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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第二章「猫とコンビニが世界を救う……のか?」

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第十七話「情けは人の為ならず?」②

「あの……オーナーさん、割と道の状況が良いみたいで、もう少しペースを上げられるみたいなんですけど、どうしましょうか?」


 モモちゃんから、ペースアップの提案。

 色々と思考のループにハマりかけてたんだけど、嫌が応にも現実に引き戻される。

 

 これは多分、無限軌道車側からの提案なんだろう……なんと言うか、よく出来てるよなぁ……。

 

 ちなみに、無限軌道車の走行ペースは今の所、めっちゃのんびりペース。

 普段は、こんな道なき道でも時速20kmくらいは出せるんだけど、さっきから5kmくらいのテロテロしたスピードでゆっくりと走ってる。


 大体、人が早足で歩く程度のペース……はっきり言って遅いんだけど、データ収集しながらなんで、初回は大抵こんなもんだ。

 

 目的地の野営地までは、歩きで丸一日の距離……20kmくらいあるのだけど、このペースだと単純計算で4時間ほどかかる計算だ。


 4時間は決して短い時間ではないのだけど……それでも、この世界の旅のペースとしては、十分以上に早いと言える。

 

 ……普通に歩きだと、この炎天下の中、休み休み、道なき道を丸一日かけて歩く事になる。

 考えただけでうんざりするけど、車に乗ってる分には、大した苦労でもない。

 なにせ、機械は休憩なんて要らない……たまに指示を出す程度で、そのうち目的地に着いてしまう。

 

 ……それにしても、この車……相変わらず胡散臭い。

 排ガスも後ろから生えてる煙突みたいなのから、たまにボフンって水蒸気を吹き出す程度で、嫌な匂いとか煙も全然出さないし、もはや究極エコカーなんじゃないかって気もするんだけど……。

 動力源とかはブラックボックス化してるし、技術的な説明も全然してくれないので、さっぱり解らない。

 

 なんで、こんな凄いのが開発されていたのに、全然普及してなかったのやら……。


 そもそも、何に使うことを想定して、こんなのを作ってたんだろう?

 ガソリンや軽油が入手出来なくて、まともな道もない……まさに、こんな場所で使うことを想定してたとしか思えない。

 

 色々、疑問があるんだけど……足として使う分には何の問題もないし、なんだかんだで超便利なんで、とっても重宝してる。

 胡散臭いけど、ありがたく利用させてもらう……しか無いよなぁ。

 

 なお、野営地への到着は何事もなければ、夕方前には到着の予定であった。

 

 すでに二時間ほど走っているので、おそらく半分くらいの行程は消化しているはずだった。

 一応、予定通りである。

 

「いや、予定通り順調に来れてるし、急ぐ必要もないから、このままのペースでいいよ。それより二人共、そろそろ休憩でもしないかい? お腹空いたでしょ」


 そう返すと、モモちゃんが嬉しそうに笑顔を返す。

 

「いいですね。そろそろ、一休みしてもいいかもです。私もお腹空きましたっ! あ、お弁当作ってきたんですよ!」


 言いながら、モモちゃんが運転席の後ろに括り付けてたバスケットを指差す。

 そう言えば、出発前にモモちゃんが厨房の隅っこで、サンドイッチみたいなのを作ってたなぁ……。

 

 いいな……ちっちゃい女の子の手作りお弁当。


 モモちゃん、鶏揚げ業務を通じて、料理に興味を持ったらしく、最近サントスさんのお手伝いとか、サントス食堂のウェイトレスもやってくれるようになったんだよなぁ……。

 

 料理については、まだまだ簡単なものしか作れないし、見た目も貧相なんだけど、女の子の手作りって時点で、その付加価値は計り知れない。

 

 モモちゃん弁当って言って、モモちゃんの写真付きで売り出したら、小金貨一枚とかボッタクリ価格でも絶対売れると思うんだ。

 

 モモちゃんの握ったおにぎりと揚げ鶏のセットとか……そんなのでも、買うやつはいるだろう。

 と言うか、買いそうな人も、何人か心当たりがあるのが、なんとも。


「僕もお腹空いたよっ! でも、もうちょっと行ったところに開けてる場所があるんだ。おまけに近くに小川があるからとっても涼しい。せっかくだから、そこで休憩にしない? オーナーさん、僕が先行して安全確認してくるよ!」


「悪いね……ミミちゃん、頼んでもいいかい?」


「うん、まかせてっ! じゃあ、モモっ! 運転は任せたよっ!」


「はーい、いってらっしゃーいっ!」


 ミミちゃんが車から飛び降りると、軽々と木の上に登って、木から木へと飛び移りながら、さっさと前へと行ってしまう。

 

 ミャウ族の子達って、総じてこんな調子で、身軽さに関しては相当なもん……地面を走るよりも、あの方が早いってんで、皆、忍者みたいに木の上をかっ飛んでるのをよく見かける。

 

「相変わらず、身のこなしが凄いなぁ……。モモちゃんもあんな感じでいけるの?」


「わ、私は……身体動かすの苦手で……あんなのとても真似できません。体力だって、全然ないし……木登りすら満足に出来ないんで、敵に襲われたら、真っ先に死んじゃうってよく言われてました」


