表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第一章「猫テンチョーとコンビニ……異世界に建つっ!」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/368

第八話「異世界コンビニ大繁盛っ!」④

「なるほど、資料によると、この口座残高は明らかにこのまま経営をつづけるのはちょっと不足気味ですね……。この様子ですと、高倉様のお店は前々からかなりの経営難に陥っていた……そう言うことですか。動線の問題や人手不足に苦慮しつつも、かろうじて収益を上げながら、借金なども一切されていないのはご立派ですが……さすがに、これでは一年と持たないでしょう。ともかく、状況は理解しておりますから、当面の光熱費の支払いなどについては、こちらでフォローいたしますよ」


 考え事をする間にも鹿島さんの話は続く。


「え? さすがにそれは……光熱費っても、一般家庭の比じゃないですよ?」


 なにせ、コンビニって電気代だけで、安くて20万……夏場とか30万超えたりするからな。


 群馬ってとこは夏はくっそ暑いからなぁ……クーラーや冷凍冷蔵庫も、連日フルパワー運転だから、必然的にそうなる。


 バイトなら、軽く2-3人くらい雇える……それを肩代わりしてくれるなんて、メチャクチャうまい話じゃあるんだけど……。


 経営難って……確かに表向きの金の動きだけ追っていくと、うちは年中ギリギリ、カツカツ経営に見えるだろうさ……一見なっ!


 ……うちの口座残高まで、正確に把握されてることは別に驚かない。

 田舎の市役所だって、その気になれば市民の口座残高や入出金記録くらいなら、簡単に把握出来るからな……。

 

 なにせ、銀行の口座情報なんて、お上が見せろって言ったら開示しないといけないんで、秘密にしてもらえるなんて、初めから期待しちゃいかんのよ。


「私どもも伊達に政府機関じゃないので、その程度の負担問題になりません。すでに、電力会社や水道局、電話会社にも手配済みでございます。ひとまず、ライフライン供給については、無償で継続維持させていただく事をお約束いたします。文字通り命綱でしょうからね」


「そ、そうですね……。まさか、日本由来のライフラインが異世界でもそのまま使えるなんて……支払いなんかもどうしようって思ってたんで、ホント助かりますよ」


「はい、その辺りは担う限りのご助力をさせていただきます。商品の仕入れも、私どもの伝手つてで、異世界急便の業者を複数手配させていただいたんですが、何か不備はございませんでしたか? 仕入れ費用、配送業者への支払いなども私どもにて、負担させていただきましたが、その辺りは特にお気になさらないでください」


 ……なるほど、和歌子さんは鹿島さん達が手配してくれたのか……。

 おまけに、配送料や、仕入れや光熱費の支払いまでやってくれるってのは、普通に考えるとはっきり言って、破格の条件……その上で異世界で好きに商売しろだって?

 

 ……これ、絶対裏があるな。

 どう考えても話がうますぎる。


 実際問題、向こうがこちらの経営状態から窮状を察した上での、無条件の善意だったとしても、こんな条件だと、もう向こうのなすがままになってしまう。

 ……何故か?


 ただより高いものはない……仕入れと流通経路を抑えられるなんて、経営権を牛耳られたようなもんなんだよ。

 

 その上で、なんらかの無茶振りをされて、断ろうとしたら、これまでかかった経費のすべてを利子付きで請求するって言われたら、こっちは盲目的に従うしか無い。


 要は、フランチャイズの末端コンビニが、本部に逆らえないのと同じ構図だ。

 たぶん、向こうの意図するところもそう言うことなんだ……。


 つまり、好意と善意と言う名の枷を嵌める。


 けど、今はその好意に頼らざるを得ない……。

 それにしても、何かと手回しがいい上に、計算しつくされたような手際の良さ。


 至れり尽くせりと言った各種サービス……ホント、なんなんだろ? この人達。

 

 それに、和歌子さんもこの鹿島さん達と繋がりがある……そう言うことなんだろうな。

 真っ当に配送料などを支払っている様子から、同一組織ではなく協力関係と言ったところだろうけど……。


 どのみち、異世界案件担当とか言ってたし……。

 和歌子さん達を使って、異世界に飛ばされた日本人を連れ返したり、物資面で様々なフォローをする……そんな事をやってるのかもしれない。


 そして、あわよくば日本国の国益に担うように働きかける……なかなか抜け目ないな。

 好意と善意で取り込んで、コントロール下に置くこの手法……人生経験の浅い若造とかだと、あっさりやられるだろう。


「鹿島さん……なんだか、あなた方は凄く手慣れてるって感じなんだけど、こう言うのって初めてじゃなさそうだよね? ちゃんと説明してくれるかな? と言うか、そのそっちの世界の同じ建物ってなんなので?」


 ……まぁ、大分裏側が読めてきたんで、ここからは余計なことは言わずに、不自然じゃない程度に質問は、最低限にしよう。


 建物の件は聞いときたいし、普通聞くだろ……なんじゃそら? 意味わからん。


「そうですね……まず我々は最初にご説明させていただいたように、異世界関連トラブル対応の専門部署の者です。それ以上でも、以下でもありませんが、そう言う部署が必要とされる程度には、異世界関連のトラブルは至るところに発生している……。そう、ご理解頂いて結構です」

