閑話休題「テンチョー密着24時!」⑪
現状、コンビニ村の最大戦力が彼女達親衛隊……初陣っぽいけど、良い感じに指揮官と参謀って感じで役割分担してて、お互い認めあって……尊い仲でござるなぁ……。
ポイント稼ぎとか言ってるけど、これは頼もしい助っ人っす!
「和歌子姐さん、どうもあの子らがコンビニ周りを取り囲んでくれるみたいっすよ!」
「うぇ、あの子ら……例の使えなさそうなお嬢ちゃん達じゃない……。取り囲むって……要らないコトして刺激しなきゃ良いんだけど……」
「大丈夫っす! あの二人は別格……会話を聞いた感じだと、ちゃんと考えてるみたいだし、自分達が使えないって解った上で、出来る範囲のことをやろうとしてるみたいっす! 某達だけでどうにかするのはキツそうだから、ここは連携するべきっす!」
「そ、そうね……。にしても、あんな若い子達があんな剣とか持って……戦場に出るってこと?」
「まぁ、あの二人はタカクラのダンナの嫁さんでもあるし、そんな余程のことがない限り最前線とかは出ないと思うっすよ?」
「そいや、なんか新しい嫁さんがとか何とか言ってたっけ。けど、あの子達……見た感じ、中高生とかそんなじゃないの? 思いっきり子供にしか見えないんだけど……。それで嫁って……犯罪じゃない!」
「まぁ……この世界、15で成人らしいっすからね……」
「そうなの? まぁ、15ともなれば子供くらい作れるしねぇ……。もっともあの年で嫁に出される……となると、さては、政略結婚ってヤツか……。オーナーも色々大変だわ。まぁ、実際、優良物件って奴だしね……オーナーって……。まったく、もっと前に唾つけとけば良かった……。今更だけどね」
「某、和歌子ネキみたいな女性も大好きっす! 和歌子姉さんも、負けてないっすよ! 」
「あ、あたしはオーナーとはそう言うんじゃないし……いいとこ、愛人ポジ? って要らないコト言わせんなっ! この野郎っ!」
和歌子さんの容赦ないエルボーが某の脇腹に決まるっ!
「おぶぅっ!」
……某、デフォルトで大抵の攻撃を無効化するシールドがかかってるはずなんスけどね?
なんか余裕で、ダメージ受けたっすよ?
「そこの二人! 速やかにお店から離れてくださいっ! 他の野次馬の方々も……コンビニから離れてっ!」
……和歌子姐さんの一撃で、同じく某のデフォルト魔法、認識阻害が崩れたみたいっす。
さすがに、見咎められたようっすな……。
「あ、ごめん。隠蔽かけてくれてたんだ……やっちゃった」
「ええっすよ。ひとまず、某が行くっすから、和歌子の姐さんはそこで待ってるっす!」
うん、和歌子姐さんは伏兵として、ここで伏せててもらうのが良さげっすからね。
ここは某が対応するっす!
「あー、えーとリスティスちゃんにラトリエちゃん。ご苦労さまっす!」
「……どちら様で? あ、そこで止まってくださいねー! 怪しいお方!」
リスティスちゃんを守るように、ラトリエちゃんが笑顔で前に出る。
でも、笑顔なのに目は笑ってない! 某、露骨に警戒されてるっす!
「某、怪しいお方じゃねぇっす! その名も、坂崎紋次郎っす! タカクラのダンナの盟友にして、女神の使徒っす! 恐れ入ったか、てやんでぇっ!」
「め、女神の使徒? え? こんな貧相な方が……いえ、すみません! ついうっかり、本音が……」
「そう言えば、先程「チュルっと」くれた方ですよね。その節は助かりましたが……貴方、女神の使徒だったのですか? 使徒モンジロウ……聞いたこと無いんですけど……」
「某、非公認使徒っすからね。その存在自体を秘匿されたいわば、女神様の秘密兵器っす!」
こう言うの……方便って言うっす!
間違ってないのでござるよーっ!
「おっしゃってる事は、とっても胡散臭いけど、魔力の桁がおかしいってのは解りますし、普通の方じゃないのも……。まさか、使徒様にご助力いただけるのでしょうか?」
「ご助力するっすよー。某もこのコンビニがないと困りますし、テンチョーさんは某にとっても、大切な方ですからな……。ひとまず、お二人の手際、そこで見てましたし、会話も聞かせてもらってたけど、感服したっす!」
「そ、それほどでも……ですわ。えーと、そうするとさしあたって、状況説明は不要と? これだけ離れてて、会話なんて良く聞こえましたね……ホントに解ってます?」
ラトリエちゃん……イチイチ、棘があるッスよ?
某、かなしぃ。
話してる間にも、続々と親衛隊の子達がやってきて、周囲に整列していく。
リスティスちゃんが次々と指示を出して、壁にロープかけて、屋上によじ登ったり、でっかい盾とか持って、裏口を固めていく……なんとも手際が良い。
一際動きがいいのは、青い制服……どうも、リスティスちゃんの所の隊員の子達みたいっす!
