閑話休題「テンチョー密着24時!」エピローグ①
僕のコンビニが爆弾持った強盗に押し入られた挙げ句、大爆発した。
そんなロクでもない報告が僕の所に来たのは、その日も夜遅くになってからのことだった。
「……で? うちのコンビニは売り場全壊になって、モンジローくんもそんなコントみたいな髪型になったと……。ブヒャハハハッ! これもう笑うしか無いでしょーっ! ハハッ! ハハッ……!」
とーっても、ショッキングな報告だったんだけど。
怒りとか悲しみとかそう言うのは、見事なまでのアフロヘアとなったモンジローくんの顔を見たら、綺麗サッパリふっとんでしまった。
むしろ、腹を抱えて、馬鹿笑い中。
いやぁ、人間……限界を突破するとむしろ、笑えてくるもんなんだね……。
笑ってる場合じゃねぇだろって思うんだけど……もうね、笑いが止まんないんだ!
まさに腹筋崩壊ッ! 抱腹絶倒ッ!
「いやぁ、某このパンチパーマなかなか気に入りましてな。今後はこれで行くっす! しっかし、ダンナ……めっちゃツボ入ってますな」
なお、本来の頭より倍くらいのスーパーボリュームヘア状態……。
むしろ、これアフロだろ……つか、見れば見るほどヤバい。
「意外と似合ってるから、またおかしくってさ! ごめん、笑っちゃいけないと思ってるんだけど、笑っちゃうっ! アヒャヒャヒャッ!」
アフロ以外にもあっちこっち火傷やら何やらで、被害甚大のようで、全身包帯まみれのミイラのような姿。
いつもかけてるフレームレスのメガネも、片方のレンズが大破してて、やたらと澄み切った片目だけが見えている。
その目は、切れ長の割とイケメンアイズ……だが、アフロだ。
笑っちゃいけない……そう思うのだけど、自然と笑いが止まらないッ!
いい加減、腹いてぇよっ! さ、酸素が足りないっ!
「……すまん! モンちゃん……いやぁ、モンちゃんのおかげで怪我人も犠牲者もゼロだったなんて……感謝してもしたりない! あたしもさすがに、これはヤバいってんで、思わず速攻逃げちまったのに……たった一人残って全員まとめて救うとか……。やっぱ、すごいねぇ……さすが、女神に愛されし男。あたしもちょっと惚れちゃいそうだわ……」
珍しく和歌子さんがモンジローくんをヨイショ中。
今回彼女が、強盗立て籠もり事件を解決に導いた立役者って話だった。
和歌子さんは……基本的に、こっちの世界のいざこざに関しては、女神様との間に武力介入を禁ずると言う協定があるから、ノータッチって言ってたんだけど。
対応にあたったのが、親衛隊の子達で案の定グダグダし始めて、挙げ句にレインちゃんの謀反と悪いことが重なって、収拾付かなくなったらしい。
そんな惨状を見てるうちに和歌子さんもイラッとしたらしく……関係者各位を全員ぶっ飛ばして、テンチョーとラストバトルみたいになったらしい。
なんでそんな事にとかツッコミどころ満載なんだけど。
そのラストバトルの最中に、色々あって、ダイナマイトに点火。
ものの見事に大爆発!
話を聞く限り……怪我人どころか死人が出てもおかしくなかった……と思うのだけど。
モンジローくんが頑張ってくれて、奇跡の犠牲者、怪我人ゼロ……となったらしかった。
ついでに言うと、和歌子さんも終始一切の手出しはしなかったとかで、協定にも触れてないらしい。
始めから威嚇だけで、済ませるつもりだったと言うのは本人の弁。
もっとも、並大抵の相手なら、和歌子さんの殺気を当てられるだけで、意識を刈り取られるから、あの必殺の正拳突きを炸裂させるまでもなかったみたいだけど。
あれは……割と洒落にならんからね。
和歌子さんの本気とかダース単位の死人が出かねない……怪我人も出なくて、ほんと良かった良かった。
おっと、怪我人ゼロは間違いか。
怪我人、約一名。
……もっとも、そこら辺はモンジローくん。
思いっきり爆心地にいたのに、至って元気らしい。
ちなみに、報告が今頃になったのは、皆、僕に気を使ってくれたのと、コンビニ爆発とか、さすがに言いにくかったから……そんな感じらしい。
「いやぁはははっ! 某に惚れても何も出ねぇっすよ?」
……唯一の被害者なんだけど、モンジローくんはお気楽そうだった。
さすがモンジローくんだ!
