第九話「異世界ジャングルの長い夜」②
……それから。
テンチョー達が無事帰還して来て、こっちも商品陳列と検品作業も終わり、皆で晩御飯と相成った!
弁当系は戦闘要員の方々の晩御飯で、在庫も吐き出してしまったので、なんと奇跡の廃棄ゼロ。
ホットスナック系も少しは余ってるかと思ったけど……。
これが思った以上に売れてて、今日一日でほぼ全滅……冷凍庫の在庫も撃ち尽くしたので、もはや明日の朝イチ便待ちという有様。
確かに、どんだけチキン揚げたか覚えてないくらい揚げたもんなぁ……。
もはや僕が鶏揚げマシーン状態になって、完全に戦力外になってしまったので、しまいにゃ、ミミモモにやらせたくらいだった……。
火傷とかしないか、最初はハラハラしてたけど、巧みなコンビネーションで、ソツなくこなしてくれて大助かりだった。
おまけにエプロン姿で、三角巾頭に付けて、ちまちまやってる姿が、お客さんにとっても好評!
それまで、二人には品出しとかお掃除程度の雑用しか、やらせてなかったんだけど、思わぬ伏兵ミミモモの頑張る姿に、思わず応援したくなっちゃったお兄さん、オジ様達の熱い想いもホットスナック在庫切れの一因だと、僕は見てる。
まぁ、猫耳なおっさんがフゥフゥ言って、汗かきながら揚げたのと、同じ猫耳でもちっちゃなロリ猫耳娘達が頑張って揚げたモノ。
付加価値ってもんが違う……僕だって、選ぶ立場だったら、迷わずミミモモの揚げたのを選ぶ!
「そんな訳で、君達二人は今日限りで見習いは卒業だ! 明日から、君達は鶏揚げマシーンとして、存分に活躍して欲しい!」
そう伝えた時、ミミモモは天使のような笑顔を浮かべたもんだ。
っていうか、もうチキンは揚げたくない……。
ちなみに、アイスや冷凍食品、ホットスナック系は普通の4トンで運ぶと、当たり前のように溶けるので、本来冷凍車で運ばれてくるのだけど。
例の異世界急便は、ちゃんと異世界転移機能付き冷凍車なんてのを持ってるそうで、明日の朝イチ便は普通のと冷蔵車の二台体制で来てくれるらしい。
つか、そんなもん……そもそも何に使うんだ?
何と言うか……軽く僕の理解を超えてるんだけど……。
何処かの異世界では、冷凍車でないと運べない何かが定期的に必要とされるのかもな……知らんけど。
ちなみに、今日一日の販売実績については、米飯系やパンと言った日持ちしないのは、あらかた売れたけど、ドリンク類やお菓子類は案の定、イマイチだった。
売れ筋だけ見ると、ぶっちゃけ弁当屋やってたような気がするけれど。
まぁ、これは解りやすいのが売れたって単純な理由だろう……。
……ちなみに、食べ物以外で売れた商品をいくつか挙げると……
まず、写真集やらエロ本が意外と売れた。
まさかの売り切れ……今の我がコンビニの書籍在庫は、全く健全な本ばかりなんである。
いい年こいたおっさんとかが、かさばるポテチとかの下に、こそっと混ぜ込んで、僕がいるレジを狙ってきたりだな……。
お前らどこの中学生だよ……と思ったけど、紳士な僕はスマイルでスルーした。
それに、漫画もほとんど絵だから、興味引いたみたいだけど、皆、字が読めないって嘆いてた。
ただ、絵からセリフに何が書かれてるか、推測は出来るとかで、異世界の文字の研究用とか言って買っていった人もいた。
……やるなぁ、異世界人。
ただし、買っていったのはエロ漫画だ。
どんな研究するつもりなんだかは、僕は知らない。
異世界だろうと、男ってヤツは基本すけべぇだ……僕も否定はしない。
だが、お客様の買い物内容で、人の趣味嗜好を推し量るような真似はしないのが、サービス業従事者のマナー。
特殊なエロアイテムだろうが、明るい家族計画だろうが、何を買っていくのもお客様の自由だ。
詮索はしない……それが商売人だっての!
