第三十六話「エキセントリック青年モンジロー!」①
ロメオ王国宰相兼イレブンマート異世界店オーナー兼コンビニ村村長。
それが、今の僕こと、高倉健太郎の肩書なのだ。
その仕事内容は多岐に渡りすぎて、何でも屋になったような気がする今日この頃だったりもする。
その場の勢いってやつで、ロメオ王国の宰相なんて引き受けた結果、僕の日常は、激変して極めつけレベルの多忙さを経験する羽目になった。
同様に、ロメオの重鎮となったアージュさん共々、いっそ二人で駆け落ちしようなんて、真剣に話し合うほどまでに追い込まれていたのだけど……。
ここ数日、やっと落ち着いてきた感じ。
クロイエ様の日本行きも半ばこちらの都合で、結局来月になってしまったし、ロメオ王国との話し合いを希望していたオルメキアの使節団もまだ到着してないから、宰相としての僕の出番はしばらくお休み……とさせてもらった。
と言うか……周りの皆が心配してくれて、クロイエ様もゾンビのような僕の有様を見るなり、むしろ、医者の手配をしようとしてくれたくらいだったので、ドクターストップならぬ、女王陛下ストップがかかったので、強制おやすみ……とも言う。
アージュさんの方も、大陸中からエルフ族をジャンジャン呼び集めて、片っ端から教育して、自分の仕事を押し付けてるみたいで、少しは楽が出来るようになってるらしい。
その結果、ロメオの行政関係の施設にエルフ族が増えて来て、エルフ族が珍しくなくなってきてるのだけどね。
ちなみに、アージュさんは、数日前から一人で、北の山岳地帯にある山エルフの集落の近くに湧く温泉に、湯治に行くとか行って、それっきりだった。
亜空間収納ボックスがいっぱいいっぱいになるくらいの大量のビールや日本酒、多種多様のおつまみ類やらをガメていったけど、まぁ、お疲れ様でしたと言う事で……。
支払いについても、ロメオ王国財務省にツケの請求書を送付済みなので、問題ない。
あの人……見た目は幼女、中身は年寄りだしねぇ……湯治とか如何にもそれらしい。
山エルフの温泉宿があるとかで、日がな一日温泉浸かって、酒のんで美味い飯食って、昼寝して、温泉浸かって、酒のんで飯食って寝るって言ってた。
いいな……それ。
まぁ、彼女の場合……長年いろいろサボりまくってたツケが一気に押し寄せたって感じらしいけど。
対照的に、クロイエ様はめっちゃタフ……今日も元気に、ロメオ王国各地を文字通り飛び回ってる。
ちなみに、ここのクロイエ様の別荘にも湯沸かし式の温泉くらいあるのだけど……。
アージュさん、ここにいるとひっきりなしに誰かが来て、問答無用で仕事させられるから、全然ゆっくり出来ないらしい。
ぶっちゃけ僕も一緒に、湯治行きたかったんだけど……アージュさん的にはむしろノリノリで、なんだか、肉食獣みたいな笑みを浮かべて、ウェルカム状態だったので、ご遠慮させてもらった。
危ない所だった……二人っきりで温泉旅行とか、殺人事件でも起きるか、薄い本展開になるかのいずれかだろう。
女の子と湯治行ったら、リフレッシュじゃなくて、相手腹ボテ、自分はカラカラの絞りカス状態とか……そうなりかねないだけに、ガクブルですよ!
とはいえ、色々資料を見たり、新しく部下になった人達との顔合わせとか、色々あるっちゃあるし。
お休みって言っても、お店にもちょくちょくピンチヒッターで入ったりするので、お出かけとかやっぱ、無理があるわけでしてー。
まぁ、つかの間の平和って感じではあった。
……けれど、そんな中、我がコンビニに常連の一人がやってきた。
思えば、これが一連の騒動の始まりだったのだけど……。
なんだか、随分と長くお休みを頂いていたような気がするので、まず、そんな所から、始めたいと思うんだ……メメタァッ!
