第五十話「猫耳おっさんビーチバカンス!」③
「これが……水船乗りか……なかなかいいじゃないか」
ラトリエちゃんが教えてくれた水を固体化させた上で、その上に乗って水の上を移動すると言う魔術……「水船」と言うらしい。
僕自身が水魔術の使い手と言うこともあって、割と簡単に真似できてしまった。
「さすが閣下。一回手本を見せただけで、覚えてしまったのですね……素晴らしいですわ! それにまさか波乗りまで出来るなんてっ! 海の女としては、これはポイント高いですわよー!」
すぐ後ろから、崩れる波に追いかけられるように、ピッタリとラトリエちゃんが付いてきてる。
彼女も普通に水船に乗っての波乗りをこなしている……なんでも、ロキシスでは結構流行ってる遊びらしい。
「まぁ、要するにサーフィン。僕の世界では水に浮く板の上に乗って、波に乗る……そんなスポーツがあるからね。それと同じ要領なんだけど……経験者の僕に平然と着いてくる君もやるじゃん!」
僕も大学時代は色々遊んでたからね。
湘南の海でナンパサーファーの真似事くらいはやった事があったんだけど、ちゃんとコツとか覚えてた。
まぁ、女の子をナンパとか……行く前とかはいつも気合い入れてたけど……。
結局、まいどまいど、声かける以前の問題だったんだがね。
エロ可愛い水着ギャルを遠くから見て意味もなく騒いで、帰りに湘南の海鮮BBQ食べ放題言って、飲んで食って帰るってのが定番だったなぁ……。
と言うか、昔はサーフィンなんて全然下手くそで話にならなかったんだけど……そこら辺はハイスペックかつ、常日頃から鍛え上げてる猫耳ボディ!
バランス感覚やら体幹やらが、もうかつての僕とは桁違いのハイスペック!
……波のトンネルをくぐり抜けるチューブライディングだって、余裕でこなせてしまった!
なお、自信満々だったアージュさんは、水を固形化するまでは余裕だったんだけど。
水船の上に乗った瞬間、逆さまになって沈んだ。
同じく水魔法の使い手だったモモちゃんも同様。
にわかサーファーあるある。
と言うか、慣れないとサーフボードの上に立つのすら難しいんだよなぁ……。
テンチョーはそもそも、水船作れなかったし、基本的に水に入りたがらないので、水船は早々に諦めてラトリエちゃんの所のメイドさん達が用意してくれたカニっぽい何かを焼いたのを食べるのに夢中になってる。
なお、ハサミだけで人の腕くらいあるような代物……意外とイケるらしい。
リスティスちゃんもテンチョーとの超絶バトルで力尽きたらしく、ぐったりと横たわってる。
でも、なんだか、すっごいやり遂げた感でいっぱい……お疲れ様。
セルマちゃんやミミちゃんももはやリタイア状態でビーチパラソルの下でお昼寝(?)中。
クロイエ様は優雅にくつろぎながら、読書タイム。
時々うつらうつらとしてて、何もしない時間というものを堪能しているようだった。
まぁ、クロイエ様も頑張り過ぎちゃう子だからね。
いい機会だから、ゆっくりしてもらおう。
アージュさんはモモちゃんと水船乗りの特訓中。
ラトリエちゃんの師匠として、出来ないでは済まされないから、なんとしてもモノにするって言ってた。
モモちゃんは……アージュさん一人だと逆さになったら溺れちゃうので、救護要員としてくっついてる感じ。
この水船って、足をボードに半固定するような感じなるから、ひっくり返ると結構シャレにならないんだよな。
とにかく、皆、それぞれめいめいに楽しんでいる様子だった。
僕は……と言うと。
水船の形を更に洗練させて、舟型からサーフボード型に変形させて、若かりし頃を思い出して、サーフィンを楽しみ中。
かつては、パドリングしか出来なかった雑魚へたれサーファーだったけど、あの頃の僕はもういない!
なんと言うか、絶好調っ!
たった今も波を飛び越えて、木の葉のように舞いながら、着水を決める高難易度マニューバ「アーリーウープ」が完璧に決まった!
「おおーっ! 閣下、お見事っ! 華麗に舞う木の葉のごとくって感じでしたね! その薄くて長い水船の形状、見慣れない形ですけど、かなり良さそうですね……大変興味深いです!」
なんでも、この水船を扱う時は、安全の為二人一組で行動するって暗黙の了解があるらしく、さっきから僕の側には、地元民にして、ベテランのラトリエちゃんがずっとついてくれてる。
そんな彼女が思わず歓声をあげるほどの完璧なマニューバを決めてしまった!
うーん……運動音痴だっただけに、こんな自由自在に波乗りとかまでやってのけるとか、我ながらすげぇって思うよ。
と言うか、「水船」よりも、この水を個体化する魔術ってのが何気に便利過ぎる。
凍らせるんじゃなくて、常温のまま個体化する。
触った感じは、硬めのグミとか軟質プラスチックみたいな感じ……。
本来、触媒とか使ってやるような魔術なんだけど、僕は物質具現化系の魔術を使えるから、水の性質を変えるくらいのことは割と簡単にできてしまった。
おまけに中空化させることで、浮力も稼いでるから、薄くて軽い割にはよく浮く。
うーん、僕もなかなかやるじゃん!
水船に魔力を上手くまとわせることで、水流すら制御できるようになって、文字通り滑るように海の上を自在に移動できるほどまでに……こりゃあ、便利だっ!
もっとも、僕の本拠地のコンビニ村は海なんて無いんだけどね!
湖が近くにあるらしいから、たまにはこれで遊んでみるかなー。
なんつーの? 僕ってば水陸両用! モビルスーツに例えるとスゴックだね!
うーん、これぞ浪漫!
水上を駆ける猫耳おっさん!
もうノリノリだぜっ!
おまけに、要所要所でかかるラトリエちゃんのヨイショコール!
この子ったら、接待ってもんを解ってるねーっ!
ヒャッハー! まさに夏を満喫って感じだぜーって!
ここのパート。
うっかり、入れ忘れてたという……ごめんなさい。
次の話との繋ぎがなんか不自然だったと思うんだけど。
やらかしでした……すんません。




