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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
最終章「全ての終わりの始まりに」

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第六十七話「我が家に帰ろう」①

「ははっ、実は気楽な一人旅ってヤツだったんすよ……と言うか、先輩……向こうで最後に会った時、顔色ヤバいし、すっかり老け込んでたのに、すっかり若々しくなって、もうまるっきり別人……ズルいですなぁ!」


 なお、そう言う大倉も五年前とほとんど変わってない。

 むしろ、髪の毛ツヤツヤになってるし……まぁ、全体的に更に横幅が増してるんだが。


 中年ってのは、油断してるとあっさり腹が出たりするからなぁ……。

 今は、腹筋シックスパックだけど、ちょっと前までは典型的なメタボ腹だったからな。


「うん? まぁ……そうだね。けど、最初こっちに来た時は、普通にくたびれた中年のおっさんだったんだぜ。もっとも、死ぬほど体鍛えられて、色々あって激ヤセしてな。確かに、髪の毛もフサフサになったし、すっかり若返っちまったよ。だが、お前さんも思ったより老け込んでないな……もっとも、その腹は相変わらずだがな!」


 そう言って、軽くドスッとボディーブロー!


「はっはっは! 確かにこっち来て、俺もすっかり若返ったからなぁ……。まさに、神様チート様々ってやつですよ! それと先輩も嫁さんもらったらしいですな……それも10人近くも! まったく、隅に置けないと言うか、無茶しますなぁ……!」


 大倉もそれだけ言うと、気安くドスッとボディーブロー返し。

 人外になってることはこいつも知ってるから、その辺のツッコミはない。

 

「おぅ、まったく……そりゃ、お互い様だ。嫁さんもらって、二児の父親、おまけにもうすぐ待望のニューベビー誕生とか……この太鼓腹と二重あごじゃ、全然モテないから、一生独身確定だとか嘆いてたのに、しっかりしてやがんな! つか、上手くやったな! おめでとうっ!」

 

 僕もその大きな肩をバンバンと叩くと、ヘッドロックをカマしてやる。

 

 まったく、こんな異世界で古いダチと再会するとはなぁ……。

 確かに5年ほど前から、突然、音沙汰がなくなって、どうしたものかと心配してたんだが……。

 

 まさか、こんな事になってるとはね……。

 もっと早く、声でもかけてくれればよかったんだがなぁ。

 

 もっとも、向こうも僕の存在に気付いたのは、ロメオの宰相就任で初めて気付いたって話だった。

 僕も対外的にはタルカシアス辺境伯と名乗っていたので、半ば半信半疑だったらしかったのだけど。


 帝国の外務担当が次々僕との交渉で返り討ちに合うのを見て、その容赦なくエゲツないやり口で、僕の正体に気付いたようで、コイツ知り合いだから、コイツ相手の交渉なら任せてくれないかと、帝国の上層部に持ちかけて、こうなったらしい。


「しかしまぁ……昔から、要領のいいヤツだったけど、変わっちゃいないねぇ。それに今回の件で帝国でも随分と出世したんだろ? けど、一人旅って……お前もそれなりの重要人物なんだから、普通お供の一人二人付くもんだろうに……」


「ははは、いかんせん俺は本来、役所務めの木っ端役人で、先輩相手のピンチヒッターみたいなもんですからなぁ。そもそも、要人扱いすらされとりませんわ。けど、これでも女神の使徒の一人なんで、別に護衛なんぞ要らんので、至って身軽なもんですよ。おかげで余計な邪魔も監視もなくて、実に気楽に交渉できましたわ」


「なるほどね。そう言う事なら……うちのコンビニの食堂にでも寄っていくかい? うちの嫁さん達の顔も見せてやりたいし、メイドインジャパンの食い物や酒が、選り取り見取りだ。暁って知ってるだろ? こないだ、アレのプレミア30年モノが手に入ってな。とっておきって奴なんだが、ボトルキープしてあるんだ……久々に飲もうぜ!」


