第六十六話「和平会議」①
魔神ロアの襲来とリヴァイアサン討伐……。
そして、ジャリテルム降臨。
本当に色々あったが、あれから三ヶ月ほどの月日が過ぎた。
魔神ロアの脅威は完全に去ったとは言い難いのだけど、セレイネース様が施した封印は軽く十年単位はもつと言う話なので、今は気にしてもしょうが無い話ではあるのだ。
ジャリテルムについては……あんなヤツの事なんざ、知るかボケェッ!
あの後、当たり前のように問題起こしまくってくれたんで、聖光教会の巡礼の旅という事で、モンジロー君とレインちゃんに引率されて、あちこち引き回されている。
二人には悪いと思ったけど、ホント……マジうざいんだもん。
まぁ、ジャリテルム化したことで、すっかり頭も悪くなってるみたいだけど、巡礼の旅で信者たちの敬虔なる祈りと、善意に触れて徐々にまともになってきてるそうなんで、戻ってきたら、少しはマシになってるだろう。
レインちゃんはアレだけど、モンジローくんが一緒なら、そこまで悪いことにはならないだろう。
少しはモンジローくんを見習えってんだ。
それは、ともかく。
本日はいよいよ兼ねてからの予定通り、オルメキアとルメリア、ロメオと帝国の4カ国和平交渉が、オルメキアの最前線の都市、オルタンシアと言う街で開催されることとなっていた。
僕らは遠路はるばる二ヶ月もの長い道のりを超えて、ようやっとここまでたどり着いた……そう言う設定になっている。
まぁ……僕自身、割とあちこちに顔出してたんで、時々顔は出してたとか、そんな調子だったんだが。
先遣隊は随分前に出てたし、それに便乗してたと言うちょっと無理のある筋書きで通してるから、細けぇことは気にするな!
実際、コンビニ村を出発して、会場入りしたのも昨日の夜で、この三ヶ月……クロイエ様共々、マジであっちこっち飛び回ってたんだよっ!
シャッテルン公率いる北方貴族連の御当地訪問やら、王都の有力貴族やらマルステラ公との面会やらもあったし、地方領主との面談やらもありーので、官僚達からの相談や貴族たちとの話し合いだの、毎日、毎日くっそ忙しくってたまらんかったー!
それはさておき、町の中央広場の噴水の前には、天幕が張られ、豪華なテーブルと椅子が並べられて、近隣各国から招待された貴族や有力者、街の人々が見守る中、和平会議が始まろうとしていた。
アウトドア和平会議とか、どうなの? とか思ったけど……こう言う地方都市で、そんな公会堂みたいな御大層な施設があるようなところの方が珍しく、日中建物の中なんて、とっても暑苦しいから、外に居たほうが全然マシって言われたので、そこは納得済み。
ここらはロメオと違って、高温乾燥地帯なので、噴水があって、風通しが良い……それだけで、随分と快適なのだ。
一応、辺り一帯に日よけの天幕も設置されているので、思ったよりも涼しい……同じ南国でも、ケントゥリ・シティとは、ずいぶんな違いがあるものだ。
あ、ケントゥリ・シティってのは、僕のコンビニのあるコンビニ村のことな!
色々と紆余曲折があって、そんな名前に落ち着いたのだ……例によって、周りが勝手に決めてくれたんで、僕の意見は華麗にスルーだったんだがね。
いずれにせよ、郷に入っては郷に従えとも言うからね。
このアウトドア式も現地の人達のオススメなのだから、ここは黙って従うべきだろう。
実際、太平洋戦争での日本の降伏文書の調印式とか、戦艦の甲板の上だったしなぁと、そこら辺は早々に納得した。
出席者は、ロメオからは、僕とクロイエ様、女王筆頭補佐官のアージュさん。
会場警備と参列者の護衛として、女王直属親衛隊の面々を起用している。
女王直属親衛隊については、もはや説明は不要だ。
セルマイルちゃんに、リスティスちゃん、ラトリエちゃんの三大貴族令嬢の嫁さん達を頂点としたロメオの若き貴族令嬢達による女王陛下直属の武装親衛隊だ。
本来は戦場にも出さないお飾り軍隊と言う話だったのだけど。
僕直属の私兵警備隊や精鋭武闘派陣の刺激を受けて、ハードな実戦想定訓練や危険だらけの森のパトロールでのモンスターやら野盗達との遭遇戦やらを重ねるうちに、すっかり実戦にも慣れてくれた。
おまけに、ウォルフ族の皆さん同様、日本から持ち込まれた銃火器の訓練も施した事で、全員グロッグやらガバメントで武装してる。
皆、優雅な服装で、強そうにはとても見えないけど。
太もものガーターベルトにはゴツいナイフと、拳銃装備と……見えない所で結構な重武装。
しかも、全員が全員そこそこの魔術とそれなりの剣術の使い手。
まぁ、間違いなくこの世界でも有数の戦闘力を誇るロメオ最強精鋭みたいになってしまった。
本来の初任務はこの和平会談へ向かう道中、クロイエ様や僕が居ない事をばれないようにする為の偽装行軍だったんだけど。
そっちも一応無事にこなしてくれた。
とにかく、この二月にも及んだ遠征はホント色々あった……。
ちなみに、僕の影武者役の子も居て、その子は男装して猫耳と猫尻尾付けて、むしろ可愛かった!
