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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
最終章「全ての終わりの始まりに」

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第七十二話「72時間」③

「高倉様と大倉様への説明は楽でいいですね。お二人共、こちらの提示した情報と日本側の情勢を理解した上で、正確に現状をご理解いただいているようで……。日本の政府要人達のその多くは、未だに半ば思考停止状態に陥っていて、何も決まらない会議を延々と続けているような有り様ですからね」


 なるほどね。

 鹿島さんがここにいるのも、半ば現場の独断専行なんだろうな。


 いかんせん、今の日本の政府要人は民間企業ならとっくに定年退職してるような60代、70代の老人達がほとんど……要するに昭和の生き残りの老いぼればかり。

 

 政権与党の民主自由党にしたって、世襲議員がほとんどで実権を握ってるのは、やっぱり老人達。

 そして、戦争を知らない戦後お花畑世代の老人達では、アメさんの無茶振りにも碌な抵抗も出来ず……と。

 

 神部原総理は、若い頃から割と気合入ってた政治家で、20年くらい前に総理に就任して、派手な改革とかやって、平成の大宰相なんて言われてたけど……寄る年波には勝てず。


 何よりも、後継者に恵まれず、その晩年は不遇そのもの。

 半ば引退してたようなものだったのだけど、民主自由党もイヤーモデルみたいな調子で毎年総理が変わるとか、グダグダやってるうちに、総理になれそうな人材が一人も居ないと言う馬鹿な状況に陥ったのだ。


 かと言って、総理不在じゃ話にもならないので、5年くらい前に神部原総理再登板ってなった……。

 

 いかんせん、野党はどこもまるで使い物にならないって国民も思い知ったことで、選挙やっても結局民自党一択状態で、それを良いことに汚職だの不祥事だらけでダメダメで……日本の政治ってのは何年も前から機能不全を起こしてたんだよな。


 まぁ、こちとら商売人だ。

 お上のクソな政策にさんざん煮え湯を飲まされてきたし、税金やら保険料だので思いっきりふんだくられてきたからなぁ……。


 日本政府の無能っぷりは嫌が応にでも理解できる……。


 今の日本と、ロメオを比較すると、もはや比較にならないとまで思う。

 国力や技術力、軍事力はともかく国家としては全然こっちが健全だし、若き女王陛下の就任とそれを支える異世界人の宰相の登場で、国民たちは、日本と違って誰もが皆、未来への希望に満ち溢れてる。

 

 どうも、ベビーブームみたいなのが起きてるらしく、ここ数ヶ月くらいで妊婦さんが急激に増えた……なんて話も聞いてる。


 それに、旧ヴァランティアの獣人達や、帝国からの亜人達なども続々と移住してきていて、ロメオの人口も急激に増加中で、住居なんかも建てても建ててもさっぱり追いつかないって、建築業者からは嬉しい悲鳴が響いてる。

 

 まぁ、この調子だと、僕が何もしなくても、ロメオの未来は明るい……そこは断言しても良かった。


 人口が右肩上がりに増えていく社会ってのは、一種のボーナスステージのようなもんでなぁ。

 ほっといても、経済は加熱していくし、政治も余程ヘマを打たない限り、なんとでもなってしまうのだ。


 もっとも、20世紀末の日本はそこで勘違いして、取り返しのつかない状況にまで転がり落ちていったんだがね。

 なんでも、日本の偉い人達がこのまま少子高齢化が進むとヤバいって気付いたのは、2015年辺りのことだったと言う話だ。


 それまでどうしてたかと言うと、人口が右肩上がりに増えていき、経済が拡張していくと言う戦後神話が、まだまだ続くと本気で思い込んでたって言うから世話ない。

 

 いずれにせよ、今の日本は衰退と墜落の一途……そうなるのは多くの人達がもっと前から気付いて警鐘を鳴らしていたのに、何ら有効な手を打たなかったのだから、当然の話だ。

 

 何より、少子化問題なんてヤバい問題を長年放置して来たのは、致命的だった。

 経済も人も消費も……何もかもが縮小していく少子高齢化社会なんて、国を営む立場からすると悪夢以外の何物でもない。


 もはや、時間の問題で限界突破するのは目に見えてるのだ。


 その上で、本土への核攻撃まで許してしまったとなると、とんでもない数の死者が出るだろうし、放射能汚染の影響だって、凄まじい範囲に広がるだろうし、最悪無政府状態だの各自治体レベルで分裂して、群雄割拠状態にすらなりかねない。

 

 そして、株価も大暴落、超ハイパーインフレと超ド級の円高とかなるだろうな……。

 まぁ、未曾有の大混乱が待ってるのは確実だ。


 ここらへんは、他人事じゃあるんだが……だからと言って、ここで傍観ってのはないわな。


「なぁ、大倉……お互い、日本とは関係ない異世界の住民として、相応の地位と生活を手に入れてる……。お前は別口で随分前からこっちに来てたみたいだからな。ここで手を引くっていうのでも一向に構わんぞ」


「そうだよなぁ……。俺自身はもう日本とは縁が切れた……そう思ってたんだが。ここに来て、お前のとこからなら、日本との連絡も不可能じゃないって解ったし、やろうと思えば、一時帰省とかも出来なくもないって知っちまったからなぁ……。ははっ! 相変わらず、お前はやり口が汚ねぇな……。義を見てせざるは勇なきなり……こうなりゃ、お前と一蓮托生ってやるしかねぇだろ!」


