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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
幕間2

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閑話休題「メシマズエルフの食料改革」⑫

「うふふ……。解ってると思いますけど、ランシアちゃん程度じゃ、私には勝てませんよぉ……? そのまま、そこでぐるぐる巻きで大人しくしててくださいね。お友達のキリカちゃんも、今のでまだ動けるなんて、すごーい! でも、更にぐるぐる巻きにしちゃえば、もう動けませんよね? このツルは、最高硬度まで硬くすれば、ワイバーンだって動けなくさせる事が出来るんですよ?」


「ランシア……マジか? コイツ、ワイバーン相手に戦った事あるんか」


「ええ……以前、うちの集落もキリカ達が倒したワイバーンに、襲撃されたんだけど……。姉さんが一人で戦って、ワイバーン叩き落として、がんじがらめにして、あと一歩のところまで追い詰めたんですが、逃げられちゃったんですよ……」


「……そういや、アイツ。手負いやったなぁ……何処の誰がやりおったんだかって、うちらも思っとったんやけど……そう言う事なら納得やで。となると……コイツ「竜殺し(ドラゴンスレイヤー)」級の実力者ってことやないけ……」


「そうよ……実際、皆からは、その功績を称えて、「竜殺し」の称号を名乗ることが許された……その程度には強いわ」


 ……この人、マジで洒落になりません。


 あの勢いの衝撃を吸収して、ノーダメージに抑えるとか……。


 ツル自体が柔軟性と高い強度を持っているのだろう。

 おまけに自在に曲がる様子から、その表面硬度すら自在に変えられるのだろう……うん、チートだ。

 

「竜殺し」の称号も納得だ……この人、僕が知る中でも最強の魔術師だ。

 

「ランシア……お前のねーちゃん、洒落になっとらんで……オーナーはん! 何やっとるんや! はよ、逃げやっ! こりゃ、うちらが束になっても勝てんわっ! こんなバケモン、相手にしてられんわっ!」


「そ、そうは言っても、身体が動かなくて……」


 おそらく、一緒にこの部屋まで歩いてた時点で、すでに傀儡の法にかけられてたんだ……。

 どうりで、自分で歩いてる感じがしなかった訳だ。

 

 ランシアさんのは、リーシアさんが簡単に解呪してたけど、リーシアさんにかけられたとなると、リーシアさんがかけた以上の魔力で強制解呪するしかない。

 

 と言うか、ランシアさんも魔術師としても、相当な実力者で魔力保持量も人間の魔術師よりも高いと言う話だった。


 リーシアさんは、そのランシアさんより、高位の魔術師……ひょっとしたらエルフ族でも十指に入るとかそれくらいの実力者かも知れない。


 僕が知る限り、リーシアさんを超える魔力の持ち主となると、テンチョーくらいしか居ない。


 これ……本気で手に負えないかも。

 

「けど、どうしましょう……。オーナーさんと二人っきりで、ロマンチックな雰囲気の中で、優しく抱いてもらうつもりだったのに……お部屋の壁に穴が開いちゃって……。けど、お外だとなんだか恥ずかしいし……どうしましょう……? これ」


 リーシアさんが、今更みたいに壁に空いた大穴を見て、オロオロしてる。

 

 まぁ、部屋の中は普通に怪獣が暴れまわったみたいにボロボロ。

 ランシアさんも、キリカさんもグルグル巻き状態で、無力化されている。


 なんと言うか、圧倒的だった。 

 もう、ロマンチックも何もあったもんじゃないです。


 ボスキャラ決戦アフターって感じですがな。


「……確かにね……。これじゃもう為す術ない……」


 ランシアさんが悔しそうに呟く。

 さすがに、これは詰んだかも知れない。


「リ、リーシアさん……頼む、僕のことは好きにしていいから、二人を怪我させたりしないでくれ……」


「オーナーさん優しいんですね。大丈夫ですよ、怪我したり、痛くしないようにちゃんと手加減はしてますから」


 まさに余裕って感じのリーシアさん。

 けど、ランシアさんの目からはまだ闘志が消えてないっ!


