第三十七話「エクストリーム主人公対決!」⑤
「レイン……お前はちょっと黙ってろ! 彼はロメオの宰相……正式に、クロイエ陛下から各国へ通達があった以上、彼はロメオの代表として遇せねばいかんし、彼の言葉はクロイエ陛下の言葉も同様。ロメオはさしたる武力もないのは事実だが、帝国から送り込まれた数千匹ものスライム共を撃退した上に、レベル4すらも打ち破った猛者がいると言う話だ。決して侮っていい相手ではない……レイン、貴様もあの1km近い範囲に渡って、草木すらも生えなくなった異常な戦いの跡を見たではないか……。我々が預かり知らぬうちに、ロメオは何らかの強大な武力を手に入れた……そう考えるべきではないか?」
なるほど。
あの現場は一応、オルメキアの保護領でもあったから、しっかり、現場視察をしていったのか。
ちなみに、あの戦いの跡地はアージュさんの極大凍結魔法の影響で、辺りの草木はもちろん、種や根っこ、土中の微生物なども含めて……ありとあらゆる物が完全に凍りついて、完全に死に絶えたらしく、枯れ木や枯れ草があるだけの不毛の土地となっている。
たぶん、数年は枯野のままになって、そのうち広大な空き地になるんだろうけど……この辺は、どうなんだろ?
損害賠償とか請求されたら、こっちはゴメンナサイって、折れるしか無いんだけど。
国レベルでは、街道の管理や警備もろくにしてなかったし、その不毛の土地についても、見通しも良くなったからって、予定通り野営地を建設する予定だった。
そっちに関しては、商人ギルドがやってることだから、文句は商人ギルドに言ってもらえば済む話ではある。
「馬鹿な……ロメオ風情が帝国のスライム兵に対抗できるだけの武力など持ち得るはずがない……。それこそ、女神が新たなる使徒でも送り込みでもしない限り、ありえないだろう……レイン、最近何か神託はあったかい?」
「……私は、何も……。新たなる使徒……ですか。女神様は、近いうちにこの世界に顕現を図るから、もうサトル様は戦わなくていい……そんな話も告げられていましたが……。実際、そんな様子はまったくありません……。私の預かり知らぬ所で新たなる使徒が降臨した可能性は……ありえます。イザリオ達も我々になにか隠し事をしてるようですからね」
と言うか、目の前に当事者がいるんだから、普通に聞けばいいのに……。
イザリオ司教の隠し事ねぇ……大方、テンチョーやモンジローくんの事だろうなぁ。
あの二人はどっちも規格外だし、このロリっ子……狂信派の代表格だから、認めないーとか絶対言い出すに決まってる。
間違いなく、暴走するね……フンガーっつって。
「いずれにせよ、あの異常な戦場……何がどうなったら、あんな事になるのだか。高倉殿なら、なにかご存知かと思うのだが……どうなのだ? 実際、貴殿らが帝国軍のスライムの群れと戦い、それを打ち破ったとは聞いているが、詳しい経緯などは聞いていないのだ……出来れば、一連の帝国軍との戦いについて、詳しく話を聞かせて欲しい」
おお、やっと来たか。
別に出し惜しみするような情報でもないから、普通に説明するか。
「そうだね……。まずそっちのレインくんの疑問に答えるよ。さっきも言ったけど、うちのテンチョーは紛れもなく使徒だし、その身体はそもそも女神様の顕現体となるはずだったんだ。けど、女神様の降臨が失敗した事で、おもいっきり僕らを巻き込んだらしくてね。お詫びって事でテンチョーがそれを譲り受けたって聞いてる。それと、もう一つのミリアさんの質問だけど、あの不毛の土地を作り出したのは、ロメオの重鎮、アージュさんだよ。あの人はおそらくこの世界でも最高レベルの魔術師だ……神代の儀式魔術、その結果がアレだ。もっとも、レベル4は、あの極限魔術にも耐えきった。結果的にレベル4を仕留めたのは、うちのテンチョーなんだ……。そう言う意味では、ロメオは何人もチートレベルの猛者が居るってことになるね。……戦いの経緯については、各国の大使向けに用意した説明用の資料があるから、村まで来てくれたら、きっちり説明させてもらうよ」
