第三十八話「使徒降臨っ!」②
「……あ、あの……ま、まさかと思うけど、その変なのが……め、女神の使徒?」
色々察したようで、レイン司教が恐る恐ると言った感じで、聞いてくる。
「おお、ロリっ娘シスター! いやぁ、生で見ると実に良いですなー。生ロリッコ! 尊い……君については、熱烈歓迎だお……デュフフ、君等って僕ら女神の使徒を崇めてるんだってね! うんうん、是非じっくりたっぷり崇めていってくれ!」
「えっ? アッはい! え、あ、崇めろって……た、確かに……め、女神の使徒なんですよね? わ、解りました……創世神ラーテルムの命に応じて降り立った使徒よ……」
紋次郎くんの言ってることは、レイン司教達の教義解釈上、多分間違ってないんだけど……現実は、コレだしなぁ……。
うーん、これを崇めるのか……物凄い犯罪臭のする絵面だな。
もっとも、僕なら喜んでやれるけどね! その程度には悶々崎作品は……尊い。
レインちゃんが嫌そうな感じながらも、ひれ伏すと、それでも両手を合わせて、ペコリと頭を下げる。
ついでに、僕も負けじと祈っとく。
むしろ、これは感謝の祈りだ……素晴らしい作品をいつもありがとうっ!
「うはっ! 美少女の祈りとか……おおおっ! み、みなぎって来たーっ! と言うか、君ってば、とぉってもロリ可愛い美少女だから、僕のダンジョン……それもR18コースでたっぷりと可愛がってあげたいんだけど、どうかな? うおおっ! 降りてきた! 舞い降りてきたぞぉ!」
そんな事を言いながら、唐突にスケブを取り出すと目の前のレイン司教を若干ディフォルメした上で、スクール水着を着せたイラストがサラサラと描き上げられていく。
ちなみに、悶々崎先生は爆速筆作家としても有名で、丸一日あれば、一人で原稿20ページ分くらい軽く仕上げるらしい。
週間誌の漫画が多くて16Pくらいなのを考えると、週間ペースで仕事してても、週一で漫画書いてりゃ、十分……週刊誌5紙同時連載とか無茶やっても平然とこなせる計算になる……。
実際、最盛期にはあらゆるエロ漫画雑誌はもちろん、18禁要素を取っ払った上で一般誌の月刊誌にまで、彼の作品が連載されてたくらいで、もはや、人間じゃないとか言われてたものだ。
下書きレベルなら、5分もあれば余裕って言ってたけど、実際そんな感じですごい速さで描き上げられていく。
か、神の右腕……炸裂中っ! 腕の動きが早すぎて見えないっ!
僕は、奇跡を目の当たりにしているのだ! な、涙が溢れてきたよっ!
しかし、今回のこの作品……スク水なのに、白い靴下装着とか……相変わらず、解ってるね!
その上、本人の特徴とか髪型とか上手く捉えていて、なるほど……レイン司教がモデルって一発で解る!
すげーっ! やっぱり、紋次郎くんは天才だよ……まさに現人神っ!
「……いやはや、実に素晴らしい作品が出来てしまった。ハァハァ……お嬢さん、どうぞ……貴女をモデルにこんなん出来ましたわー。デュフフ……どう? こんな感じで可愛がってあげるから、ちょっと遊んでかない?」
そして、そのままイラストをスッと差し出す。
なお、そのイラストのレイン司教は……何故か全身びしょ濡れのスク水姿で、後ろ手に手錠みたいなのをかけられて座り込んで、口になんか棒状のものを無理やり咥えさせられて、涙目になってるような感じ。
フ、フランクフルト食べさせてもらってるのかなー? ほっぺたボコォ! みたいになってるのは、勢い余っちゃったのかなぁ……?
でもまぁ、ちゃんと服着てるだけ、彼の作品にしては健全な方だよね……。
なんか、白っぽいヌルヌルがあちこちかかってるのは……コンデンスミルクこぼしちゃったのかな? スイーツッ!
でも……どんなセクハラだよ! これ!
軽く犯罪物……訴えていいよ! こんなの!
