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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第一章「猫テンチョーとコンビニ……異世界に建つっ!」

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第九話「異世界ジャングルの長い夜」①

 それから……。

 昼間のドタバタ騒ぎもすっかり落ち着き、辺りが薄暗くなってくると、僕は誰もがこんなのあったのかと驚くであろうシャッターを閉めると、店じまいをした。

 

 コンビニのシャッターなんて、いつ使うんだと大抵の人が思うだろうけど。

 コンビニだって、棚卸しとか改装で一時休業くらいするし、暴動や災害が起こった時なんかの為に、実はほとんどの店舗でシャッターは常備されているんだ……。

 

 もっとも、めったに下ろすこともないってのもまた事実で……案の定、錆びついてた上に、シャッターを下ろす為のひっかけ棒がどっかいってるわで、下ろすの結構、苦労した。

 

 具体的には、ラドグリフさんに肩車してもらって、ひっかけ穴に紐結んで、力技で下ろした!


 とりあえず、全面ガラスになってるとこも含めて、すでに全てのシャッターを降ろしておいた。

 出入り口のとこだけは、半分くらいまで降ろして、止めている状態なのは、まだまだ出入りするから。

 

「はぁ……やっと、全部下ろせた! ラドクリフさん、助かりました!」


「おうっ! お疲れさん! しかし、この鉄の壁……かなりいいな。俺がブチかましても、壊すのは相当骨だろうよ」


「壊さないでくださいねー。でも、別に全部シャッター降ろさなくてもいいんじゃないですかね?」


 ちなみに、当初の予定では出入り口のところだけシャッターを下ろしておけば十分だって、僕も考えていたんだけど。

 ラドクリフさんやキリカさんが、あるなら全部下ろしておけって、言うからその通りにしたんだ。


「……あるもんは、使っといたほうが良いぞ? ここらはむしろ、夜が一番あぶねぇからな……。イザとなったら、皆を逃げ込ませる安全地帯の確保って意味でも、こんな頑丈な防壁がある建物があるってのは、俺達にとってもなかなか都合がいいんだ」


「そんなもんなんですか? 昼間は全然問題なかったんですよね? 結局、敵襲なんて一度も聞いてませんよ」


「確かに昼間は、まとまった敵襲なんてなかったからな。だが、ゼロじゃねぇ……ゴブリンの斥候共と、うちの奴等や護衛の冒険者連中が、何度もやりあってたようだからな。まぁ、あの程度の数じゃ俺達の敵じゃねぇんだが……。夜のゴブリン共はちと厄介だし、徒党を組まれると正直、めんどくせぇ。盗賊団の連中もなんか企んでるだろうし、おまけに夜になるとダンジョンから化物共が這い出てきやがる……奴らも大概めんどくせぇ」


「そ、そんなのが出るんですか?」


「まぁな……ここの夜は少々物騒でな……見てみろ。どいつもこいつも腕の立ちそうな俺らの同業者を連れてるだろ? 連中の仕事は、これからが本番……要するに夜は俺達の時間って事だ。もっとも、この店もこの鉄の壁で覆っちまったから、簡単にゃ落とせねぇだろうさ。旦那方は、朝まで中でゆっくり休んでてくれればいい。そいや、キリカも中で休ませてくれるんだってな? 感謝するぜ」


「はぁ……まぁ、本人そこら辺で野宿するって言ってたんで……。せっかくなんで、二階で泊まっていくようにって……なんかすんませんね。嫁入り前の姪っ子さんなのに……。あ、間違っても手なんか出さないですから」


「はっはっはっ! なぁ、タカクラの旦那……。ここだけの話、もしアイツを気に入ってくれたなら、手出ししたって一向に構わんぞ? なんなら、嫁にくれてやっても構わん! そうすりゃ、俺達と旦那はめでたく血族の絆で結ばれるって寸法だ! どうよ? お互い悪くねぇ話だろ?」


「……ははは、思い切り、政略結婚って奴ですね。まぁ、悪くない話ですけど、考えときます」


「なんとも身持ちが硬いねぇ……それとも何か? キリカみてぇな奴は、嫁に取る価値もねえって事か?」


「いえいえ、全然っ! まだ会って一日しか経ってないし……そう言うのって、ちゃんとお互いを知って理解し合ってからですよ! うん、いい娘だってのは解りますよ! 頭いいし、腕っぷしも強いし……悪くないです! ホント」


