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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第六章「ロメオ王国漫遊記」

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第五十五話「海の女神様」④

「問題あるに……」


「うにゃーっ! 問題ありまくりだにゃーっ! 黙って聞いてれば勝手なことばっかり! こっちもはいそうですか! なんてすんなり納得できる訳ニャイにゃーっ!」


 テンチョーさんに被せられたっすよ?

 

 ……何と言うか、某やっぱヘボいっすなぁ。

 テンチョーさんにもう任せちゃうっすか?


 いやいや、テンチョーさんではこの女神さんに言いくるめられる未来しか見えないっす!


 某、まだまだっ! 


「そ、そ、そ……そうっす! 大体、本人の意志はどうなんすか! 本人がそんなの望んでるわけないっすよ!」


「そうなのよね……。結局、重要なのは本人の意志……やる気ないヤツ使徒にしたって意味なんて無い。けど、実は勝算あるのよ? 聞きたい? 聞きたいでしょ? うふふっ!」


 ……ラーテルムが駄女神なら、こっちはウザ女神だと思うっす。

 

 けど、今の某は無力……向こうとこっちでは、アリと象くらいの差はあるっす!

 

 もっとも、某……元々女神の力とか当てにしてた訳じゃねぇっすからな。

 向こうもこっちをどうこうする気はないみたいっすから、こうなったら理詰めで論破するっす!


「……なら、聞かせてもらうっす! その勝算とやらを! 本人の意志すら捻じ曲げる秘策でもあるんすか? 言っときますけど、洗脳とか脅迫とかそう言うズルッコイ手段はノーセンキューっすよ!」


 ビシッと指差し! 犯人はヤス!


「うふふ、実はあの人に同行してる女の子……ラトリエちゃんだっけ? あの子、うちの巫女としての才覚の持ち主でね。夢同調っていうんだけどね。あの子の夢の世界で直接お話聞けちゃったのよ」


「……プライバシーもヘッタクレもあったもんじゃないっすね。ああ、続けてくださいな」


 某の横やりに一瞬気を悪くしたみたいで、眉間にシワ寄せたのが解ったっす。

 危ない危ない……喧嘩売っていい相手じゃないっすからね!


「まぁいっか! でね! でねっ! あの子って男の人と二人きりで無人島で愛し合うとか憧れるーとか言ってたのよ! もう、私も同じ女子としてそのお願いを叶えてあげたいなーって思ったの。ついでに、タカクラさんに課せる試練としてもちょうどいいかなーって! 女の子を優しく守りつつ、無人島で二人きり……困難を二人で乗り越えながら、お互いを大事に思い合って、盛り上った二人はやがて、お互いを求め合いめくるめく激しい一夜を……そして、絆という力を手に入れた勇者は、強敵との戦いを迎える! まさに勇者の試練って感じ? 話的に超良くない? 素敵ーっ!」


「…………」


 某も返す言葉もないっす!


 要するに、この乙女チックなラトリエちゃんの描いたストーリーを実現させて、ついでに、ダンナもその気にさせちまおうって、そう言うこと?


 そうなると、その邪魔をさせるつもりはないと……そう言う事っすか。

 

 こりゃ、この調子だと捜索隊出しても、島を幻影で隠すとかリヴァイアサンを差し向けられるとか絶対、邪魔してくるっすなぁ。


 なにせ、伝説レジェンドは勇者の力で成し遂げられないと意味がないっすから。

 何と言うか、相手が悪いっすなぁ……。


「ふふふ、どう? 大海の勇者ケントゥリ……か弱い女の子を守りきって、その信頼と愛情を一手に受けて、たった一人で魔獣リヴァイアサンを倒し、見事生還! セレイネースの使徒としての伝説、第一話にはふさわしい試練だと思わない?」


 ……うーむ。

 

 思った以上の乙女脳っすなぁ……この女神様。


 ただ、問題としてはダンナの実力で、リヴァイアサンに勝てるかってのがあるんスよね。

 と言うか、試練を通過しちゃったら、この分だとダンナはセレイネースの使徒にされてしまうっす!


 ダンナには、出来ることなら、この手の女神さんとか関係ないポジションで、武力に頼らず、平和な世界を作り出す偉業を為して欲しいっす!


 多分、ダンナはそれが出来る人。

 

 そして、その道への水先案内人……某が務めたい。


 それこそが某の役目……そう密かに誓ったんスよ!

 

 某……こうなったら、この女神セレイネースの企みを全力で阻止するっす!


「一応、話は解ったっす……。けど、試練ってのを突破できなかったら、どうなるんすか?」


「え? 考えてなかった……それ。タカクラさんって、リヴァイアサンくらい軽く一蹴できるんじゃ……」


 ……この女神さん。

 旦那のこと、パーフェクト超人かなにかとでも思ってたんスかね。


 あの人、基本的に魔猫族の身体になって、普通の人類よりはハイスペックになってるけど、戦闘力とかは割とどってことないんす。

 実際、三人娘相手にボコボコだったっスからね。


 不死の加護とか、一応もらってはいるけど、その加護は一度も使われてない。

 なにせ、本人知らないんだもん。


 加護もチートも使わない限りは、何の意味もない。

 当然ながら、使徒ってのは女神の力を借りてこそ、使徒なんすよ。


 ダンナも密かに色々加護やチートもらってたんだけど、本人が当てにしてなかった上に、実際使われなかったからには、使徒でもなんでも無い。


 ……普通に、いくつもの困難を知恵と勇気と口先三寸、仲間達の助けを借りて乗り越えた。


 本人の武力なんて、たかが知れてるんスよ。

 けど、当の本人はどってことないままで、使徒にも匹敵する偉業を成し遂げつつある。

 