 

 なるほど、鹿島さんは、あくまで末端のオペレーターってとこなんだろうな。

 彼女自身は、恐らく裏はないし、最低限の情報しか持たされていないだろう。


 こちらが信用してないってことも、当然のように理解して、まずは実績を積み重ねて、まずは信頼してもらうことを第一義に、発言の一字一句に細心の注意を払って、誠意ある対応をしようとしている……その事は解る。


 ……けど、その背後でこの会話をモニターしているであろう、彼女の上席、そしてその所属組織……全く顔も実体も解らない連中。


 そんなのを無条件で信頼するほど、僕も馬鹿じゃない。


「ご質問いただいた件ですが……。こちらの高倉様のコンビニの代わりに出来た建物については、正直言って、私どもにもよくわからない状況でして……正確な回答は致しかねると前置きしておきますが。おそらく、この世界に残された影のようなものであり、恒久的な異なる世界間の繋がりを実現する為の装置ではないかと、推測されています……。ただ、迂闊な真似をすると、中に入った者が亜空間や、異世界に転移されてしまう可能性もあるので、詳細な調査は実施せず、高濃度の放射性物質が見つかった事にして、周辺住民も立ち退きさせて、区画ごと閉鎖しております」

 

 一帯を閉鎖したって……なにそれ、怖い……。

 なんだか、とっても大掛かりなことになってしまったようだった。

 

 もしかして、テンチョーの言ってた女神様って、この世界でコンビニを営業させるって目的のために、わざわざライフラインを向こうから供給できるような仕組みを構築したんじゃないだろうか?

 

 実際問題、コンビニの営業なんて、向こう側と地続きレベルの繋がりがないと事実上不可能だしなぁ……。


 まず、電気が来ないと、弁当や冷凍食品も全滅するし、飲み物も売り物にはならなくなる……どれもこれも生ぬるかったり、寒い時期に冷たい飲み物しか売ってないとか、そんなの買いたくないよ。


 そして、何よりもレジも動かないし、発注も出来ない……停電なんかすると、もう大変なんだよなぁ……事実上、営業終了のお知らせって言いたくなるくらいだ。


 それでも、こっちの事情なんてお構いなしに、お客様はやってくるから、ハンディレジで頑張って営業するんだけど……いいとこ、二時間くらいが限度。


 しかしまぁ……どれだけなんだよ……この世界の神様。

 そんな謎技術で、向こう側からライフラインをそのまま持ってこれるようにするって……。


 それに、鹿島さん達も……何よりも事が起きてから、対応までのレスポンスタイムが異常っ!


 この時点で組織として、多岐にわたる高い権限と多くの伝手、ハイレベルな人材を多数抱えているのだと推測できる。


 地震が起きたのが午前一時頃……あれが問題が起こったゼロタイムだと、思っていいだろう。


 明けて、朝六時には、和歌子さんによる配送が間に合ってる辺り、恐らく問題発生後、ものの一時間程度で事態を把握し、速やかに組織としての意思を決定し、関係部署と協議。

 

 群馬に直接人をやって、現地状況確認をしたり、警察とか各部署とも連携して情報統制を敷き、緊急地震速報の件も軽く全国ニュース物だったはずなのに、被害も出なかったからって、誤報扱いで速やかに沈静化。


 P波だけの超広範囲地震なんて……そんなもんありえないから、多分この事実は伏せられて、同時に違う場所で地震が発生したとかそんな話に置き換えたんだろう。


 その上で本部にも根回しを行い、和歌子さん達を手配して、昨日の発注情報を元に商品の配送を依頼した……。


 実際、配送センターでの荷渡しのタイムスタンプは5時となっていたので、わずか4時間足らずで、これだけの事象を並行処理し、当事者説明を卒なくこなすまで事態を掌握し、完全にコントロール下に置いたって事だ。


 なんだそりゃ……手際良すぎるだろ……とんでもない組織だぞ……これ。

 軍隊だって、裸足で逃げるレベルだっての……日本ヤバイ。

 

 けれども、この様子だと、こう言うトラブルも始めてじゃないんだろう。

 おそらく、人知れず日本人が異世界へ転移するとか、異世界人が日本へ転移してきたとか。


 ニュースとかにならないだけで、そんな事も珍しくないんじゃなかろうか?

 

 前者はともかく、後者なんて絶対ひと騒ぎ起こるだろうけど……今まで、それっぽいニュースなんて聞いたことない。


 でも、訳の解らない大量殺人事件とか、大規模な事故とか……そんなのに偽装されてるとしたら?


 有り得る話だ……表社会の人間の死ってのは、闇の世界でもなかなか誤魔化しきれない。

 そのため、別の事件や事故を意図的に起こして誤魔化す……そんな手法が使われる事もあるらしいんだけど……。


 けど、ネット情報すら封殺するような大規模情報操作が出来れば、それも不可能じゃない……。


 秘密裏に異世界間との様々な問題を解決しつつ、日本国の国益となるように調整する組織……そんなところか? 相当やばい相手だぞ……これ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