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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第一章「猫テンチョーとコンビニ……異世界に建つっ!」

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第十話「来襲! ワイバーンの脅威!」③

 階段を一段抜かしで、駆け上がっていく。

 屋上へと続く、鉄の扉もすでに開いている……ひとまず、ゆっくりとそこから顔を出す。

 

「ちょっと! タカクラさん! あなたまで来たんですか! とにかく伏せてっ! これを」


 屋上に出てくるなり、屋上の入り口近くにいた長耳エルフのランシアさんに見咎められ、黒い布切れを渡される。

 

 彼女……ランシアさんは、うちの屋上から周辺を見張る役目を担っていた冒険者だ。

 

 緑色のセミロングヘアと緑の瞳、華奢な体つきで、背丈も140cm台と小柄で、どちらかと言うと儚いとか可憐と形容したくなるような容貌をしている。


 白いチェニックに緑の肩掛けを羽織って、木の根っこが絡み合ったような短い杖みたいなのをいつも持ってる森の妖精みたいな感じの人だ。

 

 この世界のエルフってのは、総じて身体も小柄で非力と、決して戦闘向きの種族じゃないのだけど。

 とにかく、魔術への適性がやたら高くて、魔力容量は人間の倍以上が平均……この時点で相当強い。


 なにせ、エルフって、人間の大魔術師とかそのくらいのレベルのが、ゴロゴロしてるらしいのだ。


 何よりも、感知能力や夜間暗視能力なども獣人に勝るとも劣らないほどで、肉弾戦に弱いと言う欠点があるものの、弓の腕は揃いも揃って達人級。

  

 元々は巡礼団を護衛する冒険者の一人だったんだけど、ラドクリフさんやキリカさんとも顔馴染みで、周辺監視兼連絡中継要員として、うちの屋上に配置されていた。


 ランシアさんは、どちらかと言うと、支援魔法が得意で、攻撃魔法や剣は不得手だから、直接的な戦闘力はさほど高くない……なんて話をしてたけど、とんでもない!


 風の精霊ってのは、何処にでも偏在するような精霊でそんなのと交信できる時点で、超高性能レーダーみたいなもん。


 おまけに、風の精霊を共鳴させることで、遠く離れた場所へピンポイントへ声を届ける……なんて事も出来るらしい。


 早期警戒、意思伝達の要なんて……ランシアさん、超重要戦力。

 矢玉避けの風の結界やら防御魔法、支援魔法などを得意とするサポート系魔術師でもあり、冒険者としてのランクもB級とかなり高い評価を受けている。

 

 まぁ、それも納得だった。

 

 屋上にはもう一人、相方のパリンちゃんって言う、二足歩行する猫みたいな猫娘がランシアさんの護衛として配置されてたはずなんだけど……ちなみに、彼女もやっぱりB級の腕利き冒険者。

 

 彼女も、同じように黒い布切れを被って、ソーラーパネルの下に伏せているようだった。

 

 割と気安い子で、先ほど、たこ焼きを差し入れたら、大喜びで食べ尽くして、すっかり仲良くなってしまったんだけど……。

 さすがに、今は気安く声をかけられる雰囲気じゃない。

 

「……ランシアさん、この布は?」


 言いながら、言われたように黒い布を頭から被ると触ったところが真っ黒になってしまっていた。

 どうも、布切れに炭か灰をまぶせたような感じだった。


「それは、炭をまぶした布ですよ。夜間、空の敵と相対した時は、これで闇に溶け込まないと……上から襲われたら、ひとたまりもないですから。実はアレもかなり前から上空をウロウロしてたんですけどね……。一向に引き上げる様子がなくて……私達も対応を検討していたんですよ」


「その様子だと、ランシアさんもずいぶん前から、ワイバーンには気付いてたって事か」


 まぁ、僕が気付いたくらいだからなぁ。

 ここの冒険者連中も余計な心配をかけないようにしてたんだろう。


 もっとも、気付いたところであんな高いところにいるんじゃ、手出しのしようもないからな。

 けど、さすがにシルエットが見えるほど、下がってきたとなると、座視してる訳にもいかない。


「ええ、そりゃあまぁ……ただ、我々も手をこまねいてたのも事実でして……。本来、ワイバーンなんて出来る限り、やり過ごす。万が一、少人数で戦うことになったら、死を覚悟する……そう言う相手ですから。最初はこの人数がいれば、そのうち勝手に引き上げると思ってたんですが……どうやら、甘かったみたいですね……」


「オーナーさん! そんなことより、テンチョーさんを止めてほしいニャっ! 上に上がってくるなり、あたしらが止めるのも聞かずに、ワイバーンに攻撃し始めちゃって!」


 パリンちゃんが慌てたように、僕に向かって叫ぶ。

 ……見ると、テンチョーは光る弓矢のようなものを持って、ワイバーンに光の矢を射掛けているところだった。

 

 矢自体も結構なスピードな上に、ワイバーンのいる高さまで余裕で届いているようなのだけど。

 いかんせん、光り輝いている上に、彗星の尻尾のような光の帯をたなびかせていくと言う物凄く目立つ矢だった。

 

 当然ながら、向こうにとっても飛んでくるのもモロ解りという訳で、見てから余裕で避けられているような有様だった。

 

 テンチョーは、その場その場でこんな感じの事をしたいって、思うだけで最適な魔法を授けられる……そんなチートを持ってるみたいなんだけど。

 

