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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第五章「結成、クロイエ親衛隊!」

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第四十六話「まとめの時間」②

「ふふ、そこのタカクラ卿が、クーラーと言う空気を涼しくする機械を設置してくれてな。それもあって、我らはここに入り浸っておるのだよ。知っておるかもしれんが、コヤツは異世界からの流れ者でな。その異世界では魔術が無い代わりに機械文明と言って良い高度な文明が発達していてな。魔術のような奇跡を機械の力で実現する……そんな世界なのじゃよ」


「異世界人……噂には聞いてたんですけど。本当だったんですね。彗星のように現れ、またたく間に諸外国の外交官達を一喝し、恐れられるようになった辣腕宰相。その出自には謎が多いって言われてましたけど……と言うか、その異世界って皆、猫耳さんなんですか?」


 ラトリエちゃんが不思議そうに問い返してくる。


「いや、僕のいた世界は、普通に君等と変わりない人間しかいない世界だったんだけどね。こっちに転移したどさくさで、猫耳と尻尾が生えたんだ」


「……意味がよく解りません……」


「大方、女神の気まぐれであろうな……あれの起こす奇跡、いや奇行と言って良いな。それは今に始まったことではあるまい?」


「そうですね。最近も突然月の模様が変わったなんて事がありましたよね。なんだか、猫耳の女の子みたいな模様になっちゃって……聖光教会の方達は、女神の奇跡って言ってましたけど……。全然、意味がわからない奇跡ですよね? 黒の月だって、昔はもっと近くにあったのに、目障りだから邪魔って言って遠くに行かされて……おかげで、天変地異が起こったりした……そんな伝説すらありますからね」


 ……ごめん、それやったの。

 君のチャイナ風メイド服デザインした人なんだ。

 改めて、他人の口から聞くと意味が解らないね……。


 黒の月の話は……なんか、昔話になってるんだっけ。

 聖光教会のセリオ司祭が子供たちを集めて、昔語りみたいに語り聞かせてたから知ってた。


 タイトルは『黒い月の涙』とかそんな感じ。


 黒い月から、不定期に魔獣なんかの核になると言われる魔素が地上に振りかれ、地上の民は盛大に迷惑していた。

 そして、ある日、魔素が原因で神々ですら影響を受けるものが出てきて、彼らは魔神と呼ばれ、神々との争いを始めた。


 もう、嫌! なんとかしてーと言う人々の願いに対して、女神様の取った方策は……?


 なら、根本原因になってる黒い月を遠くに飛ばしちゃえばいいじゃないって調子で、黒い月をはるか遠くへと追いやると言うなんとも短絡的な代物だった。


 遠くへ飛ばされた黒い月はそのあんまりな仕打ちに嘆き悲しみ、流した大粒の涙が地上に降ってきて、大津波が起きたとかなんとか。


 ……もう、聞いてて吹きましたよ。


 突っ込みどころしか無いっ! んな、衛星動かしちゃったりなんかしたら、重力バランスとか狂って、大地震だの大津波くらい起きるよっ!


 お前、軽く人類滅亡させる気かよ……みたいな?

 

 やっぱ、ラーテルム様とか邪神なんじゃねーの? って気もしてくる。

 

 けどまぁ、その魔素対策での抜本的対処って意味はあったみたいだし、黒い月の影響を受けた魔神たちも黒い月が遠くに行ったことで、正気に戻ったり弱体化したりで封印され、

 女神の奇跡で人々は大津波にさらされながらも冗談のように全員生き残り、人は改めて、女神に感謝の祈りを捧げるのだった……めでたし、めでたし。


 ってそんな感じの昔話なんだけだけど。


 ……盛大なマッチポンプな感じがしないでもない。

 

 ちなみに、一番派手に津波をかぶったのが、このロメオ周辺で、ロメオの土地が塩っ気たっぷりなのは、そのせいでもあるんだとか。


 その代わり、岩塩とかはそこら辺から無造作に取れるし、耐塩性作物は葉っぱの表面とかに塩を集める習性があるので、塩だけはうなるほど有り余ってて、世界有数の塩の産地でもあるってのは、皮肉な話だった。


