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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
最終章「全ての終わりの始まりに」

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第四十六話「クズのカズマは二度死ぬ」①

 ……リーシアさんが作ってくれた滑り台をスィーと滑り降りること、10分あまり。

 ちゃんと加速しすぎないように、グルグルと回りくどいルートを辿りながら、やがて地下深くの大帝様のお部屋へと辿り着いた。


 予想通り……。

 20m四方くらいの部屋の真ん中にX字型に交差するように斜めに天井から床に二本の鋼草がぶち抜いていて……。

 交差してるところに、両手両足を張り付けにされたようなポーズで、豪奢な衣装を着込んだ黒髪の小柄の青年が力なく頭を垂れていた。


「……あ……う……。な……なにが……起きたんだ……。俺様が……こんな……そ、そこにいるのは誰だ! なんで俺様の部屋に侵入者がいるんだ! まさか……まさかぁあああっ! レベル5! 何処に行ったぁああ! 俺様を守れぇえええ! さっきからなんで精神感応に応答しない! それに皆、どうしたんだ! なんで、こんなにも静かなんだあぁあああああああっ!」


 もうコイツ自身気づいてるんだろうな。

 変にスライムとの精神同調みたいな事が出来るだけに、現状を誰よりも理解してるんだろう。


 もう、身も蓋もなくピチューンって殺っちゃって良いような気もするんだが。


 それで前もヤバいことになったからな……ここは生かさず殺さず、そして少しくらいは希望を与えて、向こうの世界にこの城を戻すように説得して、せめて向こうの世界で殺そう。

 

 けれど、そんな事を考えていると背後に殺気。


「甘いわっ! ふんぬらばっ!」

 

 とっさに振り向き様に裏拳をブチかますと、ビターンって音と共に虹色の水たまりみたいなのが床に広がった。


「何だこいつ? スライムなのか……。まだ生き残りがいたのか……なら、汚物は消毒しないとな!」


 問答無用で、煮えたぎった熱湯放射。

 しぶとく蠢く虹色の水たまりに熱湯をジャーっと注ぐと、水たまりもボコボコ沸騰したようになって、ピキーって感じの断末魔みたいなのを立てながら、虹色と白が入り混じった謎の物体へと変化していく。


 よく見ると目玉みたいな模様や口みたいな模様もあって、あれだ……かの有名なドラゴンのクエストに出てくるスライムを虹色にしたとか、そんな感じだった。


「なんだこれ?」


 足で突っつくと、ボロボロと崩れていって、ミミズの塊みたいなコアが転がり出てくるので、更にお湯を注いで念入りに踏みにじって潰しておく。


 うん、害虫退治完了っ! いやぁ、スライム殺すのもすっかりも手慣れてきたな!


「貴様っ! 貴様ーっ! プ、プルトンくんを……ゴミのようにっ! なんてことを! なんてことをーっ! がぁああああっ!」


 良く判らんけど、大帝様の愛しのペット様かなんかだったらしい。

 

 もっとも、大帝がなにかやろうとしたのを察したのか、今も地上で遠隔監視しているリーシアさんが、すかさず鋼草から電撃か何か放出させたらしく、大帝様もうっすら煙を吹きながら、さっきよりも力なく、もはやピクピクと痙攣してるだけになっていた。


「ああ、すまん。いきなり飛びかかってきたから、つい殺っちまった。もしかして、レア個体だったのかな……。けど、どう見ても雑魚っぽいし、いやぁ……悪いことしちまったな。でも、ペットはちゃんとしつけないと駄目だぞ。客人に見境なく飛びかかっていくようじゃ、駄目だろ」


「きゃ、客人だと……ふっざけるなぁあああああっ! 俺様を誰だと……貴様なんぞにこの俺が……! 俺様は……リ・デジャス・ネウロ帝国の大帝……」


「ああ、知ってるよ……三浦和真くんだろ? またの名を……」


「あ、あ……あ。俺様の……真名をなぜ、貴様が……」


「オーケー。確認は取れた……「クズのカスマ」で間違いなしと。まぁ、どうでもいいんだがね。ああ、僕の名は高倉健太郎……ロメオ王国宰相を務めさせてもらってる。まぁ、事実上の国王陛下だから、帝国の大帝たる君とは同格と言える……だから、この場はタメ口で話をさせてもらうし、君もタメ口で一向に構わない。それにしても、殺風景な謁見の間だね……机と椅子くらい無いのかい? 仮にも王たるものたる同士の会談なんだ。せめて、様式美くらい守ってもらわないとな」