親衛隊の子達とも、旅を通じてすっかり仲良くなったけど、ケントゥリ・シティへにいる時間の方が長くって、影武者ちゃんは大活躍だったらしい。
クロイエ様とも空間転移で一緒にあちこち出張ってたし、留守の間にもいろんな事件が起こったりもした……まぁ、そこら辺は別の話だ。
そして、話は戻る。
オルタンシアの市内警備については、御当地のオルメキア軍が請け負ってるので、こっちの警備陣はクロイエ様の周辺を固める程度にしているのだけど、地下水路とか周囲の高台とかおざなりな部分もあったので、そこら辺はうちの親衛隊の子達を派遣して、見張らせている。
もっとも、彼女達には万が一敵と遭遇しても、手出しは無用と厳命してある。
だって、怪我とかさせたら大問題になりかねないし、消耗品の兵隊と割り切るには皆、ちょっと仲良くなりすぎてしまった。
もっとも実際は、その手合への対処は、彼女達の護衛の皆さんがやってくれるだろうから、そこら辺はあまり心配してない。
別に1kmスナイパーとかいる訳でもないので、高い建物を全て押さえたりとかそんな心配はしないでいいし、ウルスラさん達なら、銃弾で撃たれようが問題にしないので、イザって時は身体張って盾になってくれるはずだった。
その程度には、オーガー族も不死身チートが酷い。
でもまぁ、さすがに銃で撃たれると結構痛いそうで、あまりもらいたくないそうだけど。
普通、一発でも撃たれたら、それだけで十分死ねるから、痛いで済むあの人達がおかしい。
僕についても、ルメリアは獣人や亜人への忌避感があるそうなので、猫耳はベレー帽にしまって、あまり目立たないようにしてる。
ダークグリーンの礼服もきっちり着こなして、なんと言うか、どっかの銀河の同盟軍将校みたいな感じになってる。
しっぽは……ごちゃごちゃとアクセサリーとか付けて、ベルト穴に引っ掛けて、モールアクセサリー風にして、横にぶら下げてる。
こればっかりはどうにもならないけど、べつに顔にネコひげとか生えてる訳でもないので、遠目なら普通の人間に見えるくらいにはなった。
もっとも、僕については今回は裏方なので、椅子に座っているだけで、一切の発言はしない予定だった。
それと商人ギルドからも、パーラムさんが出席しているのだけど、こちらもオブザーバー参加なので、発言権はなし。
鹿島さんとかは、後で録画映像でも送ってくれとか言ってたので、親衛隊の一人にビデオカメラを渡して、撮影するように命じてある。
ちなみに、最新型の自律機動カメラとか言う代物。
虫みたいな足が付いてて、カシャカシャ歩く事も出来るんだけど。
基本的には、肩とかに乗せておいて、ボタン一つで録画開始。
手ブレ補正や被写体自動追尾機能やら、視線連動撮影機能なんてのも付いてるから、機械に疎くても問題はない。
まぁ、当然ながら本来は軍事用途で、一般向けには売られていないらしいんだけど、鹿島さん達が自重無しで送りつけてきたので、有効活用することにした。
試供品ですとか言って、10台くらいまとめて送ってきたので、こっちでも偵察とか諜報、監視用途に結構使えるとの評判だ。
もっとも、こいつらが展開されてると、深夜の鬼ごっこも急激に難易度が高くなる……ぶっちゃけ、憎いコンチクショーでもある。
こんな調子で、日本の送り込んでくる最新ガジェットは、なんかもう時代を先取りしまくった訳の判らんものばかりになってきてる。
こだいだなんて、ゼロワン達がレーザービーム砲みたいなのを組み上げて、空に向かって試射とかやってたし……。
なお、今回の件については、日本側も全面的に後押ししてくれると表明してくれていた。
何よりも、帝国側からの情報で、スライム軍団と大帝がオワコン化したと言う確定情報が得られたのが大きかったらしい。
