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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第四章「萌える月夜の決戦」

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第三十八話「使徒降臨っ!」①

「……す、すまない。私にも立場という物があるし、彼に忠義を誓うだけの理由はあるんだ。現状……申し訳ないが、私からは何も言えない。察してくれ」


 ミリアさんが申し訳無さそうに頭を下げる。

 まぁ、この人にだって立場ってものがあるからね……この場で決断しろとか無理を言うつもりは、僕にもなかった。


「ミリア……もういい、話にならない。こんな甘い考えのヌルい男が、一国を仕切る立場となって、好きなようにしているのでは、この世界も長くはあるまい……。断言してやろう……お前程度では、この世界は救えない!」


 むしろ、その言葉そっくり返すと言いたい。

 でも、もういいや……心底、どうでもよくなってきた。


 返事の代わりに大きくため息を吐くとサトルが身構える。

 

 どうやら、やる気らしい……けど、どうかな? こんな開けた場所で、魔猫族の僕との白兵戦。

 

 僕は、見切りの達人でもあるのだ……いつぞやかのレベル4の触手ですら、見切ることは出来ていたからね。

 実際は、身体のほうがついて行かなかったから、躱したりまでは出来なかったけど。

 

 今の僕は、違う……身体強化魔法だって、使いこなせるし、戦闘訓練だって、一日たりとも欠かしちゃいない。

 

 どんなすごい攻撃だって、当たらなきゃ、どうということもないし、僕は負けなきゃそれで良いのだ……つまり、どうとでもなる。


「やる気かい? お前なら世界を救えるとでも言うのかい? けど、その高慢ちきで、横暴な態度に僕だっていい加減頭にきてたんだ……そう言うつもりなら、受けて立とう!」


「はっ! 貴様が人を横暴呼ばわりなど笑わせるな! 貴様のやっている事自体が横暴以外の何物でもないではないかっ! いいか? これは暴力ではない……誅罰だ! 女神の名において執行する神罰である!」


「そうですっ! 横暴ですっ! ふざけんなです! いいですよーだっ! こうなったら、私……絶対にここから動きませんから! 聖光教会を冒涜した以上、あなたの思い通りなんて、絶対してやらない! こうなったらうちの武装神父もこの場に蒐集して、徹底抗戦します! ここから追い出したいなら、力づくでやればいいんです!」


 ……はい? なんでそうなるの?

 てっきりこのまま、サトルとの一騎打ちとかなると思ったのに……兵隊呼ぶってマジかよ。

 

 と言うか、本当にやりかねないんだよな……過激派テロリスト集団に近いって話も聞いてるし。


 規模自体は実働部隊が百人程度と小規模なんだけど……それでも、まとまれば十分脅威だ。

 

 ゼロワンの報告によると、かなり多くの不審人物がこの付近一帯に、多数侵入している形跡が発見されているらしい。

 

 僕の私兵連中がそのうち何人かと接触しているのだけど、以前から定住している放浪者や、獣人などがほとんどらしいのだけど、所属不明のテロリストと思わしき、武装した人物も何人か拘束されている。

 

 こんな所に武装勢力を集結展開なんてされたら、こっちも武力でもって、駆逐する他無いのだけど……。

 正式領土宣言するなり、テロ組織との抗争なんて……あまりに外聞が悪い。

 

 何より、テロリストってのは自分の命すら惜しまないなんてのも珍しくもない。

 狂信者のスエサイドアタックとかで、無意味に仲間を死なせるとか冗談じゃない。

 

 出来れば、まともに相手せず、個別に秘密裏に駆逐したいところだった。

 

「なぁ、どうするんや? コイツら、割と本気っぽいで……ミリアってのは、割とまともそうやけど、この二人はまともやないで……。うちらも増援呼んで、取り囲んだ上で徹底的にやりあってみるか? それも手だと思うで……うちもこいつらは気に食わん……うちら獣人やエルフを何だと思っとるんや……こんな時代錯誤なアホ……久しぶりに見たで」


 キリカさんが物騒なことを言いだした。

 ランシアさんも、何も言ってこないけど、エルフ隊の連中もかなりホットになってそうな気がする。

 

 撃てと言ってくれ……そんな無言のプレッシャーが背後からする。

 

 チラッと見ると、弓持ち連中は一歩下がって、構えようとしてるし、剣を持ってる奴らも柄に手をやって、すぐにでも抜けるようにしてる。


 何人か姿が見えない様子から、すでに伏兵状態で、半包囲体制を敷いてるらしい。


 つまり、味方もやる気満々……。

 確かに、こっちが舐められてるから、こいつらも引いてくれないってのも確かな訳で……。

 

 けど、そこまでガチで戦争するとか、さすがに……ねぇ。


「……ミリア、聞いたかい? 見ての通り、向こうも徹底的に僕らとやり合うつもりらしい。どのみち、一戦交えないと彼らは、道を譲ってくれそうもない……。ここは、今後のためにも、いっそオルメキア軍も使って、徹底的に相手をしてやって、力関係ってもんを思い知らせてやろうじゃないか……! その程度には、オルメキアも僕に借りがあるからね。ねぇ、ミリア……もちろん、君は僕の言う事を聞いてくれるよね?」


 ……やっぱり、こいつら馬鹿なんじゃないのか?

 力関係も何も、こっちがオルメキアの息の根を止めようと思えば、いつでも出来るんだぞ?

