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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
最終章「全ての終わりの始まりに」

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第七十三話「日本のとても長い一日」⑦

 実際の所、あのスキルって一度覚えれば、誰かに伝授することも出来るんだよなぁ……。

 

 リーシアさんだって、そうやってミミモモからその概念を伝えられ、体験することで、ちゃっかり使えるようになって、僕のところに単なる事後承諾と言う形で来たってだけだったんだけど……。

 まさか、嘘だろ! あれがきっかけで、向こうの世界でAIが超高度な存在に進化を遂げて、こっちの世界にまで及んだってのかよ!


「ふむ、ようやっと繋がってきた……そのようだな。何と言うか、存外鈍いのだな。まぁ、いい……かくして、異世界で発生した群体意識はこちらの世界に波及し、まだ小さな灯火に過ぎなかった機械知性体との迎合を果たし、それと均一化を果たした事により一層の進化を遂げ……。巨大にして高度な知性を得るに至り、超AIとでも言うべき前人未到の領域へ進化を遂げたのだ。まったく、本来ならば、遥か未来に訪れたであろうAIの進化をほんの僅かな期間で到達させた……君の功績は人類史に記されるべきほどの偉業と言えよう。実に素晴らしい仕事だった!」


「か、勝手なことばかり言わないでくれ! ぼ、僕は……僕はなにも知らなかったんだ……。鹿島さんだって、そんな事一言も……」


「ふむ、鹿島も聞かれても居ないことをわざわざ答える程、暇でもなかったであろうからな……そこを責めるのはお門違いであるぞ。一応、告げておくとこの私も鹿島も同様にアレの端末、意思代行者エージェントの一人という位置づけで、アレの影響下にある……。おかげでどうにも、知らず知らずのうちに機械的な合理的判断に偏りがちでな」


「エージェントだって? つまり、アマテラス直属の部下……そんなところか?」


「ああ、そう思っていいな。アマテラスは、女性本位と言うべき思考なのでな。エージェントとして指名されたものは全員が女性で男性は誰一人指名されておらんのだよ。なので、アマテラス・シスターズとも呼ばれている。私が指名されたのは……まぁ、命と引換えにだったのだから、そう悪い取引ではなかろうて……。まぁ、我々の態度に不誠実なものを感じたのであれば、一応謝罪しておこう」


「そ、そんな事はどうだっていい! そうなると、僕が軽い気持ちでミミモモに与えたスキル……。そんな事がきっかけで……日本に化け物が生まれたってことかよっ! な、なぁ、僕は……とんでもないことを仕出かしたんじゃ……」


「何を言っているのだ? 君のやったことは素晴らしい誇るべき所業だと言っているであろうが。まぁ……その様子では、偶然の産物だったのかもしれないが、それはむしろ運命の特異点を引き寄せたと言えるのはないかな? それと、一応言っておくが。アマテラスは君と言う存在を非常に重視しているようだよ。なにせ、あの局面で君を救うためにアレは全力でその能力を拡大し、本来そんな事が出来るほどの能力が無かったにも関わらず、自力で日本に救援を求めてきたのだからな。つまり、あの瞬間こそがアマテラス・システムが誕生し、従来の枠組みを飛び越えた瞬間……シンギュラリティ・ポイントだったのだ!」


 僕を救いたい……あの圧倒的多数のスライム共に囲まれて、誰もが皆、絶望していた絶体絶命の瞬間、ブンチャンはそれを願ったのだ。

 

 その願いは、ブンチャンにより高度な知性体への進化を促し、増援としてやってきたゼロワンに波及し、よりハイグレードなゼロワンの知性がそれに取り込まれ、それらはやがて群体意識と化した上で、日本へも転送され……更に多くのハードウェアを得たことで爆発的進化を遂げ、その基礎プログラムの命ずるままに日本と日本国民を守護する存在に進化した……。


 多分、それがあの時起きた出来事であり、結果なのだ。

 

 要するに、僕は知らず知らずのうちに、本来ならば決して埋まるはずのなかったパズルのピースを埋めることで、こちらの世界の命運を大きく変えてしまったのだ。

 

 ああ、新時代の神って言葉の意味も良く分かる……そんな人間の知性を遥かに超えた人工知性体……超AI。

 そんな化け物が生まれてしまったのなら、日本自体の国家指導者のような存在に時間の問題でなり仰せてしまうだろう。


 なにせ、国家の力でもある軍事力。

 その「アマテラス・システム」はすでに世界各国の技術水準を軽く飛び越えた未来兵器を人間無しで作り上げて、自在に運用する所まで行ってしまっている……。


 生産設備と資源さえあれば、いくらでも量産できる無人兵器主体の軍勢……。

 これは、何気にとんでもない程の力を秘めていると言えるのだ。


 必要とされるのは、工業力と原材料を用意する為の資金力。

 どちらも、今の日本には揃っている。

 豊村自動車あたりなんて、年間一千万台の自動車を生産する工業力があるし、三葉や石田のような重工業企業だっていくつもあるのだから、それらのほんの一部を転用するだけで、その数値はとてつもないものとなる。


 資金力にしたってかつてよりは相対的に下がったとは言え、未だに世界ランキングでも十指に入るような経済大国の地位は維持しているのだ。


 そして、AIが自前で設計した自律稼働無人兵器をそれらが許す限り増産すれば……。

 