ワタワタしてる赤服の子達とは対照的っす。
さらに、ロープと支柱を抱えた商人ギルドの人達がやってきて、野次馬の人達を強引に下がらせていく。
どうも、パーラムさん達も到着したみたいっす。
「ああ、どうも……とんだ騒ぎになってしまったようで、遅れて申し訳ない。リスティス嬢、貴女が現場指揮官と言うことでしょうか?」
「これはラムゼフォン男爵! 申し訳ありません、我々が留守居役を仰せつかっていたので、つい仕切ってしまってました。男爵にこの場の指揮権を移譲いたしましょうか?」
「いやいや、構わないよ。私は所詮、民間人だからね。こう言う荒事ともなると、軍関係者の君達が仕切るのが適任だ。マルステラ公爵の令嬢ともなれば、この場の誰もが認める最高位の方……ですからね。ひとまず、野次馬対策くらいなら、我々に任せてもらって構いませんよ」
「ありがとうございます! それと現時点では、タカクラ閣下にはご内密にお願いします。もちろん、無事に解決したら、事後報告いたしますが……」
「うん、それがいいだろうね。こんな事で怪我人の閣下を引っ張り出すなんて、我々の無能を晒すようなものだ。アージュ様とクロイエ様が公務で王都に向かわれたのも、把握してるよ。こうなってくると、公爵令嬢も責任重大だとは思うけど、近衛から指名が来るほどの君なら、この事態も無事に解決してくれると信じてる。必要な物資や機材があるようなら、言ってくれればこちらで手配しよう」
「はっ! ご協力に感謝を! 我々も皆様のご期待に添うべき、鋭意努力いたします!」
……某、完全に蚊帳の外っすなぁ……。
「あのー。とりあえず、親衛隊の皆さんには犯人の注意を引いててもらえれば、某が中に侵入するっす。中入っちゃえば、何とかなると思うんっすよ」
まぁ、某たぶん、爆発に巻き込まれても髪の毛がパンチパーマになるくらいで済むっす。
某はおもしろ時空の住民……ですからなぁ。
んな、マジにならんでも、某に任せてくれりゃあ、チョチョイのチョイのチョーイっすよ。
「おや、これはこれは……モンジロウさんではないですか。けど、貴方は使徒とは言え、争いを好まない文化的な方と聞き及んでおります。こう言う荒事向きとは、とても思えないのですが……。私も、今回は裏方に回るつもりですし、手持ち無沙汰なら、我々の手伝いでもしてもらえませんか? 後々、クロイエ陛下やタカクラ閣下へ報告する際に、色々資料があればスムーズに説明できるかと思いますので、今の状況を絵にして記録されるとかどうでしょう?」
「そうです! いいですか? 私達はこう言うときこそ、先頭に立って、人々を守るべく日頃から訓練しております。この場は私達にお任せください!」
遠回しにお前、引っ込んでろって言われたっす……まぁ、しゃあないっすねぇ。
某、実績も信用もない……単なる変人とでも思われてるんでしょうねぇ……。
「確かに、通りすがりの部外者に状況をややこしくされても、困りますからね……。リスティスさんは、ラムゼフォン男爵と相談して、部隊展開や野次馬対策をおねがいしますねー! ささ、モンジロウ様はこちらへ……わたくしが対応させていただきますわね」
ラトリエちゃんが某の袖を引いて、二人から引き離す……あれー?
「とりあえず、方針としては、平和的にお話し合いなんスよね? 無慈悲スナイプとかさすがにあんまりだと思うっす!」
「そうですわね……本来は、それが早いんですけど、現実的じゃありませんからね。なので、まずは、完全包囲して、いつでも強行突入出来るとハッタリかまして、降伏勧告……ですわね。まぁ、持久戦に持ち込めば、向こうもそのうち力尽きるでしょうからね。一応、籠城へのセオリー通りの対応ですわ……何かご意見などありますか? あ、モンジロウ様がおっしゃっていたように、単身突入ってのもなしですからね。リスクが大きすぎると思いますわ。とにかく、余計な事はしない! わたくしとのお約束……いただけませんか?」
手を握ってくれた上で、満面の笑顔! トドメとばかりに上目遣いでじっと見つめるとか、完璧やないっすか!
おまけに……言ってることも、正論すぎて反論の余地もねぇっす!
「……ケチのつけようがないっす……ううっ、解ったっす! 要らない事はせずに某、すみっコぐらししてるっす!」
「はい、あとはお任せを! リスティスさーんっ! 部隊展開も終わりつつあるみたいなので、まずはわたくしの台本通り、ファースト・コンタクトを試みてください」
そう言いながら、ラトリエちゃん……某の手を離すと、振り返りつつハンカチで、手をフキフキと……。
おまっ! フォークダンスのときの女子かよっ! 人のトラウマえぐるなおーっ!
ちょっと笑顔と上目遣いでドキューンとやられかけたっすけど、お前の本性見たりっす!
……こうなったら、後でラトリエちゃんモデルの主人公が、凌辱される薄い本でも描いてやるっす!
けど、蚊帳の外とか寂しいので、状況観察は続けるっす!
