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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第六章「ロメオ王国漫遊記」

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第五十六話「だが、断る」⑤

「……なるほど、貴様にも立場があると言うことか。さすがにロメオの属国とされるのは、セレスディアが受け入れるはずもないし、それは私も避けるべきだと思うからな。さりとて、ロメオを捨てて肩入れするとなると、より多くのロメオの民を見捨てることになると言うことか。確かにそうなると、これは選択の余地もないだろう。さすがにこれは浅慮のそしりは免れないな……まったく、これは些か気軽に考えすぎていたな」


 なるほど、同じ結論に達した訳ね。

 説明不要で、勝手に納得してくれるのはこちらとしては楽だ。

 

 けど、なんだろうな。

 

 セレイネースさんって、自分のことなのに他人事みたいな見方をしてるような。


 それに複数の自分がいて同時に思考して、動き回るってのはどんななんだろう?

 

 ……AIなんかだと、全は個、個は全みたいな感じで、いわば群体意識というべきものがあるらしいけど。

 それに近いのかもしれない。


 そうなると、このセレイネースさんやラーテルムさんは、僕ら人間よりもAI達に近いものがあるのかもしれない。

 ……なんとなく、そんな事を思った。

 

「そ、そうですわ! セレイネース様……タカクラ閣下は、我がロメオの民にとっては希望の星とも言える方。例え、セレスディアが困難な状況であろうとも、容易くなびくなんて思わないでいただきたいです! それこそ、無理に閣下を連れ去ったりしたら、それは確実に戦乱の火種となります。わたくしも含め、閣下の配下の者はそれこそ武力に訴えてでも、閣下の身柄を取り返すでしょう」


 ラトリエちゃんが厳しい顔で告げる。


「ふむ、そうなると多くの血が流れる……そう言うことか」

 

 直訳すると、セレスディアを滅ぼしても取り返すから覚悟しろって、通告だもんな。

 セレイネースさんもラトリエちゃんの通告の意味を取り違えたりもしなかったようだ。


 まぁ……うちの嫁さん達って皆、それくらいやりかねないんだよな。

 僕が特定国家に連れさられた……なんてなんてなったら、多分総力を挙げて奪回に動くと思う。

 

 さすがに自分が世界戦争の火種になるのは、御免被りたい。

 さりとて、セレイネースさんを敵に回すとか、それこそ論外だと思う。


 これはなかなかどうして、立ち回りが難しい状況だぞ。


「……う、うむ……。相応の立場なのは知っていたが、よもやそこまでとは……。確かに貴様のその覚悟、私ですら一瞬怯んだほどの気迫……我が支配が及ばないと思ったら、そう言うことか。貴様なら、本当に数万の民の犠牲を出そうと、多くの兵が倒れようとお構い無しで奪還に来るだろう。そして、同様の覚悟を持つ者達が複数……。なるほど、そう言われるとこちらも強く出れないな。さすがに我が行いが元で未曾有の戦乱を巻き起こすなどあってはならんことだからな」


 何と言うか、こう言うところがこの女神様の嫌いになれない所なんだよな。

 

 要するに、ちゃんと良識ってもんを持ってるのが言葉の端々に見えるのだよ。


 そう言う良識ある女神様が肩入れするセレスディアの王女様。

 まぁ、多分いい子なんだろう……さぞ、苦労してるんだろう……なんてのは、容易く想像できる。


 もしも、僕が何も持たずセレスディアに迷い込んでいたら。

 

 それはそれで、違う物語になっていたかもしれない……それくらいのことは思ってしまうよ。


「当然ですわ! 我らは閣下に死ねと言われたら、喜んで死ぬ! 無辜の民衆を殺せと言われたら、迷わず殺す! その程度の覚悟は皆できております!」


「……なんとも狂気すら感じる心意気であるな。解った解った……強引に連れ去るような真似はしないと約束する。だが……そうだな。ならば、期間限定というのはどうかな? ほんの数年で構わんのだ……セレスディアが法国から正式に独立を果たし、女王が確固たる権力基盤を築き、国の繁栄の道筋を作る……。それを見届けたら、ロメオに戻ると言うのはどうか? その場合も、我が加護の力を大陸でも使えるように計らってやろう……実を言うとラーテルムと私では、私のほうが立場が上なのだ……多少の無理筋も通せないことはない。どうだ、この条件でやってくれぬか?」