 あの人の凄さは、まさにそれだと思うんスよね……。

 何と言うか、本人微妙だけど、乱世を制して、皇帝に成り上がった劉備玄徳に劉邦と同じような回りから慕われて、持ち上げられるカリスマ系。

 

 ダンナって、なにげにそう言うタイプの人なんじゃないかって気がするんすよね。


「考えてなかったって……。あの人、戦闘力とかは割と普通枠っすよ? ぶっちゃけラトリエちゃんとかの方がよっぽど強いと思うっす」


「……え? だって、あのラーテルムに召喚されて、派手に成り上がったんでしょ? 生命の危機なんて一度や二度じゃないと思うんだけど……。ラーテルムだって、当然インチキ臭い能力やらいっぱい付けてたんでしょ? それが弱いはずがないわ!」


「ダンナはラーテルムの加護やチートなんて始めっから頼ってないっすからね。そもそも、使っても居ない……それがラーテルムさんから嫌われた理由でもあるんスよ」


「えー? なにそれっ! 異世界からの召喚者って皆、調子に乗ってチートや加護で好き放題やるってのが定番じゃないの! 超絶の力を与えられて、それを使わずにって、なにそれーっ!」


「そこが、ダンナの凄さなんスよ。某はそんなダンナの助勢となるべく、黒子であることを潔しとしたし、テンチョーさんもダンナの剣として、常に傍らで命じられるがままに戦う事を良しとした。某達はそう言う理由でラーテルムの使徒をやってるようなもんなんすよ」


 まぁ、ちょっと誇張してるんスけどね!

 

 某達はラーテルムの使徒として、実際はダンナの使徒みたいなもんっすから!

 ここは、ハッタリで押し切るべき局面っす!


「……神々の力を……使徒としての力を使わずに、化け物を次々粉砕して、その上、自分の力だけで、ロメオの宰相なんて立場にまで成り上がったっての?」


 まぁ、日本の人達を味方につけて、その助勢もあったんっすけどね。

 それも介入を程々で押さえて、コントロールしきってるんだから、大したもんスよ。


「ダンナの凄さは、戦わずして勝利を得る事! 自分よりも強い者すらも心酔させるカリスマにこそあるんす! だから、戦いばかりの並大抵の英雄とかと一緒にしちゃ駄目っす!」


「そ、そうだにゃっ! 化け物と戦って勝つとか、そんなのはテンチョーとかの役目なんだにゃっ! リヴァイアサンと戦うとかそう言うのはテンチョーがやるにゃっ!」


「要するに、適材適所って事なんスよ。話聞く限りだと、試練とか言ってるけど、バランスとか全然考えてないんじゃないっすかね。そもそも、リヴァイアサンを止めるとか出来ないって自分でも言ってたじゃないっすか。具体的にはどうやって勝たせる気なんスか? 負けちゃったら試練の意味なくね?」


 レベル1じゃ、ラスボスには勝てねぇっすからね。

 なんだか、ダンナのことを勝手にチート英雄か何かみたいに思ってるみたいっすけど。


 ダンナはあくまで普通人枠。


 けど、それでいいと思うんスけどね。

 

「だ、大丈夫! そう言う事なら、使徒に相応しい程の実力を持てばいいのよ! そう、この私の加護とチートだっけ? すんごい超能力を与えてあげれば、きっと喜んで使徒になってくれると思うわ! ふふふっ! さすが私!」


「だから……ダンナはそう言う加護やチートに頼らないからこそなんであって……なんで解んないっすかね!」


「ええーっ! 力なんて使ってなんぼじゃないの? 戦わない英雄なんて、英雄でもなんでも無いじゃないっ!」


 ……こりゃ、まいったっすねぇ。


 この女神さん……戦わずして、勝つことの凄さがまるで解ってないっす。


 この調子じゃ、延々平行線。

 某達も助けようにも、助けに行けない……。


 立ちはだかるは海の怪物リヴァイアサン。

 それを退けて、無事生還するには、セレイネースの使徒になるのが確実っちゃ確実なんスよね。


 けど、セレイネースの使徒になってしまったら、ダンナは今の立場とか全部捨てなくちゃいけないっす。


 使徒になるってのは、女神クエストを断れなくなるって事でもあるんスよ。


 テンチョーさんとか自覚してないみたいだけど。

 アレ断れないのって、使徒としての制約がかかってるからなんスよね。


 女神から命じられたら、何となくそれをやらないといけないって強迫観念みたいなのに迫られるんすよ。


 某の場合、BL漫画を女神様の為に描き続けるってのが、制約なんスけど。

 その辺余裕だから、某はフリーダムなんすけどね。


 サトルの兄さんも、スライムをこの世界から駆逐するっていう制約がかかってたみたいっすけど。

 何人たりとも傷つけてはならないって制約もあって、それでバランス取れてたみたいなんスよね。


 ちなみに、今は某の口添えで、サトルの兄さんには余計な手出しをしないって感じになったんスけどね。


 なんだかんだ言って、某もラーテルムさんをうまく御してるような気もするんスけど。

 なにせ、あの女神さん、どうも場当たり的な思いつきで要らないことをおっ始めるから、超危険なんスよ。

 もっとも、今は某のBLワールドの虜になってるから、要らない思いつきとかやらせてないんスけどね!


 某、ラーテルムさんの好みとか熟知しつつあるんで、気を引くような予備ストックはまだまだいっぱいあるんスよ!


 調子に乗らなければ、うまく御し得ると思うんすよね。


 けど、問題はこの海の女神セレイネースさん。

 ダンナを使徒にして何がしたいかってなると、この神様。

 

 この勇者は私が育てたってドヤりたい……。


 それだけだから、ちょー面倒くさい! ホント、どうしてくれやしょう?

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