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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
最終章「全ての終わりの始まりに」

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第四十五話「レベル5」①

『こちらスモモ! 上陸部隊各員に告ぐ! 敵の上位種個体が降下ポイント周辺に多数出現中! サンドボックス隊も一瞬で全滅しました! ドローン隊のレーザー攻撃も通じていません! 作戦本部でも敵戦力評価を大幅に上方修正……上陸部隊の全隊に撤収指示が出ています! 直ちに撤退を! すぐにそちらに参ります!』


 無線機に、AIらしからぬ慌てた様子のスモモの声が響く。

 まぁ、予想通り……すでに上陸部隊は僕ら以外は全滅したようだった。


「ああ、そうしたいのは山々なんだけど、この状況じゃ降りてきたって、君まで撃墜されるのが関の山だ……。君等は僕らの帰りの足なんだから、そんな簡単に落とされたら、帰りが面倒くさくなる。だから、まだその時じゃない。現状待機……いいね?」


『…………命令了解』


 さすがのAI達もこの展開は予想外だったようなんだが、僕の返答も予想外だったようで、スモモも絶句している。

 

 今頃、AI連中総掛かりで僕らを無事に撤退させる方策を策定中なんだろうけど……。

 そこは最初からあんまり、当てにはしてない。 


 しっかし、殴り込んで早々に敵中孤立無援……か。

 火力集中で敵戦力の大半を殲滅できるという想定で、戦力的には十分以上と考えて、あえてヘリ3台分の地上戦力しか投入しなかったようなんだが。

 

 確かに、降下直後はいい線いってたんだけど……唐突な降雨ですべての状況がひっくり返ってしまった。


 サンドボックスとか言う陸戦ロボットも初の実戦投入だっただろうから、レーザー兵器が状況次第でここまで無力化するなんて想定していなかったんだろう……まぁ、実戦なんてこんなものさ。

 

 普通のスライム相手なら、確かにレーザーも効果的だったかも知れないが、そもそもレベル4ともなるとそんなか細いレーザーなんかじゃ歯が立たない……僕らとの戦いをモニターしてたんなら、そこは十分予想できてたと思うんだがなぁ……。

  

 なにせ、ミニガンで蜂の巣にされても死ななかったんだから、砲爆撃程度で殲滅できると言う想定自体が甘い……その一言だ。


 僕を見習っていっそウォーターカッターでも装備してればよかったんだがなぁ……。

 けど、それはそれで弾切れならぬ水切れってなるから、考えものなのか。


「くそったれ! こんな地下にも入ってないとこで、まさかの全滅だと? ……な、なぁ、先輩どうする? 今ならまだ撤退も出来る。いっそ城の端から飛び降りれば何とか……。状況的に厳しいかもしれんが、ここは逃げの一手……じゃないか?」


 大倉にしては珍しく気弱な発言……と言いたいところだが、肝心なところでヘタれるってのは昔からだ。

 そして、後から来た人型の姿を見るなり、大倉がその表情をひきつらせる……。


「……よくぞ、参られました。我が君の城へ……なんとも不躾なノックの挙げ句、土足で殴り込みとは……。ですが、いささか蛮勇に過ぎましたね。なんとも呆気ない……まぁ、今の時点で逃げる算段をしても、もう遅い……違いますかね?」


 騎士のような青い甲冑を纏った青白い顔の女騎士。

 まぁ、一言で言えばそんな奴だった。


 人間じゃないってのは、もうひと目で解る。


 人間の顔がついてて喋るスライムとか始めてみたな……確かに、そんなのがいるってサトルくんも言ってた。

 

 けど、口を聞いてるって時点で……なんだろな、この?

 むしろ、ほっと安心してる自分がいて、思わず苦笑する。


 うん、一言も口も聞かないホラー映画のモンスターが唐突に挨拶してきた……そんな感じ?


 ぶっちゃけ、興ざめも良いところだった。


「ああ、ノンアポでの乱暴な表敬訪問になって、実にすまなかったね。そうだな……さすがにここまで騒々しくされたら、顔を出さずには居られなくなった……そんなところかな? 何もせずに大人しくしてたのに、派手に砲弾を叩き込んだ挙げ句に殴り込みとか、お騒がせして申し訳ないとくらい言っとくよ。しかし、言葉を話せるスライムか……なかなか興味深いな」


「おや、随分と余裕ですね。無知とは悲しい……自らが死地にいるとも解らないとは……まさに、愚かとしか言いようがないですね」


「そうかい、そうかい。ああ、言葉が通じてるなら、単刀直入に言うよ……もう帰ってくれないかな? この世界に君等の居場所なんて無い。この苛烈なる砲爆撃がこの国……いや、この世界の人々の意志なんだ……つまり、君等が滅びるか、この世界が滅びるか。その二択を迫ってるってことさ」


 死人のような顔色をしている大倉とは裏腹に、僕自身は至って冷静だった。

 追い込まれれば追い込まれるほど、キモが座る……大倉とは対照的なんだが、それが僕の持ち味だからね。


 まぁ、この世界の人々の意志とは大きく出たが。


 文字通り、人を食う化け物相手に共存共栄なんて、バカを言うなって話だ。

 そこら辺は僕だって熟知してるし、日本もアメリカも思い知っているだろう。


 どのみち、この場では、僕の意思が絶対なのだ! こいつらは大帝含めて、一匹残さず滅ぼす……これは願望や希望なんかじゃない!


 いわば、決定事項なのだよ!

