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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第一章「猫テンチョーとコンビニ……異世界に建つっ!」

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第十二話「とりあえず、カレーでも作るかと彼の者は言った」④

 19時を過ぎたので、昨日と同じくシャッターを下ろす。

 昨日のうちに、シャッターに紐をつけておいたので、今日は下ろすのもラクラク。

 

 あとはもう20時くらいの和歌子さんの配送トラック待ち……その後は、あんまり気が進まない本部との遠隔会議の予定である。

 

 なお、今日の配送は、先日の売上からヘルプデスクさんが出したフォーキャストで、細かい部分は本部にお任せとしたのだけど、結果から言うと大失敗だった。


 ヘルプデスクさんの出してきたベースの数値は問題なかったのだけど……数々の新製品を勝手にうわのせされてしまった。


 とりあえず、冷凍食品はたこ焼きだけ寄越せ言ったのに、新発売の激辛冷凍ラーメンなんてのを大量に送りつけてきたし、怪ドリンクメーカーの異名を取るゾンゲリア社のすいかソーダ……なんて、駄目新製品を大量に送りつけてきた件については、厳重に抗議したいと思っている。

 

 なお、すいかソーダと言っておきながら、その味はきゅうり味だった。

 確かに似てるんだけどな……きゅうりと炭酸は駄目だろう。

 

 ダメ押しとばかりに、止せばいいのにソルティー仕立て。

 僕は、一口でギブだった。

 

 珍しモノ好きのキリカさんが試しに飲んで、マーライオンのごとくリバースしてたし、テンチョーも一口飲んで、マズイマズイと連呼してた。


 ミミモモに至っては、どっちも一口飲んでトイレへダッシュしてリバース。

 他の人も概ね、似たような反応。


 ……ただでさえ、炭酸モノは微妙なのに、もはや不良在庫確定である。


 激辛ラーメンは、カップラーメンバージョンはたまに食べたくなる中毒性のある辛さが売りなのだけど……冷凍食品は、こっちではまともな調理方法が無いから、スタッフ需要があるたこ焼きや唐揚げだけにしろと言っておいたのに、無視される形となった。


 昔から、新製品は割と問答無用で営業所ノルマを店舗数で単純に割ったような適当な数を押し付けてくるのが通例なのだけど、まさかうちにまで適用するとは思わなかった。


 なお、コーラは例の大金貨10枚の話が有名だったようで、最初は転売目的で大量に売れたけど……。


 途中で、正気に返ったらしくて、ある時期を境にピタッと売れなくなった。


 希少価値があったからこそ、その値段で買うものがいたのであって、うちに来ればいくらでも買える上に、いかんせん、炭酸の刺激に皆慣れてない上に、甘すぎるってのもネック。

 おまけに冷たくないと飲めたもんじゃない。

 

 要するに、希少価値以外の価値が全く認められない飲み物だと……誰もが理解したのだ。

 

 そんな訳で、基本的にドリンク類は水やお茶はともかく、ジュース、コーヒー類はとにかく、微妙。


 すいかソーダに至っては、ヌルくなったらもう絶望的……もはや、約束された敗北。

 ……余計な新製品は、当面回すなと、念入りに抗議するつもりだった。

 って言うか、仕入れくらいこっちの好きにやらせろっての。

 

 ついでに言うと、19時までの営業はあくまで暫定対応として認めただけであり、独断専行をいつまでも認めるつもりはない……本日以降は、せめて0時まで営業するように、とやたら高圧的な内容のメールが届いていたんだけど、既読スルーした。

 

 だって、もう店閉めちゃったしね。

 本部から直電も来たみたいだけど、忙しくて取れなかったよ!

 

 いやぁ、しつこかった!

