第六十五話「ジャリテルム様降臨!」③
「某もそのシステムは知ってるんですが、いくらなんでもポテチ一袋で金貨10枚とかあり得なーいっ! 足元見んのもええ加減にせいよーっ! 某ですら、叫んだくらい! 解る……解りますぞ!」
……そいや、コーラ一本100万円とかそんな話もあったなぁ。
なるほど、モンジローくんもダンジョンマスターだっただけに、あのDPによるお取り寄せシステムは使えたんだね。
と言うか、ポテチ一袋で10万円相当は……確かにありえん。
むしろ、自前で作ったほうが早そうだ。
ちなみに、異世界急便だと輸送料金は4t車1台分のチャーター扱いになって、手数料だの人件費だの色々加算されるとかで、一日で軽く100万くらいかかるらしいんで、真面目にやってたら、もうちょっと商品の価格を値上げするところではある。
それこそ、ラドクリフさん相手にぼったくったみたいに、弁当とお茶のセットで5000円相当とかやって、トントンかもしれない。
まぁ、それでもラドクリフさんは安いとか言ってたし、転売ヤー対策や他の商人の助言もあり、高級商品販売店と言う位置づけで、値付け自体はやや高めにしてるんだけど……それでも、閉店時には店内の商品は売り切れ札だらけになる。
正直、こんなに儲かって良いのかなぁ……と思うのだけど。
良いものをどんどん安くってのは、実のところやってることはその場しのぎの焼畑農業みたいなもんで、商売として長期的に見ると大間違いなのよ。
良いものは相応のお値段で! これが本来ならば正しい。
良いものを安くなんてやってると、必然的に利益を削るって話になって、薄利多売とかなる訳でなぁ
……おまけに、それが当たり前とかなってくると、ますますやりにくくなる。
利益を確保するために、人件費を削って、従業員の給料も減らしたり、リストラしないといけなくなるし、問屋に値切って向こうの利益を削ったりと、誰もが損をする事になるんだ。
皆が損をしないってなると、結局良いものは高くってするのが正しい。
消費者も少しくらい高くたって、付加価値を認めてくれればそれでも買ってくれるんだからね。
それに最近は、ちょっと安くすると価値があるものだとすぐに転売ヤーに買い占めされたりするからね。
結局、ディスカウントは割に合わない……そんなもんなのだ。
まぁ、儲け自体は、申し訳なくなるくらいガッポガポなんだけど、儲けてる分、従業員や他の土地向けの輸送販売業者とかには、大盤振る舞いしてるし、村のインフラや公共施設なんかにはしっかり投資してるし、結構な人数になってる私設警備隊だって養ってるんだからね。
でも、そう言うのも回り回って、好景気に繋がるって事で、そこら辺はケチらないようにしてる。
サントス食堂なんかも食材自体はもうほとんど自産自消みたいになってきてるし、経済の輪ってもんが順調につくられつつあるし、ロメオ各地からこのコンビニ村へ人々が流れてきて、もはや村と言えないほどの規模になりつつある。
そして、ここの空気がロメオの他の都市にも伝染して、ロメオはかつて無いほどの好景気に沸いているところなのだ。
世の中の雰囲気が明るくなって、金の周りが良くなれば、自然と景気も良くなる……そんなもんなのだ。
いやぁ、やっぱ好景気ってのは商売人としてはもう最高だね! 不景気で何かとケチくさい日本で商売とかもうやりたくなーい!
「まぁ……ぶっちゃけ、アレ使うメリットってなかったからなぁ……。完全に空気だったよ」
景気云々はさておき、DPシステムの感想はまさにそれ。
なんせ、その存在自体を忘れてたからな!
「某もダンジョン経営とかもうほったらかしっすからな! かつての引きこもりだった某はもう居ないのでござる! モンジローV2! そう呼んでいただいて構いませんぞ」
なお、モンジローくんは今やダンジョン暮らしではなく、聖光教会の療養院に聖者ハウスって、僕が命名した一軒家を建ててもらって、日々そこで生活するようになっている。
コンビニ経由で電気配線を通したので、日本製の液タブや製本機能付きの高画質レーザープリンタやハイスペックPCと言ったハイテク機器なんかも置いて、各種資料で本棚もいっぱい……まさに創作者の為の創作の為の聖域って感じにした。
まぁ、モンジローくんがアナログ創作から卒業したいなーと言ってたので、忖度したんだけど、モンジローくん大喜び……まぁ、友達だしね!