 

 なんでまぁ、ここはハッタリ上等!

 どっちみち、交渉の余地なんて始めからない。


 僕だって、かつてのように甘くないからな……言葉を話すからって、お話し合いの余地なんぞある訳がない。


「なんと野蛮な……大帝様のお言葉ではこの国は惰弱そのもの、とてもか弱い国だと聞いていたのに……。ですが、いささか考えが甘かったですね。待望の……恵みの雨。大人しくしていた? 違いますよ……我らはこの瞬間をじっと待ち望んでいたのですよ。派手に城を破壊して、我らが同胞を虐殺して……それで決着が付いた……そう思っていたのでしょうが。知能も低く脆弱な雑魚スライムはともかく、我々上位種にとってはあの程度の攻撃、涼風のごとし……すでに、あの虫けらのような機械共は全滅させましたし、そちらの兵士たちも捕獲して無力化しております。ああ、一応殺してはいませんよ……彼らは大事な人質ですからね」


 稲木一佐……パワードスーツやレーザー銃を装備して、結構な練度のようだったのに一蹴されたようだった。

 人質と言っているからには、交渉材料にする気満々で生かしてる……それなら、心配はいらないか。


 もっとも、あれだけいたサンドボックスとか言う戦闘機械兵も……あっさり全滅。


 まぁ、レベル4……それもこれだけいたんじゃ無理もないか。

 見渡す限り、もはや四方八方に湧いてて、猫の子一匹這い出す隙間もないくらいには、念を入れて囲っているようだった。

 

 敵戦力が想定を遥かに上回る……よくある話ではあるよな。


 何より、この青白い冷気をまとった人型スライム。

 一見優雅なデザインの女性用鎧を着込んだ女騎士のように見えるが。

 

 その顔の表情は、ほとんど変化せずまるで仮面か何かのようだったし、その動きもむしろロボットダンスのようにカクカクしてて不自然極まりない。

 

 いや、これはもうスライムじゃないな……。

 何よりもその身にまとった巨大な魔力のオーラに、絶望的な戦力差を嫌が応にでも知らしめられる。


 ああ、これは真っ当に戦っても、絶対に勝ち目なんてないな。


「レ、レベル5! 冗談じゃねぇぞ……まさかテメェがいきなり出張ってくるなんて! くそったれが!」


 さすがに、大倉は見たことくらいはあるようだった。

 なるほど、コイツが帝国最強戦力……「大帝の剣レベル5」!!


 うん、聞きしに勝るヤベー奴だなコイツ……。

 こんなド派手な魔力……アージュさんどころか、テンチョーの本気モードにすら匹敵するな。


 しかし、なんでスライムのクセに魔力なんて纏ってるんだ?

 けど、大帝はいろんな生物とスライムを混ぜ合わせることで改良品種みたいなのを次々生み出してたらしいし……。


 その最高峰にして最高傑作……それがこのレベル5って訳だ。

 

 あのサトルくんをも退けた帝国最大最強の存在……こいつはなかなかどうして……ホネが折れそうだな。


「ふふふっ、わたくしは帝国の最強戦力ですからね。我が陛下にほんの僅かでも危険が及ぶ可能性がある以上、それは未然に阻止する……それだけの話ですわ。さて、さすがに状況はすでに把握できているかと思います。無駄な抵抗は止めて、降伏をおすすめ……」


「あ? 知るかそんなもん……やれやれ、強者の余裕だかしらんが、この僕を相手にのんびり降伏勧告なんて、片腹痛いわ! まさに無礼千万ッ! 笑わせてくれるッ! ハーハッハッハ!」


 余裕の腕組みポーズで、思いっきりセリフも被せてやった!

 そして、高笑い……なんとも気分がいいね!


「な、なんだと! 貴様、戦力差が……自分の立場が解っていないのか! まさか、そこまで愚かなのか!」


「ほほぅ、自分の立場だって? ふむ……ならば告げよう! 我こそは経済大国ロメオの王……ロメオ・タカクラ・ケンタロウである! お前は所詮大帝の使いっ走りなんだろ? なら、僕の方が遥かに格上って事だ! さぁ、わざわざ異国の王が表敬訪問に来てやったんだ! まずはその場でひれ伏せ! 王の御前であるぞ! はーはっはっはっ!」


 大倉が何言ってんだコイツ……みたいな目で見てるけど、事実そうなんだから、嘘は言ってない!

 

 王たる者に相応しく、この場は堂々と高らかに笑ってやるさ!

 そしてポーズだって、余裕の腕組み&ドンっと指差しで圧倒的強者感を演出ッ!

 

 なにせ、僕は王様なんだからね! 王たるものはいつだって、余裕! 絶対的な死地においてもまずは笑うッ! 


 ま、まぁ……膝とか微妙に笑ってるような気もするけど、これは武者震い! ああ、誰がなんと言おうが武者震いなんだよッ!


「……お、王だと? なんでそんな奴がこんなところにいるのだ! り、理解できん! なんなのだ貴様は!」


 お、なんか効いてるな……思いっきり動揺してやがる。

 確かに、将棋で言えば王将敵陣突撃……チェスで言えばキング自ら特攻! それくらいの暴挙だからな。


 ふふん! まずは一本! 言葉を話せるってのなら、僕お得意の駆け引き……心理戦って奴が通じるって事だッ!

 

 確かに、コイツは最強かもしれんが……切った張っただけが戦いじゃない! たっぷりと思い知らせてやるぜ!

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