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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第一章「猫テンチョーとコンビニ……異世界に建つっ!」

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第二話「テンチョーと異世界はじまった!」①

 それは、まるで地面が浮き上がったとしか表現しようのない衝撃だった!

 

 身体が地面を離れて、一瞬浮いたと思ったら、立っていることも出来なくなって、地面に叩きつけられるように倒れ込む。

 

 ドリンクコーナーの扉が一斉に開いて、中からペットボトルや缶飲料が凄まじい勢いで飛び出していっているのが見えた。


 陳列棚が激しくドッタンバッタンと、商品を撒き散らしながら、大きく揺れ始めているのを見て、とっさに立ち上がって支えようとするっ!

 

 けれど、そんなマネをしたところで、支えきれる訳もなく、陳列棚が僕に向かって倒れ込んでくる。

 

 更に照明が一斉に消えて、店内がたちまち真っ暗になるのと同時に、重たいものがのしかかってきて、身動きが取れなくなってしまった。


 幸い頭をぶつけたりはしなかったのだけど、完全に足が挟まってしまったようだった。

 

 その上、陳列棚もスチール製で結構な重量がある……腕で持ち上げようとするのだけど、体勢が悪くビクともしない。


 暗闇の中、上も下も解らなくなるような激しい揺れが容赦なく続く!

 

 失敗した……こう言う時は迷わず、壁際にでも張り付いて、座り込むべきだったのだ。


 地震の最中に倒れかかった棚を支えるなんて、極めつけレベルの愚行だった。


 おまけに、今は店内に僕一人しかいない……。

 こんな状況で身動きが取れなくなるなんて、最悪じゃないかっ!

 

 そんな僕をよそに、まだまだ激しい揺れが続く……どうすることも出来ないまま、もはや運を天に任せる!


 ……天井からバラバラとモルタルのかけらが振ってくる。

 そして、一際大きな欠片が顔めがけて降ってきたらしく、ゴツンという鈍い音と衝撃と共に、意識が遠のいていった……。

 

 ……遠ざかる意識の中、僕はテンチョーのことを考えていた。

 頼むから、無事で居てくれと……祈るように……。

 

「…………」

 

 どれくらい、意識を失っていたのだろうか?

 

 ……いつの間にか揺れも収まったようで、辺りはしんと静まり返っていた。

 

 相変わらず、店内は真っ暗なのだけど、目が慣れてきたらしく薄っすらと店内の様子も見えるようになっていた。


 なんとか、上体を起こすと眼鏡が無いことに気づく。

 

 僕はど近眼だから、アレがないととっても困るんだが……けど、あの状況で、むしろ生きていたことに感謝すべきだろう!


「……ご主人様っ! 気がついたっ! 良かったぁ! ホントに良かったにゃーっ!」


 耳元でいきなり叫ばれ、いきなりなんだか柔らかいものに顔が包まれる。

 

「わっぷ! な、なんだ……これっ!」


 たまらず、叫んで、その何かを引き剥がす。

 

 ……そこに居たのは、見知らぬ女の子だった。

 

 薄明かりの中、大きな黄色い瞳で、肩のあたりで切りそろえた黒髪セミロング……そして、何故か赤いエプロン……イレブンマートの制服を着てるって事まは解ったのだけど……。

 

 うちに、こんなバイトいたっけ?


 何よりも、その頭の上に乗った二つの三角形が嫌でも目を引く。

 例えるなら、猫耳のような……なんとも変わった髪型だった。

 

 と言うか、この娘、誰? お客さんなんて居たっけ? 少なくともうちの関係者じゃないし……何よりも、この子どっから出てきたの? それに、地震っ! あれから何分気を失ってたんだっ!

 

 思わず、パニックになりかけるのだけど、もっと大事な事を思い出す!