「やぁ、久しぶりだね。紋次郎くん、しばらく見なかったけど、どうしたのか心配してたよ!」
「いやはや、2週間ぶりの外出でござるよ。このところ、自分のダンジョンのテストプレイとバランス調整に明け暮れていたのですよ。いやぁ、食料やジュース差し入れてもらってたけど、いよいよストックが無くなって、もう我慢できない! って感じだったんでさー」
ボサボサ頭に、アニキャラのTシャツ、短パンにゴージャスな飾りでいっぱいなマントと言う変なイデタチの青年。
なお、不健康そうな青白い肌に、ガリッガリに貧相な身体……まさにモヤシ! メタボな僕もあれだが、彼も不健康そのものだった。
ちなみに、「もう我慢できない」って下りは、妙に野太い声で、拳をガキンと合わせてのマッスルポージングしつつだった。
けど、悲しいくらいモヤシだ……残念っ!
まぁ、僕は……最近、筋肉付いて来て、割と健康的なんだけどね。
彼の名は、坂崎紋次郎と言う……日本からの転移者にして女神の使徒。
ご近所ダンジョンの主……ダンジョンマスターとも言うらしい。
カゴいっぱいに、ドリンク類とカップ麺、ポテチやらチョコを詰め込んで、大買い物。
なお、カゴの一番下には、某エロ漫画雑誌の最新号がさり気なく忍ばされていた……。
紋次郎くんってのは、こう言う愛すべき男だった。
まぁ、ハンサムな僕はサラッと一瞥するに留めて、速やかにレジを通して、ポテチの間に挟み込んで、レジ袋に詰め込んであげるのだけどね。
ちなみに、彼のお気に入りは、「LR王」と言うエロ漫画雑誌。
……入荷すると必ず、売り切れるロリ専門エロ漫画誌なんだがね。
さすがに、日本では堂々と置くようなところは少数派なんだが、お気に入りの絵師先生が連載してるからって理由で、日本で普通のコンビニやってた時から、こっそり入荷して、希望する常連にだけこっそり売ってた闇商品のひとつだったんだ。
なんだけど、こっちの世界でも、名前を言えない愛読者が何人かいらっしゃる。
問屋にもちゃんとツテはあるので、この手の不健全な代物も健全な雑誌などに紛れ込む形で、オーダーすれば、手元に届くのだ。
そんな訳で、この世界にも不健全な書籍の需要は相応にあって、「LR王」目当てに遠路はるばるやって来るって人もいるのだ。
紋次郎君もその一人だ。
先程、彼の来店に合わせて取り置き分を陳列棚にセッティングしておいたんだけど、しっかりゲットしてくれたようだった。
普通にレジに取り置きとして置いておくのは、女子ばかりのうちの店では、公開処刑にしてしまうリスクが高いので、こう言う回りくどい方法を使っている。
紋次郎君は、なかなかどうしてナイーブかつシャイな青年なのだよ。
「ごめんね。前のダンジョン……テンチョーがぶっ壊しちゃって。差し入れはお詫びのつもりだったんだけど、堪能してくれたようで、何よりだよ」
「ちょーありがたかったでござるよ。某も、ぶっちゃけ調子乗ってたですからな。この頬の傷はむしろ勲章でござるよ」
紋次郎くんの両ほっぺたには、痛々しげな五本筋の横線がザクザクと刻まれていた。
自慢のダンジョンを完全崩壊させられて、ボスルームにまで殴り込まれた挙げ句、テンチョーの猫耳メイド服姿に興奮して我を忘れた結果、テンチョーの往復猫パンチ食らってこうなった。
傷跡くらい治癒魔法で消せるはずなんだけど、本人的にはむしろご褒美だとかで、そのままにしてる。
おかげで、若干凄みのある顔になったような気がしないでもない。
実際、青年っても三十路突入一歩手前なんで、鉄砲玉の若い衆みたいでおっかない。
……でも、変態だ。
坂崎紋次郎君は、自他ともに認める変態なんだから、もうどうしょうもない。
