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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第五章「結成、クロイエ親衛隊!」

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第四十五話「令嬢達の語らい(肉体言語)」③

「……二人がかりで、おまけに強化魔法込みでも、押し止められないとは……これは「平凡姫」の評判に完全に騙されてましたね。わたくしもリスティスちゃんへの『魔術強化』に加えて、魔力支援までやってるけど、この分では焼け石に水。力で支えても、わたくしの腕力を強化したところで、もはや意味がありませんね。けれど、やってる事は単純な力押し……それに対抗するとなると、ここは搦め手あるのみ……。ちょっと、リスティスちゃん……30秒ほどそのまま、お一人で時間稼ぎしててくださいね」


 そう言って、それまで壁際で足を使って踏ん張って、リスティスちゃんの背中を支えていたラトリエちゃんがスルッと抜ける。

 

 ちょっと軽く押されそうになるのだけど、リスティスちゃんも頑張って押し返してる。


「くっ! 『剛力』っ! 重ねがけよっ! まだまだーっ!」


 お、強化の重ねがけか……効率よくないけど、短時間粘るなら、悪くない。

 ぶっちゃけ、もはや力比べじゃなくて、魔術戦の様相を呈してきてるけど、さすがにこの子達……一般人じゃないからなぁ。

 

 貴族のお嬢様とか、侮ってたけど、皆、なかなかどうして結構、やるじゃん。


 リスティスちゃんも、いかにも文句言いたげな感じなのだけど、それ以上、喋ってる余裕なんて無さそうだった。


「さてさて、こう言う状況下に於いて、わたくしのような頭脳派の取るべき道は唯一つですわっ! 行きます……静寂なる夜の帳とともに降り積もる霜の欠片……音もなく舞い降りて、静かに貴方の足元を凍らせる。『結氷の道(アイスバーン・ロード)』!」


 ラトリエちゃんが魔杖を振り抜くように掲げると、小さな氷の結晶が空中に現れ、ふわりと床に、舞い降りる。

 たちまち、セルマちゃんとリスティスちゃんの足元が楕円状に白く凍りつくっ!


「はわわっ! なんですか! これ……滑る滑る滑るーっ!」


「ラトリエーッ! ちょっとこれ、私も巻き込んでるって! どうすんのよこれっ! セルマッ! これ無理っ! 踏ん張り効かない……休戦っ! 休戦ーっ! とりあえず、力抜いて、これ以上動くなーっ! このままだと共倒れよっ!」


「無理ですー! リスティスさん! がんばって耐えてっ! あわわわわっ! 倒れるー! と言うか、お股が……ズロースがミリミリ言ってるんですけどぉ! は、弾けるーっ! やだぁああああっ!」


 セルマちゃん……涙目状態で、両足全開みたいなカッコになってて、どうもズロース大破寸前の大ピンチらしい。


 おぅふ……どうしてくれようぞ……これ。

 ラトリエちゃん、味方のはずのリスティスちゃん諸共とか、何してくれてるの?


 アンナさんも予想外の事態にアタフタしてる……。

 

 この手の持続系魔術相手に、魔術師として取れそうな戦術としては、より多くの魔力で魔術自体を力技でかき消す『解呪』辺りなんだけど、そこまで露骨な手出しは、立場上さすがに許されないだろう。


 リスティスちゃんとセルマちゃん、なんだか仲良さそうな感じで、お互い抱き合いながら、凍りついた床の上で、一生懸命バランス取って踏ん張ってる。

 

 ラトリエちゃんは……めっちゃ楽しそうに、その様子を一人離れたところで見てるんだけど、時々、アンナさんをチラ見してる。

 

 セルマちゃんも、これだけ魔力かき集めてるんだから、力技の一種でもある『解呪』で、足元の氷の魔力をかき消せば良いんだけど……残念ながら、その発想に至らないらしい……。


 アンナさんなら、この程度の魔術なら、例の皆で力を合わせるやつで『解呪』も可能だろう。


 でも、僕は……当人達が、このイカサマに気付いてないなら、見てみないふりで済ますだったけど。

 さすがに、気付かれるようなあからさまな手出しをするなら、止めるつもりだった。


 ラトリエちゃんも、アンナさんが手出しするのを警戒してる……そんな感じ。

 何らかの攻性魔術の類を準備してるらしく、魔杖にいくつもの青の魔力が纏わり付いてる。

 

 まぁ、この様子だとアンナさん達の戦術もお見通しっぽいな……さすがにやるねぇ。

 けど、さすがに攻性魔術の応酬とか始めたら、そりゃもう待てってヤツだ。


 ちらっと、アンナさんに視線を送るとどうやら、僕の言いたいことも理解してくれたようで、苦笑い。

 壁際に下がると、壁際でコソコソなんかやって、お手上げと言いたげに両手を広げると、魔力線も解除。


 状況的に、もはやセルマちゃんの勝ち目はないと判断、バレる前に証拠隠滅の上で退散。

 引き際も鮮やか過ぎる……。

 

「うふふっ! どうやら、ここまでのようで……これぞ、まさに漁夫の利? お二人さん……さようならですっ! わたくしのっ! 勝利ですわーっ!」


 一方、三人の方は……ちょうど決着が付くところだった。

 

 高らかな勝利宣言と共に、ラトリエちゃん……めっちゃ楽しそうに、二人の足をスパパンとまとめて払う……この子、ヒデェッ!