「そうか? まぁ、こう言うのは本人同士の気持ちが大事だからな……。ただし、アイツを泣かすような真似をしたら、俺が許さん! ……なんてな! わははっ!」


 ……ラドクリフさん、笑ってるけど、目が笑ってないし……。

 でも、要するにラドクリフさん達からすれば、僕は身内にするだけの価値があるって事なんだよな。


 そして、そんな彼らと組む……それは異世界での武力を得るってことでもある。

 武力があれば……国盗りですら、夢じゃない……って、ははっ! どこの戦国転生モノだっての!

 

 さて……日が沈みきってしまうと、周囲のキャンプ村の人々も、火の番や戦闘要員の人達以外は早々に寝に入ってしまって、殆ど動きがなくなってしまった。

 

 とりあえず、店内の清掃も終わったし、夜便の配送も前倒しにしてもらったので、商品の補充を済ませれば、今日の仕事はもうおしまい……後はもう食事をして、風呂でも行って寝るだけだ。


 実に気楽で健康的だ……日付が変わる前に寝れるなんてなっ!

 深夜営業しなくて済むってだけで、もう最高な気分だぜ!

  

 トイレなんかも、上下水道が怪しかったし、皆、そんなモン使う習慣なかったから、使用禁止にしてたけど。

 とりあえず、問題なく使えそうな事が解ったんで、遠慮なく使って良いことにした。

 

 ……これまで皆、トイレどうしてたって?


 そりゃあ、アウトドアの基本……。

 ジャングルの風下のちょっと離れたところに、適当に深めの穴掘ってそこでって感じだった。

 別にそんなでも、慣れるとあんまり困らなかったから、構わないと思ってたんだけど。


 ラドクリフさん達から、極力建物から出るなと言われていたので、トイレも二階と店内のを開放することにした。

 

 テンチョーが猫時代にやらかしたように、ロールを全部引き出してしまったり、キリカさんがウォッシュレット試して、水が微妙なとこに当たったのか、色っぽい声で悶えてるのを聞いてしまった以外、さしたる問題もなかった。


 そう、さしたる問題はなかったのだけど。

 なんか、キリカさんがトイレから出てきたとこで、ばっちり目が合ってしまった。

 

「……はぅわっ! マスターはんっ! そういや、おったんやっけっ!」


 尻尾の毛がバフンって感じで逆立ってるし、犬耳もピーンッ!

 なんとも解りやすいな。


「や、やぁ……キリカさん、トイレの使い方わかった?」

 

 ちなみに、僕は店内で明日の朝分の商品陳列を行いつつ、商品登録をやってたとこだ。

 

 キリカさんにも手伝ってもらってたんだけど、トイレ行ってくると言い出したから、店のトイレ使っていいよと言ったら、気にはなってたようで、割と嬉々として入っていって……こうなった。

 

 我が……栄光の道への選択、その1!


『何も聞かなったことにして、誤魔化せ!』


 僕はそれを選んだつもりだった。

 

「も、もしかして……聞こえてもうたかな……? 今の声……言うとくけど、わざとやないで! まさかあんなとこに水が勢いよく当たるとは思わんかったんや……! しかも、止め方もよぅ解らんし……マスターはんの国の連中って、なんや好きモノ揃いなんやなぁ……」


 ……やめて。

 なんか、直球過ぎて、恥ずかしくなってきた。


 僕、男の子なんで女の子の事情とか、良く解んないしーっ!

 

 ごめんなさい……この猫耳が! この猫耳が高性能すぎるんですっ!

 あそこまで色々バッチリ聞こえちゃうなんて、あんまりだけど、そう言うことなんです!

 

「な、なんのことかなーっ! あははーっ! まぁ、よくあることなんじゃないかな……よく知らないけど」


 キリカさん、お願いだからもう何もいわないで! 僕、これでも目一杯この話はおしまいってアッピールしてんの! 解ってよ! 


「ま……まぁ、うちはマスターはんのもんやからな! な、なんやったら夜のお世話だってするでっ! それやったら、今みたいなの……もっと聞かせてやれるかもしれんよ?」


 ぐっはぁ……なんか衝撃の告白をされてしまったよ?


