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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第六章「ロメオ王国漫遊記」

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第五十二話「無人島ライフ始まる」⑤

 まったく、今頃そんな事言ってる辺り、我ながら情けない話だった。


「存在自体をすっかり忘れてたけど、なるほど……これって結構使い勝手いいね」


 指先に爪みたいに生やすと、ヤシの木もどきにもガッツリ食い込んで、余裕で掴まれる。

 手の甲を装甲みたいに覆う事も出来て、これなら武器を持った相手とも戦える?

 

 これを使えば、つるつるの岩とか天井なんかでもへばり付けるかもしんないな。

 なんだか自分がカブトムシにでもなったような気分だ。

 

 カサカサとヤシの木を降りて、椰子の実片手に座り込む。


「うん、これ……意外と使えるなぁ……形状変化が何気に優秀かも」


 肩や肘に棘生やしたり、頭に角だって出来るんだぜ?


 指と指の間にニョローンと糸張ってみたりも……ランシアさんは、こっから水を鞭みたいに使ってたな。


 こう言う操作系は、ランシアさんだけど、リーシアさんにも帰ったら聞いてみよう。


「そこまで魔刃を使いこなせるのに、何故警備隊の方々やわたくし達との模擬戦には使われなかったのですか? 素手だとリーチも限られますし、何より魔刃の方が攻撃力という点では優れていると思います。それに日頃から使うことで魔力効率も上がるじゃないですか、魔物などと相対することを想定すると、いい練習台になったと思うのですが」


 ラトリエちゃんが不思議そうに尋ねてくる。


「いや……こんなの使ったら、相手怪我させちゃうでしょ? 訓練なんだから、安全第一……じゃないかなぁ」

 

 言いながら、ヤシの実の上の方をサクッと水鳥剣で切り裂く。


 うん! 切れ味抜群! 確かタイかどっかだと、ナタでスガンって切ったりしてたけど。

 全然力なんて要らない……切れ味良好!


「はい! この水みたいなのを飲むんだよね。ちなみに、中身の縁のゼリーみたいなのも結構美味いよ!」


「手慣れてますね。それにこのロシュの実の食べ方もご存知のようですね。けど、確かにその魔刃……すごく切れ味が良いですね……この水の膜……高速で回転してるように見えますが。お兄様の使うのは、氷の刃って感じでしたので少し違うようですね……」


 言われてみれば、そんな感じ。

 

「確かに……。氷の刃になってる訳じゃないね……多分、高圧水とかそんなかな? なんにせよ、取り扱いには気をつけないとね」


「そうですね。これは色々応用効くと思いますよ。なんだか、燃えてきますねー!」


 ラトリエちゃん……興味津々って感じ。

 確かに思った以上に、汎用性も高そうだし、使えそうな気がする。


「それより、早く飲もうか!」


 二人してココナツジュースをぐいっと飲む。


「うーん、やっぱりロシュの実はこうするに限りますわね!」


「ロシュの実って言うんだ……! うん、僕らの世界のヤシの実ジュース、そのまんまだな」


 少し甘酸っぱいようなコクのある味。

 なにに似てるって聞かれたら、甘酒に近いかな?


 と言うか、微妙にアルコールが入ってるな……これ。


「なにこれ? ちょっとお酒入ってるような……」

 

「そうなんですよ。これをそのまま、外気に晒したままにすると、お酒になるんですよ。これも大分熟れてたみたいで、お酒になりかけてますね」


「へぇー、そう言えばそんな話、どっかで聞いたな……もっとも、僕が酔うほどじゃないね」


 あ、思い出した。

 森エルフの集落で飲んだアルメザってお酒だ。

 

 いわゆるヤシ酒の一種。


 でも、あれとそこのロシュって植物は別物に見える。

 

 ちなみに、アルメザの木はヤシの木と言うよりも、もそもそとした灌木に長い幹が付いたようなへんてこな木なんだよね。

 

 本来は、エルフの森に生えるような代物じゃないらしいだけど、酒にするためだけに、イルハド長老がこっそり栽培してたらしい。


 クッソ不味い伝統食を皆に強要しつつも、自分はこっそり酒のために手間ひまかけて……何とも憎めない御仁ではある。


「旦那様は、お酒にも強いんでしたっけ……」


「君は、15歳なんだろ? 僕の世界では子供はアルコール禁止なのよ……だから、今度一緒に飲みましょう! とかは無しだね」


「あの……私達の世界では、15歳で大人……成人なんですよ? それにお酒なんて皆、子供の頃から飲んでますわ。まぁ、わたくしはあまり強くないので、ほどほどにしてますけど」


 言ってる矢先から、もうほっぺたがほんのり赤い。

 おう、こりゃホントに飲ませちゃ駄目っぽい。


「みたいだねぇ……。さてと……日が暮れる前に、干潟で色々狩ってくるか」


 ……うむ、アルコールの勢いでーとか勘弁して欲しいしね。

 とりあえず、日暮れまで時間もなさそうだし、明るいうちにやるべき事はやってしまおう!