「さすが姉さん、私なんかじゃ歯が立つ相手じゃない……」


「うんうん、ランシアちゃんもしばらく見ない間に腕を上げたみたいですけど、まだまだですね……」


「……なんて、殊勝な事、言うと思った? 姉さん、甘いわよっ! 私だって、昔のままじゃないっ!」


 ランシアさんがそう言うと、今度はランシアさんの身体に巻き付いてたツルがばらりと解けて、ランシアさんの身体に纏わりつくと、同じようなSM女王様スタイルへ!

 

「なんでぇ! 私のペトロちゃんが奪われちゃうなんて! ずるーいっ!」


「私だって、伊達に姉さんから魔術学んでないのよ。姉さんの手の内なんて丸わかりよ! 魔力波長を姉さんに擬態……上手くやれば鋼草の制御を奪い取れるかもって思ったんだけど、ぶっつけ本番でも結構なんとかなるもんね……と言うか、セキュリティ甘すぎって言うのよ!」


 さすがにランシアさんは、リーシアさんほどバインバインじゃないけど……ツルを身にまとった時に服も破れたらしく、細身の身体にほとんど紐のツルが巻き付いただけってスタイルは、なかなかにエロい。

 

 ……リーシアさんの鋼草のコントロールを奪い取ったってのか……さっすが、ランシアさん! やってくれる!


「もう、怒ったぁーっ! プンプンですぅ……どうやら、ランシアちゃんにはぁ……お仕置きが必要みたいです!」


 怒ったと言いながら、あんまり怒ってない感じで、リーシアさんがそう言うと、鋼草のツルがものすごい勢いでランシアさんへ降り注ぐ。


 すみません、結構マジギレされてたんですね……。


 けれども、それをランシアさんも同じ様に鋼草のツルを操って、尽く弾き返す!


 すごいっ! 互角に渡り合ってるよ!


 でも、攻防の最中、ちぎれ飛んできたツルの破片や、流れ弾だけで、家の壁や天井、床が次々吹っ飛んでいく……これ、当たったら痛いじゃ済まない奴だ。

 

 顔の横にビシッと飛んできたムチのような一撃でシーツが切り裂かれ、藁が撒き散らされる。


 こりゃ、ヤバイ! 下手すりゃ、真っ二つだ!

 動けーっ! 動けっての! 僕の身体! 動けねーとか言ってる場合じゃないっ!

 

 これは、もはや修羅場だ……生きるか死ぬか、デッド・オア・アライブーッ!


「おおっ! 尻尾だけは動くようになった!」

 

 さすが、魔法使いの杖……この猫耳ボディの魔術を司る魔力器官……猫尻尾!

 リーシアさんの傀儡の法による呪縛からも、いち早く解放されたようだった!

 

 そうか! 「解呪」……より強大な魔力で打ち消すってのはこう言うことか……。


 であれば、もうこうなったら力技だっ!

 

 この薄っすらと全身にまとわり付いている魔力……首の後ろに特に集まってる様子から、たぶん、これが全身麻酔の要領で、身体から自由を奪い取って、その上で外部から僕の身体を自在に操ってるのだと見た!

 

 傀儡の法……見切ったりっ!


 そう言うことなら、自分の魔力を拡大、循環させて、この傀儡の法の魔力を上書きしてしまえばいいんだ!

 

 ……尻尾の魔力を全身に行き渡らせるようにイメージ!


 イメージが大切なんだっ!


「ぬぉおおおっ! 強制魔力開放ーっ! 覚醒するんだーっ! 目覚めよ、僕の力ーっ!」


 SMエルフ姉妹がムチの応酬やってる隙に、気合を入れて尻尾の魔力を増大させていく!