 夜の闇の中、空を飛ぶワイバーンへの対抗手段と言うことで、この光の矢を撃ち出す魔法を即席で組みあげた。


 そう言うことなんだろう……実際、あの高さにまで平然と届いているし、十分脅威になっていて、近付かせないという点では、効果的なんだけど。

 

 ちょっとこれで、対抗するってのはキツイんじゃないかな……と言うのが正直なところだし、ラドクリフさん達も積極的には仕掛けない方針だったのに、いきなり先制攻撃とか……喧嘩売ってるようなものだろう。

 

「うにゃーっ! よけるなーっ! もっとこっちに降りてこーいっ!」


 テンチョーも当たらない事に怒ってるらしい。

 

 見ていると、弓を引き絞ったとこに尻尾を添えると、尻尾が光って矢になって、それを次々放ってるような感じに見える……。

 流れ弾がジャングルの遥か遠くに着弾しては、なんだか物凄そうな爆発をしてるのが見える……多分、威力も相当なものだろう。


 でも、空を飛ぶ敵を相手取るには、連射性能が不足している上に、とにかく目立ちすぎている。

 

 矢もだけど、弓本体も眩しいくらい光り輝いてるし、テンチョー本人の尻尾も金色に光り輝いてるもんだから、暗闇の中で目立つのなんの!

 

 射点も解りやすく、弾道も解る……となれば、距離に余裕があれば回避もそう難しくもない。

 

 ……ちょっと、最適とは言い難いような。

 せめて、複数方向から立て続けに射掛けるとか出来れば良いのだけど。

 

 地上から、テンチョーの攻撃に呼応する様子はない。

 恐らく、ラドクリフさんたちにも攻撃手段がないのだろう……。

 

 ワイバーンもテンチョーのことを認識しているようで、近付くようなそぶりを見せるのだけど……。


 光の矢を警戒しているようで、一定距離から近づいてこない。

 直撃したら、どの程度の被害を受けるか相手も解っていないのだろう。


 試しに当たって……なんてやるほど、馬鹿な相手でもないらしい。

 油断も慢心もない……嫌な相手だ。

 

「状況としては、相手にも攻撃手段がなく、こちらも有効な攻撃手段がない膠着状態……と言えなくもない……のかな?」


「そうですね。野生のワイバーンだったら、とっくに引き上げてますよ。ああ見えて、意外とワイバーンってのは小心なところがあるので、脅威を感じたら、迷わず退くはずなんですけど……。これやっぱり、使役されてますね。行動パターンが明らかに違いますよ」

 

 ……やっぱ、そんな感じなんだ。

 でも、向こうもやられっぱなしで反撃もままならないなら、引き上げるんじゃないかな?

 

 偵察が目的だったとして、今ところ一方的に撃たれて、偵察どころじゃない。

 

 出来れば、撃破したいところなんだけど。

 こんな異世界での、初めての戦いなんかで全部上手く行く訳もない。

 

 テンチョーもワイバーンに対抗できるってのは、わかったし。

 もうちょっと魔法自体を改良するとか、他の人に伝授するとか……それなりに対策を立てないとな。

 

 ここで倒しておいた方が良いのは解ってるんだけど。

 現状では、なかなか厳しい。

 

 ……さて、どうしたものか。

 

「……そもそも相手は、一体何者なんだろう? ランシアさん達には心当たりある?」


「そうですね……ワイバーンを従えるとなると、竜騎士か操獣師ビーストテイマーが相手だって事……くらいですかね。心当たりという事なら、多過ぎて特定なんて出来ないって答えになります。この森は色々な勢力の様々な思惑がモザイクのように混在している……そんなところですから」


 竜騎士、わかる。

 操獣師ってのも、うん……魔物使いとかのことだろうな。


 ややこしい情勢のややこしいところだって事も解るな。

  

「そこへ更に、僕らと言うよく解らない奴らが割り込んできて……ってとこか。そりゃあ、ちょっかいくらい出したくなるわな」


 そうこう言っているうちに、上に乗っている小さな人影が手を振りかざすと、いくつもの炎の矢みたいなのが湧いてきて、一斉にこっちに向かってくる!

 

「いけないっ! 水の壁(ウォータースクリーン)!!」


 ランシアさんが手をかざすとテンチョーの前に、物凄く大きな薄い水の膜のようなものが現れる。


 凄い! 防御魔法って奴だ!


 これなら、この建物自体への流れ弾も防げる!

 ……と思ったら、炎の矢……めっちゃくちゃ遅いっ!

 

 結構な時間をかけて、ゆっくりと飛来してきた炎の矢が水の膜に次々当たるのだけど、ジュッと言う音を立てて、あっけなく消えてしまう。

 

 なんだそりゃ……? あんだけもったいぶって、それでおしまい?

 

 着弾まで、軽く30秒くらいかかってた……。

 数自体は2-30発くらいと、ものすごい量だったけど……。

 

 向こうにとっても、距離が離れすぎているって事だった。

 あれだけ時間の余裕があると、対処方法さえあれば、なんとでもなるようなんだけど……牽制のつもりなのかな?

 

 でも、これで少なくとも相手は、様子見だけで済ます気じゃなくなったって事でもある。

 積極的に攻撃を加えて、こちらの戦力評価でもするつもりなのだろう。

 

 けど……闇夜の中、平然と空飛んで、飛び道具まで撃ってくるなんて……これはズルい。


 異世界最初の戦いなんて、普通は、もっと雑魚っぽいのをかるーく一蹴とかそんなんだと思うんだけどなぁ……。

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