 

「そうだっ! テンチョーは! 君っ! 店の中で黒猫を見なかったかい! って、いってぇっ! ぐぁあああっ……!」


 慌てて立ち上がろうとして、腰から下が陳列棚の下敷きになったままだったのを思い出す。

 ついでに、今頃になって太ももの辺りがズキズキと痛みだした。

 

 隙間から手を突っ込むと、ぬるりとした感触……何処か切ったのかもしれない。

 この感触は多分……血、それも結構な出血量。

 

 ちょっとこれは、マズいかもしれない。

 

「だ、だいじょうぶ?」

 

 その様子を見ていた女の子もオロオロと辺りを見渡す。

 見た所、店内には彼女一人……真っ暗闇の中、他に動くものは見当たらない。

 

 ワンオペ体制の弊害……。

 従業員が一人だけだと、万が一そいつが怪我をしたり、急病になったり、強盗とかのトラブルの際、対応ができなってしまうんだ。

 

 まさに、今がそんな状況だった。 


 だからこそ、店内に常に最低二人の従業員が常駐している体制にする事が、マニュアルでも推奨されていたし、防犯などを考えると、むしろそれが当然の話だと言えた。

 

 もちろん、僕だって出来ることならば、そうしたかったのだけど……人手不足の問題が解消できず、オーナーによる連日の深夜ワンオペと言う状況に甘んじてしまっていたのだ。

 

 けど……それを今更言ってもしょうがない。

 

 いずれにせよ、これはもうこの娘に助けを呼んでもらわないと……。

 誰だか解らないけど、この状況で誰かが側にいてくれたのは、運が良かったとしか言いようがない。

 

 この場合、救急車? レスキュー隊? 119番で大丈夫かな? けど、そもそも、あれだけの大地震。

 街の被害だって、それなりに出ているはずで……電話が繋がるかどうかもわからない。

 

 幸い群馬に海なんて無いから、地震の後の津波の心配はいらない。

 すぐ裏に山があるけど、この店のあるところは、山筋で若干高くなってるから山崩れが起きても、土石流とかの心配もいらない……なにげに、いい土地じゃあるんだよ。

 

 余震の心配はあるだろうけど、今のは揺れ始めてから緊急地震速報が鳴ってたから、おそらく震源が直下に近い直下型地震だ。

 

 いつぞやか、地震体験車で体験したのと比較した感じだと、震度5強か6弱くらい?

 あの東日本大震災の時は、ここらもかなり揺れたのだけど、あの時よりは、揺れてる時間も短かったから、そこまで被害は大きくないような気がする。

 

 だとすれば、都心も含めた他の地域の被害は問題にならないレベルに留まっただろう……。

 実際、熊本の地震でも、震源地付近の被害は深刻でも、隣の県はさしたる被害もなく、近隣県や全国から救援が殺到して、かなり早い段階で救援体制が整ったと聞いている。

 

 まぁ……日本は地震大国だからな。

 阪神淡路、東日本と海外なら国が傾くレベルの地震を何度も経験してるんだ。

 

 建物だって、頑丈だ……実際、この建物だって、しっかり持ちこたえた。

 大丈夫……なんとかなる!

 

 とにかく、こう言うときは、慌てちゃダメだし、慌てさせてもいけない。

 極力、冷静に対応すべきだった。

 

「すまない……ご覧の通り、僕は動けそうもない。それに足に怪我をしたみたいなんだ。すまないけど、急いで助けを呼んできてくれないか? 頼むよ」


 不味いことに倒れてきた陳列棚の上に隣の陳列棚が重なって、二つ分の重量がかかってるような状況だった。

 幸い運良く棚が変形してできた隙間に下半身が潜り込むようになっているので、押しつぶされたりはしていないんだけど……どのみち、重機とか工具がないとこんなのどうにもならない。


「ご主人様、動けないにゃっ! これが邪魔みたいだから、すぐにどけるにゃ!」


 ご主人様? さっきもそう呼んでたけど、どう言う事?

 ……この娘、お客さんじゃないの? それにそのにゃって語尾はなに?

 

 僕の疑問を他所に、女の子が僕に乗っかったままの陳列棚に手をかけようとする。


「……これを女の子一人で動かすってのは、さすがに無理だよ……危ないから、離れて……」

 

 とにかく、危ないから離れてほしかったんだけど、僕の言葉を最後まで言い終わる前に、ひょいと軽々と陳列棚が持ち上げられてしまう。


 え? ちょっと待って、陳列棚も二列折重なって倒れて来てたのに、そんなまとめてあっさりと?!

 

「んんーっ! よぃしょおっ! うーにゃーっ!」

 

 そんなに力を入れてるように見えないのに、メキメキ、ガシャンと言う音を立てて、横倒しだった陳列棚が元の位置に収まる。

 

 僕、思わず呆然。

 おまけに、勢い余ったらしくメリメリとか言って、棚が変形して向こう側へ倒れていくのが見えた……。

 

 今のなに? 力技? 折り重なったスチール棚を軽々持ち上げた上に、曲げちゃったよ?