 けれど、異変を察したリーシアさんのツルが僕の身体をもぐるぐる巻きにしてしまう。

 

「あらあら……オーナーさん、駄目ですよぉ……。ごめんなさい……もうちょっとだけ大人しくしててくださいね」

 

 ランシアさんの猛攻を片手間で凌ぎつつ、よそ見してる余裕まであるってのか!

 

 リーシアさん、マジで半端ないっ! この人……並の兵隊とかなら、100人相手でも無双とかするんじゃないかな?

 

 ……けど、負けないっ!

 縛られたまま、全身に魔力を行き渡らせ、それを限界まで高めていく。

 

 なんだこれ……?

 身体に巻き付いたツルから、異質な魔力が僕に流れ込む!


 傀儡化の魔力が更に増強される……くそっ! ますます身動きが……っ!


 けど、その瞬間……僕は、このツルを自在に操るこの魔術の本質を理解する。

 

 そうか、リーシアさんは魔力を通して、このツルを制御してるんだ。

 

 なるほど、こんな風に強力な魔力を付与することで、人や物……本来動かないはずの植物を強制的に自分の意志で動かしたり、急成長を促したりする。

 

 このツルを自在に操ってるのは、傀儡の法の応用ってところなのか……。

 どおりで、こんな人の自由を奪う魔術を簡単に、しかも強力なのを使役できる訳だ。


 タ、タチ悪っ! でも、はっきり言って、すごい! さすが、竜殺し級の超級魔術師っ!


 ……けど、原理が理解出来たなら、僕にだって! 僕はこう見えて本番に強いんだ! 

 ツルに流れる魔力の流れに干渉……ツルの力がちょっと弱まる。


 そして、僕の身体に仕込まれた魔力にも干渉を続ける……いいぞ、この調子なら行けるっ!

 

「姉さんっ! オーナーさんを放しなさーいっ! オーナーさん! 私が解除してあげるから、安心してっ!」


 ランシアさんのツルが僕に向かって伸びると、やっぱり同様に、僕に巻き付いたツタに魔力を通すことでリーシアさんの魔法に干渉しようとするっ!

 

 ちょうど、自分の魔力を増大させようとしていたタイミングだったから、タイミングが悪い……そうとしか言いようがなかった。

 

 三人分の魔力がごちゃ混ぜになって、僕の全身に満ちていく!


 と言うか、これまで扱ったことのない大量の魔力が行き場を求めて、全身を駆け巡っているっ!

 

 不思議と痛みはない……けれど、体が燃えるように熱くなり、心臓の鼓動が激しく脈打ち、尻尾から凄まじいほどの魔力が逆流してくるのが解る。


 手足や胸がボコボコと見る間にゴツく逞しくなっていく!

 ……なんだこれは! 新しい力が……目覚めようとしているのかっ!

 

 それは幻聴だったのかも知れないけど。


 はっきりこう聞こえた。

 

『力が……欲しいか?』


 Yes! Yes! Yes!


 その時、僕は心の底から、このカオスを押しつぶす圧倒的なカオスを欲したのだ!

 力だ! 力っ! この難局を乗り切る圧倒的な力っ! それはっ!

 

「来たれ! 鋼のボディ! マッスルマッスル! ハイパワーッ! マ神パワーッ! オンッ!」

 

 この魔術の発動詠唱なのか……そんなフレーズが自然に口をついて出た。


 光が満ちる! 圧倒的な力がこの僕の身に宿ろうとしていた!



 ……けど、それっきり僕の意識はシャットダウンしてしまい、このあと、何がどうなったのかはよく覚えてない。

 

 薄れゆく意識の中……ガチムチのおっさんの背中が見えて、後は任せろと言わんばかりに肩越しにサムズアップの仕草をするのが解った。


 それだけだった。



「……な、何がどうなったんだ……」


 なんか知らないけど、身体中のあちこちが痛いような気がして、目を覚ます。

 

 気がついたら、僕は例の硬いツルにがんじがらめにされて、ぶっとい木に半ばめり込んだような状態になっていて、遠巻きに大勢のエルフ達に囲まれているような有様だった。

 

 思った以上に、予想外な状況。

 

 なんなの? これ……マジでっ!

