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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第一章「猫テンチョーとコンビニ……異世界に建つっ!」

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第十二話「とりあえず、カレーでも作るかと彼の者は言った」⑤

「さぁ! 皆さん、このサントスさんオリジナルカレーを召し上がってくださいねっ!」


 給仕役として、ククリカちゃんと言うサントスさんの弟子のうさ耳娘が手際よく盛り付けて、全員に配ってくれる。

 なんでも、例の戦乱で、故郷を焼き出され、戦災孤児だったのをサントスさんが拾って、弟子兼助手として面倒見ているそうで、サントスさん共々うちの従業員として雇うことになった。

 

 そんな自分の身も危うい戦乱の最中、見も知らぬ獣人の子供を拾って……なんて、簡単に出来ることじゃないと思うんだけど……サントスさん、ええ人や。

 

 本人曰く、「腹空かせて餓死しそうになってるやつが居たから、飯食わせてやった! そしたら、勝手に付いてきたから、仕方なしに面倒見ることにした」……なんて言いながら、俺の自慢の弟子とか言ってる辺り、ツンデレのようなもんだと、僕は見ている。


「おおっ! なんか黒いけど、匂いはカレーじゃないか! 凄いな、サントスさん!」


 ……匂いはカレーとにんにく、オニオン系の何かが混ざった感じで、見た目については一言で言えば黒い。

 黒っぽいじゃなくて、イカスミスパゲティみたいにとにかく、黒い!

 

 けど、味は抜群に美味いってのは、解りきってるんだな。

 

 何度か味見を頼まれて、それなりに美味しかったんだけど、料理人の意地とかでイレブンマートオリジナルカレーを超える! なんて、言い出して、そう言う事ならと、色々ダメ出しをしたんだ。

 

 けど……本当に、超えてくる辺りサントスさん、只者じゃなかった!

 

「まったく、ダンナの注文に応えるのは、なかなかハードだったぜ? だが、おかげで満足行くものが仕上がった! さぁ、食ってくれ! 俺は外の奴らにも配ってやらねぇといけねぇ。連中さっきからずっと匂いだけ嗅がされてお預け状態だったからな、この調子だと暴動になりかねねぇ。ククリカ、ダンナ方の給仕役は任せたからな」

 

「は、はいっ! 親方! 頑張りまっす!」


 ビシッと敬礼バニーちゃん。

 親方のサントスさんと違って、癒し系。

 

 なお、身体の大きさはミミモモと大差ない。

 三角巾から、うさ耳がぴょこぴょこ覗いてて、とっても可愛らしい。


「……あれ? サントスさん、一人でお客さんの相手って、それで大丈夫なのかい? ククリカちゃんこっちに残しちゃったら、手がまわらないんじゃ……」


「はっはっは! どうせ、その辺の誰かを手伝わせるから、心配いらんよ! ククリカも付け合せやらを配り終えたら、ついでに、ダンナ達と飯食っちまえ。そんな訳で、ダンナもごゆっくり堪能あれって奴だ! 感想は聞くまでもねぇしな」


 自信満々と言った様子の捨てぜりふを残して、サントスさんが、テントの外に置いてあった巨大鍋の方に行ってしまうと、お玉片手のククリカちゃんがポツーンと取り残された格好になってしまっている。

 

 今日は、ずっとサントスさんに怒鳴られながら、忙しそうに走り回ってるのしか見てなかったんだけどね。

 働き者のいい子なのは知ってる……ここは、やっぱ一緒に食べないとだね。

 

 ふと見ると、皆大人しく手を付けず待ってる感じ。

 

「ククリカちゃん! 君も自分の分を用意して、僕らと一緒に座りなよ。ずっと立ちっぱしで動き詰めだったから疲れてるでしょ?」


「い、いいんですか? でも、私は皆さんの給仕役を仰せつかったので……あとで一人で残り物でも頂きますよ」


「ククリカ……遠慮とかせんでいいでっ! このマスターはんは、お人好しだから、うちら従業員を皆、全員平等に扱いたいんやろ。ちゅう訳で、お前が座らんとうちらもお預けや……見ぃや……テンチョーさんやミミモモ達なんか、我慢しすぎて大変なことになっとるよ?」


 見ると、ヨダレ垂らしそうになりながら、スプーンを片手に欲望と戦うテンチョーとミミモモの姿がっ!