「……はぁ? 顕現体を譲り受けたって、何言ってるんですか? 作り話にしたって、もうちょっとまともな話にして欲しいんですけど。馬鹿にしてるんですか? ありえません」
「そうだな……。女神の依代になるほどのものをお詫びにだと? それでは、この世界に女神が降臨したようなものではないか。そんな馬鹿げた話……信じられるわけがない。アージュ・フロレンシア卿なら私も知っているが……。彼女は過去の伝説の人物ではないのか? 千年前の「創世の書」にその名が出てくるくらいなのだ……生きているなら1000歳は優に超えているはずだ。如何にエルフ族が長寿でもそこまで長生きはしないと思うのだが……」
ミリアさん、アージュ様全否定してる……。
まぁ、そりゃそうだよな……日本で言えば、平家物語に出てくる木曽義仲だの、那須与一が現代で国会議員として、出てきちゃうとかそんな感じだろう。
「いや、確か、サレナが言っていたぞ。エルフ族の生き神と呼ばれる古エルフが居るらしいんだが、そいつの名前がそんな名前だった……だとすれば、コイツの話も事実かもしれんが……」
おお、なんだこいつらにもエルフの仲間がいるのかな?
まぁ、仲間の話なら、全否定も出来ないしな……さすが、エルフの女王様だ!
「……けど! この猫野郎が、本当の話してるなんて思えませんよ! コイツからは、嘘つき詐欺師の匂いがします! 何より、女神様もそんな派手な真似やったなら、この私に何も告げずにとか、考えられません! ミリアもサトル様も、コイツの話は最初から疑ってかかるべきです……いえ、一切信じなくて、構わないと思います」
嘘つき詐欺師とか、酷い言い草だな。
猫野郎は……間違っちゃいないけど。
最初から、こっちの話のすべてを疑ってかかる……そうなると、立証はそっちの仕事ってなるんだけど。
そこら辺、解ってるのかな……。
こんな森の奥で、この調子だと一ヶ月は最新の情報から離れてたみたいだし……。
僕の話を否定したって、現実は変わらんのだぞ?
「別に君等に認められなくても、こっちはどうでもいいんだけどさ……。君等がアージュさんの存在を否定したがってる理由は理解に苦しむところだけど、会いたきゃ、本人呼び戻すよ。もっとも今は、休暇取って湯治行って、食っちゃ寝て温泉浸かるとか、ぐーたら生活送っててね。まぁ、酒が切れたら、戻ってくると思うから、しばらく待ってもらうことになるかな」
「……自称、何じゃないですか? なんなんですか、その怠け者は……伝説の白法師アージュ様とちっとも重ならないんですけど!」
うん、どっかの教会で、アージュさんが過去の英雄と一緒に魔王だかなんだかと、戦ってる様子を描いたレリーフを見たんだけど。
もう胸とかバインバインで、背もすらっと高くて、超キリッとしてた……誰これって思ったくらい盛りまくられてて、たまたま本人も隣にいて、二人して馬鹿笑いして帰った。
アージュさんいわく、このレリーフ最初は、本人に忠実だったんだけど……まるで、お子様が勇者様を先導してるみたいで、絵柄が悪いってなったらしく、アージュさんなりに、胸をもっと大きく……だの背は高くしろとか、盛りまくった結果、ああなったらしい。
こういった話は一つや二つじゃないらしく、いらない見栄張った結果、当人とかけ離れたイメージが独り歩きした挙げ句、本人はとっくに死んだとか、そんな風になってるんだそうな。
けど、こいつらが頑なにこっちの話を否定しようとしてる理由は、何となく解る。
ロメオは弱小国でないと駄目だ……オルメキアの方が立場が上なんだから、絶対に言うことなんか聞いてやらない。
そんな風に思いたがってるってのが伝わってくる。
アージュさんにしたって、もし実在して、ロメオの重鎮ってことになると、それだけでロメオの国として、権威が一気に上ることになる。
