第六十五話「ジャリテルム様降臨!」④
けど、テンチョーが得意満面って感じでセレイネース様をお尻でぐいっとどかして、同じように乳乗せにチャレンジ。
……スカッと空振った。
「…………」
テンチョーはどっちかと言うと普通枠。
富んでもいないし、貧しくもない。
普段は気に留めてないみたいだけど……さすがに、人の頭に乗せるとかそこまでボリュームはない。
思わず振り返ると、後ろで固まったままのテンチョーと目が合う。
澄ました顔してるけど、たらっと変な汗かいてる。
ったく、無茶しやがって……。
アージュさんとクロイエ様は揃ってお互いのモノを見比べて、大きくため息。
こっちもはや完全に不戦敗……けど、それでいいと思う。
変なことで張り合って欲しくない……特にクロイエ陛下。
貴女が迂闊な真似をすると、沽券に関わる。
そういや、アージュさん今日は盛ってないんだな。
この人、たまに盛ってるんだけど、昨日貧乳、今日巨乳とかやらかすもんだから、もうバレバレ。
ちなみに、バスト盛り盛りパッドは僕の知らない間にこっそり事務所のパソコンいじって、通販で購入してたという……涙ぐましすぎて、届いたブツも黙ってクロイエ様ハウスのアージュさんのベッドの枕の下まで届けに行ったよ!
その翌日には、どうだ! と言わんばかりにたわわになったバストを自慢してくれたけど……。
そんな一晩で巨乳になるかっての……そして、誰もがその事に触れないように気遣う中、要らないお色気アピールを連発とか。
……はっきり言って、あれは苦行だった。
と言うか、ちょっと忙しかったり、寝坊したりするとパッド付け忘れるっぽいんだよね。
それに……まぁ……。
明らかに位置がズレてたり、徹夜明けたら、絶壁状態になってたとか……むしろ、こっちの身にもなってくれ!
でも、アージュさんも乙女なのだよ。
例え、1200才でも乙女は乙女なのだよ……乙女心は複雑っす!
……とか、モンジローくんならいいそう。
三人娘はお互いのをちら見し合って、リスティスちゃんとラトリエちゃんは無理と悟ってずーんとなってるんだけど。
今度は、セルマちゃんが満面の笑顔ともに僕の後ろに立って、その大きめのを僕の頭の上に乗っける……うん、乗ってるな。
なんだか、超嬉しそう。
実際、感触もヤワヤワであの谷間に顔挟まれたら昇天するかも……くらいの事は思う。
こ、今夜、一緒に寝ないとか言ったら、来てくれるかな?
でも、ラトリエちゃんとリスティスちゃんが怖い笑顔でセルマちゃんの後ろに回ると、両脇をガッツリ掴んで、外へと引きずっていく。
……なんとも、複雑な無言の愛憎劇が繰り広げられるのだった!
「……ダンナも大変っすね。某、ハーレムとか別に羨ましくないって思ったっす」
「時と場合によりにけりかなぁ……ちなみに、僕はオールラウンダー! 富めるも貧しいのも全部良しだと思う」
それだけ告げると、モンジローくんがビシッと親指を立てる。
まぁ、ツルペタじゃなきゃロリだって構わんし、熟女だって守備範囲内かな。
ちなみに、彼もオールラウンダー派らしい。
ただ悶々崎作品のエロ漫画に出て来る比率だと7:3くらいで貧乳が多いし、ヒロインも十代率が高い。
まぁ、エロに限らず、漫画業界自体がヒロイン20代後半って時点で、ババァ呼ばわりとかそんなんだしなぁ……。
なお、悶々崎先生=ロリコンというのがファンの間でも定説なんだけど。
本人は、そこまでロリ好きでもないらしい……まぁ、本人をよく知る以上、建前だと思うけど。
「リアルロリに手を出したら、犯罪者じゃないすか……某、その発想の時点で、ちょっとドン引きでござるよ」
療養院で面倒見てる孤児の子供たちに囲まれてるのを見て、お約束の孤児院経営でもやってみれば、ロリっ子ハーレムみたいなの作れるんじゃねって、結構本気で話を振ったことあるんだけど、そんなお返事が返ってきた。
うん、まぁ……ごもっとも。
こう見えて、モンジローくんって結構、真面目。
エキセントリックな言動に騙されがちなんだけど、実は結構良識ってもんを持ってる。
警察に喧嘩売ってたのは……まぁ、表現の自由の為に、理不尽な公権力への反逆……と言えなくもない。
まぁ、どのみち……モンジローくんにとっては、日本なんて狭すぎたんだよ……。
なお、爆乳も好きらしく、その手のキャラもよく出てくる……それが割合にして3くらい。
ねぇ、その間はどうなの? って聞きたい。
