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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第五章「結成、クロイエ親衛隊!」

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第四十六話「まとめの時間」③

「僕はいかんせん、歩いて通ったこともないから、どんな道なのか良く解ってないからね。こうやって、実際に旅して苦労したって話を聞くと、問題点もよく解る。これについては、僕達が悪かったね」


 まぁ、これはむしろ貴重なデータとも言えるよね。

 

 全くの初見の人達がどんな問題にブチ当たるかってのは、皆の話を聞いてても、案外見えてこないんだよな。


 僕らとしても、ラキソムからコンビニ村までの区間で、行き倒れや遭難者をゼロにしたいと言う目標を掲げてて、毎日のように警備隊の人達やミャウ族の巡回を出してたり、街道の整備も進めてるんだけど、やっぱり様々な理由で事故が起きてしまっているのが実情なのだ。


 やはり、遭難したり、行き倒れになるのは、初見の人達に集中してて、問題視されてはいたんだ。


「そうじゃなぁ……ひとまず第一小隊の奴らは後ほど、レポートを提出するのじゃ。些細な事でも構わんぞ。困ったことや、ここをこうすれば楽なんじゃないかと言うアイデアなんかもあれば、遠慮なく記せ」


「なるほど、確かにこの森は交通の要所にも関わらず、指折りの難所とも言われてますからね。これから冬になると北方の山越えルートは閉ざされる以上、この道の重要性は増しますからね。初見でエライ目にあったわたくし達の意見は重要だと……さすが、アージュ様ですわ」


「まぁ、そんなに持ち上げるでない。ところで、ラトリエ、リスティス、第二と第三小隊の他の奴らはどうしたのじゃ? まさか、隊長不在のまま、とりあえず、後を追って来いとか無茶振りしとらんだろうな?」


「いえ、第二小隊も第三小隊もやはり、頂いた馬車の半数が損耗し、それに加え隊員の疲弊も激しく、行動限界と判断しました。ひとまず、皆体力が回復するまで、中間ポイントの野営地で待機するように厳命してきました。ですが、正直、都会育ちの私達の限界ってものを思い知りました……私も含め、再訓練の必要性を痛感しております」


 リスティスちゃんの言い分はまぁ、納得かな。

 行動限界だと見極めた上で、安全策を迷わず選んだ判断力は評価に値する。

 

 野営地なら、野盗やらゴブリンの襲撃の危険も少ないし、慣れない過酷な森での集団行動ともなると、安全な場所にまとまった人数を残して、救援や体力の回復を待つってのは、現場の判断としては最善と言える。

 

 気を使って日本製の馬車を送ったけど、第二、第三小隊でも車両トラブルとなると、もう運用側の問題じゃないなぁ……。

 こりゃ完全にこっちの不手際だった……悪いことをした。

 

 残りの第三陣は、ラキソムで出発準備中らしいから、今からでも、手慣れてる乗合馬車でも手配した方が、まだマシかも知れないな。


「なるほど、では君等二人だけ先行した理由は? これは単なる移動ミッションだから、全員無事にたどり着くのが最優先。隊長二人だけが先に来たところで、失敗と判定せざるを得ないんだが」


「はい、わたくし達二人は、自前の乗馬を同伴させていたので、部下達からもせめてわたくし達だけでも先に行くよう勧められて、皆の好意に甘えることにしました。実際、救援を呼ぶ必要もあると判断したので……部下を見捨てたとか思われているようであれば、不本意ですし、ミッションとしては、失敗だと言うのは承知しております」


 なるほどね……自前の馬なんて持ってたのか。

 用意が良いと言うか……愛馬持ち込みとか、さすがって感じだよ。


 まぁ、そう言う事なら、最良の判断かな。


 任務失敗と言う不名誉に構わず、先行して救援を求めるなんてのは、名を捨て実を取ると言う判断に他ならない。

 名誉や外聞に囚われがちな貴族の……それも世間知らずの令嬢に出来る判断じゃない。


 なるほど、この二人は指揮官としては、十分以上の判断力を持ってるみたいだ。

 上出来じゃないか。

 