「解りました。わたくしは焚き火の用意と、森の中で食べられるものを探してみますね。それとあの様子だと、潮が満ちてきたらあっという間に海の底に沈んでしまうので、あまり沖の方まで行かないようにしてくださいね。日が暮れて、潮が満ちてしまったら、こんな島の場所なんて確実に見失ってしまいますから」


「解った注意するとしよう! ラトリエちゃんも何がいるか解らないから、気をつけて!」


「ご心配いただきありがとうございます! では、後ほど!」


 ラトリエちゃんと別れて、再度僕は海の方へ向かう。

 ひとまず、今日のところはあまり無理はしないでおく。


 まぁ、手っ取り早くやろう。

 まずは、島にほど近い辺りの水たまりのお魚をゲーット!


「……何ともカラフルだけど、大丈夫か? これ」


 緑と黄色の縞々な魚と、細長い銀ピカな魚。

 カラフルなのはエンゼルフィッシュとかそっち系。


 銀ピカのは、微妙に透けてて、サンマとかに似てる感じ。


 ちなみに、素手で捕まえるとか面倒くさかったから、水たまりに尻尾突っ込んで、急速冷凍ってやった。


 要するに、魚ごと凍らせて、その氷をそのままお持ち帰りっ!

 

 捕獲と保存とシメまで全部一回で……何とも便利だな。

 

 水たまりまるごとの氷だから、デカイし重量はあるんだけど。

 今の僕ならこんな2-30kgくらいありそうな氷の塊だって、余裕で担げるのだ!


 それに冷気や熱気を遮断する遮熱結界だって、アージュさんに教えてもらったから、使えるようになってるから、氷を結界で包めば、冷たくて持ってられなくなる……なんてこともない。


 でも、出来れば全身を包むくらいまで出来るようになってたかったんだけど。

 いいとこ、バスタオルとかの大きさくらいまでなんだよなぁ……。

 

 お互い忙しい合間に、指導してもらってって感じだったから、まだまだ全然使いこなせてない。

 良いところ、日除け代わりって感じだったけど、こう言う用途なら十分使える。


 リヴァイアサンは……相変わらず、どーんととぐろ巻いてる。

 位置も変わってないけど、自分が水に沈んだら復活するって感じなんだろう。


 逆を言えば、今ならやりたい放題でもあるんだけど。

 けどまぁ、動けないからって手出しした所で今はさしたる痛痒も与えられないだろう。


 見てろよ……そのうち、やってやるっ!


 ……空を見上げると、そろそろ色が黄色っぽくなってきていた。

 時刻は3時から4時ってところか。


 あと1、2時間もすれば日が暮れる。

 それに、潮も満ちてきたようで、遠くのほうが干潟ではなく、キラキラした海になりつつあった。


 多分、これ潮が満ちてくる時も、ジワジワとなんかじゃなくて、一気にドバっと来るぞ。


 まだまだ時間があるとか思ってると、軽く波に攫われそうだった。


「なんとも慌ただしい事で……となると、長居は無用っ!」


 魚入りの氷塊を背中に担いで、ドタドタと走り出す。

 途中ででっかいカニがウロウロしてるのに出食わしたりもしたけど、今日のところは無視!


 さすがに、あのサイズだと、軽くバトルになりそうだ。

 あのハサミとか……人間の腕くらい軽く千切るくらいには、パワーありそうだからな。

 

 ここに居座ってるなら、そのうち狩ってやる! そして、カニ鍋だなっ!


 そして……リヴァイアサン……。

 堂々ととぐろを巻いて、ズーンと居座ってやがるのがここからでも見える。


 潮が満ちてきたら、こいつのターンだ。

 搦手や小細工なんて通じない、純粋にデカくて強くて、しぶとい……厄介なやつだよな。


 お前もそのうち、狩ってやる! 美味いかどうかは知らんが、せっかくだから食ってやる!

 蛇とか案外美味いらしいし、ワイバーンも美味かったからな! 


 まぁ、そのうちって事で……。

 ここは、さっさと戻るのだよ……覚えてろよ!


 それにしても、何をするにしても道具も何もないから、魔法が頼みの綱だなぁ。

 

 魔法もこの機会に新技とか、新しい応用とか考えてみてもいいかもな。

 うん、今回の件で思い知った……僕には決定的に戦う力ってものが足りない!


 ラトリエちゃん達みたいな宝具までは要らないけどさ……。

 それでも、リヴァイアサンみたいな巨大な魔獣相手でも戦えるような力は、やはり必要だと思う。


 この世界は、あまりに過酷。

 

 僕はこれまで、敵とだって話し合えば、解り合える……そう思ってたんだけど。


 あのリヴァイアサンや帝国のスライムみたいに、全く話も通じず、ひたすらに殺意を向けてくるような敵もいる。


 話し合うのだって、力という背景があってこそという一面もあるんだからね。

 強くなるんだーっ! そう固く誓うのだった!


 

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