日本の文字については、キリカさんも全然読めなかったんだけど、ミミモモはマルチコミュニケーションスキルの恩恵で普通に読めるらしく、キリカさんはむしろ必死になって、二人から教わってた。
伊達に秀才なんて言われてないようで、すでに数字とひらがな・カタカナくらいは読めるようになっている……すげぇ。
よほど、キリカさんにも、マルチコミュニケーションスキルを付けてあげようかと思ったんだけど、これまでの努力が否定されたような気分になるから、要らないと言われた。
キリカさん、実は結構真面目な努力のコ。
エロいってこともわかったけど。
そこは……気にしたら、僕の敗北が見えるから、気にしない。
なお、これら異世界すけべアイテムについては、猫耳組は総じて、気にも止めなかったのだけど。
キリカさんだけは、真っ赤になって食い入るように見ていたのを僕は知っている。
……まぁ、その時は僕は何もいわないでおいたけど、あの時点で、彼女のキャラクター性のようなものに、実は薄々勘付いていたのだよ。
キリカさん、直球ガチンコ肉食系ヒロイン。(確信)
テンチョーは、なんか天然入ってる好感度マックス系ヒロインって感じだけど……。
キリカさんは色々確信犯で、かつやる気満々。
肉食系女子ってあんまり縁なかったけど……ありゃ、すごいね。
実際、可愛いんだけどさ……でも、欲望に負けたら、多分キリカさんエンドにまっしぐらだ。
キリカさん……恐ろしい子。
ついでにミミモモに関して言うと、ミミちゃんは全然解ってない系。
モモちゃんは……実は結構解ってるんだけど、割と奥ゆかしい子で、頑張ってスルーした系だと僕は見ている。
モモちゃん、エロ本こっそりちら見して顔赤くして、しっぽピーンになってたのを僕は見た。
なんでも、この娘達……見た目は小学生だけど、年はどっちも二十歳なんだとか……なーんだ、やっぱり合法ロリじゃないか!
とまぁ……そんなセクハラ思考はほどほどに……。
とりあえず、僕らの晩飯については、お弁当の売れ残りを当てしてたんだけど、廃棄ゼロと言う快挙の前に、まんまと食いっぱぐれてしまった!
……なんだけど、明日の売り物に手を付けるわけにも行かないので、ご飯炊いて、冷凍食品総動員での僕お手製の晩飯を振る舞うことにした。
と言うか、冷凍食品系は誰も買っていなかったから、在庫が潤沢にあった。
……冷凍食品ってのは、家に持ってかえって、自宅のレンジでチンして食べるものだからな。
現状、店にしかレンジがないので、誰も調理のしようがない……お湯で煮れば食べれるかも知れないけど……それでうまくいく保証なんてない。
つか、出来るの? そりゃ、売れるわきゃねーよ。
なんでまぁ……冷凍食品については、僕らで調理して皿に盛り付けて売る……本格的な食事処としても営業する……それか、自分達の賄い飯にするか……この二択状態なんである。
お客さんにレンジ貸して、勝手に調理してもらうって手は、壊されかねないから、今の所は論外。
そこまでして、冷凍食品なんて売らなくていいだろう。
なお、前者の路線の場合、人を割り振れるような余裕はない……一人何役兼任すりゃいいのか、見当もつかない。
なので、却下……今んとこ、後者一択状態って訳だ。
「さぁ、一応リクエストにお応えしたのと、僕の好みの品々を並べてみた! 適当に好きなだけ食べてくれ!」
チャーハン、餃子、スパゲティー、ラーメン、たこ焼き、焼きおにぎりなどなど。
どれも、僕にとっては定番だらけ。
なにせ、僕って外食も弁当も滅多に食べないからね。
毎日の食事は、主にコンビニ弁当の余り物や冷凍食品をレンチンしたヤツが基本なのさ……なにせ、毎日のようにお弁当の廃棄が出るからねぇ。
それを捨てて、生ゴミにするくらいなら自分で食べれば、食費だって浮く!
まぁ、そんなもんだ。
そして、そんな僕の定番メニューに加えて、テンチョーのリクエストで、唐揚げ、唐揚げ、唐揚げ。
醤油、塩、ガーリック、のり塩とまぁ、色々味のバリエーションがあったのだけど、全部試すとの仰せ。
なお、のり塩は衣が緑色と言う限りなくゲテモノなんだけど、意外と美味い。
あとは、カレーうどんに焼き魚系なんかも用意してみた……最近の冷凍食品は何でもあるからなぁ。
ついでに、徳用カップアイスに冷凍フルーツをばら撒いたのをプラ丼に山盛ってみたデザートアイスが、アイスボックスの中に鎮座している……。
でも……オシャレ度のカケラもないような……なんと言うか……センスないな僕も。
「おおっ! マスターはん! 凄いなぁ……こんな料理を一瞬で……なんかどれも美味しそうやな!」
「うにゃーっ! どれも見覚えがあるにゃーっ! テンチョーが食べたかったものばかりだにゃっ!」
酷い見栄えの料理の数々なのだけど、割といい感じの反応だった。
ふふふ……ここでも、四台のハイパワーレンジが物を言った。
四品同時に、30秒で調理完了……盛り付けが雑なので、見た目は残念だけど、味は上等!
お皿は紙皿くらい扱ってるから、それに並べまくった!