 なるほど、強引に連れ去るとやばいことになるから、僕が望んで行くという体裁を整えたいと言うことか。


 期間限定、その上大陸でも使える永続加護も付けると。


 一見破格の条件に聞こえるけど。

 そう言う問題じゃないんだよなぁ……そこまでして、神様チートが欲しいかと言われると、そんなことは全然ない。

 

 そもそも、そんなのが必要な相手……どこにも居ないのが実情。

 

 なにせ、僕は直接戦ったりするような立場でもなんでもない。

 クロイエ様に代わって、国家戦略的な判断や采配を行う立場だという事は自覚している。


 そんなチートやら加護みたいな能力が要求されるのは、最前線や部隊単位の指揮官程度までだろう。


 僕がやってることは、言わば戦略レベルの活動が主だからねぇ……。 

 要は自分よりもずっと強い配下の者達が全力を尽くして戦えるように、その準備や道筋を立てる。

 少しでも有利になるように、裏に表に暗躍して、敵の力を削ぎ、味方を万全とする……そう言う立場なのだ。

 

 僕は国と言う大きな単位の中で、戦略的な判断を行う言わば頭脳と言える立場なのだ。


 そんな立場の者に武力なんて要らない。

 

 ……まぁ、そう言うことなんだよな。


 今の僕に、チートだの加護だのは必要ない。

 僕みたいなのがチートや加護で無双するとか……そうせざるを得ない局面に陥ってる時点で、戦略的には敗北が確定……終わってるようなものだ。


 何よりも、僕はクロイエ陛下の懐刀なのだ。


 彼女の望む世界に、この世界を作り変える……それが僕の目的なのだ。

 

 住所不定無職の冒険者とかそんなんじゃないからね。


 結論:別にチートとか要らなかった。


「ど、どうだ? この条件……まさに破格のものだと言えよう。私もラーテルムに貸しが出来ることになる以上、相応の犠牲を払うようなものだ。だが、それでも貴様と言う人材は魅力的なのだ……どうだ?」


 熱の籠もった勧誘。

 彼女の言葉は本物なのだろう……だけどねぇ。


 思わず、ふっとため息をつく。


「……あのさぁ……どこの世界に、他所の国の重鎮を期間限定指導者に招くような国があるんだよ。その時点で国を売り渡すようなものじゃないかな?」


 まぁ、シンプルにそう言う話だと思う。

 仮に僕がセレスディアの期間限定、女王補佐とかになったとする。


 当然、僕は役目を終えたあとのことを考える。

 色々弱みを探ったり、軍事施設や兵力配置情報とかを記録していくのは、当然だし、後々敵に回すと厄介そうな将軍とかが左遷されるように仕組んだりとかな。


 セレスディアが内部から崩壊し、ロメオに助けを求めるように仕組んでおけば、大義名分の元にセレスディアを併合だって不可能じゃないだろう。


 セレスディアに僕を招いた時点で、そう遠くない将来にセレスディアはロメオに合併される。

 それは国を売り渡すに等しいと思うんだけどな。


「……まさか、貴様はそこまでしないだろう。これでも私は貴様の人となりも理解しているのだぞ?」


「いやいや、実際僕はその期間が終わってから、どうすれば楽にセレスディアを併合できるかなって考えてるよ? 恐らく、それは簡単に実現できる」


「いや、何も権力者として采配を振るってもらおうなどと思ってはおらんぞ。そうだな……相談役! 相談役ではどうだ?」


「と言うか、僕もそんな何年も国を空けられるほど、暇じゃないし、別にそこまでして神様チートとか欲しいとも思わない。そこは解って欲しい。と言うか、こう言う話ってさ。根無し草の浮浪冒険者とかそう言うのなら食いつくだろうけど、僕みたいな一国の宰相なんて立場の人間にするような話じゃないでしょ。いくら神様だからって、一国の生殺与奪の権利を売り渡すような真似しちゃ駄目でしょ」


