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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
幕間2

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閑話休題「メシマズエルフの食料改革」⑧

「オーナーさん、お疲れ様ですぅ……」


 何人もの有力者に、立て続けに挨拶巡りして、贈り物の粗品を送って回ったりして、木陰で一息付いてたら、リーシアさんがやってきた。

 

「やぁ、リーシアさん。ちょっとひと息ついてたんだ……。ここらも暑いことには変わりないね」


「あらあらぁ……なら、お茶どうですか? 我が家の自家製なんですよぉ」

 

 言いながら、リーシアさんがレモンに似た香りのする薄い緑色のお茶を差し出してくれる。

 ありがたく受け取ると、軽く香りを嗅いで見る。

 

「あ、ありがとう……おお、レモンみたいな匂いがする……これって?」


「はい、エギル草にも、いい香りのする亜種がありましてぇ……。それとエトゥリ草の根をブレンドして煎じたものですね。エトゥリ草は煎じると甘い味がする薬草で、身体にも良いんですよ」


 なるほど、レモングラスティーみたいなもんか。

 一口飲むと、酸っぱい味を想像していたのに、そこはかとない藁みたいな味と僅かな渋み、ほんのり優しい甘みもある……。

 

 普通に美味しい……ハーブティ。

 エルフはメシマズって話だけど、こう言う美味しい飲み物だってあるんだね。

 

「ど、どうですか? 口に合えば良いんですけど……」

 

「うん、確かに美味しいね。これなら、むしろ売り物にだってなるんじゃないかな? パーラムさんにも見てもらえば、買い取ってもらえると思うよ。なんなら、うちで扱ったっていいし」


 うん、リーシアさんの顔写真付きで「私がブレンドしましたぁ」なんて、煽り文句付きで!

 まぁ、僕なら買うね! 間違いなく。

 

「ありがとうございますぅ。そうですよねぇ……私達って、ここで暮らしてる分には、皆、物々交換だからお金なんて使いませんからね。だから、そう言う商売とかってあまり興味なかったんですけど……。オーナーさんのとこで、お買い物するには、私達もお金を手に入れないと駄目なんですよねぇ……」


「そうだねぇ……。お金が全てじゃないけど、人生を楽しむにはやっぱりお金がいるからね。幸いエルフさん達は、植物や魔法の知識が凄いし、木とか皮で装飾品とか装備作ったり、リーシアさんみたいに、美味しいお茶を作ったり……色々出来るからね。孤高の引きこもり……なんてのより、皆と仲良く豊かな生活をってのも悪くないと思うよ」


「私達って、のんびり屋さんなんですよねぇ……。でも、美味しいものの為なら、ちょっとは色々やってもいいかもしれませんねぇ」


 ぼんやりとした感じのリーシアさんと話してると、時間の流れがどんどんゆったりとしていくような気がする。

 うんうん、せかせかしないで、まったりまったり。

 

 癒やされる人だなぁ……っとと、本気で好きになっちゃいそうだよ。

 

「リーシアさんって、以外と多才なんだね。解呪の魔法だって、あれ……相手より、魔力が強いってのが前提らしいじゃないか。……もしかして、ランシアさんより、リーシアさんの方が魔法は上手だったりするの?」


「うふふ……ランシアちゃんの魔法は、そのほとんどを私が教えてあげたんですよぉ。昔は、お姉ちゃん先生……なんて呼ばれてたものなのですよぉ」


「へぇ、そうなんだ……ランシアさんって、教え方も上手いし、優しいし……いい先生なんだけど、リーシアさんをお手本にしてのかもね! リーシアさん、優しいし可愛いもんね」


「あら嫌だわぁ……そんな誉めないでくださいよぉ……オーナーさんったら」


 そう言って、鼻の頭をエイって小突かれる。

 そして、なんだかめっちゃ近くで、じっと見つめられて、ニコッと笑顔。

 

 やっべぇ、リーシアさん可愛いよリーシアさん。

 そのウィスパーボイスもたまらないし……。

 

「あはは……そんな子供扱うみたいに……。僕だって、40年位は生きてるから、子供じゃないんだよ?」


「私達にとっては、40歳なんて子供も子供ですよぉ……はーい、抱っこしてあげますよぉ」


 なんだか嬉しそうに、両手を広げるリーシアさん。

 反射的に、うわーいとその胸に飛び込んでいきたくなってしまう。

 

 ダメダメ……ここで抱きっとかやっても、むしろ許してくれそうだけど。

 なんか、それはそれで、無節操な感じでどうかと思うのだよ。

 

 リーシアさん的には、ウェルカムカモン状態だったみたいで、訝しげな様子。

 笑って誤魔化すべく、微笑みかけてみる。

 

 けど……リーシアさんのその瞳はどこか虚ろで……どこか妖しげな光を帯びていた。

 

 あれ? この目……さっきも。

 頭の何処かで、警鐘が鳴ってる……けれど、その視線から目を外せない。


 身体もまるで金縛りにかかったように動かない。

 

 この感覚覚えがある……さっき、ランシアさんにかけられた傀儡の法?

 まるで操られているかのように僕も一歩踏み出す。

 

 リーシアさんが、一歩下がると、大きな木の幹に背中が当たる。

 もうリーシアさんは、目の前……その長くウェーブの掛かったプルシアンブルーの髪が風になびく。

 

 僕にはそんなつもりもなかったのに、僕の右手が突き出されて、リーシアさんの顔の横にドンッと少し乱暴に当てられる。

 

 ……あれ? これって、あれだよなぁ……壁ドンの構図? だよね。

 

 リーシアさんが少し怯えたような仕草を見せると、僕の左手が彼女の上着の胸元ボタンにかかると、ひとつずつプチプチと外していく……。

 

 ちょっ! 僕はいきなり何をやってるわけ?

