閑話休題「テンチョー密着24時!」④
「……いずれにせよ、今となっては詮無きことか。まぁ、よい……そう言う事にしておいてやろう。まったく……貴様もテンチョー殿も、この所、妙な行動が目立つようだが……今度は何を企んでおる? そもそも、テンチョー殿も三日もコンビニを空けるとは……一体、何処まで行っておったのじゃ? ケンタロウも心配しておったぞ?」
「テンチョーは、悪い怪物退治に行ってたのだにゃーっ! 今回もかるーくボッカーンとやっつけてきたのだにゃーっ!」
「なんじゃそりゃ? いや、貴様に説明させようなどと思った我が悪かった。モンジロー……貴様は何か知らんのか? 貴様の方がまだ話になりそうじゃ」
「すんませんなぁ……アージュさん。某達女神の使徒って、たまに女神様から直々に指令が下りてくることがあるんスよ。某達は女神クエストって呼んでるんスけどね。今回は……聖国に林立してる教皇様の一人が封印魔獣を蘇らせちゃって、ちょっと手に負えないことになってたらしく、女神様がテンチョーさんやっつけちゃってーって、ご指名の上で、泣きついて来たらしいんすよ……」
「ちょっと待てぃっ! ふ、封印魔獣が蘇ったと? まさか、軽く世界の危機とかそんなんだったのではないのか?」
「そうっすねー。確か塩柱の魔獣……でしたかな。超巨大な目ン玉みたいな奴っす。むしろ、アージュさんの方がそう言うのって、詳しいんじゃないっすかね?」
「巨大な目玉とな? であれば……おそらく『眠らずの塩の瞳』じゃろうな。視界に入るもの、生きとし生けるもの全て塩の柱に変え、不毛の大地と化す恐るべき魔獣じゃ……。まさか、あの化け物を相手にしとったのか……。やはり、テンチョー殿……相変わらず、デタラメよのう……一体、どうやって倒したのじゃ? あれは見られた瞬間、塩にされてしまうからな。まともに戦ったら、正面に立つだけでアウトのはずじゃ」
「山の上から、気付かれないように後ろから光の矢をバンバン撃ち込んだら、あっさり動かなくなったのだにゃー。けど、お塩の山が出来ただけで、何もお宝手に入らなかったのだにゃ……。女神のやつに騙されたのだにゃ……」
ふむ……戦術的には、アウトレンジ飽和攻撃っすかね。
確かに、見られただけでアウトの化け物を倒すってなると、鏡の盾使うとか定番だけど。
後ろから、身も蓋もなく猛爆撃……とかやっちゃうのが早そうっすね。
迷わず、その戦術を選択する辺り、さすがですなー。
と言うか、今度、新作のネタに使わせてもらうっす。
女神の使徒の戦いの実話コミカライズ! 女神様も大賛成っすよー。
「やれやれ、伝説の魔獣もテンチョー殿にかかっては形無しじゃのう……。聖国もしばらく塩には困らんじゃろうし、あの国のグダグダも少しはマシになるかもしれんな……。まぁ、お主に言っても詮無きことじゃがな。しかし、それよりもモンジロー……貴様にも聞いていいか?」
「某が答えられる範囲なら……っすけど」
「何故、お主があの娘達に肩入れするのかが解らん。アレらは政治的な都合で当てがわれたケントゥリ殿の嫁じゃぞ? お主が肩入れした所で何の得もないのではないか……なんぞ、邪な事でも企んでおらんじゃろうな?」
「滅相もないっす! 某、なるべく皆、笑顔で円満解決に導きたかっただけっす! 某はダンナと同じく、この世界を笑顔に満ち溢れた世界にしたい……そう思ってるッス!」
アージュさんが某のことをじっと見つめる。
某、この件に関しては、一切の下心なし! この一点の曇りのない目を見るっす!