 猫耳ムーン事件の裏事情を知ってるアージュさんもなんだか、複雑な顔をしてる。


「月の猫耳娘は……まぁ、気にせんほうがええな。しかし『黒い月の涙』か……あの時は、大変じゃったよ。さすがに下界が大津波で洗い流されるのをグラウラ山の頂上で眷属達と見た時は、この世の終わりかと思ったものじゃ……。しかし、昔話では全てラーテルムが救ったとなっているようじゃが、実際は海神セレイネースが大津波から皆を救ってくれたのじゃ……その海神セレイネースも今では誰も顧みん忘れられた神となりつつある。嘆かわしい話よの」


 ……昔話をリアルタイムで見た人談。

 やっぱ、シュールすぎる。


「は、はぁ……まるで見た来たようにって、確か記録によるとあれは800年前の出来事ですから、アージュ様は目撃者でもあるんですよね……。アージュ様はこの世界の生き字引、そのような方に弟子として認められる……光栄です。けど、女神様……何がやりたかったんでしょうか? その大津波で大陸の半分くらいが洗いながされちゃったけど、誰も人死が出なかったって……神罰と言う説もありますが、それにしては……」


「女神のやる事は、人智を軽く超えておるからのう……あまり深く考えん方が身のためじゃと思うぞ? あれは、意味が分からん理由で、恐ろしく馬鹿げた真似を平気でやらかすからのう……。まぁ、少なくとも昔話や伝承はあまり当てにはならんぞ、我の知る真実とは随分かけ離れておるからのう……」


 なんと言うか……釣り堀で魚が釣れないからって、ミサイル打ち込むとかそんな感じだよなー。


「やっぱり、そんなもんなんですかね。女神様の起こしたと言われる奇跡、天変地異、魔王だの勇者だの使徒……。プラスもあれば、マイナスも……。わたくしも世界史を学んで、至る所に出て来る女神の所業に、ツッコミどころ満載って感じでしたけど……」


 僕も執務の傍ら、色々この世界の歴史資料とかに触れたんだけどね……。

 ラトリエちゃんの言うように、女神様の無軌道なやらかしの数々に、この世界の人々はずっと振り回されっぱなしって感じなのよね……。


「まぁ、そうじゃな。我が思うにアレは……存外、頭の中は空っぽなのかもしれん。思いつきと、衝動でその場その場で良かれと思って、要らん事をする。もっとも、その気まぐれでタカクラもこの世界に来たようなものじゃからな。一概に悪いことばかりとはいえんな」


「なるほどですね。確かに、女神の使徒にもタカクラ閣下のように積極的にこの世界に関わる方は何人もいましたからね。異世界の叡智……確かに、外はあんなにジトッと蒸し暑いのに、このクーラーの風って……凄くカラッとしてて、涼しいですね。魔力も使わず、魔石すらも必要としない。素晴らしく画期的ですね」


「そうじゃな……このタカクラの作ってくれた別荘は、衣食住が充実し過ぎておって、居心地が良すぎてなぁ。クロイエも我もすっかり入り浸りなんじゃよ……。このビーズクッションとやらも、たまらんぞ……」


「そう言えば、最近はクロイエ様もアージュ様も王都を不在にしてる事が多いって話でしたけど、そう言う事だったんですね。けど、何度か王都でお見かけしましたよね……?」


「そうじゃな。お主等の卒業式や親衛隊の結成式にも、ちゃんと顔出ししてやったからのう」


「ですよね? ですが、そうなると半ば必然的な疑問なんですが。親衛隊の結成式にご出席いただいて、第一小隊の見送りまでしていただいたのに、なんで、もうここにいるのです? 計算が合いません。わたくし達もかなりのハイペースでここまで来たのに……絶対どこかで追いつく……そう思ってました」