「おのれおのれ! この駄乳女神! 妾だって本体はこんなチンチクリンじゃないわい! なんでこうなったのじゃーっ! おまけにほとんど何も出来なくなっとるとか、どう言うことだ! 我が力を奪うために、嘘教えたんだろ! この駄乳女神! 妾を謀ったのだな!」
モンジローくんに怒られて、フリーズ状態になってたジャリテルム様復活。
むしろ、うるさい……マジうぜぇな。
「誰が駄乳女神よ! このチンクシャポンコツ女神……! 何も出来ないって、そんなの元々大した力もないのに、無理したからでしょ! 自業自得よ!」
「くっ、確かに無理をした結果、地上でほとんど何の力も振るえなくなってしまった……それは認めよう! じゃが、これは……この大陸より、我が加護の力が失われたも同然! 貴様もそれでは困るであろう? 解ったら、さっさとまともな力を使えるようにしろ! いや、てっとり早く貴様の力をよこせ!」
「はぁ? それが人に物を頼む態度? 大体、アンタが怠けてるから、ロアみたいなクソ虫が現世に湧いてきたんじゃないの! こうなったらもう協定なんて破棄よ! 破棄! もう、アンタには任せられないし、力を失ったのなら、もうずっと、そのままでいればいいのよ! 世界の平和はこの私、海神セレイネースがばっちり守ってやるわ!」
「きょ、協定破棄とかそんな横暴ゆるされんのじゃ! だいたい、分体を四人もって、他の三人はどこにいるだ! この妾ですら、まるで動向がつかめないなんて、なにやってくれてるのじゃ! なんか、やましいことやってるんではないのか? 貴様はいつもそうだ……こそこそと人に黙って、暗躍ばかりしよって!」
「海外の孤島や西の小大陸とかあちこちに派遣してるの! アンタと違ってこっちはクソ広い外洋域担当なんで、人数もリソースも全然足りてないんだから! そもそも、アンタがしっかりしてりゃ、私がこんな苦労もしなくて済むんだからね! そもそも、分体生成で失敗した上に一体がやっと、おまけに虫けらレベルの力しかないって、どれだけヘボいのよ!」
……思ったよりひどいな。
ラーテルム様、いよいよもって役立たず。
こりゃもう、パーティ追放するしかないな。
今流行りの奴だな。
「わ、妾は大勢の使徒を抱えて、それぞれに加護を与えているのじゃ! そんな分体を作るリソースなんて余ってなかったのじゃ! そもそも、姉上も妾の知らぬ間にあんな強力な実体型分体なんて作って、現世に勝手に送り込んでたとか、協定違反もいいところなのじゃー!」
「問題ありませーん! 今回の件はあくまで外洋、私の領域での話だったしー! まぁ、アンタが何言っても未来の大陸の覇王タカクラくんはこの私が育てた……この事実は不変! 悔しい? 悔しかったら、もうちょっとマシな実績でも作ってみなさい!」
どうしよう……収拾つかなくなってきたよ?
ひとまず、モンジローくんに視線を送って助けを求めてみる。
こんなカオス……僕一人じゃどうしょうもないよ!
「あの、ひとまずですね……。セレイネース様も抑えて抑えて……。ラーテルム様も分体云々の件は脇に置いときましょう。これまで何もしてこなかった中、分体を生成して現世に降臨とか超進歩じゃないすか。聖光教会の人たちも超特急で団体様でこっちに向かってるそうなんで、これから忙しくなりますよ? とにかく、ダンナへの紹介はこれで終わりでいいっすね? はい! しゅーりょーっ!」
モンジローくんも流石にめんどくさくなったらしい。
まぁ、話を聞いた限りだと、事実上何も出来ないタダの幼女状態みたいだからな。
セレイネース様からも、ラーテルムの本体側は、力を使い果たしたことで充電モードみたいな状態になってるって話も聞いてる。
充電の為には、信仰と人々の祈りの力を集めないといけない……らしいんだが、そうなると聖光教会の人達が頼みの綱だろうな。
まぁ、こんな無駄に横暴な態度じゃなくて、少しは殊勝な態度で接してくれると良いんだけど。
ほんと、お前、何してくれてんの? くらいの文句は言ってやりたいが……まぁ、口は災いの元。
ここは無言を通すべきなのだ……たぶん。
「ぐぬぬっ……こ、こんなヤツに今後ともよろしくとか言いたくないが! と、とにかく、妾の名はラーテルム・オメガ! 一応、それが妾の個体識別名であるからな……その足りない脳みそに我が名を刻み込んで、がっつりばっちり覚えておくがいいぞ! そして、我を崇めよ! そして祈りを捧げるが良い……ただ、それだけが罪深き汝に許されし行いだと知れ」
……なに言ってくれてんの、コイツ?