 でも、スカートのスリットからガバっと覗いたお御足と、腰の横からちらっと覗いた紐みたいなの……もしかして、下着?


 見えちゃいましたねぇ……。

 まさか紐パン? ラトリエちゃん大人ーっ! 真面目そうに見えて、意外とエロい子だったりする?

 と言うか、そんな紐パンなんてあるんだ……てっきり皆、ズロースだと思ってたけど、そうでもないらしい。


「ラトリエーッ! お前ってヤツはぁあああっ! 裏切り者ーっ! 覚えてなさーいっ!」


「きゃああああっ! なにこれ、冷たぁあああいっ!」


 ドタバタと折り重なるように、倒れ込む二人。

 そして、ただ一人、無事だったラトリエちゃんだけが、ドヤ顔で佇んでいた。


「タカクラ閣下……ご覧いただけましたか? 戦いにおいて、勝者と呼べるのは、最後まで立っていた者こそ、勝者と呼ぶにふさわしい。この勝負……勝ち残ったのは、剣技に秀で、多彩な魔術も扱える魔剣士のリスティスさんでも、圧倒的なパワーを持つセルマさんでもなく、知恵と謀略で二人を出し抜いた、このわ・た・く・し! ですわよねーっ!」


 背後に「ドヤァアアアアア」って擬音が見えるくらいのドヤ顔。

 確かに、見事なまでの漁夫の利。


 まぁ、二人共すっ転んだだけで、怪我とかしてないみたいだし、確かに見事なもんだった。

 ついでに言うと、お御足もお見事でした!


 アンナさんは、残念でしたって、つぶやいてショボーンとしてる。

 いや、僕個人としては、むしろ、君の評価結構高いよ?


「あー、うむ。その……なんじゃ。確かに非力な魔術師としての戦い方としては、誠に正しい、むしろ王道と言えるなぁ……。と言うか、それ……我の術式ではないか……一体、どこで習ったのじゃ?」


「はい! よくぞ聞いていただけましたっ! 王立図書館でアージュ様の記された「氷雪魔術覚書第4巻」を読んで独学で勉強しました。実に素晴らしい書物で、よっぽど借りパクしようかと思いましたが、古文書指定書物だったので、確実に足が付く……なので、借りパクは止めて、毎日図書館に通いこんで内容を丸写しするに留めました」


 ……しれっと借りパクしようとしたとか、言ってるし。

 この子、思考パターンが、詐欺師とか悪徳商人みたいだな……いや、可愛いんだけどさ。


 と言うか、アージュさんの書いた魔術書が、図書館で古文書指定書物になってるとか、著者が目の前にいてそんな話聞くとものすごくシュールだな。


「……まだそんなもんが残っとったのか。あれは、表題通り、我の覚え書みたいなものでのう。第4巻か……あれは、確か300年ほど前かな。もう要らんと思って薪代わりに燃やそうとしとったら、通りがかった旅商人が燃やすくらいなら、酒と交換しないかと言うのでな。結局、酒代に変えてしもうてな。あの時飲んだ酒は実にうまかったのう……」


「そんな……あの書に記されたアージュ様の独自魔術の数々。現代の最新魔術と比較しても、遥かに洗練されていて、驚きましたよ……300年も前にあの領域に到達されていたってことですか?」


「まぁ、そうじゃな。アレは、覚え書としてもいい加減内容が古臭くなっておったからなぁ……。まったく、あんなもの……我の魔術の通過点、片鱗に過ぎんぞ?」


「……今は、もっと洗練されていると? さすが世界最高峰の大魔術師と言われるだけはありますね……素晴らしいです!」


「ぬはははっ! そう褒めるな……となると、貴様は我が弟子のようなものじゃな。その知略、我が魔術の使いこなし様といい、実によい、気に入ったぞ! 良い、これより我が名を冠したフロレンシア流魔術師を名乗ることを許すぞっ!」


「あ、ありがたき幸せです! わたくし、感激でございますっ!」


 こ、この子……マジであざといな。

 アージュさんの目の前で本人開発の術で、明らかに自分より強力な二人をまとめて無力化を実演とか。


 アージュさん気に入るに決まってるよ!