 ひとまず、第二、第三小隊の残りのメンツは……クロイエ様のデモストレーションも兼ねて、ひとっ飛びしてもらうか。

 でも、20人ともなると少しキツイかな? ギリギリ……だろうな。

 

 便利なのは確かなんだけど、もう少し負担を軽くさせてあげたいところなんだよねぇ……。


 それに、異世界転移の方も本格的に実験進めたいし……幸い、日本側も全面的に協力してくれるみたいだし、急がなくていいよって、言ってくれてるんだけどね。


「なるほど……判断としては、悪くない。んじゃ、次は、失敗要因の考察をして欲しい。失敗しても一向に構わないけど、次に繋がるようちゃんと反省しないと、同じ失敗を繰り返すだけになってしまう。まず、僕ら側としては、送った馬車に問題があったという点は素直に認める。それ以外の問題点はなかったかな?」


「はい、仰るとおりです……失敗を省みない、それこそ愚行です。まずラキソムまでは、10日で到着と順調だったんですけど……。ラキソムから先があそこまでハードだったなんて……やはり、私達の想定が甘かった……これが一番の問題点ですね」


「そうですわねぇ……。この蒸し暑さに加え、荒れた道、天蓋をひっくり返したような豪雨。馬車も何度もぬかるみにハマって、その度隊員総出での復旧作業……これらで、思った以上に人馬共に消耗してしまいましたわ。実際、旅商人の方達などは天候が落ち着いて、道が安定するまで、しばらく野営地で休んでゆっくりいけばいいとか、アドバイスもしてくれてたんですが……」


「そうですね……旅慣れてる旅商人のアドバイスはちゃんと聞くべきでした。何より、ここの環境が厳しいからこそ、皆の体力が残っているうちに、可能な限り、早めに抜けるべきだと判断し、無理にペースをあげようと行動時間を伸ばしたのも失敗でした。結果的に機材の損耗、人馬の疲弊を引き起こし、第一小隊にも結局、追いつけなかった……我ながら情けない結果です」


 リスティスちゃんも、ラトリエちゃんもしっかり反省してるっぽいな。

 一気に進んで、距離を稼ぐって発想も悪くなかったけど、ここでそれは失敗の元。

 

 まぁ、ここまでちゃんと解ってるなら、十分だろう。


 そもそも、確か一週間遅れで、第二陣を出立させたって報告受けてたけど……。

 それで、隊長だけながら、ほぼ同着とは、この二人、相当無茶したんだなぁ。

 

 ちなみに、第一小隊は三日遅延……ぬかるみにハマって、馬車が壊れて……本来なら、その時点でリタイアだと思うんだけど……。


 残りの行程を歩いてってのは、ちょっと根性あるとしか言いようがない。

 50kmともなると慣れた旅人でも、休み休みで一週間くらいかける人だってザラに居る。

 

 もっとも、ドワーフの血を引くセルマちゃんは他の子よりも明らかにタフで、最後まで全員を引率しきって、僕に夜這い仕掛ける元気くらいはあったってのは、さすがにびっくりなんだがね。


 リスティスちゃん達も先行した二人が一日違いで到着してる時点で、十分すぎるほどハイペース。

 初見で、この速さってのは十分に評価に値する。

 

 まぁ、皆、お嬢様達にしては十分すぎるほど、頑張った! でも、ここはお説教のひとつくらいしないとなぁ。


「とにかく、皆、よくやったよ。けど、これだけは言わせてもらうけど。リスティス君とラトリエ君、君等ちょっと頑張りすぎ……。さっきも言ったけど、怪我人とかも出すなって言われてるくらいなんだから、無理しちゃ駄目だ。この森は普通に旅してるだけでも死人が出るような土地なんだ……実際、僕が知ってるだけでも、行き倒れで亡くなった人の数は、もはや両手に余るほどだ。少人数での行動も推奨されてない。その様子だと、夜間行軍やら、女の子二人だけで野営とかもしたんでしょ? その時点で無謀過ぎるっ! 僕が来てから、大分改善したとは言え、この土地を舐めちゃ駄目だ……!」