 この娘、サイボーグか何かなの?

 

 模様替えや棚卸しの時とかに、陳列棚を動かした事位はあるんだけど……。

 この棚って、そんな簡単に動かせるような重さじゃないし、そんな素手で曲げられるほど、ヤワくないぞ?

 

 ……とはいえ、これで自由になったのは確かだった。

 

 足の傷の状態を見たいところだけど、明かりがないからよく見えない。


 僕のスマホは……レジ台の上に置きっぱなしのはずなんだけど、何処かにすっ飛んで行ったらしく見当たらない。

 そりゃそーだよなぁ……液晶とか割れてなきゃ良いけど。

 

「あ、ありがとう……すまない。そうだ! スマホか何かあれば貸してくれ。明かりが欲しい……まずは傷の状態を見ないと……」


 左足は問題なさそうなんだけど、右足は痺れたようになっていて、全く力が入らない……。

 痛みはさほどではないのだけど、太ももの辺りから脈打つように、じんわりと生ぬるい感触が広がっていくのが解った。

 

 ……何処か、太い血管を切ったのかもしれない。

 これは本格的にマズい……今まで上から圧迫されていて、止血されていたようなものだったのだけど、圧迫から開放されて一気に出血したらしい。

 

 ……これは、あまりよろしくない。 

 女の子がしゃがみ込んで、足の様子を見てくれている。

 

「ご主人様っ! ち、血がいっぱい出てるよっ! た、大変だにゃーっ!」


 真っ暗にも関わらず、彼女には怪我の状態が見えているらしかった。

 

「な、なにか縛るものがあれば、貸してくれ……まずは止血しないと……」


 とにかく、この出血量はマズい……人間、手足の怪我くらいじゃ死なないけど、深い傷ともなると、出血多量で死ぬ可能性が出てくる。


 と言うか……対処が遅れると、確実に命取りになる。

 一刻も早い止血と病院での処置が必要……なのだけど、女の子はジッと怪我した辺りを見つめるだけで、動こうとしない。


 やっぱり無理か……看護師とかでも無い限り、とっさに応急処置なんて出来るはずがない。


「……と、とりあえず119番に連絡を……あと、止血も……頼むっ! 紐か何かで足の付根を縛る……それでいいからっ!」


 さすがに、焦りが出てくる。

 これは、洒落抜きで命に関わる状態だった……心なしか、寒気もしてきたし、頭がボーッとしてきてる。


「大丈夫っ! 私がなんとかするにゃっ! お任せだにゃーっ!」

 

 それだけ言うと、意を決したように、女の子はすっと太ももの辺りに手をかざす。

 

「……つ、集え、癒やしの光よ! 傷つきしものに救いの手をっ! にゃー! にゃー! にゃにゃーっ!」


 彼女がそう呟くと、脚の方にぼんやりとした淡い光が集まっていく。

 

 その部分だけまるで、陽光に照らされているかのようにじんわり温かくなっていって、痛みがウソのように消えていった。

 

 痺れたようになっていた右足に急速に感覚が戻っていくと、温かい感触が体中を包む。

 

 恐る恐る足を動かしてみると、普通に動く……痛みもない。

 傷と思わしき箇所を触ってみるのだけど、なんとも無かった。

 

 怪我の名残としては、破けたズボンだけ。

 あれだけダバダバ出てた血の跡すら残ってない……。

 

「う、うそ……だろ?」


 ……まるで、ファンタジーに出てくる魔法みたいに、あれだけの大怪我が一瞬で始めから無かったかのように、綺麗に治ってしまった。 


 いや、今のは……魔法そのものだった。

 

 彼女はいったい……なにものなんだーっ?!

地震の時に倒れそうな棚を支える……私も東日本大震災の時にやらかしてます。(笑)


途中で、こら駄目だって思って、手を離そうと思ったんだけど。

上司や他の人が必死で支えようとしてたので、ジリジリと逃げれる体勢で、最後まで支えてました。


冷静に考えたら、組み上げたばっかの空の棚なんて、ほっとけよ! って感じだったんですけどね。

人間パニクると、理不尽な行動をしがちです。

ちなみに、阪神淡路の時は電子ジャーがすっ飛んでって、壁に刺さったって親戚のおじさんが言ってた!


そんな訳で、チートヒロイン登場っ!(笑)

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