第十三話「かくて、異世界の夜は更けゆく」②
「……和歌子さんに野宿させるくらいなら、僕らが外で寝るよ! 元々僕らには屋根の下で寝るなんて、贅沢過ぎるって思ってたんだ」
それまで、話を聞いていたミミちゃんが唐突にそんな事を言いだした。
「そ、そうです! 和歌子さん……遠慮なんてしなくていいです! 私達なら、外で寝るのだって慣れてますから」
……そして、当然のようにモモちゃんも同意する。
えー? 和歌子さんの寝るスペースの為に、なんで君らが外にって話になるの?
そもそも、それ位なんとでもなると思うんだけど……なんで、そうなるわけ?
でも、なんか話の流れ的に、僕もなんか言わないと駄目な気がしてきた。
「いや! 君らを外に寝かせるくらいなら、僕が外で寝るよ!」
まぁ、気の使えるいい男を演じるなら、これくらい言ってのけないとな。
……決まった! ちょっと今の僕は、男らしかった!
和歌子さん、僕だって成長するんだぜ? 思い知れ!
「……オーナーがそう言うなら、うちは止めへんけど……テンチョーは構わへんの?」
「お外、夜になっても暖かいよね? そうだ屋根の上とかどうかな? お星様が見えるし、テンチョーも遊びにいってあげるよ!」
「……小さい子達の為に、身体を張るっ! さすが、高倉オーナー……男の中の男ねっ! じゃあ、皆! 今夜は女の子同士、仲良くやりましょっ!」
いい笑顔で笑う和歌子さん。
まさに、思い通りの理想の展開……そんな様子だった。
……あれ? なんで、こうなったの?
「オーナーさん、僕らのために……」
「はいっ! 私もちょっと見直しました! か、カッコいいとか思ってませんしっ!」
感動したような面持ちのミミモモ。
と言うか、薄々思ってたけどモモちゃんってちょっとツンデレ入ってる?
……なんか、これ……ドツボにはまってるような。
だが、これぞまさに、墓穴を掘ったと言うやつ……誰にも文句は言えない。
いや、だからわざわざ、僕が外で寝なくても、廊下だのバックヤードの休憩室だのいくらでも場所はあるんだけど。
寝るスペースの問題でもなんでもないんだけど、なんかもう僕は外で寝ることが確定してるような雰囲気だった。
どうしてこうなった?!
……ここで前言撤回と言うのは、僕の株が大暴落でストップ安になるのは明らかだし、なんとなくその後の展開も見えてくる。
つまり、肌色多め展開って奴だね。
昨日と違って、今日は無粋な邪魔立ても入りそうもない……ココ重要!
……だが、まぁいい。
我が道はすでに経たれたのだ! それも自らの手で!
はっはっはっ! 健全路線バンザイっ! フラグブレイカーに栄光あれっ!
かくして、僕の今夜の寝床は屋上、寝袋と言うことになった!
……ノーパンガールズに囲まれて、欲望との戦いを回避できると思えば……。
でも、ちょっと違うような……参ったね、こりゃ。
「あ、あのオーナーさん、なんでこんなところで寝てるんです?」
屋上の隅っこで太陽電池パネルの下にダンボール敷いて、寝袋に潜り込んでたら、今夜も見張り要員として配置されたランシアさんがやってきた。
今日もやっぱり、薄手の服だから、色々透けてるんだけど……基本的に、そう言うの気にしないタチらしい。
「ランシアさん、今日もかわいいね! 実は、君と一緒に星空が見たくてさ!」
なんて、カッコいいセリフをランシアさん相手に吐いてみたりもしたけど……鼻で笑われるに留まった。
「ぷっ! オーナーさん、なにそれ?」
「……んー、ちょっと気を利かせたつもりだったんだけど、ハズしたね……忘れて」
……ぬがぁあああっ! むしろ、殺せっ!
勢いで妙なことを口走っても、残るのは多大なる後悔のみ……もう死ねっ! くっ殺せっ!
でもなぜか、ランシアさんはそんな僕を見つめると、ふっと微笑みを浮かべると膝枕なんてしてくれる。
「まったく、エルフを口説こうとする獣人なんて、前代未聞なんだけどねー。面白かったから、特別サービス!」
あれ? なんでこんな事に……。
おまけに、何故か頭ナデナデ……ランシアさん、実は結構母性系?
「ははっ……軽い冗談だったんだけどね。でも、エルフとか昔から憧れだったんだよなぁ……。実物も思ったより、素敵だし……」
「やぁねっ! この子はっ! アンタ達獣人からみたら、私達エルフなんて木の枝みたいなもん……なんて、いつも陰口叩かれてるんだけどね。……それを憧れとか、可愛いって……なに言ってんだかねーっ!」
言いながら、僕の鼻の頭を軽くデコピン。
照れ隠し……なのかなぁ……って言うか、この人も何気に可愛い。
ちなみに、ランシアさん、こう見えて100年位生きてるらしい。
そりゃ、僕程度の若造……青二才扱いもさもありなん。
でも、見た目は女子高生どころか女子中学生くらいなんだよなー。
ロリなんだけど、おかん属性。
そして、トンガリお耳に細くて白い肌……まさに妖精。
まぁ、確かに膝枕とかしてもらってると、もう少しボリュームが欲しいとか思うけどね。
それは言うのは、無粋だし……なんかいい匂いがするんだよね……。
「おお、流星っ!」
空を見上げると流星がツイーと流れていったので、思わず叫んでしまう。
「落ち星の事? 珍しくもないんじゃないの? 空見てると、よく見かけるわよ」
「僕の故郷では、流星が消えるまでに三回願い事を言えれば、願いが叶うって言うんだ……実際は、なかなか難しいんだけど」
「それホント? あ、落ち星発見っ! 金ッ! 金ッ! 金ーッ!」
……100歳超えのエルフ精霊術士様のお願い事は、とっても俗物的だった。
反射的に立ち上がってくれたもんだから、僕の頭もぽいっと。
寝袋に入ったままだから、文字通り手も足も出ず、ベチャッと顔を強打するハメに……。
女子の膝枕というヘブン状態から、顔面強打というヘルダイブ!
本当にありがとうございますっ!
残念ながら、痛いのは僕にとってはご褒美ではないんだがね。
「あ、ごめん……あははっ!」
「ランシアさん……お金だけが人生じゃないよ? お金で買えないものの方が多いんだよ……」
色々台無し……ちょっといい雰囲気になって、フラグ? と思ったら、またこんなオチ。
まぁ、所詮僕はこんなもんなんだ……ラブ展開になると思った? 残念だったな!
それなりに、モテるのに絶妙にフラグをヘシ折っていくフラグブレイカー! それが僕なのだ。
うん、知ってた!
言っとくけど、ワザとやってんじゃないよ?
何故か、いつもいつも不思議とそうなるんだ……だから、僕も半ば、諦めの境地にたどり着いている。
とにもかくにも……。
そんなこんなで、異世界生活が始まって、ようやっと……のような気がする気楽な夜が更けていくのだった。
……なんか、忘れてるような気がするけど、どうでもいいや!
明日は明日の風が吹くってねー!
とりあえず、ここで一旦一部完。
明日、明後日はお休みの予定です!
木曜日からは、新章! 主人公チェンジです。
まぁ、私の小説じゃよくありますからね。