 テンチョーの好意とはまた違うド直球ストレート! ハードブレイクショットキターッ!

 

 だが……こうやってみると、キリカさん……。

 犬耳と尻尾以外は、普通のお姉さんって感じで、ナチュラルに可愛い……。

 

 背はちょっと低めの割に、胸はご立派だし、お尻だってバーンと……太ももだってムッチムチだ!

 スリム系のテンチョーと違って、こう言うグラマーなのもなかなかどうして……って、発想が完全にオヤジじゃないかっ!

 

「わははーっ! と、とりあえず、まだ仕事も残ってるけど、夕御飯食べたら、お風呂でも行って早く寝ようっ! なにせ明日は明日で予定が色々あるから、休める時に休んどかないとね!」


 ……そう、ハンサムな僕は華麗にスルーだ。 

 今日日、ムフフな選択肢は地雷って、相場が決まってるんだ。


「むぅ、いけずなやっちゃなぁ。せっかく、人が勇気出して誘っとるのに……真面目な話、うちの事ならマスターはん好きにしてくれてええんやで? 男ってモンは皆、そう言うもんやろ? それとも何か……うちには手ぇ出す魅力もないって事なんか?」


 うぉおおお……キリカさん。

 アンタ、鬼かっ! どっちを選んでもアウトなんて、悪魔的な選択肢を容赦なく投げ込んできた!

 

 考えろ! 考えるんだ! この場を無難に乗り切る最善の言葉をひねり出せっ!

 

 どうだ? ん、来たぞ来たぞーっ!


 『外道紳士ボンジョルノー』第一話の名台詞! これでも喰らえっ!

 

「うん、キリカさんはとっても魅力的だと思うなー。でも、君は要するに損得勘定で僕に自分を売り込もうとしてるんだろ? どうせなら、僕は君に僕のことを心の底から愛し求めるようになって欲しいんだ! そんな君を僕はめちゃめちゃにしたいっ! 解るかい? 今の君はまだまだ青い果実ってことさ! ふはははっ! マドモアゼル・ボンジュールッ!」


 『外道怪傑紳士ボンジョルノー」……ボンジョルノーと言うドS紳士が一話一殺ならぬ、一話一陵辱で色んなヒロインをパクったような女の子達を陵辱しまくるという内容で……。


 一応、最後には解放されて、ライバル格の警部に助けられるんだけど、毎回ヒロインは、ボンジョルノーに惚れ込んじゃってて、その警部が毎回「奴は……貴女の大切なものを盗んでいきました……」って有名なセリフのパクリを呟いて、オチるという……怪作エロ漫画だ。


 ハード陵辱系で、作者がちょっと頑張りすぎちゃった上に、あの作品やあんな作品の有名セリフを乱発したり、無節操に色んなアニメや漫画、ゲームのヒロインを容赦なくパクると言う酷い内容に、各方面からクレーム付いた挙げ句、発禁食らってプレミア付いたって伝説の漫画だ。

 

 そして、今のセリフは、金目当てで親に差し出されたヒロインが「好きにして……」と泣きながら告げるシーン。


 そんな彼女にボンジョルノーが返したセリフ……だ。

 

 ふふふ……脳内データベースで似たようなシチェーションの漫画とかなかったかって、検索して見つかった奴だ。


 ちなみに、作者の悶々崎先生は、すっかり警察に目を付けられて、いくつもの単行本を発禁にされたり、しょっぴかれたりして、世をはかなんだのか、ある日、突然行方不明になってしまわれた……。


 なにげに、大ファンだったんだけどね……ちょっとアレは悲しかった。


 てか、最後のマドモアゼル・ボンジュール……って、キメ台詞なんだけど、実際使うと意味わかんないし。

 

 以来、そのヒロインはボンジョルノーに心酔して、なんでも言うことを聞く忠実な家臣みたいになるんだけど……。


 これって、リアルに使うのってどうなの? 馬鹿なの僕? テンパりまくった挙げ句、これかよ。

 

「くっ! マスターはん! うちの身も心も支配した上で……そう言うつもりなんやなっ! なんちゅう恐ろしいやっちゃ! う、うちの心は安ぅないで!  でも、そんなちょっと外道なとこも魅力的やわーっ! ええでっ! せっかくやから、ちょっとくらい触ってみぃや! 味見や味見……せっかく二人きりになってるんやから……それくらい全然かまへんやでっ!」