 

「やぁやぁ、皆……お疲れ様! とりあえず、配送まで時間もあるから、ご飯でもゆっくり食べよう!」


「お疲れやでー! でも、なんや本部とか言うとこのやったっけ? 日付変わるくらいまで営業しろって言うとったんやろ? 無視してよかったんか?」


「……なんのことかなー? ほら、店はシャッター下ろしただけで、営業中だよ? レジの電源も入れっぱなしだし、ダイドゥーさんやラフィーさんがドリンクやらタバコ売ってくれてるから、問題ないだろ?」


 ちなみに、ダイドゥーさんというのは、お茶屋さんだ。

 戦闘職の人達向けに、眠気覚ましの飲み物とか、お茶を売ってたんで、うちの商品の一部の販売代行を頼んだら、快く引き受けてくれた。

 

 ラフィーさんは、矢玉やら魔術触媒やら、木の実や葉っぱ、果物を干したエルフやヘルシー志向者向けの携帯保存食を売るエルフの女商人さん。

 

 キリカさんと同じく関西弁で喋るのが特徴でやたら色っぽい感じのエルフさん。

 刃物の研ぎなんかも出来るらしく、剣とか槍の刃研ぎなんかもやってて……戦場なんかにも同伴した事もあるんだとか。


 本来は、大規模キャラバンとかにくっついたり、野営地に張り付いて、同胞のエルフ族やらキャラバンの護衛の戦闘職の人達相手に商売してたらしい。


 エルフ族も割と夜目が効くので、夜間行動に向いている上に、森の外に出てきてるような人達は、冒険者や傭兵として生計立てているケースが割と多いのだけど、独自の文化や妙なこだわりがあるので、同胞相手の商売って物が成り立つんだそうな。

 

 昼間、タバコを大量に箱買いしてたから、どうするのかと聞いたら、夜中に傭兵達に売りつけるつもりだったとかで、せっかくなんで彼女にも販売代行をお願いした。

 

 と言うか……昼間の間に、うちの商品を色々見繕って買い込んで、夜の間にこっそり転売するつもりだったらしいのだけど、僕としてはむしろ、よろしくって感じで、夜間販売の御協力をお願いした。

 

 どちらもうちの目の前と言うそこそこ明るく、人口密度も多い一等地で露店広げて、忙しそうに商売に勤しんでいるようだった。

 

 他にも露天があるのだけど、そこでもやっぱりウチの商品がチラホラ並んでる。

 まぁ、人が集まるって事は、そこに需要が出来るのだから、商売人が商売するのは当たり前。

 

 あまり無茶な値付けをされると、こっちが商売しにくくなるのだけど、そこはそれ……業販価格ということで二割ほど割り引いた上で卸して、その二割分を手数料として、卸値に上乗せしてもらう程度で、基本、昼間うちで買うのとほとんど変わりない値段での商品提供をすると言うことで、合意してもらった。


 要するに、夜間の販売代行業者って奴だ。


 おかげで、僕らも夜はゆっくり休めるようになったし、結構な人数の商人が代行業者として名乗りを上げて、彼らはもはやここに居座る気満々だった。


 彼らは彼らで、商品の仕入れついでに自分達の分も業販価格で買えると言うので、完全に固定客でもあり、うちとしては上客でもあるのだから、大歓迎だった。


 戦闘要員の人達は基本、夜間は常に臨戦態勢だから、食べるのは軽く済ませて、その代わり水分補給はきっちり取るような感じなので、スポーツドリンクとか、カロリー補給用のゼリー飲料、羊羹なんかとかが意外と需要があった。


 ……物凄く自転車乗りの人と買ってくものが被ってるんだけど、そんなものなのかな。

 片手で食べられると言うことで、パンやおにぎりも結構評判が良かった。

 

 栄養ドリンクも魔力回復の効果があるとか、魔法使いの人達が言いだして、ランシアさんやラフィーさんが爆買いして行って、売り切れになってしまった!


 そんな効果あるなんて、知らなかったよ! 凄いなユンカース黄帝液!!