「……貴様は自分が助勢の上で立て直した国ですら、邪魔になったら消す……そのような行いを平気でするのか? いや……まさか、そこまではしない……そう思いたいのだが」


「いやいや、自国の安全と安定のためなら、他国なんて平気で潰す。それが安全保障というものだよ。確かにセレスディアに期間限定宰相とかなって、助力すれば幾ばくかの間はロメオとセレスディアも悪くない関係になるだろうけどね。それがいつまで続くかの保証はないんだ。ある日、クーデターが起きて敵対国となる……そんな可能性だってある。そうなった時、即座に潰せるように備えをしておく。僕はそう言う事くらい平気でやるよ」


「わ、我が加護を受けた国でそんな裏切りなど……させるはずが……」


「……神様だって、全知全能じゃないんだろう? この大陸の情勢を見てればそれは明らかだよ。貴女の力が全知全能ならば、今頃セレスディアだって、法国の属国なんて立場でもなかっただろうし、その女王様だってもうちょっと上手くやってるんじゃないかな?」


 それだけ告げるとセレイネースさんは押し黙る。

 まぁ、反論なんて出来ないだろう。


 なにせ、僕は事実を告げているのだから。


「……ええい、貴様……いちいちもっとも過ぎて、反論も出来ないではないか……。確かに私が地上にて行使できる力はたかが知れておる。では、この話……受けては貰えないと言うことか? 寄り付く島も無いのでは交渉にもならん。そう言う事なら、私もやり方を変えねばならんのだが」


「……そうだねぇ。手助けするとしても一国が相手で僕の立場でとなると、こちらも国としての交渉。外交交渉って話になってくるんだよ。どうも、スタートラインからして、ズレてるような気がするんだ。どうだい? ラトリエちゃん、この場合どんな問題あるかい?」


「そうですわね……流石に問題がありすぎます……。お父様率いるロメオ商船団から見たら、帝国の嫌がらせでこちらが自由に動けなくって疲弊している間に、火事場泥棒のように勢力を拡大した……そんな風に言われていますからね。非公式ながら、何度か商船団同士の海戦すら勃発しているほどで、要するに仇敵……みたいなものですわ。口の悪いものは海賊の総元締めとも呼んでおりますわ。そんな国に肩入れするとなると、国内の反発は免れません。閣下が政治的に失うものが大きすぎるかと。ここは断固として拒否すべきだと意見具申いたします」


 ラトリエちゃんの助言。

 一方的な見地だとは思うけど、ロメオ側の国民感情を代弁してくれたってのは解る。


 と言うか、いつもと口調違うし。

 なるほど、この場の自分の役目を自覚してるってことだな。

 

 この子、嫁さんと言うよりも、僕の参謀とか腹心って気がしてきたな。

 

 まぁ……国民感情が悪いのに個人の思いで、妙な肩入れとかしたら、支持率だってだだ下がりになる。

 国と国の関係ってのは、利害だけじゃないからね。


 幸い遠く離れた国だから、過去の歴史的な悪感情とかが募ってるとかそう言う訳じゃないのが幸いなんだけど。

 

 何より法国との関係を考えると、セレスディアに肩入れするのは激しく問題がある。

 そもそも関わっちゃ駄目な気がする。

 

 と言うか、思った以上にロメオと仲悪い……まぁ、海を挟んで隣国同士、海洋国家ってのはそう言う見方もできるからね。


 海賊の総元締め……実際、大航海時代の商船とかって海賊と紙一重だったらしいからなぁ。

 貿易ついでに海賊行為で一儲けするとか、そんな調子だったって話を聞いたことがある。


 多分、ロメオの商船団なんかも似たような事をしてるとは思うけど。

 身内の悪行には目を瞑りがちってのも事実だから、多分向こうは向こうでロメオの商船団を海賊呼ばわりしたりしてると思う。


 世の中なんて、得てしてそんなものなのだ。


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[気になる点] 外交問題にまでなっちゃた。終わるの? [一言] セレスディアにコンビニ2号店開こう。 サトルかミミモモを教育係で派遣。 落とし所としていかが?
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