「おいおい、先輩……冗談きついでしょ。先輩の本拠地まで、どれだけあると思ってるんだよ。軽く山二つ三つ向こうでしょうが。そんな派手な寄り道してたら、帰国予定が一ヶ月は先になるっての……。カミさんの出産予定日だって、今すぐ帰ってギリギリだし、その上一ヶ月も遅れたら、俺がカミさんに怒られちまうよ」


 まぁ……この世界の普通の交通手段なら、そうなるよな。

 

 交渉開始から、本番まで三ヶ月もかかったのは、事前交渉が長引いたのもあるけど。

 各国の参列者や随伴員がここまで集まるのに、それくらいの時間が必要だったからなんだよな。

 

 こっちも馬車200台分にもなるような大名行列状態で、道中なかなかに苦労した。

 まぁ、それでもクロイエ様のおかげで、割と気軽に本国やコンビニ村に戻れたので、急病人や怪我人の移送、不足分の物資補給など、かなり楽な旅ができたのは事実だった。

 同行してた親衛隊の子達も長旅初心者揃いで、相当苦労すると思ったのだけど、思いの外頑張ってくれて、さしたる問題も起こらなかった。

 

 ちなみに、コイツとの交渉は、向こうも本国と連絡を取りつつ野営しながら、旅の合間に遠話水晶でコツコツ暇を見てやってた。

 ぶっちゃけ、移動手段が何処行くのにもショボすぎるんだよと言いたい。

 

 大陸全土規模の鉄道網整備とか、マジで帝国とコラボしてとか、考えてもいいような気がする。

 そこら辺の話も大倉ともしてたんだけど、向こうも結構乗り気みたいだった……なにせ、帝国の国土はロメオの比じゃないからな。


 とにかく、どうせコイツとは俺、お前の仲だし、心から信頼出来るヤツだってことも解ってるんで、コイツにもうちの最大級の秘密くらい知っておいて欲しいと思う。

 

 来たるべき、使徒と大帝の決戦の日に備えるって意味でもね。

 

「実は、僕らは帰りについては、日帰りの予定でここまで来てたんだよ……。せっかくだから、お前もうちの特急便に便乗させてやるし、帝国の国境辺りまででいいなら、帰りも送ってやるよ。それならどうよ?」


 行きに関しては、便乗者が大量にいた関係で、一部関係者を除き、律儀に徒歩と馬車で旅をしてきたのだけど。 

 帰りとなれば、話は別……他国の間諜の目をごまかすためのカモフラージュ用の空馬車を走らせる為の要員以外は、さっさとまとめて帰国する予定だった。


「ここから、日帰りでロメオまでなんて……ありえないっしょ。でも……いや確かに、ロメオのクロイエ陛下と言い、先輩と言い……神出鬼没って感じだと、うちの間諜からも報告があがってたからなぁ……。先代のリョウスケ王も昨日最前線、今日は王都サクラバ……みたいな調子でロメオには、何らかの未知の超高速移動手段があるのでは、って言われてはいたんだが。まさか、この俺にロメオの国家機密に触れさせてくれるって事か……い、いいのか?」


「そこら辺は、お前を信頼する。それに例の女神の使徒の密約……あれが実行されるとなると、帝国の使徒連中の取りまとめをお前に頼みたいしな。どのみち、そうなったらクロイエ様の力もフル活用しないといけなくなるだろう。だからこそ、お前さんには僕たちの手札を今のうちに知っておいて欲しいんだ」


「……解った。確かに俺も女神の使徒の一人だからな。他言無用って事なら、そこは厳守しよう……女神ラーテルムの名において、誓っても良いぜ!」


「ははっ、女神の名に誓うか……そりゃまた、随分と軽い誓いだと思うけどね。じゃあ、話は決まりだ

ぜ!」


 そう言って、お互い肩を組んですっかりお祭り騒ぎになっている街中をねり歩く。

 露天でエールを買って、串焼き肉をまとめ買いして、食いながら歩く。

 

 帝国とロメオの高官同士が肩を組んで、笑いながら酒飲んで街中を堂々と歩いてるとか。

 事情を知るものが見れは目を疑う光景なのだけど。

 