 図星だったらしく、リスティスちゃんはシュンとしょげかえって、ラトリエちゃんも苦笑してる。


「そうじゃのう……我ですら死にかけたのだからな。森での単独行動は厳禁だと思っておくが良い。もしも、甘く見ておったのであれば、その点は深く反省すべきじゃな」


 ……アージュさんが言うと、なんか説得力半端じゃないな。

 クロイエ様ですら、深々と頷いてるし、ラトリエちゃんあたりは色々悟ったらしく青ざめてる。


 なんせ、アージュさんってレジェンド級の魔術師だしね。

 古い教会のレリーフになってたり、覚書の魔術書が王立図書館に古文書として陳列されるくらいなんだから、半端ないよ。


 そんなのですら、死にかける……ここの環境がどれだけハードか一発で解るだろうな。


「た、確かにそうですね。一番、難有りと言われていた第一小隊が無事に辿り着けそうだと言う話を聞いて、わたくし達も焦っていたのかもしれません。もしかして、セルマちゃん達も割と死ぬような思いしてたりしました?」


「あ、私……体重20kgくらい減りましたよ」


 第一小隊のアンナさんが微妙な顔で、手を挙げる。

 この子、背も低いし、体型自体は普通っぽいんだけど、それで20kg痩せたって……?


「って言うか……今更なんだけど、あなた誰? なんだか見慣れない顔だとは思ってたけど……。セルマと一緒に入ってきたから、副長格かなんかだとは思うんだけど……。一応、隊員の顔は他の小隊でもちゃんと覚えたはずなのに……どうも、見覚えがないとは思ってたのよね」


「そ、そう言えばそうですわね。当たり前のようにこの場にいる事もですが、さっきもまがりなりにも侯爵令嬢のわたくしに、平然と突っかかってきたし……貴女、いったい何者なのです?」


 そう言えば、アンナさん。

 自己紹介まだしてなかったんだっけ……。

 

「そう言えば、自己紹介しそびれてましたね。私……アンナ・オルスワッドですよ。デブ娘とかドワーフ女だの、よくからかわれてたんですけど、この遠征ですっかりスリムになりました。お父様が見たらびっくりするでしょうね。ちょっと嬉しいんですが、制服がガバガバになってしまって、ちょっと困ってます」


 そう言って、ニコニコとご機嫌そうなアンナ嬢。

 

 ……なんか妙に骨ばった子だと思ってはいたんだけど……激ヤセしてたのか……。

 

 そっか、ドワーフ女子って痩せるとこんなになるのか……。

 と言うか、ドワーフ女って悪口なのか……ちょっと悲しい現実だな。

 

 フロドアさんとか、ちょっと地味だけど普通に可愛い子なんだけどなぁ……。

 

 けどまぁ……ここにいると、女の子たち皆、体重がやばいって言ってるし、順当に元の体型に戻るような気もしないでもないんだけど。

 

 アンナさん、ちょっとお昼は、遠慮なく食べてもらうよ?


「ええっ! オルスワッド嬢? 嘘でしょ? ええっ? 思いっきり別人なんだけど……セルマちゃん、この子大丈夫なの?」


 ラトリエちゃんが素っ頓狂な声を上げてる。


「彼女もドワーフ系氏族なんで、メンバーの中でも一番タフで一番頑張ってましたからねぇ……。でも、確かにちょっとホッソリしましたよね?」


「ホッソリとか、そんなレベルじゃないですって! ダイエットったって、限度がありますって!」


「ああ、でも、きっとすぐに戻りますよ。ここのご飯の美味しさ半端ないですよー?」


「ですねぇ! あ、旦那様……昨夜はお弁当ありがとうございました! とっても美味しかったですよ?」


 コンビニ弁当とお菓子支給済みの第一小隊の面々も口々にご飯やお菓子の美味しさを語りだす。

 

 ……と言うか、何この騒々しさ……一気に喧騒みたいになったぞ。


「ああ、うん、静粛に……。私が言うのもなんだが……。若い女子が集まって、好き勝手に話し出すと凄まじいものなのだなぁ……」


 クロイエ様が呆れたようにつぶやくと皆、ピタッと静かになる。

 

 若い女の子が二人集まると、一人の4倍。

 三人集まると9倍はうるさくなる……そんな話を聞いたことあるのだけど。

 

 今のはまさにそんな感じだった……一瞬で、雑踏にでも放り込まれたような気分になった


 なんであんなので会話が成立するんだろ……?