……ホント、コンビニってなんでもあるよな。
「チャーハン! とっても美味しいっ! 熱々唐揚げもっ! んーっ! んーっ! むはーっ! お塩、ガーリック! 醤油にのり塩ーっ! ポテチみたいだにゃーっ!」
テンチョー……人語喋ろうか。
っていうか、君……から揚げ好き過ぎだよ。
「この丸いのはなんや? どぅわっ! あっつ! あっつ!」
たこ焼きを無造作に口の中に放り込んだキリカさん……案の定、口の中でブチョっといったらしく、アワアワしてる……。
「それはたこ焼き……外はカリカリ、中はとろとろだから、一口で食べようとするとそうなるわな」
とりあえず、黙ってキンキンに冷えたミネラルウォーターを手渡すと、大慌てで飲んでる。
「さ、先に言ってくれんと! おおきに……危うく、口の中火傷しそうになったわ……でも、美味かったで! こ、今度はうまくやるでーっ! って! もう、のーなっとるー!」
「最後の一個は、テンチョーがいただきましにゃ! プリプリのたこ焼きのタコ! ご主人様、いつもイカ・タコは駄目って食べさせてくれなかったけど、こんな美味しかったんだにゃーっ! ズルいにゃーっ!」
「イカ・タコって、猫に食わすと腰が抜けるっていうからなぁ……。前にスルメ食べて、思い切りリバースしてたじゃないか」
お食事中に言うこっちゃないけど、猫リバースは猫飼いにとっては、日常茶飯事。
実際、僕の部屋の絨毯や布団には、テンチョーのリバース痕が到るところにあるが、気にしてない。
お部屋の中が締め切っとくとカリカリ臭くなるようになったけど……まぁ、慣れたよ。
「確かに……スルメ食べたら、とっても気持ち悪くなっちゃったんだよね……。でも、今のテンチョーなら、食べても大丈夫だよね? ね?」
「ええっ! わ、私……たこ焼き、食べちゃったんですけど……大丈夫なんですか?」
「ぼ、僕もだよ……美味しそうだったからつい……実際、美味しかったから、パクパク食べちゃったんだけど……」
たこ焼き一瞬で消えたと思ったら、ちゃっかりミミモモも食べてた……。
ミミなんか、二ついっぺんに食べたみたいで、ほっぺがリスみたいになってて、モゴモゴやってる……。
……二人共、黙々と食べてると思ったけど、意外と抜け目なかった。
と言うか、敢えて黙認したけど揚げマシーン化してる中で、唐揚げ棒から一個失敬して、ハムッとかやってたしな……。
まぁ、ご飯食べさせてやる余裕なかったから、許したけど!
一部始終を僕と一緒に見ていたお客さんも「なら、その一個少ないやつを買おう!」なんてやっていったしな……。
猫耳少女と唐揚げ棒を分け合って食べる……それだって、付加価値だ。
なぜなら、可愛いは正義だからっ!
「だ、大丈夫だと思うよ……猫獣人って、食べ物人間と一緒で問題ないんでしょ? そんなこと言ったら、僕だってアウトだっての。もちろん、たこ焼きはしっかり先に試食させていただいたよ! 実は、イレブンマートのたこ焼きは、僕の大好物なのだよ」
「やっぱ! ご主人様、ズルいにゃーっ!」
「せやなー。でも、そう言う事なら、うちらも一日頑張ったんやから、たこ焼きのお代わりを要求するで! ミミモモも、もっと欲しかったら、声を挙げるんや! おっかわりっ! おっかわりっ! た・こ・焼・き・よ・こ・せーっ!」
「そうだそうだ! マスターさん、僕にもたこ焼きもっとよこせーっ! 美味しかったぞーっ!」
「よ、よこせですーっ! って、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
「そうだにゃっ! 目の前で美味しそうに食べて、結局一口ももらえなかったあの日の悲しみっ! 恨み晴らさでおくべきかーっ!」
キリカさん、恐るべし……あっという間に全員の心を一つにまとめてしまった。
それに……テンチョーまで……。
確かに、たこ焼きのタコをあげなかったのは事実だし、僕が食べ終わったあと、テーブルにポツンと残された空のお皿を悲しそうに、じっと見つめ続けるテンチョーの後ろ姿には、黒い怒りのオーラが漂ってたよっ!
猫の恨みは7代祟る……なんて言うけど、猫って根に持つ動物なのかもしれんね……。
前回引き続き、日常パート?
ちょっと路線変更したら、割と好評な感じなんで、むしろ、Piaキャロットにようこそ的な路線でもいいのかしら?(今どきの人は知らんかな……。)
ちなみに、私ら作者は、はたしてこの路線で正しいのか? とか、ひょっとして面白くないんじゃないだろうか? と常に自問自答を続けながら、執筆しています。
面白いもっとやれ! って、思うようでしたら、評価なり、ブクマで応援してください!