 学生時代の友は一生の友とはよく言ったもんだ。

 どんな経緯でこんな異世界に転移して、お役所仕事なんてやってたんだか知らないが。

 

 会って話して、笑い合えば、あの頃同然のノリにあっさり戻れる。

 竹馬の友とはこう言うやつを言うのだ。

 

「やぁ、クロイエ様、お待たせしたね!」


 オルタンシアの町外れまで行くと、ロメオの関係者が一同に集まっていた。

 便乗組の商人達は、このまましばらくオルメキアに滞在して、あちこち巡って目一杯儲けていくらしいので、行きに比べると随分と馬車の台数は減っている。


 それでも、馬車20台、100人程の大所帯ではあるのだが、これだけの団体ですら、クロイエ様はごく短時間でまとめて転移させることが出来るようになっている。

 

 転移魔法陣による超空間ゲート生成術式。

 以前は、クロイエ様と手をつないだ上で数人ずつ……とかやってたんだけど。

 

 更に一歩改良を進めて、ゲート方式に改めた。

 この辺りは、例のセレイネース様の使っていた空間転移ゲートを間近に見て、こっそり魔術式を解析した上で、アージュさんが使う亜空間収納魔術なども応用し、空間同士をダイレクトにジャンプするのではなく、一度亜空間を経由する事で、一種のワープトンネルを作る……そんな感じにしたらしい。

 

 これにより、ロメオは大兵力を一瞬で望む場所へ転移させることすら可能になった。

 言わば、世界最高レベル、いや、地球のどの軍隊をも凌駕する超級の戦略機動力を手にしたと言っても過言ではない。

 

 元々、ロメオの保有している軍勢も一騎当千の精鋭部隊を中心にし、各地には軽武装の警備隊程度の兵を分散配置し、有事には警備隊が時間を稼ぎ、中央の精鋭が増援として駆けつけるまで粘ると言うドクトリンだったので、この高度戦略機動との相性も抜群と言えた。

 

 実際、辺境の地方都市近辺にワイバーンの群れの出現の報が入り、現地の警備隊では手に負えない状況だったのだけど、数百人規模の精鋭部隊を編成し送り込んだら、あっという間に始末出来てしまった。

 

 朝に報告を受けて、昼には部隊編成を終えた上で送り込み、翌朝には全員無事に戻ってきた。

 指揮官からは、現地住民から歓待を受けていて一泊したが、日帰りも十分可能だったと報告を受けた。

 

 ゲートの開放にはクロイエ様が必須なのだけど、軽く軍事革命と言っていいような代物だった。

 ……もはや、クロイエ様様って感じなのである。

 

 ざっと見た感じ、町外れの広場では、すでに関係者全員揃っていて僕らが一番最後だった様子。

 どうやら、すっかり待たせてしまったようだった。

 

 流石にここでは人目につきそうなので、しばらく街道を進み、街道を外れた所で魔法陣を展開し、ゲートを生成する予定で、すでに何人かは準備のため先行しているようだった。

 

「宰相遅いぞっ! まったく、せっかく街中お祭り騒ぎになってるのだから、私も少しくらい屋台で買い食いとかしたかったのに……その様子では、ちゃっかり自分だけ飲み食いしておったようだな……ズルいっ! 私の分は無いのかっ!」


 片手に串焼き肉を持ってたせいで、クロイエ様に目ざとく見つかって怒られた。

 まぁ、僕に説教できるなんて、アージュさんとクロイエ様くらいのもんなんだけど、甘んじて受けよう。


「悪かった! すまない……クロイエ様。でも、どうせならコンビニ村で宴会やった方が美味いものが食えるし、酒も美味い……そんな訳で、ここはさっさと帰ろう。サントスさんが山盛り料理作って待ってるそうだよ。ああ、それと一名余計に便乗させてもらう事になったから、馬車の席空けといてくれないかな?」


 大倉が一同にペコリと会釈すると、予想通り空気が凍った。

 まぁ、そうなるわな。

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