 つか、10人でこれなら、50人も居たらどうなるんだ?


「であるのう。まぁ、とにかく、貴様らもここと王都の往復の困難さは肌で思い知った……そう言う事かのう」


「ですね……けど、思い知った上で、やはり不思議なのは、あんな困難な道のりにも関わらず、陛下達はそれを数日で頻繁に行き来している……。陛下は一体どうやって……グリフィン便でも、王都からだと、乗り継いでニ、三日はかかりますよね? おまけに荷物と一緒に籠に放り込まれて、割と無造作に運ばれるから、早い代わりに身体もガッタガタになる上に、ゲロゲロに酔いますから、本来人員輸送に使えるものじゃないです。実は前々から、クロイエ様の神出鬼没さは、不思議には思ってました」


「やっぱり、それよね……。私もちょっと意味がわからないって思って、お父様にも聞いたんだけど……。それは例え、身内でも教えられん事だから、二度と聞くな……とか言って、怒られてしまいました……」


 リスティスちゃんも、ラトリエちゃんも、鋭い。


 クロイエ様の動向とかって、王都でも行動スケジュールなんかは極秘指定されてて、いつどこへ行っていたとかそう言う情報は、ロメオの諜報局が不自然じゃない程度に加工した上で、公表されてるんだけど。


 どうも、ラトリエちゃん達は、独自の考察で、その手の欺瞞情報を見破ってるようだった。

 まぁ、そう言う事なら、ネタばらしして良いんじゃないかな?


 ちらっと、アージュさんに視線を送ると、頷いてくれる。


「まぁ、そこら辺は……君達も、陛下の側仕えともなると、嫌でも知ることになるよ。話すと長いし、聞いたら最後、足抜けもままならなくなる。これは実際に見てもらうのが早いですよね……陛下?」


「であるな。そう言うことであれば、少々骨が折れるがお前達の部下たちを、私が直々に出迎えに行くとしよう。だが、ひとまず、この話は後ほどと言う事で、まずはお昼にしようではないか。実は私もそろそろお腹が減ってきてな。お主らもであろう? お前たちがコンビニ弁当の話なぞするから、私も食べたくなってきてしまったではないか……なにせ、私は育ち盛りであるのだからな」


 クロイエ様がそう言って立ち上がると、皆思わず吹き出す。

 その後は、口々に同意する。


 まぁ、そう言うことなら、そう言うことだ。

 食堂直通の遠話水晶を懐から取り出して、サントスさん呼び出しっと。


「……あいよ、旦那かい?」


「ああ、サントスさん。これからクロイエ様とお昼にそっちいくから、席あいてるー? 人数ちょっと多いよ」


「ははっ! そう来ると思って、ちゃんと席はキープしてるぞ。VIP席とテーブル一列丸々空けてある。何食わすつもりなんだ? 客は女の子ばっかりらしいが、やっぱ甘いもんかな? あ、陛下用のスペシャルプリン・ア・ラ・モードも用意してあるぞ」


「さすが、気が利くね。定番のカレーで良いんじゃないかな? 皆、良く食べそうだしねぇ……。第一陣の子達は北方貴族の子達なんだけど、辛いのってどうなんだろ?」


「あいよ、なんだロメオの北方貴族ってったら、我らが同胞も同然の奴らじゃねぇか。連中は寒い時こそ、辛いもんで身体を温めるとか言って、雪の中で唐辛子鍋食ってたりするからな。むしろ、辛いもんは大好物だろうさ。了解だ! さっさと来ねぇと冷めちまうからな……頼むぜ? ははっ!」


 はい、食堂の手配完了っと。

 サントスさんもきっちり先回り手配とか気が利くね。


 しっかし、ドワーフにとって、ロメオの北方貴族ってそんな認識なんだ。

 この分だと、ドランさん達とも仲良くしてくれそうだな。


 そんな訳で、陛下と親衛隊メンバーによる昼食会となるのであったー!

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