第十四話「イケメンと猫耳おっさんのうららかな午後」②
近い内に本部の人達を交えた遠隔会議を行うことになってるんだけど、パーラムさんにこちらの世界の代表って事で、同席してもらう予定だった。
……なにせ、パーラムさん……交渉人としては、僕ですら舌を巻くほどのレベルの人。
この人なら鹿島さん相手にも決して引けをとらないだろうと僕は確信している。
なんでも、キリカさんの話だと、商人ギルドのロメオ支部の副マスターの一人……思い切り大幹部って奴ですがな。
そんな大幹部を当然のように送り込んでくる辺り、商人ギルドの本気ぶりが伺える。
一方、鹿島さん達はと言うと……どうも、こっちの世界と貿易をしたいとか考えてるようなんだけど。
うちのコンビニで、日本の技術、商品を売りつけるデモストレーションでもやらせたい……そんな意図が見え隠れしていた。
無限軌道車も日本の最新技術サンプルとして送りつけてきたらしく、欲しがる人がいれば売っても良い……なんて言われてもいる。
ちなみに、仕組みは良く解らないけど、水を燃料にして、手放しでも勝手に進む超怪しげな代物……。
ハンドルとかもついてない一人乗りで、進めとか止まれ言えば、言うことを聞く驚きのボイスコマンド方式。
セットになってる小型ドローンで撮影した空撮映像で、ここまで行けって感じでタッチパネルで指定すると、そこまで勝手に行ってくれて、障害物があれば避けていくし、多少の段差も物ともしない。
まるで、SF映画か未来の世界から、直輸入したんじゃないかってくらいの超ハイテクマシーン!
そんなものが開発されてたなんて、全然知らなかったけど……ホント、怪しげだ。
なんで、水だけで動くのか? その動力源すらもブラックボックスで極秘とか言ってるくらいだから、もう胡散臭くて涙が出る。
僕なら、絶対買わない……。
でも、道なき道をほっといてもモリモリ進んでいくので、メチャクチャ便利。
コンビニ周囲の村も、開墾が進んでやたら広くなって、徒歩だとキツイなって思い始めてたから、足代わりには丁度良くて、なんだかんだで重宝してる。
ミミモモでも動かせるから、配達用に試しに使わせてみてるけど、なかなか好評……なにより、大人が乗ると窮屈そうな小型車両でも、ミミモモが並んで乗ってるとやたらと可愛い。
と言うか、高度AI搭載の自律機動車なんて……明らかにオーバー・テクノロジーのような気もするんだけどねぇ……。
うっかり高度すぎるのを作っちゃって、表に出せないからって、異世界に送り込んでの実証テスト……。
案外、そんな調子なのかもしれない……爆発とかしないよね?
もっともパーラムさん達も、日本の商品の数々に興味津々で、オマケのように送りつけてくる怪しげな物品にも手当たり次第に手を出してみてたりするのだから、世話ない。
実は、鹿島さんとの交渉に同席と言うのも、パーラムさん本人が強く希望したってのもある。
なんと言うか、どっちもどっちで、大概だよな……。
現地の商人ギルドのスタッフは、目下パーラムさんだけなんだけど、冒険者ギルドの業務代行権限も持たされているとかで、あっちこっちへと忙しく駆け回っている……いずれ増員する予定らしいけど、当面はお一人様なんだとか……ブラックです! 超絶ブラック!
おかげで、ランシアさん達も割とスムーズに、このコンビニの警備隊に、編入されることになり、まぁ……いつぞやか色々あった事もあって、ランシアさんもすっかりお仲間のひとりとして、仲良くしてくれている。
ちなみに、エルフさん達もこのジャングルの住民だったのだけど、ランシアさんやラフィーさんが声掛けしてくれて、おっかなびっくりって調子で、コンビニにやって来るようになっていた。
で……あっさり、メシウマーってなって、一族諸共、すっかり常連化してしまった。
なお、エルフさんの食事情は割とメシマズ、とにかくメシマズ。
菜食主義者なのはいいんだけど、木の葉とか、草やらを軽く塩振った程度で、そのままで食べてたりするのが普通。
どんぐり団子とかも、アク抜きしてないから、渋苦くってたまらんかった。
そりゃ、皆スリムになるわけだよ……。
ランシアさんが、割と喜々としてうちの専属冒険者として、居着いたのもさもありなん……なのかな?
テンチョーとキリカさんと言う猛烈ラブ勢に囲まれていると、サバサバとしてるんだけど、年上感たっぷりで時々デレるランシアさんは、ミミモモ共々僕の癒し枠。
実は、ランシアさんは僕にとって、魔法の先生でもある……これはアルバイトって事で、月謝を要求されているのだけど……まぁ、安いもんだろう。
魔力使い果たして、ヘロヘロになった僕を、毎回膝枕とナデナデで労ってくれるんだけど、うっかりバブみを感じたくらいには、コストパフォーマンス抜群だ。
ちなみに、尻尾からお湯を出したり、尻尾を氷漬けにしたりも出来るようなったぞ!