誰が罪深いって? いや、僕もそろそろ怒っていいよな。
「ああ? 祈りダァ? んなもん、知らねぇよ! いいか? 僕は神を信じないし、崇めない……貴様のような役立たずのポンコツ! 神なんて認めないし、崇めないし祈らない! ……いいか? お前なんかジャリテルムで十分だ! 今度からそう呼ばせてもらうからな! 解ったら、返事っ!」
おっと、うっかり本音が爆発しちまったよ!
まぁ、僕だってこのクソ女神には言いたいことは山ほどあるのだ。
どのみち、僕にとっての神はセレイネース様なのだ。
セレイネース様には恩義も、義理もあるけど、ラーテルムにはそんなもんない!
「ふえ? あ、はいっ! ちがうっ! ジャ、ジャリテルムとはまさか、私のことか? 意味は良く解らんが……小馬鹿にされたのはよく解った! 貴様がそんな態度ならば、妾自らの手で神罰を下すしかあるまい! 死ねぇええええっ!」
売り言葉に買い言葉にブチ切れたジャリテルムがまっすぐ駆け寄って、拳を振り上げて突っ込んでくる!
だが、悲しいほどにリーチもない、冷静にデコに手を当てて押し込んで、はい、ストップ!
「ふぬがぁああああっ! 貴様ァア! なんてことをするのじゃ! は、離せぇええっ! これでは神罰を与えられんではないか!」
ん? 神罰ってまさかのこのグーパン?
どう見ても、ブチ切れて殴りかかってきたように見えたけど、むしろこっからじゃないの?
なお、ジャリテルムはじぇんじゃん届かないよーと言いたげに、ジタバタとデコを押さえられたまま、腕をグルグル振り回して、その場で足踏みしてるだけ。
ああ、今のジャリテルム様は殴る、蹴るくらいしか出来ないって事か……なんて……。
なんて、惨めなんだっ!
「おいおい、仮にも神がそんなあっさりブチ切れちゃ駄目だろ……。それにそんな我を崇めよ! とか自分で言ってちゃ駄目だと思うぞ。セレイネース様だって、そんな事一言も言わなかったよ……」
神罰と称して、物理でぱーんちって事はツッコまんでおこう。
てっきり、呪いとか魔法ビームくらい覚悟したんだが、まさかのグーパン制裁だったからな。
今もデコを押さえられて、前に進めなくなってるんだが。
必死な様子で、鼻息荒く体重をかけてグイグイと突き進もうとしているんだが……さっきから一歩も前に進めてない。
「おのれっ! 神を愚弄しよって、貴様だけは! 貴様だけは絶対許せぇえええん! ええいっ! この手をどけろ! せめて……一発、殴らせろーっ!」
なんというか、いつぞやかのレインちゃんを思い出すなぁ……。
だがしかし、お前の何処が神なんだと言いたい。
セレイネース様がラーテルム様の分体だって、先に説明してくれなかったら、ただの可哀想な子なんだって思って、終わってたな……。
まぁ、なんともポンコツ臭漂ってるけど。
これまで一度もラーテルム降臨が成功した試しなんて無いそうで、確かに、コイツとしては大きな進歩じゃあるんだよなぁ……。
もっとも、その程度のことならセレイネース様は余裕って感じなんで、やっぱり格が違うって事だな!
でも、ロメオの国としてみたら、国内に女神の分体が二人もいるってのは、権威としてはとんでもなくリードだよなぁ。
法国あたりが黙ってない気もするけど、あっちは多分それどころじゃないだろう。
そもそも、あの国……架空の神様を崇めてるエセ宗教国家だし。
17人の法王候補の争いも出口が見えない……どうするんだろ? あれ。
一応、ここまでが本編のラストの予定でしたが。
続き部分が見つかったんで、加筆しながらしばらく連載続けます。
ストック10万文字くらいあるんで、一ヶ月くらい持つんじゃないの?(笑)