「別に騙すつもり無かったんだがなぁ……。そう言うことなら、日本行きも合わせてお付き合いいただけると。お前なら帝城に行ったこともあるんだろ? やっぱ、帝国の人間がいると色々助かると思ってたんだ」


「まぁ、一度や二度……一階のロビーに入ったことがある程度だがな。そうか、空間転移が出来るなら、一度帝都に戻って色々資料を取りに行くって事も簡単なのか」


「是非そうしてくれ。手はずは僕の方でなんとでもする。そういや、お前……親御さん達とはやっぱり、ずっと音信不通なのか? 親御さんからは特に何も聞かれなかったんだが、僕もお前と連絡取れなくなってて心配はしてたんだ……」


「まぁ……そう言うことだな。俺もこっちに来て、もう5年だ……とっくに、向こうも諦めてると思ってたんだが。その様子だとまだ元気みたいだな」


「……ああ、去年だかに年賀状が来てたしな。けど、お前のことには一切触れてなかったから、多分、気遣われたんだろうな……」


 なお、こいつの実家は桐生市内……僕のコンビニからもすぐ近くだ。

 同じゼミで同郷でおまけにご近所様だったって事で意気投合してってのが、俺と大倉が友達になった経緯だった。


「やれやれ、うちの親らしいな。だが、そうなると尚更、座してみてる訳にはいかんよなぁ。肉親と故郷が危ういってのに、我が身可愛さに日和るほど、俺だって腐っちゃいないさ。それにそもそも、これは帝国が仕出かした不始末と言える。少なくとも俺はお前に全面的に手を貸すと約束する……いや、命懸けでも構わんから、何か手伝わせろ!」


 まったく、こいつも大概だよな。

 けど、肉親のため、家族の為……そして、故郷のため……か。


 確かに、それは命を懸けるに値するだろうさっ!


「ああ、それでこそ親友ってヤツだな。アージュさん、君等はどうだい? 異世界での戦乱なんて、こちらにはまるで関係ない。僕らはそれなりに義理や理由があるから、腹づもりはもう決まってるけど、君たちはそれこそ無関係だ。だからこそ、敢えて覚悟を問わせてもらうよ」


「愚問であるな。異世界日本の多くの無辜の民、そして高倉の知る者達の命がかかっているのであろう? ならば、迷う理由など無い。当然クロイエもそう答えるだろうし、他の妻達も同じであると断言してもいいぞ!」


 熱いねぇ……アージュさん。

 そう言うところ、むしろ大好きだぜ?


「んじゃま、朝になったらクロイエ様を起こして、あちこち飛んでもらおうか。乗り込むメンツは……どうしたもんかな」


 アージュさん、テンチョー、モンジローくん、リーシアさん……この辺は別格と言っていい。

 それに大倉も間違いなく強い。

 

 この辺は、僕が知る限り、明らかに僕より強い。

 けど、日本での決戦となると……どうだろう?


「アージュさん、まず君が最終決戦に臨むのは、正直厳しい……この決戦は日本での戦いになる。アージュさんは日本では魔術を使えなかったと言っていたね?」


「そ、そうじゃな……。せめて、海上や湖の上なら、青のマナには困らんのじゃが……。恐らく、結氷煉獄陣を一発打つくらいは出来るだろうが……まぁ、それは、それで使い捨てのようなもの。お主にそんな決断は出来んよな」


「出来なくて結構でーす! どのみち、アージュさんにはこの地で僕が死んだ後に墓参りを欠かせないって役目があるんだから、勝手に死ぬのは駄目! 絶対!」


「縁起でもないことを言うな……と言いたいが。実際に、そんな話もしたからのう。だが、そうよな……我より長生きするものなど、そうはおらんから、そこは致し方ないのだな」


 そう言って寂しそうに笑うアージュさん。

 ったく、この人は……そこは言うまでもなく、よく解ってるんだろうな。


「すまないね。それに陛下を抑えられるのはアージュさんくらいだし、帝城に乗り込む戦力は最低限にすべきなんだ」


 まぁ、根拠はないんだけど。

 この最終決戦……単純に大帝を始末しただけじゃ、終わらないと思う。


 間違いなく、こっちの世界でも何かが起きる。


 その何かが具体的にどんなものかは判らないけど。

 魔神ロアレベルの厄災が出てくるような気がしてならないのだ。


「うにゃーっ! アージュも諦めるのだにゃ……。全部、テンチョーにお任せなのだにゃっ!」


 さすが、テンチョーもやる気満々のようだった。

 けど、ちょっとまって欲しい。


「なぁ、大倉……一応聞くが、使徒の力って……異世界でも有効なのかね?」


「そんな事考えたこともなかったな。どうなんだ実際……? お前はなにか知ってるようだな」


「いや、実の所……テンチョーは海の女神……セレイネース様の領域では、使徒としての力は全く振るえなかったんだ。要は、使徒の力ってのは神様の力が及ばないところでは、まるで使えなくなるんだ」


 まぁ、それが使徒の弱点でもあるんだ。

 もっとも、その弱点も大陸の中……ラーテルムの影響下ならば、まるで無視できるのだけど。


 テンチョーとモンジローくんはロアとの戦いの時、その多くを使徒としてのチート能力に頼っていた為に、大幅な弱体化を余儀なくされていた……。

 

 恐らく、それは異世界日本でも同様。

 おまけに、日本では魔術も無属性マナを根源とする無属性魔法くらいしか使えないだろう。

 

 なるほど……戦力になるのは、かなり限られそうだった。


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