 

 まぁ、とにかく夜間はお客も戦闘職の人達中心になるので、売れるものはまるっきり別物になるし、おまけに売れるものは、どれも冷蔵しなくても問題がないし、夜になると意外と冷え込むから腐る心配はいらない……もう夜間の商売は、地元の人達に任せちゃっていいと僕も思ってる。


 中には、昼間のうちに本格的な掘っ立て小屋みたいなのを建てちゃってる人もいるし……。

 便乗商売……とでも言うのだろうか? 本格的にこのコンビニの周りに村ができそうな勢いだった。

 

「オーナーはんがそう言うなら、うちの口出すことやないけどな……。けど、ラフィー達も割とええ商売しとるなぁ……。あいつら、いつもは夜中に野営地めぐりして、商売して回っとったんやけど、黙ってても客が次々来るって、嬉しそうに悲鳴あげとったよ」


 実は、昨日のワイバーン騒ぎで、戦闘職の人達の本来の敵も鳴りを潜めちゃってて、今夜は割と余裕ありそうな感じなんだよなぁ……。


 昨日の夜は、ラドクリフさん達も緊張を隠せなかったんだけど、今日は余裕って感じで、食堂に顔を並べてた。

 

「……昨日は、俺達戦闘職の連中は、買い物どころじゃなかったし、昼間はきっちり休まねぇといけねぇからな。今夜は皆、余裕あるって思ってるから、多少ハメ外してても大目に見てやってくれ。まぁ、連中もプロだからな……なんかありゃ、俺も含めて一致団結して追い払ってやるから、安心してくれ」


 皆、何も言わないけど。

 ラドクリフさんは、このコンビニ周辺の警備主任みたいな感じになってる。

 

 今日は予想通り、人の動きがなかった上に、更に大勢の新参グループが加わって、昨日より人数も増えている。

 戦闘要員だけで100人近い人数になってて、もはやちょっとした軍隊みたいな規模になってる。


 一般人も入れると、500人とかそれくらいはいそうな雰囲気だった。


 昼間の間に店の外の照明として、屋上から地上を照らすLED照明を設置したので、夜になると物凄く目立つらしく、結構遅い時間帯なのに、近隣の野営地からも人が来ているようだった。

 

「うにゃっ! そんなことよりも! テンチョーのお腹がクークー言ってるんだにゃ! 早くご飯食べようよっ! でも、今日の晩御飯はお弁当じゃないんだよね?」

 

 僕らは、サントスさんが作った即席厨房に隣接する感じで、ブルーシートと葉っぱやらで作ったでっかいテントみたいなのと、ダンボールを敷き詰めて作った即席食堂にいる。


 そこでうちのスタッフ全員でのサントスさん特製カレーの試食会兼、晩ご飯と相成った訳でして……。

 他にもサントスさんの自慢のメニューの数々が出てくると言うことで、本日のメインイベントと言った感じだった。

 

 戦闘要員以外の一般人もいつもは早々に寝てしまうくせに、今夜は、ワイバーン討伐記念宴会とばかりに、皆起きててそこら中で勝手に飲んで歌って大騒ぎ中。

 

 実は店を閉める直前は、戦場のような忙しさでこのまま営業しててもいいかなって思ったんだけど。


 販売代行を引き受けてくれた商人さんが「お前ら働きすぎ! もうこっちに任せて、引っ込んでてくれ!」と言ってくれて、お客さんも早く休んでくれていいよと言うので、昨日と同じく早々に閉める事にした。

 

 さっさと店を閉めろ……なんて、怒られるなんて前代未聞だけど。


 この世界では、昼間働いてた人は夜は休む。

 夜働く人は、昼は休む……そんなルールが徹底してるようだった。


 ……当たり前っちゃ当たり前の話なんだがね。

 

 こんな商売をしてると、その当たり前が抜け落ちそうになるんだよなぁ……。

すみません。

ちょっと突然、更新間が空いてました。


体調不良に加え、先の展開でちょっと悩んでました。

とりあえず、ストックがあまりないので、当面隔日くらいの更新になるかと思いますが。

今後共よろしくです!

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