「……その名でっ! その名で俺様を呼ぶなぁああああ! 何が同格だっ! この俺様は唯一にして絶対の……帝国を……いや世界を統べる大帝カズマイヤー様だ! 何人たりともこの俺様と並ぶ者などなし……。俺様にとっては、この世の全ては虫けら同然! 俺様を脅かすものは……すべていなくなればいいんだ! いいか……俺様は不死身だ! こんな程度で俺様を拘束できると思うな! あびゃああああああああっ!」


 こいつも懲りないねぇ。

 確かに、これだけボロボロにされて、身体の中から鋼草に侵食されまくってて、まだ抵抗する気力があるって大したもんだけど。


 まぁ、不死身ってのは、多分嘘だな……単に、めちゃくちゃしぶといってだけなんだろう。


 その程度の相手なら、すでに経験済みだ……用が済んだら、溶鉱炉に投げ込むなり、深海に沈めてもらうなりしてもらおう。


 ちなみに、鋼草に侵食されたら、リーシアさんが安全に撤去してくれない限り、もう絶対に助からない。

 自分の体から生やしてもらった時も、自分で抜こうとしたら激痛が走ったから、そこら辺は良く解る。


 鋼草はその微細な根っこが神経と一体化することで、操作権限さえ与えられれば、自分の身体同然に動かせるんだけど、それを引っこ抜くとか自分の身体を引きちぎるようなもんで、大変な激痛を伴い、最悪ショック死すらしかねない。


 今の大帝様は当然そんな権限は与えられておらず、レベル5ですら侵食された鋼草の操作権限は最後まで奪取することも出来なかった。


 要するに、こんなになったら生殺与奪はリーシアさんの自由自在。

 レベル5も全部吸われて干からびたらあっさり死んだんだから、大帝だって全部吸い尽くせば確実に死ぬだろう。

 

 まぁ、大帝の耐久ベンチマークも手だけど、この世界にいる間はうかつに殺せないからな。


「……すげぇな。こんなになってもまだ生きてるのか。俺も大帝カズマイヤー陛下には始めて会うが。なかなか衝撃的な謁見スタイルだな……ゴルゴダの丘のイエス・キリスト様の最後みてぇだな」


 念の為にってことで、後を追ってきていた大倉が到着したようだった。

 ちなみに、リーシアさんはテンチョー共々、地上に残している。


 もっとも、鋼草を通してここの状況はモニターしてるし、もはや勝負は付いたと判断した自衛隊の空挺部隊が第二陣として降下してきて、リーシアさんを十重二十重にガードしつつ、残敵の掃討をしてくれてるから、ひとまず問題ないだろうし、もはやこの城塞はリーシアさんの城塞のようなもんだからなぁ……。


 国会議事堂の総理の元へも、すでに僕らの事実上の勝利は伝えられていて、早速アメリカのトロンペ大統領と神部原総理の間でサシでの核攻撃の撤回交渉が始まっているようだった。


 ちなみに、アメリカに対しては、この戦いは異世界の魔王がこちらの世界を侵略すべく進出してきて、それを追ってきた同じ異世界の王が魔王に戦いを挑み打ち破り、魔王の城も異世界の王の力に取り込まれた……そんな話になってるらしい。

 スライムもすでに全滅しており、この城についても安全に取り壊してくれるか、元の世界に戻すかしてくれると言うことで、今はその作業を見守っている所だと説明しているとのことだった。


 まぁ、間違っちゃいないんだけど、要するにこれ……スライムが鋼草に成り代わったってだけの話だからなぁ。

 

 どのみち、鋼草がどれだけの脅威なのかについては、アメリカに情報なんてあるワケがないから、日本側の異世界の王の力によるもので無害という説明で、納得するしか無いだろう。


「ああ、大倉……遅かったな。どうだい? このお方がお前んとこの大帝様だ……まぁ、さすがにこれはあんまりだから、リーシアさん……降ろしてやってくれ。なんせ、どのみち動けないってことに変わりはないだろうからな」