 肉体派のミミちゃんと比べると、モモちゃんは何かとヘナチョコ。

 ……なんだけど、モモちゃんはモモちゃんなりに、色々優れてるところはあるからなぁ……。


「でも、その代わりモモちゃんは魔法も使えるし、頭もいいし、色々努力してるの知ってるよ。それに、ミャウ族の皆に人族共用語教えてくれたりしてるんだよね」


 要するに、モモちゃんは頭脳派って訳だ。

 ミミモモの二人は互いの足りない部分を補えるベストパートナーって感じなんだ。

 

 ……まったく、尊すぎて困るね。


「そ、そんな……オーナーさん、止めてくださいよ。私は自分にできることをやってるだけで……全然、役立たずだと思います……」


 実際のところ、ミャウ族の子達の一番の問題だった人族共用語を話せないって欠点が、モモちゃんのおかげで急速に改善されてるんだよなぁ……。

 おかげで、役立たず呼ばわりされていたミャウ族の子達が、色んな形で貢献してくれるようになっているのだ。

 

 道案内に、夜間警戒……コンビニ村のお掃除なんかも率先してやってくれている。

 高い木になってる木の実を取ってきたり、街道の頭上に張り出した木の枝を剪定するような、いわゆる高所作業もお手の物。


 実は、ミャウ族の子達をすっかり気に入った一部の人達が出資して、猫耳カフェを作ろうと言う話もあったりする。 

 日本で、あんな小さな子達を働かせたら、大問題だけど、この子達はこれで大人……全く問題ない。


 どんな方法であれ、ミャウ族の子達もお金を稼げるようになって、経済に参加出来るようになったのは良いことだ……コンビニの店内で、楽しそうに商品を選んでるミャウ族の子達を見ると本当に和む。 


「いやいや、モモちゃん……いつも、君はそう言うけど、とっても役に立ってるんだって! それに、こんなハイテクマシーンにも全然抵抗ないみたいだし、すっかり手慣れたもんじゃないか。僕も全然やることなくて、暇でしょうがないよ。なんか随分、気に入ってるみたいだよね」


「ええ、ブンちゃんに乗ってると遠くまで行っても、全然疲れないから、大好きですよ! ブンちゃんもこの世界の色々な事を知りたいって言うんで、暇な時は色々おしゃべりしたりしてますよ」


 ……ブンちゃん?

 良く解らないけど、無限軌道車の名前っぽい。

 

 と言うか、おしゃべりって……これ会話機能とか付いてたっけ?


 マニュアルにもそんなもん書いてなかったような……。

 会話っても、カーナビみたいに「この先直進です」とか、棒読みで音声案内するとか、そんな程度の機能しかなかったはず。

 

 けど……僕は、あることを思い出す。

 もしかして……マルチコミュニケーションスキル?!


 軽い気持ちで二人に付与したスキルだったんだけど……文字通り、言語の壁を超えて、誰とでもコミュニケーションが図れるようになると言うチートスキルだ。

 

 まさかとは思うけど、機械言語みたいなので、機械と直に意思を通じ合わせてるとか?

 

 確かに、未知の未開の道を何度も走るうちに、色々学習して勝手に走れるようになるとか、結構高度なAIを積んでるみたいなんだけど……。

 会話とか、人間と意思の疎通なんて高度な真似が出来るとは思えない。

 

 けど、考えてみれば、二人共、誰かと会話してるような感じで、ワイワイ勝手にやってて、車両への道の指示や、足場の確認とか、ドローンの運用も全部、おまかせ状態で全く問題なく進めてる。

 

 二人とも僕に色々聞いたり、マニュアルを読んだりもしないで、初見のはずの道をすんなりと、ここまで来れてしまっているのだ。

 

 推測なんだけど、機械側でミミモモにやる事を提示して、ミミモモもそれに応える……相互補完みたいな関係になってるんじゃ……?

 

 鹿島さん達も、こんなの想定してなかったんじゃないかな……?

 この車両のAI……ミミモモと言うコミュニケーションが取れる相手が出来たことで、勝手に最適化……自己進化してる可能性が高い。

 

 時々、メーカーメンテで送り返してほしいとか、稼働データとかも定期的にオンラインで送ってほしいとか言ってたけど、こりゃ向こうも驚くような進化を遂げてるのかもしれないな……。

 

 と言うか……本当に、大丈夫なのか? これ……。

 

「オーナーさん! 大変っ! 緊急事態発生ですっ! ミミが何かを見つけたみたいです!」


 慌てたようなモモちゃんの声で考察を中断されて、僕も我に返る。

 

 無限軌道車へ飛び移って、操作ディスプレイを後ろから覗き込むと、ミミと一緒に先行していたドローンの空撮映像が写っていた。

 

 空に向かって大きく手を振るミミちゃんと、その足元で倒れてる……人だ!


「……どうしたんだろう? まさか……死んでる?」


「解りませんけど……どうも、行き倒れみたいですね。ブンちゃん! 急いで、ミミのところまでお願いしますっ!」


 応えるように、無限軌道車もエンジン音の代わりに、接近警報のカンカンカーンと言う鐘を鳴らすような音を鳴り響かせながら、最大速度まで加速していく!

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