それに、療養院の近くだから、たびたび療養院に行って、入院患者や孤児の子供達を励ましたり、健全な作品を配ったり……時には治癒魔法で、病人の苦しみを和らげたり……とか、なんだか普通に聖者みたいな感じになってるんだよなぁ……。
「そうだね……聖者モンジロー。そんな呼び名もあるくらいだからね」
「しっしっし! ダンナから聖者呼ばわりとか……なんだかくすぐったいですなぁ。それと最後に、アカシックレコードアクセス権ってのはアレッすよ。テンチョーさんがご都合主義みたいにチート魔法を生成とかやってましたよね? 要はアレッす。テンチョーさんの場合、あれどうなってたっす?」
「うにゃっ! ナビさんに聞けば、色んな便利知識をお取り寄せしてくれたのだにゃー。けど、テンチョーも最近はナビさん頼らないし、なるべく自前の能力や力に頼るようにしてるにゃ! 御主人様が言うように、借り物の力は自分の力じゃないのだにゃー!」
異世界ガイドキャラ? なんつーか、異世界物あるある。
僕にも付けてくれりゃ良かったのに……そっちは普通に便利そうだ。
大方、おまけだからお前には要らないよね? みたいな感じでカットされたんだろうな。
「ガイドキャラとか、そんなんでも付けてくれりゃ、むしろ喜んで使っただろうし、ある程度僕の行動の誘導だって出来たんじゃないかなぁ……。なんで、そんな使えそうなの付けてくれなかったの? ダンジョンシステムとか、使い道がないチートばっかり有効にして、使えそうなのは無効化とかそんなに、僕のこと嫌いだったの?」
「ううっ……そ、それは……し、試練じゃ! そんなに容易く神の力を……だな」
「ああ、それってテンチョーさんにガイド付けたから、付き人のは要らんだろうとか、そんなだったらしいですよ。オーナーと店長どっちが偉いとか、普通解ると思うんスけどね……」
「そ、そんなもん解るかー! 大体コイツは見るからにブサイクで、我の呼びかけにロクに返事もせず……」
「ブサイクだからって、そりゃないっしょ! 某も大概ブサメンの自信ありますんで、顔面偏差値で差別とかよくねぇっす! これは異議あり! 抗議するっす! つか、ええ加減に過去の自分のバカさ加減に大いに反省しるっす!」
ジャリテルム様……モンジローくんに一刀両断されて「orz」みたいなポーズでズーンってなって、落ち込んでる。
「と言うか、そんな魔法エディット機能みたいなのがあったんなら、後からでも、魔剣みたいなアイテムに偽装して、僕に渡るように仕組むとかなんとでもなったよね。今は使えないってのは、納得出来るけどさ……。やっぱ、嫌がらせの意地悪だったんだね……ひどい話だねぇ……」
「嫌がらせと言うより、なんでもラーテルム様は、ダンナが言う事聞かなさそうだから、とっても困った時や命の危機の時に「汝、力がほしいか?」とか、やろうとしてたみたいなんすよ」
「ああ、なんかそう言うのって、少年漫画とかでよくあるね。封印されし力が危機に際して、開放される……「力を……よこせぇええっ!」ってそんな感じで覚醒するやつ!」
「王道っちゃ王道っすからね! 某もそう言うの大好きでござるよ。まぁ、結局ダンナについては、ついぞ機会がなかったみたいでして……。まさに、出待ちバイバイって奴っすね! 策士策に溺れた! ってね……と言うか、ロクに説明もしないでほっぽりだして、力は与えてやったんだから、困ってから助けてやろうとか、傲慢かつ、不親切もいいとこじゃないですか……。ホント、馬鹿なの? 死ぬの?」
モンジローくんの容赦ない言葉にラーテルムさん、なんだかもう涙目。
わ、悪いことしちゃったとか、思わなくもないけど……だが、否っ!
そもそも、教えられてないんじゃ、あっても無いも同然。
そりゃ確かに、教えないほうが悪いだろ。
それに、ラーテルム由来のチートを使わなかったからこそ、今の僕がある……それも事実なんだからな!