 

「待ちぃっ! ランシア……オーナーはん、正気に返ってるっぽいんやけど……もう、止めやっ!」


「そ、そうですね。身体も元に戻ってますし……。もう先程までの凄まじい魔力も無くなってます。これならもう緩めても大丈夫……姉さんも早く拘束を解除してあげてっ! 皆も、撃ち方、ストップ!」


「あ、はいっ! よ、良かったですぅ……オーナーさん、大丈夫ですかぁ? すぐに解除しますからぁ……!」


 僕をがんじがらめにしていたツルがするりと解けて、僕は、人型のくぼみの出来た巨木にもたれかかるように座り込んでいた。


 目の前には即席の鎧って感じで、あっちこっちに鋼草を巻き付けたキリカさんが……。


 それに、アーマードランシアさんと、アーマードリーシアさん。


 ……そうとしか言いようがない感じの二人がいた。


 どっちがどっちか、顔までツルに覆われてるから、良くわからないんだけど。

 大きいほうがリーシアさんで、少し小さいほうがランシアさん?

 

 他にも森エルフさん、ほぼ総動員みたいな感じになってた。

 よく見ると、周囲には折れたり、地面に刺さったままの矢が大量に転がっていたし、倒れ込んで介抱されてる人とかもいた。

 

 けれども、その場の全員の表情に、安堵が浮かんでいた……。

 

「よ、良く解らないけど、なんで、僕はこんなになってんの? 誰か、説明して欲しいなぁ……みたいな?」


 僕がそれだけ口にすると、三人が顔を見合わせながら、凄く気まずい感じになる。

 そんな中、キリカさんが苦笑いしつつ、説明してくれるのだった。

 

 

 ……あの時に何が起こったのか?

 

 どうやら、僕はランシアさんやリーシアさんの魔力を吸収して、限界を超えた魔力で身体を強化しムキムキモンスターみたいになった挙げ句、完全に暴走状態になってしまったらしかった。

 

 そのパワーは凄まじく、リーシアさんの鋼のツタすらも引きちぎり、大暴走っ!

 キリカさんでも手に負えず、もやは荒ぶる筋肉魔人! みたいな感じになってしまったらしい。

 

 三人は急遽、共同戦線を張り、里のエルフ達も総動員の上で僕を大人しくさせるために激戦を繰り広げ……。


 ようやっと、僕が力尽きて正気に戻った……そんな感じらしかった。

 

「……ごめん。なんか、変な声が聞こえて、思わずその声に答えちゃったんだ……」


 あれは……極限状態にさらされた僕自身が生んだ幻聴だったのだろうか?

 それとも……? 噂に聞くマッスルの神……通称マ神の声だったのだろうか?

 

 恐ろしい……あれが、神なのだとしたら、まさに荒ぶる神そのものだった。


 けど、その圧倒的なパワーの片鱗がまだ身体に残ってるような気がした。


 ……新たなる僕の力……マ神憑依と言った所か。


 でも、意識飛ぶんじゃ使い物にならんよ……これ?

 あ、でも……魔力を込めることで、腕だけちょいムキムキな感じになってる!


 これは……使えるかも知れない!


「びっくりしたで! オーナーがいきなりムキムキになって、鋼草のツルをあっさり引きちぎって、大暴れっ! もう、テンチョーはん呼んで、なんとかしてもらうしか無いって思っとったくらいやったわ」


 ……なんにも覚えてないんだけど。

 なんなの? それ……。

 

 テンチョー出撃要請まで、考えたって……そんなオーバーキル戦力が必要って考えるほどの事態だったのか……。

 

 我ながら、恐ろしい状況だったのだと……改めて、背筋が凍る思いだった。


 マ神パワーッ! 恐るべしっ!

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