表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
幕間1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/368

幕間その壱「次世代女王クロイエ様のお忍び旅」④

 もはや状況は、急転直下と言えた。


 喉元に剣を突き立てられつつある上に、自国の要と言える街道に独立勢力が出来、コントロール不能の状況が発生しつつあると言うのは、あまり歓迎できたことではない。

 ……それはクロイエとしては、当然の思いだった。

 

「そ、そうです! なにせ、その者達は、森の空を我が物顔で飛び回っていたワイバーンすらも一撃で打ち倒すほどの恐るべし武勇の持ち主なのです! テンチョーと称する猫耳の獣人は、いくつもの未知の魔術を使いこなし、ウォルフ族やミャウ族と言った現地の獣人達も配下に従え、未知なる異界の食べ物や見たこともない物を次々を運び込んでいるようなのです!」


 保身の為か、如何にコンビニが脅威なのか熱弁をふるう商人の男。

 そんな彼の様子をクロイエは、面白そうに見やる。


「……要するに、ややこしいとこで、ややこしそうな奴らが妙な商売始めたって事ね。まぁ、大変……これは、一大事よね!」


 さも驚いたように、口に手をやって、恐れおののくような素振りを見せるクロイエ。


「お嬢様もお人が悪い……状況なんて、とっくに解ってますよね?」


「そうね。思い切り、向こう側の世界……日本のコンビニが進出してきたって感じよね……。となると、日本から本格的に大々的に物を送り込んでる……。そう言うことね。まさか向こうの世界の連中、こっちの世界に本格的に進出出来るだけの用意が出来たって事なのかしらね。お父様の話だと、日本って国は経済の力であっちの世界でも一大勢力になってるって話だし……」


「……お嬢様、これは少々問題なのではないでしょうか? 我々もザルインへの帝国の進出を控えて、なるべく帝国を刺激しない方針とし、法国を動かして、その軍事的圧力と、商人ギルドによる経済的圧力を加えることで帝国に撤兵を強要させる……その手はずです。我々にとっても、マユラの森の交易ルートは、陸の交易の要と言えるルートです。ここに未知の第三勢力が発生し抑えられるというのは、大変よろしくないです。商人ギルド側でも、状況は把握できているので? あなた方にとっても、これは他人事ではないイレギュラーな事態でしょう」


「はぁ……我々としては、その日本のコンビニ……ですかね? とりあえず、商売人だと言う話だったので、ギルドの幹部を送り込んで、ギルド加入の勧誘を行ったところなんですが……。彼らが、異世界の侵略者の尖兵だとでもクロイエ様はお考えなのですか? 彼らは我々の勧誘を断るどころか、喜々として受けてくれたと言う話ですし、あの辺りに交易中継拠点を作ること自体は、前々から計画しておりました。現状、さしたる脅威とは思えないのですが……」


「そこまでは、言ってないわ。お父様の話だと、日本って国は好戦的な国じゃなく、平和主義を掲げてるぬるま湯みたいな国って話だし、私もそんな印象を受けた覚えがあるわ。異世界との関わりも物凄く慎重……どちらかと言うと、こっちの世界の連中が向こうで暴れたりする事を恐れてるって、そんな感じだって聞いてるわ」


「そうですよね。あのリョウスケ様の故郷ですからね。あの世界から来た者達も極一部の例外を除いて、むしろ善良な方も多いですし、女神様の意思のもとで召喚されてくるのですから、悪いものであるはずがありませんよ」


「まぁ、そうね……女神様の意思も絡んでるとなると、悪いもんじゃないって……そう思いたいんだけどね……。あの馬鹿女神……割と浅はかだから、これまでだって余計なことばっかりして、ロクな結果になってないじゃない。お父様もそうだったように、変なチート能力って言うんだっけ? 女神の使徒って、皆、そんなん持ってたりするみたいだし、今回のヤツも規格外の魔術を使ってたって……そうなのよね?」


「は、はい! その者は見えないほどの上空に居たワイバーンを一撃で絶命させる程の魔術を……あのような恐ろしい魔術……」


「それはさっき聞いたからいいわ。いずれせよ……正面切って戦うと面倒そうな相手だし、出来れば敵に回したくはないわね。けれど、現状は、わたし達としてはあまりいい状況とは言えない……まさか、このタイミングで法国が日和見に走るなんてね……。ウルスラ、法国に潜入してる情報員からの報告はないの?」


「どうも法国もかなり混乱しているようでして……。女神の使徒と法皇猊下の謁見後、法皇猊下が急死した為、後継者問題で揉めているとかで、帝国に構っている状況ではなくなってしまったようなんです」


「法王の急逝自体はお悔やみも送ったんだし、ご愁傷様って感じよね。でもなんか、あの話って胡散臭いのよね。……例の女神の使徒の竜人も、大概頭おかしいヤツみたいだし、法国の教皇も色々訳の解んない感じになってたからねぇ……。これはわたしの予想なんだけど、帝国が作り出したっていう例の人間に擬態する魔物? あれが教皇に成り代わってたって可能性は?」