「そこから先の事情は、君に説明したとおりね。神の下僕……使徒に出来る条件ってのは、力を与えた上で、神由来の能力を使わせることなのよ。君は狙ったかのように巧みにラーテルムが与えた奇跡の力をまったく使わなかった。だから、ラーテルムは君を使徒にすることが出来ず、おまけに計算外の奇跡を自らの手で手繰り寄せて、ファインプレーの連続で自力で成り上がっていった。それに怒って、ラーテルムは君から全ての力を奪い取ったんだけど……。まぁ、使ってなかった力なんて、始めから無いも同然だから、君は何一つ困らなかったって訳ね」
「なるほど、ラーテルム様にとってはその時点で誤算だったって訳か……。その上、僕はテンチョーやモンジローくんをお願いって形で動かせるし、僕を排除しろって命令も、今みたいに2人とも自分の意志で拒否出来る……なるほど、僕が目障りで仕方がなかったってのも解らないでもないな」
「まぁ、頑なに神の力を使わずにって、君の姿勢については私も思い知ったしね。結局、君は神の力を得て、私の使徒となる事も拒んだ挙げ句、君は私の弟子入りをして、私の庇護下になった……。確かに、この関係は悪くないわね。私は君へ使徒として強制や命令も出来ない。その代わり、師と弟子ということで、お願いくらいなら出来るし、君の敵は私も敵……そう言うことで、遠慮なく手出しだって出来る。いい? ラーテルム……私はタカクラの師として、これ以上、しょうもない事でグダグダ言うな……そう警告させてもらうわ! タカクラはもうアンタとは無関係……余計な口出しも手出しも無用! 解った?」
まぁ、要するにそう言う事だな。
そもそも、この使徒と神とか言う絶対的な上下関係だって気に食わなかったのだ。
師弟なら、別に弟子が師匠に異を唱えたり「このバカ弟子がーっ!」と殴り合ったりってのもありだからな。
さすがに、格上のセレイネース様に、これ以上文句は言わせないと断言されてしまっては、ラーテルムも口を挟むつもりもないようで、不機嫌そうな仏頂面でテンチョーに抱きかかえられて、とりあえず大人しくしてくれたようだった。
僕は……もう黙って聞いてよ。
下手に口を挟むもんじゃなさそうな気がするよ?
「まぁ、それ言ったらセレイネース様も同じっすよね。結局、ダンナを使徒には出来なかったじゃないっすか」
「……私は約束はちゃんと守る! 彼は使徒ではなくあくまで私の弟子! タカクラは私が育てた! こればっかりは誰にも文句言わせないわ! 挙げ句に弟子のために我が身すらも犠牲にすることすら厭わなかった……まさに師匠の……いえ、女神の鏡って感じよねぇ……。ここら辺は、ちょっとばかり格の違いってもんを見せちゃったかしらね……。ねぇ、役立たずのラーテルムちゃん!」
「お、おのれっ! 黙っておればいい気になりよって! そ、そう言う事なら、妾もタカクラを弟子に取ってやろう! どうせ、貴様なぞ、ロアと相打ちになった分体とは別物なのだ……そうなれば、妾が一歩リード!」
「一緒なんですー。ベータが居なくなったのは私にとっては痛手も痛手よ。私としても史上最大のリソースを集中した個体だったんだけどねぇ……。ベータが失われたおかげで、私のこの世界へ干渉できる力は激減したと言っていい。元のレベルまで戻るには十年単位の時間が必要。まぁ、あのロアと相打ちなら、一応納得は出来る範囲なんだけど……まったく、あの野郎だけは許せないわ……」
……解っちゃいるけど、セレイネース様の物言いはなんだかとっても複雑。
師匠をモノ扱いするな……と言いたいんだけど、本人達は納得づくだったからな。
感覚的には、手足や指の一本が失われたようなものなんだろう。
それも年月が経てばまた生えてくるとかそんな感じで、取り返しも付く……。
僕としては、そんな気軽に言うなと文句も言いたいところだけど。
お門違いなのは解ってるし、一応納得は出来ている……そこら辺は割り切るしか無かった。
「……それは、僕も同感です。アイツは……師匠の仇ですから」
「なるほど。解ったのじゃ。タカクラよ……今からでも遅くない。妾に願うのじゃ。神の力を与え給えとな。妾の使徒となった上で、我の力を使えば、あのロアの完全打倒も夢ではないぞ! なにせ、妾は唯一神……この世で唯一の本物の神なのじゃ! なぁに、これまでのように制限だのケチケチはせん……最強の使徒として……大いに力を振るうが良い」
「タカクラよ、ポンコツでチンチクリン女神がなんか言ってるけど、真に受けちゃダメだからね? こんなのの使徒になるくらいなら、私の使徒になった方がよっぽどいいに決まってるじゃない……ねぇ、タカクラくぅん!」
セレイネース様、何故そこで僕の頭に乳を乗せて、後ろから抱きっとかするの?
けど、逆らえないんだよなぁ……この人。
何ていうんだろう。
お師匠様と僕の絶対なる関係。
それが完全に刷り込まれてて、逆らおうって気が一切起きないのだよ。
確かに、師弟関係とかそこまで絶対じゃないから、逆らうのだってありだと思うんだけど。
僕は僕でセレイネース様のバブみ感とか、ママァ感とかそう言うのも悪くないと思っているのだ。
ああ、ジャリテルムとセレイネース様のどっちかって選択なら、そりゃ迷わずセレイネース様だな。
むしろ、ジャリテルムだけはあり得ない……どんなにすごい特典積まれても、コイツだけは嫌。
でも、なんか、嫁さん連中の嫉妬の視線が怖い……。
だから、セレイネース様も視線に気づいて、振り返ってにぱーとか止めて……。




