第六十一話「脇役達の奮戦」④
そうっ!
孤軍奮闘を続け、窮地に陥った勇者の前に駆けつけて、お前は一人じゃねぇぜってやる頼もしいヤツ!
そう言う……名脇役に某はなりたいっす!
某、目が覚めたっす! 某も覚悟完了っす!
そう言う事なら、某のやる事なんて、もう決まってるっす!
人の世の共通の敵が現れたのならば、人々を纏める旗印が必要っす!
その旗印となり得るのは、クロイエ様とタカクラのダンナっす!
某は、そんなお二人の影に潜み、静かに人知れずその背中を守る……黒子になるっす。
……この場はまずは、タカクラのダンナの英雄としてのデビュー戦に華を添えること!
これで、このまま何もせずに居られるものかっすっ!
見ると、ちょうどダンナは苦戦中。
リヴァイアサンの再生力と多数のミニリヴァイアサンやらに取り囲まれて、難儀してる様子っす!
ここは、せめてもの援護!
こうなったら、某、軽く一発芸でもカマしてやるっす!
「……そ某! もう迷わない! 何も怖くないっす! ……某のやる事も見えたっす!」
「そうか、それは何よりだな。ならば、貴様の本気……片鱗くらい見せてみるが良い!」
「ぬはははは! ちょっと派手にやったりますわ! ふふふ……某もチート頼みで怠惰に日々を過ごしていた訳ではねぇっす! 光り輝け、我が身体! モンジロービクトリィイイ! フラーッシュ! ダンナに届け! 勝利の光っすーっ!」
セレイネース様直伝の光魔術!
「清らかなる後光」
ぶっちゃけ光るだけで攻撃力とか皆無。
要するに、単に派手なだけの宴会芸みたいなもんなんすけどね。
ラーテルム様が、登場するときとかによく使ってたんで、カッコイーとか褒めてたら、調子乗って伝授してくれたんス。
女神由来のチートじゃなくて、某自前で習得した魔術だから、ラーテルム様の加護がなくても普通に使えるノーマル枠魔法!
ほかは……照明代わりの「ライトボール」とか、それくらいなら使えるっすよ!
もうちょっと真面目に練習して、攻撃魔法の「レーザーデッドビーム」くらい使えるようになってればよかったっす。
と言うか……素のMP……魔力許容量をもうちょっと鍛えとけばよかった。
MP底上げって地味ーでキツイからって、サボってたっすからねぇ……戻ったら、鍛えるっす!
とにかく、瘴気結界とか言ってたから、こいつなら効果バツグンかもって思ったっす!
そう、実はこの光は浄化の光でもあるんす! アンデッドとかなら一撃必殺!
アイツらなんか黒いし、何となく効きそうじゃないっすか?
瘴気結界もセレイネース様が解除してくれるとか言ってるけど、それを待ってたら、ダンナが持たないかも知れないっす!
ここは、某も体の張りどころっす!
某の全身を駆け巡るマナを一点に凝縮っ! その全てを光に変換……光になれーッ!
「って……ぐぬぬ……全然足りんぞー! しょっぼ!」
結果……ポワッとうっすら身体が光る程度。
……こんなじゃ駄目ーすっ!
や、やっぱ、素の某じゃ無理なんすな……悲しいけど、これが現実なのよね。
……と思ってたら、テンチョーさんが手を握ってくれて、魔力を注いでくれる。
「しょうがにゃい……手伝ってやるにゃ。気持ちくらいだけどにゃ……なにせ、今のテンチョーはにゃぐる蹴るの接近戦しか出来ないのにゃ……御主人様の援護、モンジローに任せるにゃ!」
テンチョーさんの魔力が某に流れ込むっす!
確かに気持ち程度っすけど……そっか、テンチョーさんは自前の能力を鍛えたと言っても接近戦のスキルとかそんな程度だったんすね。
それであそこまで戦えるとは……きっと天性のファイターなんスね。
けど、それを見ていたアージュさんもポンと手を打つと、マストの上から飛び降りてきて、同様に某の手を握ってくれるっす。
「そうか、その手があったか。何をする気か判らんが、己の分を超えたことをやるのならば、素直に周りを頼れ。普通の者ならば、己の許容量を超える魔力なんぞ注がれたら、魔力回路が焼き切れるだろうが、貴様は普段からあの桁違いの魔力を扱っているのだ。なんとでもなるのだろう? ……ほれ、我が魔力……まとめて持っていけ!」
ダンナ曰く、世界最強の魔術師……アージュさんの膨大な魔力が某に注がれ循環するっす!
確かに、この膨大な魔力……並の人間だったら、魔力回路が焼き切れて軽く即死するっしょな。
けど、某の魔力回路はゴン太っすからな! なるほど、こう言う手があったっすなぁ!
アージュさん、感謝っすよ!