 さすがラトリエちゃん、そこに気付いたか。

 

 実はクロイエ様の神出鬼没ぶりに意外と誰も疑問に思わないのは、皆、ロメオ王国の広大さをよく解ってないからってのはある。


 情報伝達手段も遠話があるとは言え、音声伝達だから、割と情報量が限られる。

 要するにマクロな視点で物を見れる人ってのが思ったよりも少なくて、その異常っぷりに気付かないのだ。


 この辺は、王都に住んでて、郊外に出かけない……普通の暮らしをしてる人ほど顕著で、例えば王都の事務官なんかでも、このコンビニ村がどこにあるのかよく解って無くて、王都のすぐ近くの森の中……そんな風に思ってた……なんて実例すらある。

 

 それ位近いと思ってるなら、決済のハンコ抜けてたんで、ハンコくださいとか、そんな用事で呼び出したりもするわなぁ……。

 

「ふむ、計算か……良いだろう。では、お主なりのその疑問の根拠を述べるが良い。その手の疑問を持つというのは大いに結構なことじゃ」


「解りました。まず、わたくし達も王都からここまで一ヶ月かかるって聞いて、最初はそんなにかからないって思ってました」


「ですよねぇ、私もですぅ……王都からなら10日もあれば、どこにでも行ける……それがロメオですから。お父様もこの森の最深部なら、距離的にはラキソムから一週間かからないはずだって言ってました。だから、多く見ても三週間くらいかなぁと」


 正座反省中のセルマちゃんも口を挟んでくる。

 もうそろそろ、反省は良いかな? 足がしびれてきてるみたいで、足の先とかプルプルしてるし。


 立ちなさいってジェスチャーを送ると、ゆるゆるーって感じで立ち上がる。

 膝笑ってるし、あんまり大丈夫じゃないっぽい。

 

 同様にリスティスちゃんに向かって頷くと、こっちは普通に立ち上がる……正座なれしてるのか、やせ我慢か。

 後者かなぁ……セルマちゃんが思わずって感じで、リスティスちゃんの肩に掴まると、膝カックンみたいになってる。

 

 それでも、頑張って肩貸してる辺り、いい子だよなぁ……。


「け、けど、実際は、結構無理して、かろうじて三日ほど縮められただけで、全行程余裕で一ヶ月の長旅でした。……まさか、こんなに遠かったなんて……。近衛騎士の人達ですら、そんなにかからないから、気楽に行っておいで……とか言ってたのに……思いっきり騙された気分です」


 リスティスちゃんもゲンナリしたような顔で、そう告げる。

 

 近衛騎士団って、時々、緊急展開訓練とか言って、早馬とか乗り継いで、辺境まで一週間くらいで行って帰ってくるとかよくやってるみたいだから、距離感覚に関しては、多分一般的じゃないと思う。

 

 何より、ここらまで出張ってきたりはしないからなぁ……騙されたってのはごもっともだ。

 

「そうか、一応少しでも楽出来るように、全員乗れるだけの馬車や物資も送っておいたし、事前に街道周辺の掃討もやってたんだけどねぇ……それでもキツかったとなると、もう少し街道の整備も進めないといけないな」


「そうだったんですか? あ、でもでもっ! 確かに見慣れない金属で出来た馬車とか使わせてもらったし、案内人の方々もこっちが手配してないのに、ラキソムまで迎えに来てくれてましたよね。あれって、タカクラ閣下が手配してくれたのです?」


「まぁね。ミャウ族なら、この森は庭みたいなもんだし、僕にとっては眷属のようなものだからね。出迎えって事で出したんだけど、君は上手く使ってくれたみたいだけど、第二陣の子達には案内は不要って断られたって報告があってね……」


 僕がそう言うと、セルマちゃんはニコニコなんだけど、他の二人は、気まずそうにする。

 

「いやぁ、あのにゃんこさん達、ちっちゃいのにタフだし、近道教えてくれたり、夜明け前から動き出して、午前中しか動かないとかやってくれたから、ずいぶん楽が出来ました。やっぱり日が昇りきってから動くなんて、無謀みたいですね……」