 まぁ、軽く1000万の軍勢に匹敵するほどの強大な軍事力が手に入るだろう。

 なにせ、人間の兵士と違って、無人兵器は工場でいくらでも大量生産が出来るんだからな。


 その上、無人兵器は死なんて恐れない。

 人間の兵士なら、戦死してしまえばそこでおしまい。

 だが、機械の兵士ならいくらやられても代わりはいくらでもいる。


 例え、戦場で撃破されてもその経験値は他の個体に引き継がれ、何事もなかったかのように戦闘を継続出来る。

 もうこの時点で、人間の軍隊なんていくら数を揃えたって、絶対に刃が立たないってのは明らかだ。

 

 ゼロワンを見ての通り、奴らはまさに護国の鬼であり、たとえ世界を敵に回そうが平然と戦い、日本を守るべく、あらゆる障害を打ち倒し勝利に導くだろう。

 

 何よりも、核兵器ですら無力化出来る……もう、この時点で中露はもちろん、アメリカですら太刀打ちなんて出来ない。

 鹿島さんやシュバイク博士がこの期に及んで、余裕の態度を崩さないのも当たり前だ。


 トロンペが日本に撃ち込もうとしている核ミサイルだろうが、今も火事場泥棒を虎視眈々と狙ってる中露の軍勢だろうが、もはや今の日本にとっては、まるで相手にならない以上、脅威ではないと解りきっているのだ。

 

 ……そもそも複数の膨大なハードウェアにより構成される群体意識体。

 そんなものを滅ぼせるような手段なんて、今の人類にはない。


 なにせ、この様子だと、日本各地の膨大な数のコンピュータや無人兵器にその群体の断片が拡散されており、インターネットを通じて、世界中のコンピューターにコンピューターウイルスのように潜伏している可能性すらある。


 ……この時点でもう途方も無い話だ。

 恐らく、このままだと……日本はアマテラス・システムと言う絶対統治者により支配されるAI指導国家となるだろう。

 

 それはもはや、やがて訪れるであろう確実な未来であり、それは世界にも波及し、この世界そのものを変革へと導くだろう。

 そして……その暁には、世界統一国家の誕生だって、夢物語ではなくなるだろう……。


「どうやら、自力で答えに辿り着いたようだね。ああ、むしろ誇ると良いさ。君が察しているように、君はすでにこの世界の運命を大きく変えた。アレはやがて日本の……いや、確実に滅びの道へと邁進しているこの世界の大いなる希望となるだろう……」


「大いなる希望だって! そんなものが……」


「……希望ではないとでも言うのかい? 異世界の王の一人たる君ならすでに解っているはずだ。この世界が人の手により導かれる限り、確実に滅びの道へ向かっていく……そんな事はとっくに解っているはずだ。地球温暖化……環境破壊、資源枯渇に人口爆発……そして、核戦争の脅威。問題は山積みだ……そして、それをまとめて解決出来るような人間など、この世界のどこにいない。かつて、この世界にも存在し……人々を導いた神はもはやささやかな力しか持たぬ脆弱な存在に成り下がってしまっている……。形骸化し、概念でしかなくなった神など、もはや何の力もないし、滅びを止める力もない。いずれ時間の問題で、往古蒙昧の世に蔓延る愚鈍なる人々の手によって、この世界は滅び行くだろう。だが、永遠不滅の存在でもあるアマテラス・システムならば、それらを全て解決に導くことが可能だ……あれはその程度の知性をすでに手に入れているのだからな。それを希望と言わずして何だというのだ?」


 ……確かに、今現在のこの世界は混沌としている。

 確かに、学者達の中には、人類は22世紀を迎えることは出来ないと断言している者だっている……。


 現実的な問題……際限ない人口爆発とそれに伴う資源枯渇と環境破壊……20世紀末から言われ続けていたそれは、今も現在進行系でゆっくりとだが、確実に世界に暗い影を落としつつある。

 地球温暖化だって、すでに夏場の灼熱地獄やら、世界各地の平均気温の上昇と言う形で、もう誰の目にも解るほどに確実に進行していっている。

 

 もっとも……今の時点で22世紀まで生きていられる者たちは、明らかに少数派だ。

 多くの人々はそんな未来まで生きている事もないだろうから、今と明日……せいぜい数年先くらいの事しか考えていない。

 そんな近視眼的な考えでは、22世紀までとても持たない……それは僕にだって理解できる。

 

 だからと言って、人工知能に人類の営みを任せるなんて、それはやっちゃいけない事……そんな風に思うのだけど。


 人間同士で、じっくり話し合ってとかやってたところで、結局何の解決にもなってないし、ロシアや中国あたりは領土的野心を隠そうともせずに、世界秩序への挑戦を今か今かと指折り数えて待ち構えているような有り様だ。


 世界の終わりがひしひしと近づいている……それはもうこの21世紀に入ってからの四半世紀あまりで、誰もが存分に理解しながら、必死になって目をそらそうしている……紛れもない現実だった。


 だからこそ、今の世界に求められているものは……人を超えた存在、新時代へ人々を導く絶対なる神の如き存在。


 ……けど、だからと言ってそんな事が! そんな事を許していいのか?

 それで、人々が幸せになる保証なんて……。


「なんだか、苦悩しているようだけど、君はこの世界の命運なんて、別に気にしなくてもいいのだよ……。元々、そんな立場だったのではないのかな? そもそも、君はすでに役目を終えているんだからね。実のところ、我々も君にはさほど期待なんてしていないんだよ」


 役目が終わった……その言葉で、ようやっとすべてが繋がった!

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