「……ありえます。そして、謁見した女神の使徒がそれを見破って、その場で始末した……実は、我々親衛隊でも、その様に分析しております。もっとも確たる裏付けは取れていないので、状況から推察した単なる想像に過ぎませんが……。謁見を手引きした聖光教会も、あからさまに何か隠し立てしている様子ではあるのですが……なかなか尻尾を出しません。と言うか聖光教会もどうも穏健派と過激派に二分されてるよう様子で、イザリオ司教も何がなんだか……と言った様子で、参考にもなりませんでした」


「法国としても、トップの教皇が化物に成り代わってたなんて、外聞が悪すぎて、とても公表できないでしょうからね。たぶん、真相は永遠に闇の中でしょうね……。けど、教皇なんて、あの国じゃ元々お飾りだったのよね。だから、成り代わっててもほっといて、後継者がちゃんと決まってから、人知れずこっそり始末って……そんな穏便なシナリオを描いてたんじゃないかしらね……。それを女神の使徒が台無しにした……多分、これはそんなに間違ってないと思うわ」


「つまり、これは、女神が生み出したイレギュラーな事態……という事ですね。本当に迷惑な話ですね」


「そうよ……帝国と法国の軍事バランスを影で調整する事で均衡状態を作り出す……。その間に西方各勢力を経済の力でまとめ上げて、群雄割拠状態を解消し、ヴァランティアを再興し、東方の二大国への対抗勢力とする。それがお父様の計画……これ自体は、ゆっくりとだけど、それなりに順調に進んでる。そうよね? ウルスラ」


「はい、各地に散っていった義勇軍の者達もリョウスケ様の計画に基づいて、確実に世界を変えつつありますから。けれど……いくつかのイレギュラーの存在で、その計画に狂いが生じている……そう言うことですね」


「そうよ。だから、これ以上のイレギュラーは勘弁してほしいのよ。ヨーム、あなた方商人ギルドの方針はどうなのかしら? 念のために、再確認させてもらうわ」


 名指しされた商人ギルドマスター……ヨーム・シルドバレットも、困ったような表情を見せる。

 

 エプロン姿で買い物かご……ご丁寧にネギまで持った主婦。

 彼女は一見、何処にでもいるような買い物帰りの主婦にしか見えなかった。

 

 客観的に見て、物凄く場違いな人物ではあったのだが。

 彼女は、大陸有数の大商人にして、商人ギルドのロメオ支部のギルドマスターなのである……けれども、その平凡な見た目に騙されて、一杯食わされる輩はあとを絶たない。

 

 そんな彼女が本拠を構えている時点で、ラキソムが如何に重要な都市なのか、理解できるだろう。


「……我々は、商売の邪魔さえしなければ、戦争なんてやりたい者同士で、勝手にやってろって方針ですからね。元よりリョウスケさんの残した方針、穏便な手段で大陸の流通網を掌握し、軍事と商業を切り離す……これは元より全面的に支持しており、我らの理念、大方針とも言えます。……あのお方の残した遺志を重要視している点では、クロイエ様と志を同じくする……そう思っていただいて結構です」


「なら、一安心……そう言うべきかしらね? じゃあ、ザルイン接収の件はギルドとしてはどうするおつもりで? 具体的な動きが殆ど見えてこないんだけど、あなた方商人ギルドはなにをやってるのかしら?」


「帝国のザルイン接収の動きは、我々としても看過できません。現在、帝国からの資本の大幅引き上げの上で、海上封鎖の撤回要求を重ねております。その上でヴァランティア残党、法国の過激派、帝国内反乱分子に緊急経済援助を行い焚きつける所存です。海上輸送も帝国に妨害され、事実上使い物にならなくなっている上に、ザルインを潰され、周辺で臨検なんて始められたら、我々もたちまち立ち行かなくなりますからね。フランネルもこちらが一番やって欲しくない事を的確に狙ってくる辺り、さすがです……」


「……商人ギルド単独じゃ、純然たる国家、帝国の軍事力には太刀打ち出来ない……。帝国に経済的な嫌がらせをしたり、敵対勢力に資金を与えて焚きつける程度が関の山。前みたいに義勇軍を結成ってのも、お父様みたいに様々な思惑を持った諸勢力をまとめ上げるような傑物なんていやしない……。そうなるとやっぱり、例のコンビニが問題になってくるわね。あんな所に独立勢力なんて出来たら、絶対帝国がこれ幸いと難癖つけて来るでしょうし……まったく、どうしたものかしらね……」


「例のコンビニについては、どうも経済に明るい者が首謀者のようなので、上手くやれば我々の同志となってくれるやもしれないと期待しているのですが……。如何せん、ようやっとコンタクトを取れた段階なので、何を考えているのかとかはさっぱりです……。この辺りは、現地に派遣したパーラム君の手腕に期待しているんですけど」