 

「ははは……そう言うこと。まぁ、おかわりとかはそれくらい自分でやるし、給仕役っても後はもう突っ立ってるだけじゃないかな?」


 ククリカちゃんも、ちらっと見比べるとテキパキとお皿に自分の分をよそうと、僕らが座るテーブルの隅っこに座り込むとにっこり微笑む。

 

「じゃあ、改めて……いただきます! サントスさん、勝手に頂いてるよ!」


 言いながら、サントスさんの様子を見ると忙しそうにお客さん達にカレーライスを配りながら、めんどくさそうに手を振る。

 

「「いただきまーす!」」


 声をハモらせながら、皆お腹が空いてたらしく一斉にガッツく。

 女の子なんだから、お淑やかに……とか、うるさいことは言いっこなし。

 

 僕も異世界風アレンジが施されたカレーライスを一口。

 

 ベースのルーは、メイドインジャパンの食堂なんかでも使われているJカレーと言う商品名のもの。

 それに加え、ニンニクの辛味、黒胡椒系のスパイスの効いたスパイシーな代物にアレンジされている。

 

 普通にうまいっ! 味はイレブンマートオリジナルカレーに勝るとも劣らない出来だった。

 

 ちなみに、ご飯はサントスさんが持ち込んだこっちの世界のお米と、商品のコシヒカリをブレンドしたものを飯盒炊爨みたいな感じので、炊いたのを使っている。

 

 こっちの世界のコメは、細長いインディカ米みたいな感じなのだけど、粘り気もあってむしろ日本の米に近いものだった。


 なんでも、ロメオ王国では……王様のこだわりとかで、このお米のような何かの栽培が推奨されていて、場所によっては田園風景が広がってるんだとか。

 

 ……絶対、その王様って日本人だよなぁ……。

 この調子だと、味噌とか醤油もありそうだな。

 

「ねぇ、ククリカちゃん……このカレー、なんでこんな真っ黒になっちゃったの?」


「色ですか? たぶんこれですね」


 そう言って、玉ねぎの切れっ端のようなものをスプーンで掬って見せてくれる。

 

 一言で言うと、黒い玉ねぎ……?

 

「デ、ディサイアの実やんけ……そんなゴッツう臭いモン入れたんか?」


「そ、そんななの?」


「そうですよ。これって生だとひどい匂いなんですけど、軽く炙ってから水に漬け込むと匂いが消えるんですよ……サントス親方の秘伝のひとつなんですけどね。炙る火加減とか水の温度調節とか結構、細かいコツがあるんで、素人には絶対真似できません」


 誇らしそうに胸を張るククリカちゃん。

 その秘伝をすでに伝授してもらってるということなんだろうな……。


「そんな臭いの? むしろ、興味あるんだけど……」


「悪いことは言わんから、食事中は止めた方がええで? さっきの変なドリンクも大概やったけど、ディサイアも相当ヤバイで?」


「そうですね。使う直前まで二重にした革袋に入れておいて、屋外……それも風下の離れたところで開封してすぐに炙るようにします。火加減も半端なのだと物凄く臭うので、間違っても市街地じゃ扱えない難儀な食材なんですよ」


「知っとるで! たまにヘマやって、食堂の客や従業員がまとめてぶっ倒れたりするって話聞いたことあるで……」


 扱い間違うと、全員倒れるって……もはや、思い切り毒物のような気もするんだけど。


 この独特のコクと旨味は多分、そのディサイアの実なんだろう。


 そこまでして、使うだけのことはあるのかどうか? そう聞かれたら、あると僕は答える。

 

 ……料理に関しては、全くの素人の僕ですら、違いが解る程度には、カレーの味を一段階上のレベルに昇格させている……とんでもない食材だ。


 ヤバイ……美味すぎる! 思わず、スプーンが止まらなくなって、あっさり、皿を空にしてしまった。

 何気に、具が殆ど入ってないシンプルなカレーだったんだけど、もう空けてしまった。


 これは……お代わり待ったなしだ!