さしもの毒シスター……レイン司教もこの斜め上のセクハラ攻撃に、一瞬で魂があっち側に行ってしまったらしい……。
イラストを手に、しばし呆然として、死んだ魚のような目になって、そのままぺたんと尻もち付いて、糸の切れた操り人形のように倒れ込んでしまう。
まぁ、そりゃそうだろ……。
このレイン司教率いるシュバイク派って、女神様そのものよりも、むしろ女神の使徒を崇めてるような宗派だって話だし……。
それがこんな……言ってみれば、信仰対象にドセクハラかまされて……正気を保つほうが難しいだろう。
「レ、レイン! しっかりしろーっ! 気をしっかり持つんだ!」
復活したらしいミリアさんがレイン司教を抱きかかえて介抱しようとしてるんだけど……。
まぁ、しばらく戻ってこないだろうね。
「やれやれ、ロリ少女には、ちょっと刺激が強すぎましたかなぁ……。一応、手加減したというのに、これか。我ながら、恐ろしいっ! なんてこった、我が神の右腕よっ! お前はっ! お前はまたやってしまったのかっ!」
自分の右腕を左手で握りしめながら、苦悩してるように見える紋次郎先生っ!
手加減って……ナニがナニを? まぁ、確かに加減はしたような感じではある……ギリギリアウトっぽいけど。
「でもまぁ、いいや……なんか、すっきりしたし。えっと、お次はそっちの巨乳お姉さん、今夜は月が綺麗ですね! 例えるなら、まるで貴女のご立派な双丘のようだ……ジュテーム! ちょっと揉ませて、もらっていいかなぁ? かるく、一つまみでいいから! なんか、すっごいマシュマロタッチって感じじゃないですか、今後の作品の参考にしたいから、ちょっと……ね?」
一瞬、苦悩してたように見えた紋次郎君……さらっと流したようだった。
ちょー軽い……だが、それでいいんだ。
天才に苦悩は似合わない。
今度は手をワキワキとさせながら、ミリアさんに迫る。
……そいや、怪傑紳士ボンジョルノーでこんな台詞あったなぁ。
「君の麗しき双丘にジュテーム」だったかな。
正義執行官イルハ様を一撃で落とした名セリフだ。
でも、あれの作者って、紋次郎くんだし……問題ないっちゃないのかな。
けど、あれって、こう言うときに使うんだっけ?
ああ、もうあれだよ……悶々崎ワールド、炸裂中っ! もう誰にも止められないぜっ!
「えっとね……君のハートを撃ち抜いちゃうぜ! バキューン! なんてね」
挙げ句に、両手の人差し指で銃を撃つような仕草と共に、ミリアさんの胸の頂上あたりを軽く突くと、バチコーンとウィンク。
この一撃でミリアさんもあっさり、精神崩壊したようだった。
あっさり白目剥いて、レイン司教同様、魂がどっか行っちゃった感じになって、しばらく使い物になりそうもなかった。
「あれ……ごめん! 僕ちゃんとしたことが、寸止めのつもりがうっかりホントに、タッチしちゃった! ねぇねぇ、タカクラの旦那……これって介抱したほうがいいかな? 胸がパツンパツンで、苦しそうだよね……。ごめん、ボクちんにはちょーっと刺激が強そうだから、旦那……ちょいっと剥いちゃってあげて! きゃー、いやん! 生チチボロンとか、そんなはずかちーっ!」
おぅふ……神の啓示、キターッ!
……ごめんミリアさん。
心のなかで謝りつつ、ミリアさんの服のボタンに手をかける……ミリアさんには申し訳ないけど、これは言わば神の啓示、やれと言われたからにはやるしかないのだ。
確かに……これ、爆乳だよなぁ……なんて思いながらも、意識不明の女性を脱がす。
その背徳感と、想像以上のボリューム感に思わず、手が震える。
そして、キリカさんとランシアさんの冷たい視線にようやっと気づく。
大慌てで、両手を上げて、まだ何もしてないよアピール!
けど、なんか違う解釈されたみたいで、自分の胸を持ち上げて、勝ち誇った風のキリカさんと、自分の胸の谷間を覗き込んで、悲しそうにしてるランシアさん……。
ハイッ! キリカさんフラグ立ちましたっ!
帰ったら、キリカさんに睡眠薬入りの飲み物でも勧めよう。
そうでもしないと、また朝まで攻防戦を繰り広げる羽目になる。
「……き、貴様が使徒だと……ありえん、貴様のようなヤツが僕と同じ使徒などと……」
絞り出すようにサトルがそう切り出す。
そういや、こんな奴がいたんだった……もはや、場違いなんだがな。
きっと、彼の中では、世界観という物が音を立てて崩壊中なのだろう。
なんか……ゴメン。
カオスの使徒、紋次郎くん無双、はっじまるよーっ!
これくらいなら、ギリギリセーフじゃないかと。