 そう言うなり、鋼草がゆっくりと降りてくると、大帝も解放されるんだけど。

 そのままべシャッと土下座のポースになって、狂ったように頭を地面に擦り付けていた。


「ああ、リーシアさん。普通に座らせてやりな……カズマ君も、それじゃ相手の目も見れないだろう? はい、正座! 僕も合わせるから、膝つき合わせてとことんまで、話し合おうぜ!」


「この大帝たる俺様に……なんて屈辱! 貴様だけは許さん! 絶対に……殺す!」


 そう言いながらも、リーシアさんへのリクエスト通り、シュタッと正座。

 僕も地べたに正座して、文字通り膝を突き合わせての対談……まぁ、体裁は整ったかな。


「殺すってどうやって? 今の君は生殺与奪を握られて、僕らのお情けと都合で生かしてるだけなんだ。実際、どうすることも出来まい。まぁ、いいや……単刀直入に言うよ。この城を今すぐ、元の世界に戻せ。それくらい出来るだろ? 死にたくなければ、言うことを聞け」


「ふへへへへ……。きょ、脅迫のつもりか? なぜ、ひと思いに殺さない……情けでもかけたつもりか? くくく……日本人は人殺しを嫌うからな……可愛そうで殺せないんだとか、ショボくれた事でも言うつもりか? それとも、俺様に同情でもしたか?」


「ああ、別にそう言うのはどうでもいいんだ。……「魔神ロア」この名を君も聞き覚えがあるはずだ」


 それまで力なく笑っていたのに、その名を出すなりカズマの表情が無表情になり、唐突に静かになった。

 まぁ、ビンゴだな。


「どうやら、心当たりがあるようだな。お前は魔神ロアの力による転生者……それで間違いないな?」


「…………」


「うん、黙ってるってことは肯定って事か。さっきまでおしゃべりだったのに、随分としおらしい態度じゃないか」


「……だとしたら、どうする? へ、へ、へ……お前の言う通りだ……いいか? この世界で俺様が死んだあの日、奴はこの俺に言ったんだ。このまま死んで無に消えたくないなら、ロアの下僕として転生し、あの世界を混沌に導けと……。それに俺様も貴様らとロアの戦いの顛末は見て、知っている。ああ、ロアの契約者が死ぬと、それを生贄にしてロアの分体が降臨する。そして、深い悪業を積んだ汚れた魂であるほど、降臨したロアは強大な存在として復活出来る……。そう言う仕組みなんだ」


「ああ、全部ご存知だったって事か、さすがに情報の重要性をよく知るだけに、あの場所にも監視の目を送り込んでたのか……さすがにそれは気付かなかったな」


「ひひひ……。要するにお前は俺を殺せない! ザマァ見ろ! はははははっ!」


「ああ、すまんが一つ確認なんだが……ロアの力って、この世界にまで届いてるのかな? 実際、女神の力も届いてないみたいだしな。ロアとて、向こうの世界の存在なんだから、その加護もこっちには届かないんじゃないかな。もっとも、実験するにはお前を殺さないといけないし……どうしたもんかな」


「……そ、それは……た、確かにこっちに来てから、絶え間なく聞こえていた不愉快なロアの声が聞こえなく……いや! 今のは嘘だっ! ああ、はっきりと聞こえる……ロア様の笑い声が! いいか、ここで俺を殺したら絶対に後悔するぞ! 今なら、許してやるから、この拘束を解け! そうしたら、大人しく向こうに戻ってやるし、お前がロメオの王なら、我が名において、話し合いにも応じてやろう! どうだ……一考の余地ありだろう!」


 あ、コイツも馬鹿だ。

 この様子だと、今すぐコイツを殺しても、ロアの復活は不発に終わる臭いな。


 けど、コイツを殺すとこのバカでかい帝城もそのままになってしまう。

 まぁ、日本政府には帝城を元の世界に帰すとまでは言ってないし、このまま放っといて帰っても、なんとでもなるような気もするんだけど。


 一層禍々しい外見になってしまった帝城が新たな脅威として、要らぬ火種になるってのも困りものだしなぁ……。


「ああ、その男はまだ殺すべきではない。ロメオ王国宰相ケントゥリ卿だったかな? 久しぶりだな」


 唐突にしわがれた声が響き、僕も大帝を蹴り飛ばしながら立ち上がると、大倉と背中合わせになって、全周警戒の態勢を取る。

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