「アージュよ……私もこのモンジロー殿は本気で言っていると思う。ケンタロウからも同じ言葉を聞いた……それは確かな事なのだろう。私もモンジロー殿の事を少し誤解していたかも知れないな。ところで、アージュよ。一応、聞くがお前……どんな処分を下そうとしていたのだ? 私はケンタロウが許すと言った以上、無罪放免として、許すのが道理だと判断したのだが……」
「クロイエ、貴様のその判断は、甘すぎるのだ……それでは、示しが付かんであろうが。ロメオでは、貴族が罪を犯した場合、己が自身で犯した罪を裁く……それがリョウスケ殿が決めたルールであろう?」
「具体的には……? たしかに父上が残した我が国の法典ではそうなっていたが……あまりに象徴的過ぎるのではないか? 『貴族たるもの己が罪は自らを以って裁くべし』これでどう判断しろというのだ……法務関係者からも、改善すべきではないかと意見が出ているぞ?」
「近年では、自らの妻を毒殺したゲルマオ子爵の例が参考になるであろうな。ゲルマオ子爵は、罪の意識に苛まれて、拘束される前に、自決したと言う事に公式にはなっておるがな。実際は、短刀と毒薬を手渡した上で、己が罪の償い方は自分で決めろと言って、一人にしてやったのじゃよ。結果的にゲルマオ子爵は自裁を選び、ヤツと一族の名誉は守られた……そう言うことよ」
「も、もし……ゲルマオ子爵が自裁の道を選ばず、開き直って保身に走った場合はどうなったのだ? そうなってしまっては、誰も子爵を裁けなかったのではないか? これは法として明らかに欠陥だと言わざるを得ないではないか……」
「その場合、ゲルマオ子爵の名誉は地に落ち、その一族にも塁が及んだであろうな……。なにせあの一件は、証拠も証言も山盛りであったからな……おまけに、何の罪もない使用人に罪を被せようと画策するなぞ、言語道断! それで自分を無罪と言い張るなぞ、厚かましいにも程がある。つまり……名誉ある死を選ぶか、不名誉なる生を選ぶか……そう言う話じゃ。である以上、誇りあるロメオの貴族たるもの、選ぶ道などただひとつじゃろ……? 他にも実例はいくらでもあるぞ? 我は実によく出来た決まりであると思うがな。貴様の判断は、その前例を無視した判断と言える……」
な、なんかドン引きっす。
でも、一理あるのかなぁ……誇りと名誉のために、自らを裁き、死を選ぶか、周りを巻き込んで、不名誉に塗れた生にすがりつくか……。
けどさー。
これって、そんなガチガチ、ギスギスな展開にするような話じゃないっしょ。
やっぱ、某が介入して正解。
リスティスちゃん辺りだと、洒落抜きでそんなの迫られたら、ハラキリとかやっちゃいそうだしねー。
某、常々この世界の皆って、マジ過ぎると思ってたんだよね。
もうちょっと肩の力抜いてさ、面白おかしく生きたって良いと思うんだ。
そう言うのもあって、月の模様書き換えたりした訳なんすよ……って言いたいけど、あれは某もついカッとなっちゃったんだよなぁ。
でも、我ながらあれは最高傑作の部類に入ると思うね。
天体規模の作品とかもはや、この世界でも類を見ない偉業っ!
この世界に居るのかどうか知らないけど、宇宙人だってびっくりさ!
皆、あの月を見たら、マジでやってるの馬鹿らしくなると思うんだ。
実際、帝国の外道大帝さんとか、あまりの偉業にションベン漏らして、立ったまま気絶して引きこもっちゃったらしいしーっ!
猫耳が世界を救っちゃったっていいじゃないか。
某もこの世界、そんなに長く居るわけじゃないけど。
この世界は、大好きなんスよ。
「まぁ、エエじゃないですか。アージュさん、テンチョーさんの裁定に託すって言ったのは、アージュさんっすよね? そもそも、本人ピンピンしてて、全員まとめて許すって言ってんだから、誰も悪くない……それでええやないですか」
「まぁ、確かにそうじゃな……アヤツも寛大なんだか、大物なんだか……。被害者が不問にすると言っている以上、これ以上、我がゴネても詮無きことか……。まったく、貴様も年中ヘラヘラしておるくせに、なかなかの食わせ者じゃな……。あれだけの実力がありながら、毎日毎日、ダンジョンに篭って、いかがわしい絵を描くばかり……ほんに女神のやる事はさっぱり判らんわ」
「まぁまぁ、某もちゃんといかがわしくない絵も描くんでござるよ。『瞬間描画』!!」
某、ちゃちゃっとこの場の三人、テンチョーさんとクロイエ様、アージュさん、それとさっきの三人娘が、6人ズラッと並んで、皆で焚き火の前で輪になって手を繋いで踊ってるディフォメ画をスケブにサラッと描きこむ。
下描きっすけど、ちゃんと服も着てるし、いかがわしくもないっすよ。
「うにゃーっ! モンジロー凄いにゃっ! これ……テンチョー達だにゃ? あの三人もいるにゃーっ!」
「これはいいな……。つまり、モンジロー殿は我らもこのように皆、笑顔で仲良くしろ……そう言いたいのだな?」
「と言うか、皆さんってば、全員ダンナの奥さん……家族なんスよね? 家族皆が、仲良きことは良きことっすよー! さすが、クロイエ様っす! まさに我が意を得たり! 御意にござるっ!」
「ふむ……確かにそうだな。しかし、モンジロー……我はこんなすっとん胸ではないぞ? これはないな……やり直しを要求しようではないかっ!」
……確かに今日のアージュさんは、それなりの胸があるっす。
サイズはCカップくらい? おかしいっすね……アージュさんといえば、すっとんすーんなAAくらいのド貧乳ーだったはずなんスけど。
これ……絶対、なんか盛ってると思うんスけど……。
まぁ、要らないことは言わないっす。
某も少しは空気読めるようになってきたんスよ?