親衛隊の展開状況は……まずコンビニの屋上、リスティスちゃんの青服隊が制圧済み。
軽装ながらも、4人くらいが待機中。
裏口の方にも同様、青服部隊……同じく4人組だけど、こっちは鎧と大盾装備の重装備。
つっかえ棒やらバリケード作って、裏口を封鎖してる様子。
正面には、セルマちゃんの赤服の子達と、強制動員された冒険者が整列……人数は20人くらい。
皆、完全武装で大盾やら持ってたり、中には甲冑まで着込んでるのがいて、威圧感ハンパない。
ラトリエちゃんの黒服部隊は……付近の建物の屋根の上に、二人セットで伏せて待機してるような感じっす。
この子達……顔まで覆面で覆ってるし、黒いマントで全身覆ってて凄く無機質な感じ。
黒いセーラー服風のデザインのはずなのに……むしろ、おっかないッス! どうして、こうなったの?
それはともかく、状況も判然としてきたっすな!
強盗を支援するような動きも、別働隊とか動いてる様子もなし……っと。
まったく、ラトリエちゃんも甘いっすなぁ……真っ先に警戒すべきは、これが陽動である可能性っす!
どうでもいい騒ぎを起こして人目を引いて、こっそりとド本命に仕掛ける……基本でしょ。
もっとも、某の千里眼と索敵スキルなら、そんな悪巧み、事前に看破なんスけどね!
ふふっ、幸い……これは単独犯の場当たり的犯行……しょうもねぇ話っす。
しっかし、こうやって俯瞰視点で動きを見てると、親衛隊の第二と第三小隊は、そこそこ練度高いみたいっすね……。
素人同然とか言ってたけど、嘘ばっかり……なんと言うか、殺る気に満ち満ちてますぞー。
「リスティス嬢、野次馬の退避も完了ですよ。出来れば、全員この場から退去させるのが理想だと解りますけど。皆さん、こう言うお祭り騒ぎは大好きなので、ここら辺で妥協してください」
「上出来だと思いますよ。こちらの部隊展開もほぼ終わりです。思ったより早かったわ。セルマ、皆をここまで誘導……よくやってくれたわね。なんだ、やれば出来るんじゃない」
「が、がんばりました! では……私は下がって後ろでみてますね。それでいいんですよね? アンナさん」
「そうですね。これはお嬢様が最前線に立つような戦ではありません。ここはリスティス様の顔を立てて、我々は後詰めとして、後ろで見守るべきです。けれど、賊が強行突破を狙ってきたら、私達も剣を取り戦う必要がありますので、くれぐれも油断はしないように……」
「わ、解りました! リスティスさん、まずは説得なんですよね? 平和的解決の第一歩ですから、頑張ってください!」
「うん、心得た! では……始めます! あー、あー、犯人に告ぐ……この建物は、我々女王親衛隊が完全に包囲した。逃げ場はない、抵抗も無意味だ。だが、我らにも慈悲はある……何か要求があるなら聞こう! 返答すら無き場合は、交渉不可の魔物同様の存在だと判断し、強行突入の上での殲滅戦も辞さない! 今から十数える……交渉の意思があるなら、はっきりと示すがいい!」
……あれー? 穏便にって言ってませんでした?
なんで、いきなり最後通牒みたいなノリなんスか?
セルマちゃんも、行った矢先から、平和的解決? 何それ食えるの? みたいな調子のリスティスちゃんの言葉に絶句してる様子。
「うるせぇっ! 誰が魔物だ! やれるもんならやってみろっ! コレが見えねぇのか……皆、まとめふっとばすぞ!」
「それがどうしたっ! そんなチャチなおもちゃで脅しになると思っているなら大間違いだ! いいから、まずは貴様の要求を言え! おおかた、タカクラ閣下を暗殺でもしに来たのだろう? 残念だったな、閣下はそこに居ない……まんまと当てが外れたようだな。つまり、貴様の目的はすでに潰えた……貴様は犬死が確定している! むしろ、遺言があるなら聞くぞ? 私は貴様のような卑怯者を長生きさせてやるほど優しくな……何をするっ! まだ話の途中だぞ……むがーっ!」
ラトリエちゃんの副官らしき、黒服の子がリスティスちゃんの口をふさいで、後ろへ引きずっていく……初っ端から、台本ガン無視で犯人へ死刑宣言とかないわー。
これのどこが説得だと小一時間……。
と言うか、リスティスちゃん……思っきり脳筋少女だったのね!
そんなのを交渉役にするって、その時点で駄目なような。
と言うか、リスティスちゃんの中では、あのドワーフは暗殺者って設定になってたんですな。
そりゃ、無慈悲なのは当たり前っすな……けど、あくまでリスティスちゃんの中では……なんすけど。
ちょっと、自分ワールドかっ飛びすぎなんじゃないっすかねー。
ラトリエちゃん、笑顔で青筋ビッキビキ。
「ああもうっ! 結局わたくしが貧乏クジ引くってことね……。はいはい、やればいいんでしょ……やれば……」
どうやら、彼女が交渉役になるつもりみたいっすねー。
さてさて、お手並み拝見っすな!