 けれど、そんな僕の思いと裏腹に、完全に暴走状態の僕の左手にリーシアさんの手が添えられる。

 

「駄目ですよぉ……。こんな所で……。でも、優しくしてくれるなら……いいですよ?」


 頬を赤らめたリーシアさんが耳元で囁く。

 僕の中で何かがプツーンと切れた……もう、こんなにされたら、僕だって獣人らしく、ケダモノになったってしょうがないよね?


 不肖、高倉……ちょっと大人の階段登っちゃいますっ!

 

「あ、いたいたっ! オーナーさんっ! あれ、姉さんも一緒だったの?」


 刹那、身体の自由が戻ってくる。

 ドバっと、変な汗が顔を伝って、思わず跪いて両手を地面に着く。

 

 リーシアさんは……と言うと、見上げると何事もなかったかのように、ニコニコ笑顔。

 

「あらあら、ランシアちゃん。どうしたの? そんな急いでぇ……お姉ちゃんに何か用事?」


「べ、別に用事って訳じゃないけど……って、オーナーさん、どうしたの? 大丈夫?」


 ランシアさんが、気遣ってくれる。

 

「いや、その……な、なんでもないよっ! ちょっとそこの石に躓いちゃって……」


 なんだろう? ここで正直に言ったらマズいことになるって気がして、そんな風に取り繕う。

 けど、今のリーシアさん……明らかに様子がおかしかった。

 

 解った……今のは、リーシアさんに邪な欲望を抱いた僕の暗黒面に他ならない。

 いくらなんでも、こんな昼間っから婦女暴行とか、アウトだろ。

 

 ……と言うか、本気で理性のタガが外れそうだった。

 

 うーむ、僕自身は理性的なつもりだけど、やっぱり獣人たるこの身体に、内面が少なからぬ影響を受けているのかもしれない。


 何かの拍子に理性が飛んで、自分でもびっくりするような奇行や粗暴な行動に走る可能性だってあり得るんだ。

 ……そんな事にならないように……気をつけないと。

 

 けど、なんか変だったのも確かなんだよなぁ……。

 なんか、外部から強制的にケモノスイッチを入れられたような……そんな感じもした。

 

 でも、今……目の前にいるリーシアさんの微笑みは天使の微笑みそのもの。

 結論! 今のは僕が全面的に悪い! それを笑顔で流してくれたリーシアさんには、ちょっと頭が上がりそうもない。

 

「あ、それってもしかして、リモネア茶? 懐かしー! 私も好きだったんだよね。それ」


「そうでしたよねぇ……。ランシアちゃん、これ大好きでしたよね。どうぞ」


 言いながら、急須みたいなのから、木のコップにお茶を淹れるリーシアさん。

 それに、口をつけるとランシアさんの表情がとっても優しくなる。

 

「はぁ……これ飲んだら、急に家に帰ってきたって感じがしてきたわ。ねぇ、これってまだあるの?」


「家に戻ればたくさんありますよ。今年はリモネア草の群生地を見つけちゃったので、たくさん作りすぎちゃって……。そう言えば、オーナーさんがお店に置かないかって言ってくれてるんですけど……ランシアちゃん、これって売り物になるかなぁ……?」


「この味なら、人族相手にだってばっちりだって! すっかり忘れてたけど、うちにもお母さんの手作りジャムとか色々売り物になりそうなものってあるのよね。ああ、なんかもう、こんな毎日飲んでたようなのを、すっかり懐かしく感じちゃうなんて、やっぱたまには家に帰らないと駄目ね」


「そうですよぉ。……5年も家に帰ってこないなんて……お父さんもお母さんも寂しがってたんですよ」


「これからは仕事先も近くだから、ちょくちょく顔出すって! と言うか、お姉ちゃんも早くお婿さん見つけてよっ! もういい年じゃないの……私より50年は上なんだしさ」


「ランシアちゃん、酷いっ! オーナーさんの前で歳の話はしないでって言ったのにぃ!」


「あ、ごめーん! でも、オーナーさんって、私達の歳なんて気にしないですよね?」


「ああ、エルフと人間の歳比べても意味ないって知ってるからね」


 ランシアさんは105歳って話だけど。

 話ししてる感じだと、精神的には二十歳くらいの若い子とあまり変わらないような気がする。

 寿命なんかを聞く限りだと、人間の5倍位長生きするって感じなんだけど……。

 

 リーシアさんは……150歳くらいと推定……その時点で人間の最高寿を軽く突破して、僕の4倍以上は長生きしてるのだけど。


 精神年齢的には、人間だと3-40くらい……むしろ、僕とあまり変わりないような気もする。

 20代の連中って、僕らアラサーから見ると、どことなく子供じみたところがあるんだけど……30超えてくると、男も女も老成してくる。


 リーシアさんは、まさに大人の女の人って感じ……僕も大人の男だからね、やっぱり若い子よりもこう言う熟成された大人な女性に惹かれるんだ。

 

 楽しげな姉妹のとりとめもない会話が聞こえてくる。

 考えてみれば、この二人も長い長い付き合いなんだろう。

 

 ランシアさんも、リーシアさんもそれぞれが魅力あって……どっちも美人。

 比べるもんじゃないよね。

 

 まぁ、とにかくこの時はこれで終わったんだ。

隔日と言っときながら、デイリーで更新してたんで、ストック切れました。

明日更新できるかどうかは不明です。(汗)



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