「あんまり気が進みませんが、旦那様のためです。どうぞ……魔力強化&魔力譲渡! 期待はしてませんけど、せいぜい旦那様のため、ひいてはわたくし達の為に頑張ってくださいね!」
なんか嫌そうにラトリエちゃんも魔力譲渡と魔力強化をかけてくれる。
魔法系ステータスがモリッと増強……ラトリエちゃん、渋いけど便利な魔法使えるんスねー。
気持ちは……受け取ったっす!
その心底嫌そうな顔も、それはそれでポイント高いっす!
これならば……大技もイケるっす!
うーん! これぞ王道展開!
仲間達の思いを結集して、主人公の窮地を切り開く!
これぞまさに、名脇役! 某、本懐でござるよ!
某も浮遊を発動して、ちょっと浮かび上がるっす。
光るなら、なるべく高いところで……うん、某の目にも山のようなモンスターが見えてるっす。
まったく、こんな多勢に無勢でダンナもよくやってるっすよ。
だが、こう言うよってたかって、たった一人をとか……そう言うのは某、許せんのです!
両手を斜め45度の角度で大きく広げて、片足曲げて、グリコポーズ!
「清らかなる後光! FXプラス友情パワーエディション99'sっすー!」
そして、全てを白に染めるほどの強烈なるフラーッシュッ!
「うにゃっー! 目がっ! ま、前が見えにゃいにゃーっ! モンジロー自重しるにゃーっ!」
見えないって割には、正確に某の後頭部目掛けて、その辺に転がってたリンゴがバロッと直撃したっす!
テンチョーさん、某相手に容赦してくれないのはどう言う事っすかね……。
「ど、どうっすか! コイツは清光放射とも言うらしいっす! アンデッドとか相手なら一撃でまとめて蒸発する浄化の光っす! 瘴気結界とかもこいつで蒸発……しねぇっすかね?」
周りで海兵さん達と戦ってた半魚人達は……まとめて目を押さえて悶絶中っ!
しかも、身体からプスプスと煙吹いてて、めっちゃ効いてるっす!
味方の皆様は、眩しい程度で済んだみたいで、損害軽微っ!
なお、某も魔力使い切ってグデングデン……これが旦那の言ってた魔力枯渇による虚脱症状っすね。
「ウボおぇええええっ! こ、こりゃキッツいっすー!」
思わず悶絶&リバース! ビクンビクンッ!
ラトリエちゃんがキモって感じの目で見て一気に距離を取って、テンチョーさんもすすっと距離を離れていく。
まぁね……某も客観的に見て、かなりキモいことになってるってのは解るっす。
でも、こう言うときこそ、優しさが……欲しいのです!
アージュさんすらも、一歩離れてるんだけど、それでもキリッとした顔で周囲を見渡してる。
「そうか……今のは浄化の光か! なるほど、コヤツら……アンデッドと同じく、負の生命力を注がれていたのか! やってくれたな、モンジローッ! 今の一撃で奴らはまとめて尋常ならざる被害を受けたようじゃ。皆の衆! 今が攻めどきぞ! 一気に蹴散らせっ!」
アージュさんの号令で、一斉に海兵の皆さんが動き出し、甲板に上がってきてた半魚人共が一気に次々討ち取られていくっす!
よれよれと甲板のヘリに捕まりながら、ダンナの様子を見ると、ダンナに群がってた黒いミニリヴァイアサン……なんかもう、まとめて昇天って感じでくたばってるっす!
それにそこら中にいたモンスター共も、焦げてるのやらポカーンとしてるのやら。
海中に居たのもきっちり届いたみたいで、ものすごい数モンスター共がプカーと浮いてきてるっす!
うーむ、遮蔽物のない海の上で超広範囲フラッシュとか……こりゃ、反則だったみたいっすね。
でもどうやら、効いたのとあんまり効いてないのが居るみたいっすね。
効いてないのは操られてたとか、そんなみたいっすね……戦意もなくして、ドンドン逃げていくっす!
「ふへへ、某、ちょっと逆転の一撃カマしちゃいましたね」
どうやら某、光系の魔術適正があるみたいっすから、ちょっと一念発起して、自前魔術や切った張ったも出来るようになるっす!
あ、MPが上昇しましたとか、アナウンスの声が遠くから聞こえるっすよ。
でも、無理……もう、某……指一本動かせねぇっす。
なるほど、ダンナ達はこの繰り返しでたくましく成長したんスね。
某も、そのうちその高みにたどり着くっすから、待ってておくんなせぇ。
チート頼みの異世界主人公じゃあるまいし、もらった力で俺TUeeeとかもう卒業するっす!
いずれにせよ、こっちの戦いは完全勝利に終わりそうっすな!
「あ、あとは、ダンナ……決めちゃってください! 勝利を託すっす!」
某もダンナにエールを送るっす! こいつは勝利フラグっすよー!
「おいこら! モンジロー! 戦場の只中で倒れるやつがおるか! 誰か、アヤツを奥に引っ込めるのじゃ! この戦いの功労者だ……なんとしても死なせるな!」
遠くから、アージュさんの声が聞こえるっす。
後は……皆さん、お任せたしたっすよ? ガクッ……。