帝国の無差別テロ攻撃に対する警戒レベルも下げる事が出来た上に、無人兵器などの運用データの蓄積や実戦データなども多く得られることが出来たのは、かなり大きかったらしい。
どうも、現在進行系で、日本の自衛隊に軍事革命とも言うべき、各種兵器のロボット兵器化が一気に進んでいるようで、空陸海とどんどん無人兵器が他国を圧倒するペースで配備され、お隣の国辺りは、発狂してるらしい。
例の無人兵器輸出なら、平和憲法には触れないよね? という屁理屈で、ホルムズ海峡の独自警備とかも始めたことで、国際的な地位も向上し、アメリカさんすらも圧倒する強烈な無人戦闘艦群が続々と数を増やして、着々と各地の海へと進出し、帝国海軍復活……みたいな事すら囁かれてる。
いかんせん、あの手の軍艦とかって、動かすのに膨大な人手がいるってのが一番のネックになってて、万年人手不足の自衛隊では艦艇数を増やしたくても、増やせなかったと言う事情もあり、頭数については50隻に満たない程度では圧倒的戦力不足と言うのは、よく解っていたらしい。
けれど、無人戦闘艦ともなると純粋に工業力と技術力と資金力の勝負になる。
本来、海洋国家の日本を守るためには、数百隻もの軍艦がないと、キツいとも言われてたんだけど。
人手不足を気にしなくて良くなった為に、自重せず月間ペースでガンガン新型艦が就航しつつあるんだとか……。
まぁ、お隣さんも大陸国家なのに300隻以上の大艦隊を編成しつつあるらしいんで、それに対抗して日本も負けじと艦隊戦力の拡充とかやってるらしい。
鹿島さん達は、そこら辺詳しくは教えてくれてないのだけど、ネットニュースとか見てるとそんな感じだった。
なにせ、無人戦闘機母艦「ずいかく」「しょうかく」なんてのも就役してるってんだからなぁ……。
日本、始まってる……そりゃ、お隣さんとか発狂もするだろ。
……僕は知らんよ? なんもしてないし。
商人ギルドは例によって、このイベントをお祭りとして盛り上げて、商売繁盛のチャンスと思ってるみたいで、商人ギルドから派遣された屋台商が、あちこちに露天を広げていて、うまそうな食べ物の匂いが漂ってたりもする。
この屋台商連中は、元々うちの近くで屋台やりながら、せっせとコンビニ食べ物のノウハウを研究してた人達で、売ってる食べ物はどことなくコンビニのホットスナック風だったりもする。
おかげで、ここに来るまでのロメオ関係者の車列は、大名行列みたいになってたんだがね。
スライム騒ぎで、商人たちもオルメキアに行きたがらなくなってたんだけど……。
僕らと一緒に行けば安全だよって言って、何組か引き連れてたら、各地から合流希望者が続々と集まって来て、最終的には200台以上の車列になってしまったのだ。
もっとも、戦乱の最前線で食糧難に苦しんでいたオルタンシアの街の人々にとっては、この大規模商隊の来訪はむしろ大歓迎だったようで、街にもすっかり活気が戻り、どの露天も人だかりが出来て、商人たちも嬉しい悲鳴を上げているようだった。
出発前の段階で、売上想定を通常の三倍くらいで見積もっといて、保存の効く食材なんかも積めるだけ積み込んどけと言っておいたのだけど、そこら辺はガッツリ当たったらしい。
まぁ、商売人としての勘だったのだけど、きっちり当たった……さすが僕だね。
商売人としても、宰相としても実にいい仕事をしてしまった。
パーフェクトだよっ! やっべぇ……僕も神の領域に足を突っ込んだかな? くくく……。
なお、オルメキアからは、ミリアさんが全権代表として送り込まれ、病床から動けない国王に代わって、全権を委任されていた。
もっとも、オルメキアの国王陛下については、ここに来る途中で寄り道した表敬訪問の際に、テンチョーに治癒魔法を施してもらったので、順調に回復に向かっている。




