者だったりすることも多いし、そのまま人里に居着いちゃうケースも多いんだけど……。


 エルフさん達の時間感覚は人間と全然違うんで、10年単位で居座ってちょっと寄り道してた……とかそんな感じだったりもする。


「や、山エルフ……ですか! 私達でも見たこと無いんですが……。けど、何故こんな所にいるんです?」


「さぁ? ひょっとしたら、ランディさんと同じワタリのエルフなのかも。けど、山エルフさん達って普段、涼しいところに住んでるから、暑さには弱いって話だから、ここの暑さに参ってしまったのかもしれないね」


 まったく、無茶しやがって……。

 

 山エルフは、もっと北の方の山岳地帯一帯に多く住んでるんだけど、山岳地帯は標高が高いから、ここらと違って年中涼しい。


 そんな所に住んでる山エルフは、ランシアさん達のような森エルフと違って、寒さにはめっぽう強いんだけど、暑さには弱い……。


 生活習慣とか風習も森エルフとは、全然違うし、もはや別の種族のように見えるけど、人種的には同じ種族で子供なんかも普通に作れるって話だった。

  

「とりあえず、熱中症の応急処置なら、一応解るからなんとかやってみるよ。……まず、身体を冷やしてあげてから、意識があるようなら、水とかスポーツドリンクでも飲ませる。……実際、それ位しかやりようがないから、手早くやっちゃおう」


 まさかコンビニのオーナー研修会で習った応急処置研修が、こんな所で役に立つなんて……。

 

 あれって、講師の人ですら実際にやった事はない……なんて言ってて、実用性には疑問符が付くのだけど。

 全然知らないのと、知識だけでもあるのじゃ大違い。

 

 実際、何も知らなかったら、目の前でオロオロするだけで何も出来ず、見殺しにする羽目になってただろう。

 

 とにかく、最初にやる事は少しでも体を冷やす……慌てず騒がず、慎重に。

 まず、木の陰に引きずっていって、直射日光に当たらないようにする……これだけでも随分違うはずだ。

 

 次に、僕ら用の飲み水として、クーラーボックスに入れていたペットボトルを脇の下と首筋、太ももの間に置く。

 

 講習で見た解説動画では確かこうやってた。

 太い血管があるから、冷却効率が良いんだったかな?

 

 さすがに、冷たかったらしく、ビクッとかして、イヤイヤするように首を振ってるんだけど、ここは我慢してもらう。

 

 次に水分の補給……病院とかだったら、点滴とか注射で輸液ってなるんだけど、そんなものはない。

 

 治癒魔法とかも、モモちゃんが使えたと思ったんだけど、あれはあくまで怪我や体力の一時的な増強などは出来ても、水分補給の役には立たない……魔法もそこまで万能じゃない。

 

 ここは、本人に頑張ってもらって、少しでも飲んでもらわないといけない。


「おーい! 聞こえてるかい! 返事はできる?」


 割と手荒に扱ったんだけど、うめき声しかあげられない様子。

 

 けど、プルプルと片手を上げようとしている様子から、こっちの言葉も届いてて、意識もまだかろうじてあるみたい……。

 手を握ると、弱々しいながらも、ギュッと握り返してくる。

 

「うん、頑張れ! 僕らは君を助けたい……いい? 眠くても、今は寝ちゃ駄目だよ! これ飲み物、解る? 自分で飲めるかい?」


 スポーツドリンク入りのペットボトルを手に持たせてみるのだけど、全然力が入らないらしい。

 一旦握ってくれたのだけど、あっさり取り落としてしまう。

 

 相変わらず、目もうつろで、どこ見てるのか解らない……これって危ない状況かも?

 

 唇とか凄く乾いてるみたいで見るからにカサカサで、頬や額を触るとカサカサな感触。

 

 これ汗、殆どかいてないな……。

 えっと、確かそこまでいくと熱中症のⅢ度……重度熱中症って言う命に関わる状態だ。

 

 汗をかかないと言うことは、身体から汗をかくだけの水分が失われていると言うことを意味している。

 

 日本だったら、とっくに救急車呼んでるんだけど、この場には僕らしか居ない!

 つまり、この子の命は僕らにかかってる……改めて自覚すると、物凄いプレッシャーがのしかかって来る。

 

「ちょっと、不味いな……。これ、僕らの世界では、熱中症って呼ばれてる病気だ。身体の水分が枯渇して、体温が上がりすぎてしまった状態なんだ……。このままだと、この子死んじゃうかもしれない……」

 

 熱中症の何が厄介って、原因が原因だけに、体力とか、生命力もなにも関係ないって事。

 人一倍健康で身体も鍛えてるアスリートだって、夏場は油断してると熱中症で救急車で運ばれたり、死亡事故だって年に何件も起きてる。

 

 異世界チートだろうが、無敵魔王様とかだって、こんな状態になってそのまま放って置かれたら、ほぼ確実に死ぬ。

 

 こんなになる前に、もっと早く気付いて自分で対処しろって思うんだけど、熱で頭もオーバーヒートする為、意外なほど本人に自覚症状がなく、まだ大丈夫ーなんて言いながら、動けなくなったり、倒れてから、初めてこれはおかしいって気付く人が殆どなのだ。

 

 この辺は……僕自身が夏場、エアコンの効いてない倉庫で在庫整理してて、ぶっ倒れたから、良く解る。

 後日、思いっきり熱中症だったと知ったんだけど、実際はやたら熱くて、フラフラして一休みしようと座り込んだら、そのまま倒れてたってオチ。

 

 バイトの子が様子見に来てくれなかったら、本気で危なかった……。

今年の猛暑は、熱中症が割と洒落にならんという事で……。


作中にて、熱中症の症状とその応急処置を詳細に描写してます。

本来、端折っちゃっていい場面だとは思うんですが……啓発のようなもんです。


実は、私も今年すでに、Ⅱ度の熱中症食らって、危うく救急車ってなりかけました。

Ⅰ度あたりもすでに何度か……皆さん、お気をつけて。


あれ、当事者はガチで気付かなかったり、まだ平気ーと思いこんで、限界突破してしまう。

実は、そこが一番怖い所だったりします。


家族や連れ、通りがかりの人が熱中症になって、応急処置をしないといけない事も十分あり得るので、

いざって時にやるべき事や手順くらい覚えておきましょうね。

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