 

 もっとも、追い込みすぎるとオルメキアも自棄になって、無茶をする可能性もある。

 だからこそ、完全に追い込むのはマズいってんで、手控えてるんだ。

 

 けど、少なくともサトルもレイン司教もやる気満々……ここで一戦交えるとなると、結果がどうなろうが、おそらく、オルメキアとロメオの全面戦争に発展する……。

 

 ……自分の意地を通すためなら、戦争も辞さないとは、恐れ入った。

 筋金入りの馬鹿だ……。

 

 せめて、ミリアさんくらいはまともな判断をして欲しいのだけど。

 思い通りに行かなきゃ、戦争で決着を付けてってのが、この世界では常識的な外交手段でもあるからな。

 

 頼むから、まともな判断をしてくれよな?

 そう思いながら、ミリアさんをじっと見つめるのだけど、ミリアさんも意を決したように口を開く。

 

「……タカクラ殿、すまない……。我々……オルメキアは、使徒サトルとの盟約に従い、貴国ロメオに対して宣戦を……」

 

「待った! ミリアさん! それ以上は……」

 

 とっさに放った僕の言葉で、ミリアさんの言葉が途中で途切れる。

 

 彼女もどうやら、葛藤しているようで、ギリギリの所で思いとどまってくれたようだった……。

 こんな場で、宣戦布告なんて、正気の沙汰じゃない……。

 

 けれど、現状をちゃんと理解するだけの聡明さを持っていて、このサトルの言葉に追従しているとなると……。

 

 これは、もう最悪の展開の可能性も考えられる……。

 

 食料供給を絶たれそうになった挙げ句、やけを起こしたオルメキアによるロメオへの侵攻。

 

 考えうる限り、最悪の可能性として、想定されていたシナリオだけど、このままだと、そうなる可能性は否定できない……。


 僕は……どこかでボタンをかけ違えていたのかもしれない……!

 国と国との戦い……戦争の引き金を引いた張本人。


 僕はいつの間にか、その核心を握ってしまっていたのに、怒りに飲まれて、最後通牒ハル・ノートを突き付けてしまった。

 

「とにかく、ミリアさん……待て! 答えを急ぐな! 君の一言でオルメキアの運命が決まるんだぞ! まだ話し合いは終わってない……この場でそんな決断を下すべきではない! 冷静になるんだ……!」


 ミリアさんが振り下ろしかけた手を止める。

 まだ間に合う……ここがギリギリ、マージナルってやつだ!


「君が喧嘩売ってきたんだろ? まったくそう言う立場なんだから、それこそ、そこはよく考えるべきだったんじゃないのかな? ああ、僕は始めから君らと一戦も辞さない……そう言うつもりだったんだよ? 君たちは少々派手にやりすぎた。帝国と戦い大帝を討つのはこの僕、そして正義の番人オルメキアの役目だ! ……貴様のような獣人風情や弱小のロメオなどでは決して無い。ミリア……解ってるだろ? 僕の言葉がどう言う意味を持つのか……帝国との戦いは、言わば聖戦だ……勝手に足抜けなんて、女神の名において許さない! そして、聖戦の邪魔をする奴が居るなら、そいつも敵だ!」

 

 コイツ……狂ってる!

 

 始めからそのつもりだったって事か……。

 この挑戦的な態度もどこか余裕あるような雰囲気も……。

 

 なんて……ヤツだ!

 

 ミリアさんが申し訳なさそうな様子ながらも、意思を固めたようで、じっと見つめてくる。

 

 止めなくちゃ……そう思うのだけと、上手い言葉が思いつかないっ!

 僕の狼狽する様子をみて、サトルのやつが嫌らしい笑みを浮かべるのが解った。

 

 

「あのぉ……もしかして、揉めてますぅ? タカクラの旦那」

 

 ……一触即発の空気を読んだのか知らないけど……。

 その言葉は、まさに青天の霹靂、世界変革の時……そんな感じだったと、僕は後々回想する事になる。

 

 お気楽そのものと言った調子で、ダンジョンの隣の岩壁から、ニュイーンと紋次郎くん登場っ!

 

 そのゆっるーい口調と、ダッサイ姿に一瞬で現場の空気が弛緩するのが解った。

 

「……も、紋次郎くん……」


 脱力しきった上半身を岩壁から出して、かったるそうに足を出して、壁から抜け出てくる……その動きは、なんと言うか……キモい。


「はぁい、素敵ダンマスにして、女神の使徒……坂崎紋次郎くんですお! 僕に会いたいって、美少女の声が聞こえた気がしたっ!」


 小指と人差し指と親指を立てて、顔に添えるいわゆる「キラッのポーズ」

 なお、全く可愛くない……寝不足なのか、目の下の濃いクマと色白な肌も相まって、まるでゾンビみたいだった。


 さすがに、絶句……。

 

 今の今まで張り詰めてたシリアスさんが一瞬でログアウトしてしまったよ!

 

 ミリアさんとか、もう目が点になってるし、大見得切ったばかりのサトルくんとか、もう固まってるよ!

 

 えーっ! このタイミングで……? 紋次郎くん、まじかよっ!

 けど、助かった……今の流れはやばかった……! 僕としたことが完全に飲まれてた……。


「お、お前……もうちょっと空気読めや! うちら、ちょっとヤバイ奴等とヤバイ交渉しとるんや! お前が出て来たら、ややこしゅうなるわっ! ひっこんどけ!」


 キリカさんが必死な感じで抗議してる。

 キリカさんも構えてたモーニングスター取り落して、もうそのままにしてる……。

 

 ランシアさんも、苦笑しながら抜こうとしてた剣をしまい込んでる。

 

 まぁ……これで臨戦態勢とか維持できたら、割とスゴイよ。

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