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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
最終章「全ての終わりの始まりに」

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第四十六話「クズのカズマは二度死ぬ」③

「今は、2020年……多分、フランネル卿が死んだのは、冷戦時代の話だと思うんだが。その冷戦も1989年……30年以上前にベルリンの壁が崩壊して、続いて1991年にソ連が崩壊することで、冷戦も終わり、核戦争の脅威も去り、世界に平和と希望が訪れたんだよ」


 実際は、現在進行系で核戦争ギリギリ……みたいな状況なんだが。

 わざわざ絶望させることもあるまい……この爺さんは、元の世界が平和になって、戦乱が続く異世界に平和が訪れつつある。

 

 そんな夢を見ながら、静かに死なせてやりたい……ああ、もう死ぬ寸前なんて僕だって解ってる! それくらい気遣ってやるさ!


「あのベルリンの壁が……崩れたのか! それにあのソ連までも崩壊したというのか! なんと……何ということだ! そうか……ならば、世界を二分した米ソの冷戦も終わり、こちらの世界も救われたのか……。ああ、もっと早く知りたかった……。世界は何処へ行っても絶望に閉ざされている……そんな事は無かったのだな」


「ああ、だから……。この城を元の世界に戻す方法を教えてくれ! それにコイツを殺してロアが顕現しない方法があるなら、教えてくれ! 死ぬならその後にしてくれ! 頼む!」


「そうか……お前は、このワシにまだ生きろと言うのか。そうだな……アレがこの世界に顕現するなど、悪夢以外の何物でもなかろう……。ああ、どちらの世界にも平和が……何ということだ。世界に希望は……あったのだな。ああ、まだ死ねぬよ……いいだろう、ならば、それくらいは……」


 瀕死だったフランネルが最後の命を燃やし尽くすようにその目に光を取り戻し、その言葉を最後まで告げようとする。


 けれど、唐突に鈍色の物体がフランネルの入った水槽を破壊し、フランネルの全身に食い込み、フランネルの目が驚愕に包まれたまま、ゆっくりと光を失っていき、映像がフッと消えてしまった。


「リ、リーシアさん? なんで……!」


 思わず呟くのだけど、思念伝達でリーシアさんの叫び声のようなものが聞こえていくる!


「ケンタロウ様ぁあああっ! も、申し訳ありません! 鋼草の操作権限が……次々奪われていってます! そんな……これは……っ! まさか……い、今すぐ逃げてーっ!」

 

 ……振り返って、跪いたままの大帝を顧みる。

 命惜しさに、もうなにも出来ない……そう思って放置してたのだけど。


 カズマは……大帝は、自分の体から触手を生やして、身体の中から赤黒い塊を引きずり出していて、たった今、それを握りつぶしたところだった。


「ザ、ザマァ見ろ……。ひひひっ! もう終わりだ……ああ、俺が死ねば……俺のうちに居るロア様が顕現する! お前らのこの変な植物だって、あのお方ならば、あっさり乗っ取って終わりだ! ひゃーはっは! もう、終わり……すべて終わりなんだ……。このクソッタレな世界も……俺様を裏切った帝国の奴らも、皆……皆、終わりだ。そして、為すすべなく、お前らも潰されろっ! 残念だったなぁ……なぁに、俺様は不死身なんだ。こんな風に死ぬのだって始めてじゃない……そのうち、いつも通り生き返ってお前らの無惨な死体でも見て、せいぜい嘲笑ってやるぅうううっ! はははははははっ! はーはっはっはっ!」


 高笑いとともに、カズマは唐突にべシャリと言う音ともに、液体化して崩れ始める。

 まだ微かに生きてはいるようだけど、スライムはコアを潰すと死ぬ……コイツもそこは同じ……となれば……。


 けど、コアを自分で破壊することでの自決……まさか、そんな事をやってのけるなんて……。


 そして、部屋の隅に集まっていく強大な魔力と死の気配……。

 ああ、知ってるさ! コイツは……。


「……ああ、なんだよ。このザマは……」


 見覚えのある紫髪とうっとおしい長髪。

 そして、気障な雰囲気と……例によっての全裸。


 ただ、前回ほどは強大なプレッシャーを感じない。

 ……第一形態? それとも弱体化してるのか?


「おいおい、カズマくん……台本と違うよ。ここで潔く自決とかそりゃないよ……それに、死んでも必ず生き返るとか思ってるようだけど、残念ながら今の君は、そのまま死んで終わり。ゲームオーバーさ……。なんせ、君のもう一つの命……レインボースライムはすでにそこで死んでるじゃないか」


「……ど、どう言うことだ……俺様は……これまで、なにがあっても絶対に死ななかった……まさかっ!」


「うん、それって……そこで茹だってるスライムが君の命のバックアップ装置だったからなんだよ。その様子だと、レインボースライムの能力も契約のことも忘れちゃってたんだね……君もつくづく、度し難い」