「パーラムって、アンタの右腕じゃないの……そんなのを送り込むなんて、割と本気で口説き落とすつもりって事ね。でも、イザリオ司教の話だと、本来は示現体……女神様の代理人アバターが降臨して、グダグダのすべてを帳消しにかかるって話だったのに……なんで、その代わりに異世界のコンビニが出来ちゃったのやら……訳、解んないんだけど……」


「あいにく、神ならぬ我が身ですから、女神様の真意なんて計り知れませんよ……。クロイエ様……現状の最善としては、彼の者達と友誼を取り図るべきかと。少なくとも王国に敵対する意思がないというのは解っておりますからね。彼らの力を取り込めれば、帝国へ対抗しうる大いなる力になりえるかも知れません」


「そうね……そのコンビニ経営者とやらもそう言う事なら、このわたしが直々に会ってみる価値はありそうね。けど、どうしたものかしらね。わたしが出向いていってやってもいいけど、立場上、問答無用で拉致って連行したって、何処からも文句言われる筋合いないわよね」


 彼女の言葉にヨームが血相を変えた……当然だった。


 商人ギルドとしては、タカクラオーナーとのファーストコンタクトも上手くいって、話し合いも平穏無事に終わり、異世界日本との交易すら夢ではないと沸き立っていた所だったのだ。


 そこへ、そんな乱暴極まりない干渉をされてはたまったものではなかった。


「ちょっと待ってください! 拉致、連行なんて、そんな無茶やめてください! その方も別に悪意を持っている訳でなさそうですし、ワイバーンを単独で撃ち落とすような者達ですよ? いたずらに敵意を買うような真似は控えるべきなのでは?」


「悪いけど……呑気に話し合いとか悠長なことやってられる状況じゃないのよね。連中がわたしに服従するか、敵対するか……結局、そのどちらかを迫るしか、やりようなんてないじゃない。中立とか半端な立場なんて、許せるわけがないわ。別に、わたしが直接出向いて、話し合っても良いんだけど……ウルスラ達は反対よね?」


「当然です! 次期女王陛下たるクロイエ様がわざわざ危険地帯へ出向いて、異界の者と交渉なんて、論外です! こちらが譲歩するつもりがないと知らしめるためにも、武力行使の上でこちらの実力を誇示し、その上で交渉……それが当然の対応かと思います」


「そうよね? やっぱ、こっちが頭を下げて、こっちまで来てもらうなんてのより、問答無用で叩きのめして連行して、恩赦って事で自分の立場を解らせてからの話し合い。その方がいいと思わない? と言うか、人の国の保護領で、勝手に異世界の商品持ち込んで、商売始めといて、このわたしに挨拶もなしとか、ふざけた話よね。実はちょっとムカついてるのよ……せめて、プリンでも持って、真っ先に挨拶に来やがれっての! それがスジってもんでしょ!」


 ……要するに、顔を潰された事に対して、彼女は怒っているのだった。

 余所者にシマを荒らされて、挨拶もない……怒るのも当然と言えば当然だった。


 もっとも、彼女自身、何度も自分でも言っているようにメイド・イン・ジャパンのプリンに、並々ならぬ執着を持っていた。


 彼女が幼い頃、リョウスケが日本土産として、必ず買い込んできていたのだが……それですっかり虜になってしまったのだ。


 当然、幾度となく再現を試みたのだが……出来上がったのは、茶碗蒸しに甘苦いカラメルシロップもどきをかけたようなもので、何かが致命的に足りない……如何せん、スイーツというものがあまり流行ってない世界では、プリン一つの再現も難儀しているのが実情だった。


 実際のところ、高倉オーナーがプリンでも持って、頭下げてきたら喜々として受け入れる……その程度にクロイエ様はチョロかった。


 ……本人は、あまり自覚してないのだけど、彼女がそう言うチョロい娘なのだと言うのは、周囲の者達は重々承知していた。

 

 そんな彼女の方針がやけに暴力的なのは、ウルスラ達親衛隊の悪影響というものが少なからずあった。

 

 彼ら親衛隊にとっての交渉とは、ガタガタ言う相手は、とりあえずぶん殴っておとなしくさせてから交渉する……それがむしろ当たり前とされていたのだから、始末が悪い。


 それはヴァランティアの獣人達の流儀でもあり、クロイエもこれまで何度も気難しくて、頭の固い獣人達との紛争をその手で黙らせてきていたので、それが獣人相手の交渉術だと認識していたのも大きかった。

 

 タカクラオーナーにとっては、とんだ災難ではあるのだが……こんな風に、当人の預かり知らぬところで、一方的にタカクラオーナーの拉致、連行が決められてしまったのだった。

意図的にペース下げてますが。

やっと、先の展開の構想がまとまってきたんで、ペース上げられるかも?


しばらくは、隔日ペースとなりますが、ご了承を!


と言うか、クロイエ様編はイマイチ不評?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