第五十二話「無人島ライフ始まる」④
「……とりあえず、まずは食べ物でも探すかね……。ミミモモでもいれば、話も早いんだけど……」
ミミモモ達ミャウ族の食べ物を探す嗅覚はマジで半端なかったりする。
本来は、食べられるものを見つけられない=餓死ってギリギリライフだったせいか、ホント、何もなさそうなところからでも芋とか掘り出してきたり、川なんかでもそんな所にいたの? みたいなところから素手で魚をゲットとか平気でやってる。
ああ見えて、サバイバビリティ高いのだよ……あの子達って。
まぁ、もっと早いのは、この場にゼロワン辺りが飛んできてくれることだけど。
ただ、航空機ってのは航続距離の問題があるから、こっちもやっぱりあまり期待できない。
なにせ、ゼロワン自体がGPSがないから、空撮映像を元にジリジリと自前でマップを作りながら、行動範囲を広げてる最中だって言ってたしなぁ。
まぁ、間違いなく鹿島さん達もこのことを知れば、全力で協力してくれるとは思うんだけど……。
「そうですね。落ち着いたら、ちょっと喉乾きましたね。旦那様……あそこにある木の実取ってこれませんかね? あれって、割ると甘いジュースみたいなのが出てくるんですよ。こう言う時は、落ち着くためにも甘いものが一番だと思いますよ」
言われて、背後のジャングルを見ると、一際ニョッキリと目立つ、なんだかヤシの木っぽいのが。
てっぺんだけ葉っぱがあって、丸くて大きな木の実がポコポコと。
……おう、いきなりナイスな代物が!
水なら飲み放題だけど、こう言うときに甘い飲み物ってのは悪くない。
「よし! 任せて! ちょっとがんばるっ!」
なんだか、とっても役立たずという自覚はあるので、こう言うときこそ、がんばんないと!
……砂の上にニョッキリ生えたヤシの木っぽい何かにしがみついて、お猿さんみたいに登っていく。
うーむ、思ったより楽だな……さすが、僕だ! 握力も何もかもがかつてと比べてパワーアップしてるし、体重もすっかり減ったから、ものすごく身軽だ。
ちょっと滑りやすいけど、そこら辺はパワーでカバーッ! 気合だっ! 気合ッ!
「うげっ! なんだこれ……結構デカイし硬いぞ!」
木のてっぺんあたり、ゴソって固まるようになってるとか、そこまで一緒!
色は緑色なんだけど……こんなデカかったっけ?
スイカくらいあるって、なにこれ?
それに今気づいた……ナイフとかないしっ!
捻ったりしても、切れる様子はない。
これはまいったな。
全体重かけてぶら下がるとかすれば、千切れると思うけど……。
「旦那様ぁ、どうかされました?」
ヤシの実と格闘してる僕の状況を察したのか下からラトリエちゃんが声をかけてくれる。
「うーん、なかなか固くて、ヘタが千切れないんだ」
筋肉増強魔術でフルパワーの力技でやるか?
あれちょっと体重もマシマシになるから、支えきれなくなるかも……?
と言うか、普通にナイフとかそう言うのが欲しい!
ああ言うのって、サバイバルの必需品だったような……。
石ころでも拾って、叩き割ってナイフを作るところかやらなきゃ駄目?
「では、少し降りて、木の実を引いて茎がこっちに見えるように! そう、そんな感じです……わたくしにお任せを!」
言われたように、少し下りた位置でヤシの実を引っ張りながら、待機していると、小さな白くて薄い円盤みたいなのが、スパッと飛んできて、蛇が鎌首をもたげるような軌道を描きながら、あっさり茎が切り裂かれ、木の実がストンと手に落ちてくる。
「うーむ、見事だ……これって、やっぱり魔法なの?」
……角度的に狙うの難しそうだったのに、一旦上昇してからへニャって感じで下がるような軌道だった。
円形の曲射魔法? なんと言うかラトリエちゃんらしい魔法だな。
「そうですね。極薄の氷を円盤状にして飛ばすものです。「飛氷斬」と呼んでます。地味ですけど、射出後に軌道を操れる上に、切れ味は抜群ですよ」
確かに、これをまともに首にでも受けたら、一瞬で生首になれるぜ!
おまけに下から、この位置までセンチ単位の精密さで、狙えるとか、コントロール性もいいって事か。
あ、考えてみたら……僕もこんな感じの攻撃補助魔法があったな。
まずは一個、ヤシの実を地面に向かって投げ落としながら、僕も自前の魔術を発動する!
「ニャンと水鳥剣ッ!」
右手に薄くて青いオーラをまとう。
オーラの形を細長くして、長めのナイフくらいにしてみる。
軽く、手近な葉っぱを斬りつけると抵抗なくスパスパ切れる。
うむ! ビール瓶の縁を容易く切り裂いた抜群の切れ味は健在だな!
「シャオウッ! ヒョウッ! ホヤッタァッ!」
叫ぶ声には意味はない。
5個位なってたんだけど、スパっと切って、ぽいっと落とすを繰り返して、速やかに全部ゲット!
「おおっ! 魔刃ですか! そんな魔法も使えたのですね!」
……正式名称判明。
なるほど、既存の魔術ではあったのか。
これは、あれかな? 習得条件を達成してれば、必要に応じて、既存の魔術が追加されるとかそんななのかな?
考えてみれば、放水の魔法だって、アレ自体はモモちゃんのパクりだったしなぁ。
モモちゃんも何処でこんな便利な魔法を身に着けたんだろう?
そもそも、ミャウ族って魔法系の種族じゃないし……。
ちょっと気になるな。
「なるほど……魔刃なんて名前だったんだ。実のところ、一度も使ったことなかったんだけどね」
……なにげに、レインちゃんとのバトル中に発現したんだけど。
ビール瓶を斬った意外に使った試しなかった。
リスティスちゃんとのバトル中にも使おうとしたんだけど。
本格的に刃を交える前に、セルマちゃんのひき逃げアタックで昇天してしまったからなぁ……。
もっとも、今頃役に立ったけどね!
それに、恐らく避けられないであろう戦い……リヴァイアサンとの決戦でも、これを使う機会はあると思う!
ちょっとこれは長期戦になりそうだし、ついでに修行の日々パートツー! って感じかな。
「色からすると、青の魔力……水系統の魔法剣、刃の形も変幻自在で、身体の何処からでも出せると言う利点があるので、魔刃系統でも一番使い勝手が良いってお兄様が言ってましたわ」
なるほど、確かに尻尾の先とかデコからも出るな。
コレって意外とインファイト向けかもな……。
なるほど、ラトリエちゃんのお兄さんは、コレと同じのを使えるのか。
無事に戻れたら、色々とアドバイスとか聞いてもいいかもね。
人間相手にこんな手加減も利かないような凶悪な魔法要らないとか、思ってたけど。
モンスター相手ともなれば、そんなもん気にする必要なんて無い。
いくら僕でも、殺らなきゃこっちが食われるなんて状況だと、情けも容赦も無用だって解る。
あのリヴァイアサンは、こっちの事なんて餌としか思ってないし、餌に反撃されて、絶対食ってやるとかそんな調子なんだろう。
別にそれ自体は生き物としては、自然な話じゃある……。
邪悪だからとか、憎まれてるとかそんなんじゃない、単に本能に従って生きてるだけの話だ。
だからと言って、僕だって大人しく食われたくない! だからこそ、戦うまで!
これは、生きるための戦いなのだっ!
昨日は、アップロード分間違えてました。
先先日、ミスって余計にアップした関係で、グダりました。