「どうでござるかな? 高倉殿……つまるところ、新型のダンジョンがついに完成したので、テストプッレイーをしていただきたいのですがぁ、どうですかな?」
「えー? 言っとくけど、僕はモンスターと戦ったりとか無理だよ? そんなダンジョンとか行っても、どうせすぐ死んじゃうからねぇ……」
おっと、返事が棒読みってしまった。
まったく、我ながら白々しい。
「大丈夫でござるよー。我がダンジョンは安全設計が売り。迷宮の攻略自体は代理体の遠隔操作でも可能ですからな。それに生身での挑戦だって、万が一に備えて、オートリザレクション機能搭載なので、例えバラバラにされようが、コゲコゲの灰になっても、何事も無かったかのように、リスタート出来るようになってるんですお」
要するに、ゲームのアバターを動かすような感じで、自分は安全な所に居ながら、ダンジョン攻略とかも出来るらしい。
もちろん、生身で攻略ってのもありなんだけど。
このダンジョンは、表向きのガチモードだけでなく、18禁モードなんてのが実装されている。
何のためにかって言うと、チャレンジングな女の子冒険者やら、モンスターに連れ込ませた現地住民や、紋次郎くんデザインのかわいい女の子キャラがあんな事やこんな事をされてしまうのを、第三者視点で眺めたり、わざとそうなるように仕組む。
そう言う大人でゲスい楽しみ方も出来るようになっているのだね。
まぁ、ミャウ族やウォルフ族と言った僕の配下同然の現地住民への手出しは、止めさせたんだけど、好き好んでアタックしてくる冒険者なんかや、金に目がくらんだ女盗賊とかは知ーらない……。
ダンジョンから無事、脱出できたら、賞金XX万円みたいなノリで賞金かけたら、普通に挑戦してくる子なんかもいるし……。
最初は、馬鹿だねーと小馬鹿にしてたけど、お試しプレイならぬ、お試し鑑賞をさせてもらったら、これがなかなか良かった。
キリッとしてた女騎士とかが、手も足も出ない状態にされて、アヘ顔を晒すとか。
清楚で真面目ちゃんな感じの魔法使いが、ヨダレ垂らしてビクンビクンとか……思わず、堪能してしまった。
どうやら、僕には意外な性癖という物があったようだった。
別にね。
僕は、女の子とエッチなこととかしたい訳じゃないんだよ。
見て楽しむ、シチェーションを楽しむ。
ゲスな自分のゲスな行いを反芻して、喜びとする。
エロスってのは、そう言うものだと気づいてきたんだ。
うん、僕は……善人ぶってるんだけど、ホントはもっとゲスく生きたいんだ!
なにせ、もうとっくの昔に人間だってやめちゃってるからね!
猫は……けだものだものっ!
「だが断るっ!……なぜなら、ぶっちゃけめんどくさいっ!」
ホントは、ちょー一緒にダンマス視点で楽しみたいんだけどね。
これは、言わば前振りなんだ。
「うはっ! 相変わらず、高倉氏ってば容赦ねぇ! そこにシビれるあこがれるゥ!」
……相変わらず、ネタに生きてる素敵青年、紋次郎くん。
仰け反りすぎて、ブリッジ状態でビクンビクンしてる。
なかなかキモいんだけど、ネタフリに寸分違わず合わせてくる辺り、実に素敵野郎だ。
さぁ、そろそろ食いついてこないかな? 誰か。
ちなみに、店には僕以外にもテンチョーもいるし、そろそろ休憩から戻ってきたキリカさんも入ってきた所だった。
もっとも、閉店も近いから、店の中はガラガラなんだけどね。
ターゲットは……ズバリ、キリカさんだ! キラーンッ!
お久しぶりの再開です。
なんだか、ノリが変わった?
新キャラ、モンジロー君の登場で、ちょっと猫オーナーも暴走気味です。
まぁ、こんなだけど、割と重要人物、かつ強キャラだったりします。(笑)