 んっんー? 間違ったかなぁ……間違ったよなぁ……選択肢。

 

 キリカさんが頬を赤らめながら、プチプチと割とパッツンパッツンな感じの上着のボタンを外すと、なんか勢いよくぽよよーんと谷間が出来る。

 

 キリカさんが僕の腕を取ると、そのポヨンポヨンの谷間に挟み込もうとするのだけど……。

 とりあえず、すすすーっとその手を外す。


「あのさ……さすがに、かれこれ30時間近く起きてて、そんな元気あると思う? ごめんね……なんかびっくりするほど、このシチェーションに無感動な自分が居て、ああ、僕は疲れてるんだなーって実感してるところだよ」


 ……たぶん、今の僕は死んだ魚の眼みたいな眼をしてると思う。

 なんか……今ので物凄く疲れた。


 最後に残ってた燃料が一気に燃やし尽くされて、完全に底を尽きた……そんな感じだ。

 なんだっけ? 脳が痺れるゥだっけ? こう言うの。


 キリカさんも、ハッとした顔になると、僕の顔をじっと見つめる。


「す、すまん! かんにんやで……。なんか……うん! 今のはうちが悪かったわ。せやな……程々にするわ。でも、その気になったら、いつでもお相手するでっ! ちなみに、うちはまだ丸一日二日くらいなら、イケルで! マスターはんも獣人の端くれなんやから、この程度でヘバッとったらアカンよ!」


「君らが元気すぎるんだよ……ったく、そもそも、まだ全部の商品の検品終わってないんだから、馬鹿な事ばっか言ってないで、さっさと終わらせちゃってよ」


 そう言って、とりあえず店内を見渡す……。

 商品のぎっしり詰まったパレットはまだまだ山積みだ。


 これをとりあえず、検品して在庫登録して、更に空いてる陳列棚に、並べられるだけ、並べないと終わらない……。


 なお、テンチョーとミミモモは、外の戦闘要員の方々向けに、晩御飯の弁当を配りに行っている。


 料金は、彼らの雇い主の商人や、巡礼団の人達から先払いで頂いているんだけど、もう閉店にしちゃったので、本日最後の商売って事で、テンチョーにデリバリーに行ってもらうことにした。


 夜は危ないって話だったけど、最強なテンチョーとジモッティのミミモモなら、問題ないだろう。

 どうせキャンプ地内だし。


 なお、ミミモモは、まだまだ全然使えないので、荷物持ち助手一号&二号として付けてあげた。


 昼間、ミミモモコンビはお掃除、品出し、フライヤーで調理と色々頑張ってくれた。

 二人でやっと一人前って感じだけど、お客さんにも好かれてたみたいだし、役には立ちそうな感じだ。


 おかげで、図らずもキリカさんと二人きりになったのだけど……。

 考えてみれば、こう言う機会は始めてのような……。


 うーん、実に積極的と言うかアグレッシブと言うか……でも、自分に好意を向けてくれる女の子を邪険に扱えるほど僕も鬼じゃない。


 キリカさんはとっても優秀な子だし、これから色々お世話になるんだから……まぁ、普通に仲良くしたいもんだ。

  

「せやな……さっさと終わらせてしまわんと、三人が帰ってきてしまうわ! でも、晩御飯は何がええかなー」


「……そいや、君らって、肉しか食べれないとかそんなじゃないよね?」


「何、言うとるんや……獣人っても人族と食うもんは一緒やでー! 野菜とかも食うで! まぁ、ちょっと燃費悪いかもしれんけどな!」


 そう言いながら、キリカさんのお腹がくーと鳴いた。


「確かに悪そうだな……」


「せやな……なんや、恥ずかしいなぁ……もうっ」


 ……普通に照れるキリカさん。

 なんとなく、二人揃って笑い転げる。


 とりあえず、変なスイッチはオフになったらしい。

 セフセフ、セーフ!

 

 僕も……アホなこと言ったけど。

 もう忘れよう……都合の悪いことは忘却するに限る。

 

 人は忘却する生き物なのだから!

本日分遅くなりましたけど。

キリカ回って事で急遽書き下ろし……なんてやってました。(笑)


キリカさん、直球エロアピール系。


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