「ラキソムから、一週間って実は地元の連中ならって話だからね……最短で三日って記録もあるくらいだ。現地住民、それも獣人ってのはやっぱタフだよ。荷馬車連れとか、徒歩ならラキソムまで二週間が普通だね……その様子だと付けて正解だったけど、第二陣の子達はなんで、案内人断ったの?」


「すみません、正直舐めてました。第一陣のメンバーで、問題なく進めてると報告が来て、我々なら余裕だと……。案内人も徒歩で付いてくると言っていたので、むしろ足手まといになると判断してしまいました」


「タカクラ閣下ならお察しかと思うんですけど……。第一小隊は……その……身体能力的に、決して高いとは言えず、暑さ慣れしていない北方貴族中心なので、落伍者が出るのは避けられない。そう判断されていたんですわ。それ故に余裕を持って、先行させていたんですよ」


「なるほど、そういう事か。だけど、実際はセルマくん達第一小隊、上手くやったみたいじゃないか」


「そうじゃな。三日遅れとはいえ、無事に全員辿り着いた。聞けば車両トラブルで馬車がすべて潰れたそうではないか」


「申し訳ありませんですぅ……。あの馬車、乗り心地も良くて凄く良いものだったと思うんですけど、私達も見たこと無いような馬車でしてぇ……。ぬかるんだ轍にハマって、力いっぱい押してたら、車輪の針金みたいなのがポキポキ折れちゃったんです……。そんなのさすがに修理も出来なくて……。案内人の助言で、現場に放棄していきました。後ほど回収に行きますね」


 おう、あのハイパワーで目一杯押したのか……。

 そりゃ、壊れるわなぁ……。


「ふむ、あの馬車も日本製じゃから大丈夫と思ってたんじゃが、耐久性に難があるのかのう」


「想定外だったんじゃないかなぁ……。それにこの感じだとスポークが逝ったみたいだねぇ……。轍にハマって、石だか木の枝が食い込んでるところで、無理やり動かそうとしたとか、そんなかも……あのスポーク車輪ってのは、一本でも逝くと応力バランスの関係で纏めて逝っちゃうからね」


「す、すみません! そんな感じでした……さっきの「剛招来」で、目いっぱい押せばなんとかなると思ったんですぅ……」


「いやいや、その対処は間違ってないし、君等を責めてる訳じゃないよ。元々、観光地……硬い地面の所で使うような馬車らしいから、車両選定の段階で間違ってた。それに壊れたら、修理不能ってのも問題だなぁ……。普通の馬車みたいに壊れるのが当たり前だけど、現地調達材料で修理出来るとか、そんな方が実情に合ってるのかな?」


「ふむ、むしろ、もうちょっと道を良くすべきかのう。なにせ、ここらは雨が降ると道が派手にぬかるむからのう……あんな細い車輪では、轍にハマるとどうにもならんじゃろうとは、我も薄々思っておったぞ?」


 そうなんだよなぁ……日本から送ってもらった馬車のタイヤ、自転車のタイヤを流用した思いっきり細めのオンロード仕様で、ノーパンクタイヤだから大丈夫って言われてたんだけど……。

 その辺ちょっと不安には思ってたんだけど、やっぱ失敗だったか……。


 もう少し太めのオフロード仕様の頑丈なのにしないと駄目だな。

 

 とにかく、軽めの扱いやすいものって条件で発注して、この世界の非力な馬モドキでも楽々引っ張ってたから、悪くないと思ったんだけど……ラキソムとの一往復すら持たなかったとなると、やっぱ駄目だな。

 

 ブンちゃんズが引っ張ってるオフロード用リアカーの方がまだ良かったかもしれない。

 あれ、農家での雑用とかで使うような代物だから、無闇やたらと頑丈だったりする。


 まったく、実地でないと解らない事ってのも多いんだなぁ……こりゃ、反省すべきだな。

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