それと、それとっ! 水圧を高めることで、ウォータージェットみたいにも出来るようになった!
これはいいぞ? 壁の汚れやタイルの継ぎ目の汚れがモリモリ取れるんだぜ?
もっとも、モモちゃんみたいに喉が渇いたからって、自分の尻尾をハムっと咥えて、水をジャーってやるのだけは真似してないけどな。
……ミミちゃんにねだられてやったら、すごく犯罪臭のする絵面だったとだけ言っておこう……。
「……いやぁ、こっちも連絡が行き届かなくて、騒がせてしまって申し訳なかったよ。でも、さすがに雲の上まで逃げても届くような魔術なんて前代未聞だった……テンチョーさん、ほんと凄いね」
パーラムさんが言ってるのは、テンチョーがワイバーン戦での教訓を生かして、独自に光の矢をパワーアップさせたその名も「バルカンショットアロー」!!
例えるなら、花火のスターマインみたいな感じ。
光る矢を放つところまでは一緒で、それを4、5本くらいまとめて放って、それが分裂して、10倍位の本数になって、更に空中で弾けて、当たるとチュドーンと爆発する光の玉が四方八方にバラ撒かれると言う極悪な広域制圧魔法に進化した。
対空用でも、十分極悪なんだけど対地用に使ったら、100m位の範囲がまとめて火の海になった。
所謂クラスター爆弾ってやつだ……恐ろしや、あな恐ろしや。
オスロ条約と言う国際条約で禁止されるくらいには、凶悪な虐殺兵器なんだが……テンチョーは、一体何と戦うつもりなのだろう?
「ははっ……正直、良く生きてたなぁって思いましたよ」
「そうだねっ! でも、過ぎたことだし、皆、無事だったから、良しとしましょう」
そんな極悪な対空砲火に晒されて、割と死ぬような思いをしたはずなのに、爽やかな笑顔で流してくれたパーラムさん。
有能で、寛容な好青年。
なんと言ってもイケメン……やべぇ、女だったら惚れてる。
この世界で会った男性って、ラドクリフさんもだけど、イケメンが多過ぎる……。
「そうですね……いやはや、パーラムさんが寛容な人で良かったですよ」
「人は許し合うべきだと思うよ? ところで、浮かない顔だね……何かあったのかい?」
「いえ、実はここ数日……ランシアさんやテンチョーが言うには、かなり遠いようですけど、ワイバーンがまたチョロチョロしてるみたいなんですよね。ほっといて良いものかどうか……。もし、近付いて来てもテンチョーがいるから、なんとでもなると思うんですけどね。あの時も妙なヤツを取り逃がしたりもしたから、流石に気になりまして……」
「例の雷撃魔法を浴びて、1kmも上空から落ちて無事だったって超人の事だよね? 報告書は私も読んだけど、ラドクリフ君達が報告者じゃなきゃ、とても信じられない話だよ……。でも、帝国では不死兵と呼ばれるバケモノ兵士が幾人もいるって話も聞くし、まんざらあり得ないとは言い切れないな」
「そ、そんなのがいるんですか……」
「私なんかは、良くある戦場のおとぎ話のたぐいだって、思ってたんだけどね。オルメキアと帝国の戦いに参戦した傭兵から聞いた話だと、その不死兵ってのは、全身を矢でハリネズミみたいにされてても戦い続けたとか、首が無くなっても生きてた……なんて話もあってね。そして、そんな化物を容易く屠った炎を操る異形の女神の使徒……まぁ、ここまで来ると、流石に眉唾な話なんだけどね」
なに、その人間やめてます的なバケモノ同士の戦いは……。
帝国って、好き勝手暴れ放題の上に、人間をそんなバケモノに改造とかもやってるって事か……。
僕ら獣人とは絶対に相容れないみたいだし、最近は亜人ですら、排斥対象になってるって言うし……ホントどうしょうもない国だな……。
女神の使徒ってのも……テンチョーのチートっぷりを見てると、テンチョーの同類……そう思うと、納得は出来る。
でも、そんなチート能力を持って、化物相手に無双とか……どうなんだろうねぇ。
……修羅と修羅が相争うなんて、この世に地獄を召喚するようなもんだろうに……。
まぁ、どのみち僕には関係ない話……だと良いんだけど。
僕としては、このまま平穏に商売でもしながら、のんびりと暮らしたいってのが正直なところなんだけどね。
残念ながら、この世界はとっても不穏だった。
ああああああ……。
なんで、最終見直し行程で、3000文字が6000文字に増えるんだぁっ!
MITTの作品、たまに一話が長いのはその辺が原因です。
アップ前後の加筆で倍くらいになったりするから。(笑)
なので、今回の予定の半分くらいで切ったので、月曜は休みと言う前言が嘘になりました。
ちなみに、作中の小型無限軌道車両ってのは、セブン○レブンの前にたまに置いてる一人乗りミニカーのキャタピラ版みたいな乗り物です。
ラドクリフさん辺りだとミッチミチで膝抱えるハメになるけど、ミミモモなら並んで座れます。
やたらと可愛い。