「謙遜しない……君は、十分カッコよかった……! ねぇ、テンチョーちゃん、君もちゃんと謝りなよ。モンちゃんにもだけど、オーナーにもさ」
……テンチョーは……。
強盗に同情した上に、人質になるとかレアなシチェーションにすっかり舞い上がって、事もあろうに強盗に味方しようとしてたんだとか……。
テンチョーが敵に回るとか……親衛隊の子達は、生きた心地しなかったらしいけど。
同レベルのチート、和歌子さんがテンチョーとバトって、モンジローくんが爆発オチして、解決したらしい。
ごめん、言っててやっぱり意味が解らない。
なお、レインちゃんが謀反を起こしたと言う話については、先程本人からも事情を聞いたのだけど。
犯行の動機は、毛が生えたから、見せたかったと。
確かに、ちょっと前にやっと毛が生えたんですよーとか嬉しそうに、目の前でパンツ脱ぎだそうとしたから、デコピンかまして、お引取りいただいた……なんて事があったのだけど。
どうやら、しっかり引きずってたらしく、僕にアレを見せて、女子としての魅力を再認させる。
その上で「魅了」の洗脳魔術で僕を傀儡化する……そんな計画だったらしい。
もうね……どこからツッコんで良いのか解んない。
毛が生えるとか、生えてないとか、そう言う問題じゃなくて、僕的にはレインちゃんは、アウトオブ眼中だっつの!
そんな強盗に便乗してまで、要求するような事なのかと思うのだけど……。
彼女にとっては、とっても重要な事になってるらしかった。
先程も、今こそ、その目に焼き付けろーとか言いながら、スカートたくし上げて、パンツに手をかけるとか、やらかしてくれたので、シスターコールで、イザリオ司教を呼び出して、連れて行ってもらった。
なお、今頃……教会の地下の反省房で、今後やっちゃいけないことを列挙して、もうやりませんと誓う反省文を延々と何枚も書かされてるらしい。
……地味にひどい拷問だ。
少しは見直してたんだけど……レインちゃん、やっぱり駄目な子だった。
大いに反省してほしいものだ。
なお、サトルはあの騒ぎの中、バックヤードで寝てたらしいんだけど。
迎え酒ーとかやって、酔いつぶれ二周目。
こっちもやっぱり、意味が解らない。
……でもまぁ、どっちも責める気はないんだけどね。
「うぁうぁ……。モンジロー、ごめんにゃ! それに御主人様も……御主人様のお店、テンチョーのせいで爆発しちゃったにゃ……ごめんなさいだにゃーっ!」
テンチョー、土下座中。
まぁ、誰が悪いんだって言われると、なんとも言えない。
強盗も話を聞く限りだと、限りなく難民って感じだし……。
帝国の亜人弾圧に耐えかねて、決死の脱出行……仲間を失い、財産も失い、無一文でやっとの思いでここまで辿り付いたものの……。
職業斡旋所の登録料が払えなくて、絶望した挙げ句、自棄になっての立て籠もり強盗。
……経緯としてはこんな感じらしかった。
なんと言うか、やるせない。
そんなもん、僕なりパーラムさんなりに、言ってくれりゃ、難民認定って事で、一時金の支払いとかもやってるし、難民収容施設だってちゃんとあるんだから、なんとでもなったのに……。
実際問題、ロメオでは、難民はむしろ積極的に受け入れる方針で、ちゃんと手続きを踏めば、国民として受け入れて、市民証の発行なんかもしてくれるし、それなりの支援策なんかも用意がある。
ドランさんなんかも元を正せば、帝国から落ち延びてきた難民だし、むしろ人手が足りないってボヤいてるくらいだから、帝国からの同胞なんて言えば、即座に受け入れてくれただろうに……。