 この人、割と普段から魔術とは、エレガントな搦め手が基本であり、力技ではない! とか言ってるし……。 

 まぁ、どっかの森の賢者様はパワーオブパワーなんすけどね。

 

 ご機嫌取りで、そこまで計算に入れてとか……ドン引きするくらい計算高いっ!


「それに、セルマイルだったかな? 貴様の纏っておった魔力……人族にしては、軽く化け物じみておったが、どう言うことじゃ? お主個人の学院での魔力判定はBクラス、せいぜい中の上か上の下……そんなもんであろう?」


「あっはっは、えっとぉ……「能ある鷹は爪を隠す」でしたっけ? リョウスケ様語録。そんな感じなんですよぉ……学院の魔力判定基準では、計り切れない私の真の実力……みたいな?」


「いや、我も魔力を見る事ができるのじゃがな。お前の身体からは、魔力器官に収まりきらんほどの魔力が溢れとった。効率特化、特質系のマナエンチャンターのようじゃが、どこぞの誰かがこっそりバックアップしとったのではないかな?」


 アージュさんの指摘に、アンナさんが明後日の方向を見ながら、すっと壁際に寄る。

 まぁ、私でーすと言ってるようなもんだよね。


「まぁまぁ、アージュさん。今のはちょっとした余興だからね。それに実戦ってのは、バックアップも含めてのものだと僕は思うからね。僕はセルマちゃん達を高く評価するよ。けど、リスティスちゃんも圧倒的に不利な状況にも関わらず、正々堂々と戦い抜き、倒れる時もセルマちゃんを庇ってくれたろ? 一瞬のことだったから、皆には解らなかっただろうけど、僕の目は刹那を見通せる……だから、その瞬間はちゃんと見ていたよ」


 僕がそう言うと、セルマちゃんもニコニコ笑顔になって、リスティスちゃんも頬を赤くして、プイッと目線をそらす……ナイスツンデレ!


 そうなんだよな……揃ってズッコケながらも、自分が下になって、セルマちゃんの頭を抱きしめることで、床にぶつかったりしないようにちゃんとかばってくれてたんだ。


 根は優しいイイ子ってのは、よーく解った。


「なるほど……貴様ならではの評価じゃのう。皆それぞれに、見どころはあると言うことか。じゃが、最終的な勝者はラトリエであることは動かんがな。さすが我が弟子と褒めてやろうではないか!」


 ……ラトリエちゃん、すっかりアージュさんの覚え良くなっちゃって。

 世渡り上手いと言うかなんと言うか。

 

「アージュよ、気持ちは解らなくもないが、そこらへんにしておくのだな。ラトリエ……確かにお前はなかなかの知略の持ち主だな。何より、独自路線を突っ走っていて、早々真似など出来んと言われているアージュの術をその若さで使いこなす辺り、実に大したものだ。見事だったと言いたいところだが……。肝心のタカクラは他の二人は評価しているようだが、お前についてはむしろ呆れているようだぞ?」


 クロイエ様がピシャリと締める。

 

 ええ、僕はドン引きですよ。

 

 ちなみに、リスティスちゃんとセルマちゃんは、どうもセルマちゃんがリバウンドで動けないらしく、リスティスちゃんと抱き合うような感じで、まだ床の上で転がってる……。


「リスティスちゃん……私のこと庇ってくれたんですね? うふふ、ありがとー!」


 そう言いながら、リスティスちゃんをぎゅっと抱きしめるセルマちゃん。


「ち、違うわよ! たまたま、そうなっただけ! タカクラ閣下はなんか勘違いしてるみたいだけどっ! と言うか、アンタ運動神経鈍いんだから、気をつけなさいよ……まったく! 」


 ……なんか、尊い光景だね。

 

 それに引き換え、この勝利者は……きたない。

 もうちょっと、エレガントにスマートにやれって言いたい。


 思わず、ジト目で見てしまう。


「あー、あはは……テ、テヘペロっ!」


 そう言って、舌を出して、自分の頭をコツンとやってる。

 ぐっはぁっ! もう可愛いなっ! い、いちいちあざとすぎるよ! キミィっ!


 でもまぁ、世の中綺麗事だけじゃやっていけないし、こう言う狡猾な思考をする人材ってのは、同じく狡猾な敵を相手取る時は、物凄く頼もしいってのも事実なんだよなぁ。


 セルマちゃんの素直さと人懐っこさ。

 

 リスティスちゃんのツンデレっぷりと、根っこの部分での優しさ。

 なにより、凄くしっかりしてる子だってのは、よく解った。

 

 ラトリエちゃんの頭のキレと狡猾さ、そのお淑やかさも十分、ポイント高い。

 

 ひとまず、突発的に始まった三人の対決。

 三人三様、それぞれの個性ってもんも見えてきた。


 ここは一つ、前向きに評価するとしよう!


 結論:皆、可愛いぞーっ!

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