1,000年前から生きている伝説の英雄と、パッと出の女神の使徒。
同じ国の重鎮として、従えるにしても、アージュさんのネームバリューと実力は、帝国もビビるくらい。
その使徒にしたって、このサトルってやつと、テンチョーあたりを比べると、テンチョーの方が明らかに格上だろう。
実際、イザリオ司教も本来は、生き神様として崇拝すべきだって言ってて、教会の幹部の人達は、テンチョーに会うといつもひれ伏さんばかりに祈りを捧げていく。
なんかもう、テンチョー教なんじゃね? くらいの勢いで崇められてしまっているのだ。
もっとも、そのへんの話も含めて、コイツらは否定したいんだろう。
否定しないと、自分たちの立場がなくなるから……そんなところだ。
けど、それには、何の意味も無い。
現実的な話として、元々、オルメキアとロメオでは、軍事力以外は何もかもが数倍規模で上なのだ。
オルメキアは、軍事中心であった事で、国土開発や技術、教育とかをおざなりにする傾向があり、ものすごく歪な国なのだ。
結果、軍事力を最低限にすることで、経済力に特化したロメオとは、圧倒的な国力差が出来てしまっている……それが現実なのだ。
なにせ……経済力だけみれば、ロメオまさに世界最強の国なのだ。
本気を出せば、第三勢力の盟主にくらいいつでもなれる……いや、なりつつあるんだ。
これまでは、クロイエ様一人でいまいち頼りなかったから、大人しくしてたけど。
そうはいかない……僕は、この国を帝国や法国と比肩するこの世界の最大勢力に仕立て上げる。
そのつもりだった。
その道程は、苦難に満ちているだろうけど。
それがクロイエ様の描いた未来の地図ならば、この高倉健太郎……一切の迷いはない。
粛々と主の願いを遂行するのみ。
である以上、ロメオを金づるとか、弱小国とか馬鹿にしてた奴らも全員、屈服させる。
当然その中には、このオルメキアの連中も含まれている。
女神の使徒だろうが、司教様だろうが、容赦なんかしてやらない……。
これは……最初の戦いと言ってよかった。
「解った解った。高倉卿の話を信じる信じないは、まずいったん保留としよう。すまない高倉殿、レインは一度いい出したら、聞かなくてな……私は、君の話を信じようと思う……でないと話し合いにならないからな。だからこそという訳ではないが、あまり突拍子もない話はしないでほしい。信じようにもにわかに信じがたい話ばかりだからな……」
ミリアさんも、いい加減この不毛なやり取りにうんざりしているようだった。
そりゃそうだ……相手の話を片っ端から否定するとか、そんな調子じゃ文字通り、話にもならない。
「な、なんですかミリアさん、面倒くさいからって、有耶無耶にするつもりなんですか? 第一、そんな女神様に匹敵する使徒が現れたのなら、イザリオ達が何もしないとかありえません……。あいつらなら大々的に女神の降臨とか言い出して、信者やお布施集めに利用するに決まってます。実際、そんな話聞いてないですからね。要するに大嘘、出任せ! 私が女神様の敬虔な信者だからって、そんなデタラメ……馬鹿にするのも程があります!」
うるせー。
マジで、こいつ、なんとかしたい。
頭の中で、このメスガキに腹パンカマしまくって、倒れ込んだ所を踏みにじって、高笑いしたりしてみる。
ダメ押しにケツひん剥いて、キックキックキーック!
……涙目鼻水ヅラで、もう止めてぇつって命乞い。
ついでに、ジョビジョバお漏らしとかしちゃったりなんかして……
ああ、イイなぁ……コレ。
想像しただけで、スカッとした……不覚にもちょっと、漲りそうになっちゃったよ。
モンジローくんの事、悪く言えないや。
うん、こう言うドSプレイとか……イイかも。
ランシアさんの気持ち、ちょっと解っちゃった……今度、キリカさんが迫ってきたら、ロープでふん縛ってーとかやってみようかな? やっべ、そっち想像したら、思わず、股間が漲ってきちった! テヘペロ!
オーナー、たまに不謹慎。(笑)