けど、今の絵も本音を言うと、全員全裸にしたかったっすーっ!
でも、それやったら不敬罪つって、そこのロリババァに某、処刑されるっすからなぁ……。
はいはい、消し消し、修正っと。
アージュさん、巨乳バージョン……つてもSD絵じゃ、気持ちくらいしか変わんねっすけどね。
フヒヒ、巨乳のじゃロリババァって、アンタどれだけ属性盛るつもりなんスか?
「コレでいいっすかね? 大丈夫っす、タカクラの旦那は貧乳やロリも割といけるみたいっすよ? だから、別に見栄とか張らんで、ナチュラルで勝負すりゃエエんですよ」
「な、何を言うかっ! さ、最近になって突然、胸が育ちだしたのじゃっ! そ、そうじゃ……我はもともとバインバインじゃったのじゃが、我が身に施してあった封印を解除してだな……おいっ! モンジロー! 我の話を聞けっ!」
んな、数日とか一週間でAAがCとかまで、育つわけないっすー。
そんなインスタントバストとか、世のひんにゅーさんが泣いて喜ぶでしょ。
ダンナもどうせ、気にしないっすよ。
あの人、ひんにゅーも巨乳も等しくイイっ! って言ってるような人だし。
でも、つるペタロリは、萎えるみたいなんすよね……。
……なんか、トラウマでもあるんすかね。
もっとも、ちょろ毛はあり……旦那の趣味とか某、完璧に把握してるんスよ。
まったく、いい趣味しとりますなー。
「まぁ、大丈夫っすよ。クロイエ様もアージュ様も全然ありってダンナも言ってましたからね。クロイエ様に至っては、芸術作品とまで絶賛しとりましたわ」
「そ、そうなのかっ! それは良かった……いかんせん私も所詮は10歳の子供だからな。キリカのような女性らしい体型にはほど遠い……。もしや、ケンタロウに女として見られていないのではないかと、心配していたのだが……」
「ご心配なく……陛下も5年もすれば、バインバインのナイスボディになれるんじゃないっすか? 焦らなくても大丈夫っすよー」
ホント、裏山けしからん話っすよねー。
こんな将来美少女化間違い無しの美幼女の婚約者なんて……。
某の所にも、空から全裸猫耳ロリ少女とか落ちてこないかなー。
「そ、そうかな? た、確か揉めば大きくなるとキリカも言っていたからな! よしっ! これと牛乳を飲むのを今後の日課にしようっ!」
そう言って、自分のすっとん胸をモミモミと……こ、これは見てても良いんスかね?
某、横向いてるっすっ!
「キリカの言うことは真に受けんほうがええぞ? まぁ、ええわい……そう言う事なら、とりあえず、三人娘も誘って、昼飯でも食べて、タカクラの所に見舞いにでも行くとするかな……どうも、我はあの三人からは恐れられておるようであるからな……。モンジロー、貴様も来るか? 最近は貴様も少しはまともになってきたようであるからな……色々気を使ってもらったようであるから、それくらいはさせろ」
「うーん、某、女子ばっかのお食事会に野郎一人で紛れ込む勇気はないっすよ? ちょっと旦那に相談したいことがあるから、先にお見舞いに行くっすよ。旦那も暇だっつってたんで、某の新作本、差し入れるんすーっ!」
うん、どう考えても某、居場所ないっす!
まぁ、新作ってもエロが付く方なので、女子が居ない所で渡すのが正解っすよね。
水着デザインの件もあるし、ダンナも入院とか暇でしょうからねぇ……野郎の入院ともなれば、友としてはエロ本の差し入れ……これは、定番っしょ!