勝手に絶望して、短絡的な犯行を起こして、バカ騒ぎになって……。
なんと言うか、つくづくやるせねぇ……。
と言うか、これは執政者側たる僕らの落ち度って気がする……。
親衛隊の子達の対応も、こっちの世界では常識的な対応で、手柄欲しさに先走ったってのは否めないんだけど。
本来、指揮を執る立場の僕が入院してて、失点を挽回したかったとか言われちゃ、何も言えない。
とりあえず、色々と頑張ってくれたのは事実だから、その点は評価したいところだった。
先程まで、三人娘と親衛隊の子達が団体で僕の所に報告に来て、揃って、怒られるーって感じでビクビクしてたんだけど、笑顔で皆、頑張ったね! って返したら、何故か皆、ヘロヘロになってた。
とりあえず、労いにサントスさんとこで食べ放題コースを手配して、楽しんでこいって言っといた。
でも、ラトリエちゃんや他に数人、下だけジャージ姿だったんだけど、なにがあったんだろう? 気になる。
絶妙にダサかったから、本人達に聞いてみたけど、皆曖昧な恥ずかしそうな笑みを浮かべるだけで、何があったか教えてくれなかった。
結局、強盗犯については、北方鉱山に鉱山奴隷として、無期限収監される事になったらしい。
パーラムさんやアージュさんが話し合った結果、そう言う事になったそうな。
半ば終身刑に近いような重罰ながらも、情状酌量の余地もあるから、そのへんが妥当と言う話だった。
僕としてもさすがに、お咎めなし……という訳には行かないと考えていたから、そこは頷いといた。
こう言うのは、きっちり処罰しないと、模倣犯が出たり、犯罪者に舐められるからね。
もっとも、鉱山奴隷と言っても、鉱山は割と万年人手不足で、貴重な労働力なので割と待遇はいいらしい。
三食昼寝付きで、12時間労働……週イチで休日もあって、少ないながら給金も出る。
……ちょいブラック程度で、むしろ僕より、待遇良くね?
僕なんか一日16時間くらい働いてて、休みなんて無いよ?
……そんな事も思ったりしたのだけど。
少なくとも、無職でジャングル放浪してるよりは、遥かにマシなんじゃないかって気がする。
実際、本人も帝国で鉱山掘ってた時と変わらないし、むしろ待遇としては、贅沢すぎるんじゃ……みたいな事言ってたらしいけど……。
鉱山採掘の現場環境は、僕なんかが思ってる以上に過酷で、頑丈なドワーフなら割と余裕だけど、まともな人間は数日でギブアップするか、ぶっ倒れるのが、常なんだとか……。
いずれにせよ、犯人の処罰は確定している。
これ以上、僕も口出しも手出しもしないつもりだった。
まぁ、本来なら賠償請求くらいするべきなんだろうけど、文無しで強盗に走ったような奴に金払えっても酷な話。
だから、そこら辺は不問にする……恨み節とか憎しみだのそんなのは、どっかで断たないと切りがないのだからね。
とは言っても、目の前で土下座中のテンチョーの処分をどうするかが問題だった。
同じく、犯人と同調したレインちゃんは、地下室で反省文書きの刑に処されてるから、もうこのまま水に流す。
イザリオ司教から解放されたら、再び僕の仲間として、復帰させるつもりだった。
犯行の動機も、僕に毛を見せたいとか意味の解らないものらしいのだけど、もう忘れる!
まぁ、結論から先に言うと、テンチョーに罪を問うとか、ありえんのだけどね。
僕の立場上、皆を納得させるだけの理由ってもんを考えなきゃいけないのだよね……これが。
ホント、笑ってる場合じゃないんだけど……もう笑うしかないだろ、こんなのっ!