 何も言わずともククリカちゃんがお皿を回収して、盛り付けて二杯目を用意してくれる。

 今度のは、ゴロッとした塊肉入り。

 

「……そういや、最初のは肉なしだったんだよね? これが例のワイバーンのお肉?」


「はい! 最初はルーの味を堪能してもらうってことで、敢えて肉なしにするように言われてました! 二杯目が本番なんで、心してご賞味くださいねっ!」


 ……やべぇ、サントスさん。

 一杯目は軽く、お代わりで本番の二段構えだったのか!

 

 さすがプロの料理人! 味の演出ってやつか!

 

 恐る恐ると言った感じで、ゴロリとしたワイバーン肉を一口。

 ホロホロに煮込まれて、オリジナルカレーの風味の染み込んだ肉の旨味。

 

 ……こ、これは、銀行マン時代に、接待で食べさせてもらった松阪牛のすき焼きにも匹敵する味だ!

 

「ふ、ふぉおおおおっ……美味し! 美味すぎるぞーっ!」


 ……ああ、これは巨大化したり、脱ぎたくとかなるよっ!


 人は真に美味いものに出会うと、言葉が出なくなるのだ……出てくるのはただ、何らかのリアクションをしたいと言う衝動のみっ!

 

 尻尾が! 尻尾が激しくそそり立っているぅ! 


「ククリカッ! なんや、オーナーはんがトリップしとるで!!」


「はぅわっ! 大丈夫ですかっ! お水、お水飲んでくださいっ!」


 ククリカちゃんから渡された氷水に浸かって、キンキンに冷えたペットボトルの水を一口飲んでようやっと落ち着いた。


 ……今のは、もはやヤバい領域だった! 危険、危険っ!

 危うく尻尾から、大量の水を吹き出すところだった……これはイカンね!


 もしかして、これ……一時的な魔力増強とかそんな効果もあるのかも! すげーっ!


 見渡すと、ゴロ肉を同じ様に一口で食べたテンチョーも似たような感じになっていた。


 目の焦点が合っておらず、スプーンを握りしめたまま、にへらーと薄笑いを浮かべて、ぽやーんと遠い目をしてる。

 

 テンチョー幸せトリップなう。

 やっぱり、尻尾がぴーんとなってる……!

 

「テ、テンチョーッ!」


「……こ、こりゃ、ヤバイくらい美味さやんけ……うちの……うちの完敗やでぇ……」


 それだけ言い残すと、キリカさんも突っ伏してしまう。


 何故か親指を立てたまま……アイル・ビー・バック?


 ミミモモも何故かエグエグと涙している……。


 もはや、この場で、正気を保っているのは、ククリカちゃんのみ!

  

 まさに、まさに! 悪魔的美味さのサントスカレー!

 

 僕達は……地獄の門を開いてしまったのかも知れなかったーっ!

 

隔日と言っときながら、とりあえず何事もなかったのようにデイリー更新。(笑)

すまんね。いつものことだよ。


一応、次回、次次回更新で第一部完の予定。

まぁ、明日明後日、更新して二、三日休んで次章開始の予定!


次章はちょっと時系列と舞台が飛びます。


第二章「鉄血姫クロエと戦鬼ウルサの世直しデストローイ」


……何が始まるんですか?(笑)


追記

本日付の活動報告で、猫コンビニのワールドマップを公開してます。

適当な作りですが、参考資料としてご覧になっては如何でしょうか?


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