「そ、そんな……じゃあ、俺はどうなる……まさか、本当に死んで、生き返れないってことかよ!」


「そういっただろ? だから、潔く諦めるんだね。高倉くんだっけ? 君もなかなかやるね……。カズマの不死の理由をちゃんと理解してて、まっさきにバックアップを潰すなんて……。まぁ、カズマみたいに死にたくない一身で僕と契約するって時点で、本来ならば、自殺なんて考えないはずなんだけど……。心理的に追い詰めて、自ら死を選択するように仕向けた。いやぁ……痺れるほどの策士だね。うん、前に僕の事を何度も何度も殺しただけのことはあるよ。僕もあの恨みは忘れちゃいないからねぇ」


 そう言って、微笑んでウィンクひとつ。


 やっべぇな……またやっちゃいましたかねぇ……。


 思わず、先程念入りにぶち殺してしまった虹色スライムの死骸に目線を送る。

 けど、これは……良かったのか悪かったのか。


 と言うか、コイツが居たからこそ大帝は不死身だったのか。

 逆を言えば、こいつがいる限り、大帝は何度殺しても生き返る。


 ドラゴンブレスに焼き払われようが、神の雷に貫かれようと、絶対に死ななかったのもこう言うからくりだったのか。


 僕はそれを知らずに、真っ先に問答無用で文字通りの大帝様の命をぶっ潰してしまった。


 カズマもその事を忘れてしまっていたようで、そうとも知らず一発逆転を夢見て……自殺と言う選択をした。


 ……どうしょうもねぇバカじゃねぇえええかっ!

 

 知るかぁああああっ! そんなもんっ!


「それにカズマくんも駄目じゃないか……。いくら追い込まれたからって、コアを自分で潰したら、ただの自殺だ。ああ、せっかく、向こうの世界で前代未聞なほどに悪業を積み重ねてたのに、その最期が自殺なんて、ケチな最期じゃ……潔すぎて大幅減点だよ。これじゃ僕だって、せっかく顕現しても力だってまるで足りてない……こんなんじゃ、こいつらを潰す程度がやっとだよ。でも、いいおもちゃも手に入ったし、こっちの神性存在に潰されるまでの間……少しくらいは暴れられそうだよ。あ、もう聞こえてないか……。でもまぁ、もうチャンスはない。永劫の闇に沈み給え……おやすみ、カズマくん」


 そう言って、カズマだったモノに歩み寄ると、その液体を手で掬うとそれをベロっと舐め取る魔神ロア。


 相変わらず、やる事なす事、全てキモい。

 と言うか、さっさと服着てくれ……。


「おい……先輩。どうするんだよ! と言うか、ありゃなんだ……化け物ってことは解る。あんな魔力……途方もない! なんで、あんなのが突然湧いてくるんだよ! 大帝が死ねば、全部終わりじゃなかったのかよ! それに……フランネルは……どうなったんだよっ!」


 番狂わせも良いところだった。

 フランネルが殺されて、カズマも自殺した。


 これで全て終わりのはずなのに……最悪の厄ネタが残ってた!

 恐らく、こいつはカズマの魂と同居していたロアの端末のようなものなのだろう。


 けど、その端末ですら今の僕らでは、絶対に勝ち目なんて無い!

 ああ、そこら辺は実際に戦って思い知らされている……。

 

 あのリーシアさんですら、あっさり鋼草の操作権限を乗っ取られてるんだから、人間がどうにか出来るような存在じゃない。


 何より、こっちの世界の神様なんて、テンチョーがあっさりガス欠になった程度には、か弱い存在と化しているのだ。


 これでは、コイツの独壇場……こうなる可能性があったからこそ、大帝をこっちの世界で死なせないようにしてたのに……。

 

 大帝は、誰よりも生き汚いヤツで、自分の命に執着しているからこそ、絶対自決なんてしないと高をくくってたのは確かだった。


 それを敢えて自決と言う暴挙に出ることで、何もかもを台無しにされた……番狂わせも良いところだった!


「ああ、もう騒ぐな騒ぐな……僕だって、気分悪いんだ。と言うか、そこのデブはなんだい? 僕の予定にはない存在だな。まぁ、モブキャラってとこか。うん、いいよ……これが正真正銘ラストバトルだ。些か、寂しいメンツではあるけど……せいぜい、精一杯足掻いてみせてくれ。なぁに……タカクラくん、君だけは簡単には殺さない。君が僕にしたように、何度も何度も殺して、その度に生き返らせてあげる……そして、頼むから殺してくれって泣こうが叫ぼうが、絶対に許さない。つまり、生き地獄を味わえるってことさ……! 君の精神は何回死んだら壊れるのかな……今から楽しみだよ」


 振り返って、ニマリと笑う。


「…………」


 さすがに返す言葉もない。


「さて、どうしようかなぁ。この世界の神々の干渉力も思ったほどでもないみたいだし、今回はセレイネースがかばってくれたりもしない。そこのデブも殴る蹴るしか能がないみたいだし、君も前に会ったときと比べて、大して進歩してないね……。この面白い植物だって、見ての通り僕の自由自在。うんうん、これならスライムなんかより全然使えそうだ」


 大倉が引きつった顔で、こちらへ視線を向ける。


 けど、僕だって似たような面だろう……。

 もはや、どうしょうもない……まさに絶望っ!

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